神戸大大学院集中講義 銀河天文学:講義1 銀河を構成する星、星間物質(ガス、ダスト) 1. 太陽系から銀河系へ空間スケール 2

Slides:



Advertisements
Similar presentations
星間物理学 講義4資料: 星間ダストによる散乱・吸収と放射 1 星間ダストによる減光 ( 散乱・吸収 ) 過程、放射過程 のまとめ、およびダストに関わるいろいろ。 2011/11/09.
Advertisements

硬 X 線で探るブラックホールと銀河の進化 深沢泰司(広大理) 最近の観測により、ブラックホールの形成と 銀河の進化(星生成)が密接に関係することが わかってきた。 ブラックホール観測の最も効率の良い硬 X 線で 銀河の進化を探ることを考える。 宇宙を構成する基本要素である銀河が、いつ どのように形成され、進化してきたか、は、宇宙の.
COBE/DIRBE による近赤外線 宇宙背景放射の再測定 東京大学, JAXA/ISAS D1 佐野 圭 コービー ダービー.
口径合成によるメーザー源の 時間変動の観測 SKA に向けて 岐阜大学 高羽 浩. 東アジア VLBI 網の 22GHz 日本 野辺山 45m 、鹿島 34m 、 高萩、日立、つくば、山口 32m 、 VERA20m× 4 北大、岐阜大 11m 、水沢 10m 韓国 KVN20m× 3+測地 20m.
銀河物理学特論 I: 講義1:近傍宇宙の銀河の 統計的性質 遠方宇宙の銀河の理解のベースライン。 SDSS のデータベースによって近傍宇宙の 可視波長域での統計的性質の理解は飛躍的 に高精度になった。 2009/04/13.
オリオン星形成領域における 前主系列星の X 線放射の 長期的時間変動 京大理 ○ 兵藤 義明 中嶋 大 高木 慎一郎 小山 勝二 /23 天文学会 秋季年会 P39a もくじ  星の長期的変動  今回行った解析  まとめ.
第5回 分子雲から星・惑星系へ 平成24年度新潟大学理学部物理学科  集中講義 松原英雄(JAXA宇宙研)
かなた望遠鏡による NGC2264の可視赤外同時観測
星形成領域NGC2264における AA Tau 型星の可視赤外同時観測
星間物理学 講義3資料: 星間ガスの熱的安定性 星間ガスの力学的・熱的な不安定性についてまとめる。星形成や銀河形成を考える上での基礎。
半田利弘 鹿児島大学 大学院理工学研究科 物理・宇宙専攻
第9回 星間物質その2(星間塵) 東京大学教養学部前期課程 2012年冬学期 宇宙科学II 松原英雄(JAXA宇宙研)
星形成銀河の星間物質の電離状態 (Nakajima & Ouchi 2014, MNRAS accepted, arXiv: )
第6回 制動放射 東京大学教養学部前期課程 2012年冬学期 宇宙科学II 松原英雄(JAXA宇宙研)
第11回 星・惑星系の誕生の現場 東京大学教養学部前期課程 2012年冬学期 宇宙科学II 松原英雄(JAXA宇宙研)
晩期型星T-Lepに付随する 水メーザースポットを用いた年周視差測定 ~系内MIRA型変光星周期-絶対光度関係の測定に向けて~
プロポーザル準備/観測準備 ダストをたくさん持つ銀河 の赤外線分光観測の例 国立天文台 今西昌俊.
H2O+遠赤外線吸収 ラジオ波散乱 微細構造遷位 ラジオ波 赤外線 X-線 H3+ 赤外線吸収 γ-線 塵遠赤外発光 再結合線
AOによる 重力レンズクェーサー吸収線系の観測 濱野 哲史(東京大学) 共同研究者 小林尚人(東大)、近藤荘平(京産大)、他
「Constraining the neutron star equation of state using XMM-Newton」
電離領域の遠赤外輻射 (物理的取り扱い)      Hiroyuki Hirashita    (Nagoya University, Japan)
Damped Lya Clouds ダスト・水素分子
M33の巨大HII領域 NGC604における、GMCごとの物理状態の違い
宇宙物理II(9) Planetary Formation
銀河物理学特論 I: 講義1-1:近傍宇宙の銀河の 統計的性質 Kauffmann et al
パルサー星雲を伴うパルサーの 回転進化について 田中 周太 大阪大学 宇宙進化グループ D2 共同研究者 高原 文郎
銀河物理学特論 I: 講義1-2:銀河の輝線診断 Tremonti et al. 2004, ApJ, 613, 898
信川 正順、小山 勝二、劉 周強、 鶴 剛、松本 浩典 (京大理)
神戸大大学院集中講義 銀河天文学:講義6 特別編 観測装置の将来計画
Taurus-Auriga association
銀河物理学特論 I: 講義1-4:銀河の力学構造 銀河の速度構造、サイズ、明るさの間の関係。 Spiral – Tully-Fisher 関係 Elliptical – Fundamental Plane 2009/06/08.
近赤外線サーベイによるマゼラニックブリッジの 前主系列星探査
星間物理学 講義3資料: 星間ガスの力学的安定性 星間ガスの力学的な安定性・不安定性についてまとめる。星形成や銀河形成を考える上での基礎。
Fermi Bubble と銀河中心の巨大構造
銀河物理学特論 I: 講義3-4:銀河の化学進化 Erb et al. 2006, ApJ, 644, 813
SFN 282 No 担当 内山.
銀河物理学特論 I: 講義1-3:銀河性質と環境依存性 Park et al. 2007, ApJ, 658, 898
信川 正順、福岡 亮輔、 劉 周強、小山 勝二(京大理)
COSMOSプロジェクト: z ~ 1.2 における星生成の環境依存性 急激な変化が起こっていると考えられる z ~1 に着目し、
村岡和幸 (大阪府立大学) & ASTE 近傍銀河 プロジェクトチーム
銀河・銀河系天文学 星間物理学 鹿児島大学宇宙コース 祖父江義明 .
棒渦巻銀河の分子ガス観測 45m+干渉計の成果から 久野成夫(NRO).
星形成時間の観測的測定 東大天文センター M2 江草芙実 第4回 銀河shop 2004/10/19.
星間物理学 講義1: 銀河系の星間空間の世界 太陽系近傍から銀河系全体への概観 星間空間の構成要素
松原英雄、中川貴雄(ISAS/JAXA)、山田 亨、今西昌俊、児玉忠恭、中西康一郎(国立天文台) 他SPICAサイエンスワーキンググループ
鉄輝線で解明したSgr A* の活動性: 京都大学 小山勝二 ブラックホールSgrA*の時空構造を鉄輝線で解明する
星間物理学 講義2: 星間空間の物理状態 星間空間のガスの典型的パラメータ どうしてそうなっているのか
星間物理学 講義4資料: 星間ダストによる散乱・吸収と放射 2 銀河スケールのダスト、ダストの温度、PAH ほか
銀河物理学特論 I: 講義2-1:銀河中心の巨大ブラックホールと活動銀河中心核
塵に埋もれたAGN/銀河との相互作用 今西昌俊(国立天文台) Subaru AKARI Spitzer SPICA.
Diffuse Soft X-ray Skyの初期の観測
セイファート銀河中心核におけるAGNとスターバーストの結び付き
大井渚(総合研究大学院大学) 今西昌俊(国立天文台)
超高光度赤外線銀河(ULIRGs)中に埋もれたAGNの探査
宇宙の初期構造の起源と 銀河間物質の再イオン化
星間物理学 講義1の図など資料: 空間スケールを把握する。 太陽系近傍から 銀河系全体への概観、 観測事実に基づいて太陽系の周りの様子、銀河系全体の様子を概観する。それぞれの観測事実についての理解はこれ以降の講義で深める。 2010/10/05.
星間物理学 講義6資料: 衝撃波1 超新星残骸などに見られる衝撃波の物理過程について
第12回 銀河とその活動現象 東京大学教養学部前期課程 2017年度Aセメスター 宇宙科学II 松原英雄(JAXA宇宙研)
星間物理学 講義 3: 輝線放射過程 I 水素の光電離と再結合
銀河系とマゼラン雲に共通する ダストの遠赤外輻射特性
銀河系内・星形成・系外惑星 系内天体の観点から
スターバースト銀河NGC253の 電波スーパーバブルとX線放射の関係
ALMAへの期待 -埋れたAGNの探査から-
10/19 GMCゼミ.
COSMOS天域における赤方偏移0.24のHα輝線銀河の性質
星間物理学 講義7資料: 物質の輪廻と銀河の進化 銀河の化学進化についての定式化
形成期の楕円銀河 (サブミリ銀河) Arp220.
Z=0.24 の Hα輝線天体でみるSFR(UV), SFR(Hα), SFR(MIR) 相互の関係
教育学部 自然環境教育課程 天文ゼミ 菊池かおり
すざく衛星によるSgr B2 分子雲からのX線放射の 時間変動の観測
Presentation transcript:

神戸大大学院集中講義 銀河天文学:講義1 銀河を構成する星、星間物質(ガス、ダスト) 1. 太陽系から銀河系へ空間スケール 2 神戸大大学院集中講義 銀河天文学:講義1 銀河を構成する星、星間物質(ガス、ダスト) 1. 太陽系から銀河系へ空間スケール 2. 銀河を支配する時間スケール 3. 銀河を構成する要素 2010/09/13

空間スケールについて

太陽系近傍のダストの分布の様子 : Hipparcos 衛星の観測による年周視差で太陽からの距離のわかっている星(up to 200pc)について 赤化量を求めてそれぞれの方向についてダストの柱密度を推定する。ガス・ダスト比を用いてガスの柱密度へと焼きなおす。 Frisch et al. 2007, Space Sci Rev, 130, 355

太陽系近傍の中性ガス(T<1000K)の分布の様子 : Local bubble Hipparcos の観測による年周視差で太陽からの距離のわかっている星について NaI D-line (5890A) の吸収線の深さから中性ガスの柱密度を測定。太陽の周りのそれぞれの方向について中性ガスの分布を出す。 Sfeir et al. 1999, A&A, 346, 785

太陽系近傍の中性ガス(T<1000K)の分布の様子 : Local bubble 銀河面上の方向 銀河面に垂直の方向 Lallement et al. 2003, A&A, 411, 447 似たような仕事: Paresce 1984, AJ, 89, 1022 Vergely et al. 2001, A&A, 366, 1016

太陽系近傍の高温度ガスの分布の様子 : North Polar Spur ROSAT 衛星のソフトX線の全天マッピング観測によって得られた高温ガス(密度0.004個/cm3 温度10^6-7K と推定される)のマップ。 Snowden et al. 1995, ApJ, 454, 643 Snowden et al. 1997, ApJ, 485, 125

太陽系近傍の高温度ガスの分布の様子 : Local Bubble 0.13-0.188keV のソフトX線の全天マッピング観測によって得られた高温ガスマップ。高温ガスは一様な温度を持って分布している、強度は視線方向の深さによって決まる、と仮定して求めた。 Snowden et al. 1990, ApJ, 354, 211

太陽系近傍の高温度ガスの分布の様子 : North Polar Spur kT=0.3keV (T= 3e+6 K) のプラズマのスペクトルモデルでよく記述される。 Miller et al. 2008, PASJ, 60, S95

太陽系近傍の高温度ガスの分布の様子 : North Polar Spur 電波連続波観測から得られたシンクロトロン放射の分布 Haslam et al. 1982, A&AS, 47, 1 @408MHz Reich et al. 2001, A&A, 376, 861 @1420MHz

太陽系近傍の高温度ガスの分布の様子 : Local Bubble – North Polar Spur 隣のバブルにぶつかる境界が見えている? (銀河中心付近からのアウトフローを見ているという説もあり。)

太陽系近傍のHI ガスシェルの分布の様子 : Huthoff & Kaper 2002, A&A, 383, 999 ただし元のデータは Heiles 1979, 1984

広い視野の CO 分子輝線探査で明らかになった太陽系近傍の分子雲の分布。 太陽系近傍の分子ガスの分布の様子 : 広い視野の CO 分子輝線探査で明らかになった太陽系近傍の分子雲の分布。 Dane et al. 1987, ApJ, 322, 706

太陽系近傍の星、星形成領域、などなどまとめ 緑:分子雲 水色:個々の星 オレンジ:星団 赤:超新星残骸 http://galaxymap.org

太陽系近傍の星、星形成領域、などなどまとめ http://galaxymap.org

HI ガスの分布から見た銀河系の構造 Oort et al. 1958, MNRAS, 118, 379

HI ガスシェルの分布から見た銀河系の構造 McClure-Griffiths et al. 2002, ApJ, 578, 176

HII 領域の分布から見た銀河系の構造 星形成領域(HII領域, 分子雲)の分布、銀河回転を仮定して距離を推定している。星の明るさで距離を確認。方向と合わせて銀河系内での位置を推定した結果。 銀河系平面からずれている様子。= “ warp “ Russeil 2003, A&A, 397, 133 初期の仕事: Georgelin&Georgelin 1976, A&A, 49, 57 似たような仕事: Paladini et al. 2004, MNRAS, 347, 237 励起パラメータが大きい(=たくさんの若い星を持つ)領域を大きい印でプロットしてある。

HI ガスの分布から見た銀河系の構造

分子ガス(CO)の分布から見た銀河系の構造 Dane et al. 1987, ApJ, 322, 706

外から見た銀河で想像する:アンドロメダ銀河のガスの構造 Nieten et al. 2006, A&A, 453, 459

外から見た銀河で想像する:M33 の中の HII 領域、星形成領域、HI ガス Ha+GALEX Thilker et al. 2005 (ApJ, 619, L67) 右:HI(blue) + Ha(red) + optical (yellow)  左:HIガスの速度場

時間スケールについて

星の進化のタイムスケール 1: 原始星から主系列星へ。 星の進化のタイムスケール 1: 原始星から主系列星へ。 左)進化トラックと時間スケール ~ Kelvin-Helmholtz timescale 右)実際に観測されている原始星の分布 Palla & Stahler (1993) ApJ, 418, 414

星の進化のタイムスケール 2: 主系列星以降 Iben QJRAS (1985, 26, 1)

Schmidt 則 : 銀河のガス密度と星形成率密度の間の(経験)則 もともとは Schmidt (1959, ApJ, 129, 243) で銀河の中での単位体積あたりの星形成率は星間ガスの密度の n 乗に比例すると「仮定した」ことからはじまる。太陽系近傍の z 方向の若い星、ガス分布は n~2 を示唆していた。 観測的にはディスク銀河においてガス表面密度 (Msolar/pc2) と星形成率の表面密度 (Msolar/year/pc2) の間の関係が調べられた (新しくは Kennicutt 1998, ApJ, 498, 541 (n~1.4), Gao&Solomon 2004, Komugi et al. 2005, PASJ, 57, 733) Kennicutt 1998 (ApJ, 498, 541)

Schmidt 則 : 銀河のガス密度と星形成率密度の間の(経験)則 Komugi et al. 2005, PASJ, 57, 733

Schmidt 則 : 個別の銀河の中での分布の様子 : M51 の場合 Schuster et al. 2007, A&A, 461, 143

Schmidt 則 : 個別の銀河の中での分布の様子 M33 の場合 Molecular Total M33 の場合: Heyer et al. 2004 (ApJ, 602, 723) 12CO(1-0), Optical, HI21cm, IRAS60um, [0.0035, n=3.3] (M31 の場合:Tenjes&Haud 1991 (A&A, 251, 11) [0.1, n=1.30+-0.22])

銀河全体での星形成史 : 模式的に書いてみると 銀河全体での星形成史 : 模式的に書いてみると Kennicutt 1998 ARAA 36, 189

銀河を構成する要素

さまざまな波長で見た銀河 銀河の中にある星の分布 ~目で見えている銀河の「形」 銀河の中で星を盛んに作っている領域の分布  銀河の中にある星の分布 ~目で見えている銀河の「形」  銀河の中で星を盛んに作っている領域の分布   銀河の中のガスの分布 ~星を生み出す材料

銀河系内のガスの概観 Myers et al. 1978, ApJ, 225, 380

熱的安定性 : 星間ガス(電離していない場合)の冷却曲線 熱的安定性 : 星間ガス(電離していない場合)の冷却曲線 Dargarno&McCray 1972 (ARAA, 10, 375) Spitzer 1978 (“Physical Processes in the Interstellar Medium “)

熱的安定性 : HII 領域(電離している場合)の冷却曲線 5007,4959 3726,3729 6548,6583 88356,32550 2471 Spitzer 1978 (“Physical Processes in the Interstellar Medium “)

熱的安定性 : 冷却率と加熱率のつりあう点=平衡状態として存在できる 熱的安定性 : 冷却率と加熱率のつりあう点=平衡状態として存在できる 加熱率を10倍した場合 銀河系ディスク面での典型的圧力 銀河系ディスク面での典型的磁気圧 低温の 中性水素ガス 温度が <100K になると CII の冷却が効かなくなりそれ以上冷却できない。 高温の 中性水素ガス 密度が高くなると冷却が効いて不安定になる。 密度が薄いところではCII, OI の輝線の冷却は効かず Lya の冷却が効き始める 10^4 K まで加熱される。 Cox et al. 2005, ARAA, 43, 337

ダストによる減光 : 紫外線から可視域 ダストによる紫外線から可視域にかけての減光曲線。紫外線では 2175A のフィーチャーが特徴的。 このフィーチャーの起源については graphite が有力ではあるが異論もあり。 Draine&Lee 1984, ApJ, 285, 89

ダストによる減光 : 全体でみた場合、吸収と散乱の効果の比較 ダストによる減光 : 全体でみた場合、吸収と散乱の効果の比較 特に紫外線波長域と長波長側で吸収が顕著になる。 10um 付近で silicate の吸収が顕著になる。 AK/AV=0.15, A(10um)/AV=0.01、可視波長域で 1mag の減光に対して、近赤外線では 0.15mag、中間赤外線では 0.01mag の減光しかない。 Draine 2003, ARAA, 41, 241

環境によるダストの性質の違い : 銀河毎の違い 環境によるダストの性質の違い : 銀河毎の違い Galliano et al. 2005, A&A, 434, 867

ダストによる減光 : 赤外線波長域での吸収バンド ダストによる減光 : 赤外線波長域での吸収バンド 銀河系中心方向にある天体を観測して見られるダストによる赤外線での吸収フィーチャー、3.0um に H2O の吸収、9.7um、18um に Silicate (Si-O stretch, bending) の吸収が見られる。 Chiar et al. 2000, ApJ, 537, 749 Gibb et al. 2004, ApJS, 151, 35