X線観測で迫るIa型超新星とその残骸の物理

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X線観測で迫るIa型超新星とその残骸の物理 2007/10/31 天体核研究室APゼミ 京都大学 宇宙線研究室 山口 弘悦

SN1006 の記録 リアルタイムで 明月記 : 藤原定家 (1162-1241) の日記 観測・記録したのは 安倍吉昌 (?-1019) 安倍晴明の次男 初代 陰陽頭 明月記 : 藤原定家 (1162-1241) の日記

Historical Galactic SNRs 爆発年 距離(kpc) 直径 (pc) Type RCW86 185 2.8 36 II ? SN1006 1006 2.2 19 Ia Crab 1054 2.0 2.3 II 3C58 1181 3.2 8.4 Tycho 1572 5.4 Kepler 1604 4.8 4.2 Ia ? Cas A 1680 ? 3.5 4.1 Ib 横山光輝 三国志 第1話より

Contents 超新星爆発 (主に Ia型超新星) 超新星残骸の進化 X線観測 Suzaku による SN1006 の観測結果と解釈 超新星の分類 白色矮星の進化(爆発に至るまで) 爆発時の元素合成 超新星残骸の進化 衝撃波加熱 (forward shock と reverse shock) X線観測 X線で何がわかる? 非平衡プラズマ Suzaku による SN1006 の観測結果と解釈 まとめ

Contents 超新星爆発 (主に Ia型超新星) 超新星残骸の進化 X線観測 Suzaku による SN1006 の観測結果と解釈 超新星の分類 白色矮星の進化(爆発に至るまで) 爆発時の元素合成 超新星残骸の進化 衝撃波加熱 (forward shock と reverse shock) X線観測 X線で何がわかる? 非平衡プラズマ Suzaku による SN1006 の観測結果と解釈 まとめ

超新星残骸 観測の意義 「太陽組成」 相対存在量 Anders & Grevesse 1989 原子番号 O Ne Si Fe H S Ca 相対存在量 C 10-10 10-5 1 N Mg Ar Ni 自分なりのモチベーション Anders & Grevesse 1989 原子番号 ・ 各超新星が「どの元素を」「どれだけの量」生成したか? ・ 「どのような場所で」「どのような頻度で」爆発が起こったか?

超新星の分類 そもそもどんなタイプの超新星があるの?

超新星の分類 Ia型超新星の 可視光スペクトル Ia型超新星: Si や S が多く、 O や Mg が少ない Fe II Fe III S II Si II O I Ca II Mg II Ia型超新星: Si や S が多く、 O や Mg が少ない

光度曲線 56Ni 56Co 56Fe 超新星の熱源は 56Ni (e.g., Arnett 1979) Stanishev et al. 2007 56Ni 8.8日 g線 (E.C.) 56Co 111日 g線 (E.C.) e+ (b+ decay) 56Fe 最大光度からの日数 ほとんどのエネルギーを可視光で放射 Ia型超新星: 明るさ(絶対光度)はどれもほぼ同じ 56Ni = 0.6-0.8 M◎ (重力崩壊型より多量)

Ia型超新星の観測的事実 起源は白色矮星? スペクトルに水素の吸収がない → 水素層が存在しない 珪素・硫黄は多い 多量の56Ni (約 0.6-0.8M◎) が存在 (光度曲線) 明るさはどれもほぼ同じ 楕円銀河でも起こる。 → 水素層が存在しない → self-regulation → 小質量星が起源 起源は白色矮星?

白色矮星 M < 8M◎ の星の「なれの果て」 C+Oコア(と、わずかな重元素) シリウスB: R = 0.02R◎, M = 1.1M◎ 電子の縮退圧 → Chandrasekhar mass = 1.46M◎ → 比熱が正 (Mch に近づき核融合が始まれば暴走的) Mch に近づくには? ・ Single degenerate scenario 伴星からの質量降着 ・ Double degenerate scenario White dwarf 同士の合体 → 現在も論争中  (個人的には前者が自然な気がします) Wang et al. 2003

爆発に至るまで 質量降着は難しい!! dM/dt < 10-7 M◎/yr → 間欠泉的な新星爆発 → WDは太れない → 外層が伴星を取り込む 外層形成 ⇒ SNはなかなか起らない? Nova 積り過ぎ分は星風によって 放出し、ゆっくり質量増大  optically thick wind (Kato & Hachisu 1994) Nomoto et al. 1982

爆発に至るまで 星風の動力源 = 輻射圧 (内部からの輻射をFeが吸収) OK NG Kobayashi et al. 1998 Ia型 SN rate Kobayashi et al. 1998 Feが少ないと 星風が吹かない 昔(z > 1.2)は Ia型超新星が ほとんど起らなかった

爆発と元素合成 元素合成と燃焼温度 Mch に近づくと ‥‥ Detonation wave (爆轟波): 衝撃波 (Arnett 1969) 高密度のまま爆発するので全て 56Ni に (Siができない) Deflagration wave (爆燃波): 亜音速 (Nomoto et al. 1976, 1984) 56Ni = 0.7M◎ → 観測と一致 外層は膨張 → Si や S も生成 元素合成と燃焼温度 主な生成元素 燃焼温度(K) C (Ne) burning O, Mg, Si, Ne 2×109 O burning O, Si, S, Ar, Ca 3-4×109 incomp. Si burning Si, S, Fe, Ar, Ca 4×109 complete Si burning Fe, Ni, Zn, Co 5×109

爆発と元素合成 爆燃波モデル(W7) のシミュレーション 各元素の質量比 W7 model 質量座標

元素組成比 Fe族を多量に生成 太陽組成に対する存在比 C, O, Ne は 少量 原子番号 Nomoto et al. 1984 Delayed detonation なんてのもあるが、ここでは省略 原子番号 Nomoto et al. 1984

重力崩壊型との比較 太陽組成に対する存在比 重力崩壊型 = O-rich Nomoto et al. 1984, Iwamoto et al. 1999

Contents 超新星爆発 (主に Ia型超新星) 超新星残骸の進化 X線観測 Suzaku による SN1006 の観測結果と解釈 超新星の分類 白色矮星の進化(爆発に至るまで) 爆発時の元素合成 超新星残骸の進化 衝撃波加熱 (forward shock と reverse shock) X線観測 X線で何がわかる? 非平衡プラズマ Suzaku による SN1006 の観測結果と解釈 まとめ

爆発直後 ~ 数年後 Ejecta(爆発噴出物)が自由膨張 (多分)数日で冷える → 可視光でのみ観測される 10日後ぐらいのスペクトル 200日後のスペクトル S Si O Mg 内部は optically-thick → 外層のみの情報 輝線が見えてくる →

~ 数千年後 Forward shock Reverse shock Ejecta が超音速で ISM に突っ込む → 衝撃波 ISM  → 衝撃波 ISM ISMを加熱し、減速 X線 後からきた Ejecta が追突 → Ejecta も加熱 Forward shock Reverse shock ISM Free expanding ejecta 可視光は暗くなる ISM, ejecta 両方からの放射が混ざる 若いSNRはejectaからの放射がドミナント Ejectaの情報 ISMの情報

Forward shock と Reverse shock 横軸:適当な密度を仮定した場合 時間発展は星間密度に強く依存することに注意 MISM ~ MEje から減速 MISM ~ 10MEje で中心に到達 → Sedov phase へ

Contents 超新星爆発 (主に Ia型超新星) 超新星残骸の進化 X線観測 Suzaku による SN1006 の観測結果と解釈 超新星の分類 白色矮星の進化(爆発に至るまで) 爆発時の元素合成 超新星残骸の進化 衝撃波加熱 (forward shock と reverse shock) X線観測 X線で何がわかる? 非平衡プラズマ Suzaku による SN1006 の観測結果と解釈 まとめ

X線で何がわかる? 測定のしくみ X線エネルギーに 比例した数の電子 検出器 ・ 時間 → ライトカーブ ・ 位置 → イメージ ・ 時間 → ライトカーブ ・ 位置 → イメージ ・ エネルギー → スペクトル 「エネルギー毎のイメージ」 や 「場所毎のスペクトル」 も可能 Si Fe 可視光などは分光orイメージング Cas A Vink et al. 2004

スペクトル 単色のX線 Gaussian 検出器の response 真のX線スペクトル 検出されるスペクトル Model fitting negativeな言い方をすると不定性は多い 可視光のスペクトルはほぼリアル Suzakuも本来高分解能になるはずだった 真のX線スペクトル 検出されるスペクトル Model fitting

SNRからのX線放射過程 Bremsstrahlung SNR は 高温の thin-thermal plasma   ・ 水素原子は電離して陽子と電子に   ・ 重元素は「ほとんど」 He状、H状 まで電離 Bremsstrahlung プラズマの主要要素が水素の場合 : I ∝ nenH ~ n2 連続X線 ion free e- X線 放射過程は比較的単純 ほとんどのイオンがHe状、H状まで電離 完全電離もあり。Li以下もあり(後述)

SNRからのX線放射過程 Line emission IZ ∝ nenZ EK-EL 決まったエネルギーの X線を放射(特性X線) free e- IZ ∝ nenZ He-Ka He-Kb L殻 M殻 H-Ka (Lya) He状イオン H状イオン

SNRからのX線放射過程 Non-thermal (synchrotron) emission SNR の shell から synchrotron X線を発見 (SN1006; Koyama et al. 1995) (ほぼ)ベキ型関数 log (ph/sec/keV) ばんば  2003 non-thermalは深くは話さない SNRからのX線放射はこの3つぐらい 素過程自体は極めて単純 log (E) (磁場を仮定して) 傾きから Emax が決まる G = 2.5-3.5 → Emax = 10-100 TeV

熱的スペクトルからわかること Bremsstrahlung 10.0 5.0 2.0 1.0 0.5 keV 形 ⇒ kTe (電子温度) 強度 ⇒ nenHV

熱的スペクトルからわかること Line emission どの元素がどれだけあるか (重元素アバンダンス) SN1006 Yamaguchi et al., in press Cygnus Loop Miyata et al. 2007 元素によって特性X線のエネルギーが異なる 主要元素 O Ne Mg Si S Ar Ca Fe は大体のSNRで見える 最近は感度が上がり、C N、Ti Cr Mn が見え始めた Tycho Tamagawa et al. (submitted)

熱的スペクトルからわかること H-Ka Si He-Ka Siのスペクトル He-Kb H-Kb 黒 : 0.1 solar kTe = 1 keV 太陽組成の何倍 「輝線/連続成分」は「等価幅」と言う   Brems ∝ nHne Line ∝ nZne ⇒ (輝線)/(連続X線) ∝ abundance Non-thermal が寄与すると、少し厄介

熱的スペクトルからわかること Ion fraction (電離状態)も H-Ka He-Ka 温度が高いと電離がより進む H-Kb kT = 0.1 keV He状まで 電離していない He-Ka 温度が高いと電離がより進む H-Kb 黒 : 0.2 keV 赤 : 0.5 keV 緑 : 1.0 keV 青 : 1.5 keV 水 : 2.0 keV 紫 : 3.0 keV Siのスペクトル He-Kb H-like が 強い(多い) He-Kaの強度が等しくなるようにnormalize 徐々にH状の輝線が強くなっていくのがわかる 強度比から ion fraction がわかる 極端な例として0.1keVの場合⇒He状まで電離していない 分離はできないが、中心エネルギーを調べることでどのあたりのイオン状態にあるかがわかる ion fraction が正しく温度を反映するとは限らない 中心エネルギーから  ion fraction が (ある程度)わかる 但し、 ion fraction が 正しく温度(電子温度)を 反映するとは限らない

加熱後、電子の衝突を受け徐々に電離が進行 電離非平衡プラズマ 加熱後、電子の衝突を受け徐々に電離が進行 (最初から電離しているわけではない) net (ionization parameter) ‥ 電離度の指標 Time scale (Masai 1984) netion = 1×1012 cm-3 s 黒 : 1×109 cm-3 s 赤 : 5×109 cm-3 s 緑 : 1×1010 cm-3 s 青 : 5×1010 cm-3 s 水 : 1×1011 cm-3 s 紫 : 1×1012 cm-3 s He-Ka H-Ka He-Kb kTe = 1 keV Siのスペクトル 密度が小さい(=電子が少ない)と 電離するまで時間がかかる ⇒ 1 コ/cc なら 30000年で電離平衡 「電離非平衡」 衝撃波によって加熱されプラズマとなっても、最初からHe状近くまで電離しているわけではない イオンの電離が進むためには、電子とイオンの衝突が繰り返し起らなければならない 密度が薄いとなかなか衝突がおこらない 結果として、電子温度に相当するion fractionまで電離が追いついていない非平衡状態が成り立つ ne*tによってスペクトルがどう変化するか見ていく kTe=1.5keV 常に一定 異性がいないので 年をとっても出会いがない

電離非平衡プラズマ He状 kTe = 2 keV C-Li状 Ne状 中性-Ar状 黒 : 1×109 cm-3 s Feのスペクトル 6 7

プラズマ診断 まとめ Bremsstrahlung Lines Ion fraction 強度 Shape Kb/Ka比 強度 nenHV (中心エネルギー) 強度 Shape Kb/Ka比 強度 nenHV kTe (電子温度) Abundance 体積 密度 net (電離度)

Contents 超新星爆発 (主に Ia型超新星) 超新星残骸の進化 X線観測 Suzaku による SN1006 の観測結果と解釈 超新星の分類 白色矮星の進化(爆発に至るまで) 爆発時の元素合成 超新星残骸の進化 衝撃波加熱 (forward shock と reverse shock) X線観測 X線で何がわかる? 非平衡プラズマ Suzaku による SN1006 の観測結果と解釈 まとめ

Introduction SN1006 (G327.6+14.6) ・ Shellでの宇宙線加速 (Koyama et al. 1995, Bamba et al. 2003) ・ Type Ia SNR (e.g., Schaefer 1996) 大量のFeが存在? X線輝線 : 元素存在の最も直接的な情報 ↓ ASCA, Chandra, XMM-Newton Fe輝線をまったく検出せず。

Introduction UV観測 : 冷たいFe(自由膨張中のFe)の間接的証拠 BGD star のスペクトルから赤方・青方偏移したFeII吸収線 (e.g., Winkler et al. 2005) 1 3 1 FeII Fe存在の情報が全くないわけではない 2 2 3

Introduction しかしながら Fe II のMass < 0.16 M◎ (Hamilton et al. 1997) cf. Type Ia : MFe = 0.75M◎ (Nomoto et al. 1984) Where is Iron ? → 目的その1:Suzaku で Fe 探し Ejectaの一部が自由膨張 ⇒ 進化の初期段階  → プラズマも若い(非平衡度が大きい)はず 電離度: net = 2×109 cm-3 s (Vink et al. 2000) << 1012 cm-3 s cf. Cas A, Kepler, Tycho (t~300-400yr) : net > 1010 cm-3 s 極端な非平衡状態 ← 低密なISM (n~0.3-0.5 cm-3; Dubner et al.) SN1006 : b = +14.6, Kepler : b = +6.8, Tycho : b = +1.4 SuzakuはFe輝線の検出効率に最も優れる SN1006は Galactic SNR の中で最も ”若い”!! 目的その2 : Type Ia SNR 初期進化の理解

Suzaku Observation 計 4pointings で SN1006 (d~30’) のほぼ全域を観測 thermal で最も明るい南東部に注目 北東・南西は non-thermalが 強いので永遠にスルー OVII band

Suzaku Observation Clear な Fe-K輝線を検出 E ~ 6.43 keV 南東部全体の    スペクトル Black : FI-CCD Red : BI-CCD Clear な Fe-K輝線を検出 E ~ 6.43 keV  → Fe XVII (Ne-like) 程度 Fe K band

スペクトル解析 Forward shock Reverse shock いきなり full-band fitting は難しい‥ ・ スペクトルは ISM & ejecta が混在   (non-thermalも?) ・ 両成分がどのように寄与するか? Forward shock Reverse shock ISM Free expanding ejecta

スペクトル解析 重い元素 (Fe) 軽い元素 (O, Ne) 中間の元素 (Mg, Si, S) スペクトルを分割 ⇒ 各元素のプラズマ状態を調べる 特に ‥ ISM, ejecta どちらを起源とするか?

Mg-Si-S band Cas A (t ~300 yr) との比較 Mg Si H状 line S He-like 以下の イオンが存在 H-like は ほとんどない 黒: SN1006 赤: Cas A これを踏まえて‥ SN1006 のプラズマは Cas A より”若い”

Mg-Si-S band Mg Si 1.2-2.8 keV spectrum : 電離非平衡の thin-thermal plasma model で fit ⇒ 1成分では fit 不可 Si, S 輝線に有意な広がり S ~40eVの広がり c2/d.o.f. = 848/351 熱運動によるDoppler広がり?  ΔE = 40 eV ⇔ kTSi = 13 MeV     ⇒ 15000 km/s のshock speedが必要 cf. Ha measurement Vs = 2890 km/s (Ghavamian et al. 2002)

Mg-Si-S band プラズマ年齢の異なる 複数成分が寄与? ↓ net の異なる2成分で fit net1 ~ 1×1010 cm-3 s net2 ~ 1×109 cm-3 s c2/d.o.f. = 401/346 c2/d.o.f. = 848/351 Mg, Si, S は ejecta origin !

Narrow band fitting Narrow band fit のまとめ 重い元素 軽い元素 (O, Ne) (Fe) kTe = 0.6 keV net = 7×109 cm-3 s abundance は solar 程度  ⇒ ISM origin ? 軽い元素 (O, Ne) ISM×1成分 + Ejecta×2成分 ? 中間の元素 (Mg, Si, S) 他の2bandは結果だけ 中間の元素 (Mg, Si, S) kTe = 1 keV net1 = 1×1010 cm-3 s net2 = 1×109 cm-3 s Metal-rich ⇒ Ejecta origin 重い元素 (Fe) kTe = 3 keV, net = 1×109 cm-3 s Metal-rich ⇒ Ejecta origin

Broadband fitting Assumption 電離度の異なる(少なくとも)2成分の Ejecta net1 ~ 1×1010 cm-3 s (high-nt) ⇒ 進化の初期に加熱された net2 ~ 1×109 cm-3 s (low-nt) ⇒ 比較的最近加熱された成分 実際は ‥ 連続的に加熱 ⇒ 無数の net の積分 Type Ia SN ‥ 水素の外層を持たない  ⇒ Ejecta は重元素のみのプラズマ (without H and He)    ⇒ 元素間の輝線強度比から relative abundance を測定 O + Ne は ISM 起源  ⇒ kTe = 0.6 keV 程度、solar abundance のプラズマ1成分

> 4keVのcontinuumにexcess → non-thermalの寄与? Broadband fitting 輝線は3成分モデルで全て再現可 > 4keVのcontinuumにexcess → non-thermalの寄与?

Broadband fitting Continuum として power-law を与える 4成分で再現! c2/d.o.f. = 996/831 = 1.20 4成分で再現!

Discussion Relative Abundance Ejecta 1 Ejecta 2 net 大 = 古い net 小 = 若い 実線は Type Ia SN の deflagration model (Nomoto et al. 1984) ・ 古いプラズマには重い元素(Ca, Fe)が少ない ・ 新しいプラズマは deflagration model によく一致  ⇒ Fe の加熱が開始されたのは他の元素よりも遅い Reverse shock は 外から順に ejecta を加熱 Fe は SNR の内側に分布!

Discussion 層状分布を示唆 ⇒ 爆発時の放出速度の違い(理論)を支持 Iwamoto et al. 1999

Discussion Feは内部に多く分布? → Fe-Kは南部でのみ強い UV ‥ 中心付近にFeIIの存在 Fe K band Feは内部に多く分布? → Fe-Kは南部でのみ強い UV ‥ 中心付近にFeIIの存在 (Hamilton et al. 1997, Winkler et al. 2005) Si 冷たいFe 南側以外ではFeの電離(加熱)が  まだ始まっていないのでは? Fe reverse shock

Contents 超新星爆発 (主に Ia型超新星) 超新星残骸の進化 X線観測 Suzaku による SN1006 の観測結果と解釈 超新星の分類 白色矮星の進化(爆発に至るまで) 爆発時の元素合成 超新星残骸の進化 衝撃波加熱 (forward shock と reverse shock) X線観測 X線で何がわかる? 非平衡プラズマ Suzaku による SN1006 の観測結果と解釈 まとめ

Conclusion Type Ia SN は 白色矮星起源、Feなど重い元素を多量に生成する Suzakuは Type Ia SNR SN1006 から Feを含んだ低電離プラズマを発見 元素は層状分布 ⇒ 放出速度の違いを支持 若いSNR(少なくともIa)の Continuum はほとんど non-thermal origin では?

E0509-67.5 Tycho (大マゼラン銀河の Ia SNR) Yamaguchi PhD, in prep. ・ Fe は他より若い ・ continuum は non-thermal Tycho Tamagawa et al., submitted Suzaku/HXD が 40keV まで hard continuum を検出 ⇒ やはり non-thermal origin

Continuum は ISM origin だと考えられていた (Hwang et al. 1998) ↓ Tycho Continuum は ISM origin だと考えられていた (Hwang et al. 1998) ↓ 今までの論文は間違いが多いかもしれません。

ネタ提供のお願い 「この天体X線で見てくれへん?」とか、 「X線でこんなことわからへん?」とか。 AGN, Black hole, 銀河団、星、etc… テーマは問いません。よろしくお願いします。 長々とありがとうございました。

SN1006 の記録 一條院 寛弘三年 四月二日 葵酉 夜以降 騎官中 有大客星 如螢惑 光明動耀 連夜正見南方 或云 騎陣将軍星本体 増変光 Chandra image of SN1006 騎陣将軍星(おおかみ座κ)

衝撃波加熱 実験室系 Vs v1 = 0 v2 ISM側 SNR側 衝撃波静止系 Vs=0 vu = Vs vd ISM側 (上流) (下流) γ(比熱比) = 5/3 (non-relativistic) 衝撃波加熱

非平衡プラズマ Time scale (Masai 1984, Itoh 1984) Shock heating ‥ kTi = (3/16) miVs2  → 加熱直後は Tion >> Te    Coulomb collision により徐々に等温になる Typical young SNR : Vs = 3000 km s-1 → kTH ~ 20 keV cf. kTe = 1 - 4 keV (実測値) ⇒ young SNR は thermal non-equilibrium! net (ionization parameter) ‥ 電離度(プラズマの平衡度)の指標 Time scale (Masai 1984, Itoh 1984) 電子の平衡(Maxwellian) nete-e = 5×108 cm-3 s 電子-陽子間の熱平衡 nete-i = 3×1011 cm-3 s 電離平衡 netion = 1×1012 cm-3 s ⇒ 1 コ/cc なら 30000年で電離平衡

Results and Discussion (ISM) kTe = 0.51 keV, net = 5.8×109 cm-3s, nH = 0.13 cm-3 (Laming 2001) より、 kTH~15kTe far from equilibrium! Ferriere (2001) H2 HI HII SN1006 nISM = nH/4 = 0.03 cm-3 SN1006 : Z=550pc (D=2.2kpc; Winkler et al. 2003) 成長の遅さは低密なISMに起因