HOWPolの偏光キャリブレーションと GRB残光の可視偏光観測 2012/03/08 かなたミニWS HOWPolの偏光キャリブレーションと GRB残光の可視偏光観測 広島大学理学部 物理科学科 4年 高木 勝俊
GRB偏光観測の重要性 かなたを用いた観測研究の大きな目標 残光は時間のべき乗で減光 → 一刻も早い観測が必要 偏光=揃った磁場からの放射 HOWPolの偏光キャリブレーション GRB偏光観測の重要性 かなたを用いた観測研究の大きな目標 ガンマ線バースト(GRB)の初期残光の可視偏光データ取得 残光は時間のべき乗で減光 → 一刻も早い観測が必要 偏光=揃った磁場からの放射 → 磁場構造・周辺の幾何構造 (特にGRBの場合、初期宇宙論へ発展も) X線やガンマ線での観測は難しいので可視光での観測が重要
東広島天文台での観測体制 かなた望遠鏡 GRB自動観測モード 一露出型偏光撮像器HOWPol HOWPolの偏光キャリブレーション 口径1.5m、世界最高水準の機動性 大学が所有=豊富な観測時間 突発天体に特化した検出器 一露出型偏光撮像器HOWPol (Hiroshima One-shot Wide-field Polarimeter) 広い視野+1露出での偏光撮像が可能 時間変動に強いのでGRB観測に適している HOWPol GRB自動観測モード GRB観測専用衛星Swift-BATでGRBを 検出したとき、かなた望遠鏡で観測可能 ならば1分程度で自動的に偏光観測を開始 HONIR TRISPEC (2006年度上原卒業論文)
HOWPolの偏光キャリブレーション HOWPolでの偏光撮像 HOWPolでは直線偏光を検出する 通常とは違い、1回の露出でデータ取得可能 狭視野マスク 視野を絞る(スカイの切り分け) ダブルウォラストンプリズム 光を0度、45度、90度、135度の 直線偏光成分に分ける GRBモード マスクを使わない、band=R (位置誤差が大きいため)
HOWPolの偏光キャリブレーション 器械偏光と望遠鏡角度の関係 HOWPol・・・ナスミス焦点に設置 → 第3鏡での反射を経由 = 器械偏光が生じる キャリブレーションが必要! 器械偏光は望遠鏡の高度に依存することが分かっている
HOWPolの偏光キャリブレーション 調査内容・観測方法 第3鏡での反射が主要因の器械偏光のキャリブレーション ・光学的性質 波長依存性 ←先行研究でRバンドは既に調査済 視野内位置依存性 ・安定性 時角に対する安定性 ← 先行研究でモデル関数が確立 望遠鏡メンテ前後などの安定性 観測 無偏光標準星HD14069 V band ~ 9.0mag 観測期間 : 2011/11/16~2012/01/17
結果:波長依存性 狭視野偏光撮像モードでV,R,Iバンドを調査 偏光データをQU平面上にプロットすると データ点は円を描くことが期待される→ HOWPolの偏光キャリブレーション 結果:波長依存性 狭視野偏光撮像モードでV,R,Iバンドを調査 一露出型 半波長板回転型chip0 半波長板回転型chip1 V(550nm) 2.56 +- 0.24 2.74 +- 0.19 3.11 +- 0.14 R(650nm) 3.53 +- 0.29 3.65 +- 0.18 3.94 +- 0.17 I(800nm) 4.36 +- 0.20 4.27 +- 0.16 4.48 +- 0.15 Rバンドでは先行研究と一致 (2010年度小松修士論文) 偏光データをQU平面上にプロットすると データ点は円を描くことが期待される→ ストークスパラメータ 偏光を記述するためのパラメータ。 偏光度P、偏光方位角θとストークスパラメータQ、Uの関係は右図のとおり。
結果:時角依存性 モデル関数(先行研究から) HOWPolの偏光キャリブレーション 時角とは 観測地の子午線を通過してから経過した時間 つまり望遠鏡の角度に依存する モデル関数(先行研究から) パラメータ HA : 時角 Φ : 観測地の緯度 δ : 天体のDec モデル関数は時角さえ分かれば 任意の天体観測時の器械偏光が 導き出せるということを意味する 再現性は十分に確認された!
結果:視野内の位置依存性 マスクなし偏光撮像モードでRバンドを調査 視野中心からの器械偏光 南北方向:1.5%程度 東西方向:30%程度 HOWPolの偏光キャリブレーション 結果:視野内の位置依存性 マスクなし偏光撮像モードでRバンドを調査 (GRBモードと同じ) 視野中心からの器械偏光 南北方向:1.5%程度 東西方向:30%程度 東西方向はフラットの段差の影響?
GRBの一般モデル GRBとは・・・短時間に大量のガンマ線をジェット状に放出 γ線で明るく光った後、残光としてX線~電波までの放射が確認 発生機構は謎 大質量星の爆発に伴って起こる現象? 連星衝突に伴って起こる現象? 放射機構はプロンプト・残光ともにシンクロトロン放射が最有力 プロンプト放射 残 光
GRB111228Aの残光観測 観測中GRB111228Aの 残光偏光観測に成功! GRB残光の可視偏光観測 残光偏光観測に成功! BAT Trigger 15:44:43 UT RA = 10h 00’ 16.08 “ Dec = +18d 17’ 52.1” z = 0.714 ± 0.005 HOWPolでBAT alert後162~15000sで 全て一露出型で偏光観測を行った time マスク バンド 露出時間 162~5600 Imaging R 60,300 6600~11000 NFPol NONE 300 12000~15000
GRB111228A光度曲線・スペクトル 光度曲線 スペクトル・SED GRB残光の可視偏光観測 Steep、Shallow、Normalという 典型的なカーブを見せた Steep :0~411s α=5.500 Shallow:411~7355s α=0.298 Normal :7355~s α=1.214 かなたを含む可視光残光観測でbreakのある光度曲線を確認 スペクトル・SED 銀河による吸収量 + + + + X線と可視のデータの天の川銀河・母銀河 での吸収を補正したSED作成中… + + + + + + + + + + 可視 X線
偏光データ結果 偏光度の有意な時間変動なし! 器械偏光を直接求めて差し引いて偏光度を導き出した GRB残光の可視偏光観測 偏光度の時間変化 QU平面プロット 偏光度の有意な時間変動なし!
偏光モデル 時間によって主に3つのPhase GRB残光の可視偏光観測 時間 プロンプト 残光(before jet break) 残光(after jet break) 見ている場所 シェル シェル+星周り物質の一部 シェル+星周物質の全て Jet breakによってシェル全体が だんだん見えてくる(θ~1/Γ) 例えば一様磁場モデルの場合 偏光度は60%程度? 時間が経ったとき偏光度は大きくは変化しない 偏光方位角は変化する この他、一様トロイダル磁場モデル、 プラズマスケールランダム磁場モデル、 流体スケールランダム磁場モデル、 コンプトン散乱モデル、光球放射モデルなど勉強中…
まとめと今後 まとめと今後 HOWPolの偏光キャリブレーション ・波長依存性・・・V:2.8%、R:3.8%、I:4.4%程度の器械偏光 ・時角依存性・・・モデル曲線の再現性十分 ・視野内位置依存性・・・東西方向にフラットの影響大 GRB残光の可視偏光観測 ・可視偏光の時間変化を追うことに成功 ・偏光度は5~10%、有意な時間変動はない 今後 ・Swiftの解析方法を勉強中(上原さんから) ・X線と可視のデータを合わせた結果