グラフェン端における擬スピン反射の理論とラマン分光

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グラフェン端における擬スピン反射の理論とラマン分光 KEK研究会 11/27 グラフェン端における擬スピン反射の理論とラマン分光 K. Sasaki National Institute of Material Science Contributors T. Mori, K. Takai, S. Murakami, R. Saito, M.S. Dresselhaus T. Enoki, and K. Wakabayashi 物材研の佐々木と申します。このようなタイトルで発表します。エッジでは、バルクとは異なる物性が実現する可能性があります。例えば、エッジ状態のスピンが揃って、ジグザグ端の近くが磁石になると考えている人は多いです。私の話の主題は、エッジ状態そのものではなくて、ディラックコーンを形成している広がっている状態に対するグラフェン端の影響です。端では、一体何が起きているのか?電子が端に入射すると、端で反射されるわけですが、その反射がどのように特殊なのかを擬スピンの観点から説明することと、その特殊性を利用して、端がアームチェア端なのか?ジグザグ端なのか?それらの割合はどれくらいなのか?ということをラマン分光を用いて識別できるかどうか、ということを議論したいと思います。端での反射を議論するに際して強調しておきたいことが二つあります。 主題は、広がっている状態に対するグラフェン端の影響

谷内反射と谷間反射 谷間 谷内 ラマンDバンド 一つは、端での散乱が谷内なのか、谷間なのかという区別です。六角格子を縦にしてx、y座標をこのようにおくと、対応するブリリュアンゾーンは六角格子を90度傾けたこのようになります。横軸がx方向の波数kxです。ブリリュアンゾーンの角がK点とK‘点です。ジグザグ端があるとy方向の波数kyが反射で符号を変えることになります。例えば入射状態がK点近くの状態だったとするとkyが反転しますが、またK点の近くに戻ります。K’点でも同じですね。つまりジグザグ端での反射は谷内散乱ということになります。一方アームチェア端での反射ではkxが符号を変えることになります。この場合、K点近くにいた入射状態はK’点近くに散乱されることになります。つまり谷間散乱です。この谷内、谷間の散乱の違いはラマンDバンドに関して古くから認識されていたことですので、そんなことなら知っているよ、という方も多いかもしれません。 谷間 谷内 ラマンDバンド

端での擬スピン反射 ラマンGバンド 谷内反射 擬スピンが反射 谷間反射 擬スピンはそのまま ky kx 端での電子の反射を特徴づけるもう一つの物理量は、擬スピンとよばれる量です。擬スピンに関しては後で詳しく説明しますが、電子状態は波数kの他にスピンに似た擬スピンを量子数として持っています。ここでは、擬スピンを太い矢印で表しました。小さい矢印は波数の方向です。結果を先に言いますと、ジグザグ端では擬スピンの反射が同時に起こります。正確にはジグザグ端に垂直な方向の擬スピンの成分が反転します。一方アームチェア端での電子の反射では、擬スピンの方向は変わりません。もう少し説明を加えると、広がった状態の擬スピンはkxky平面内の成分しか持たず、z成分はゼロです。エッジ状態は特殊で、擬スピンはz方向を向いていまして、kxky平面内の成分を持ちません、こんな感じです。ジグザグ端とアームチェア端でのこの散乱の違いがラマンGバンドに現れうるということと、その違いを用いて逆に、Gバンドを調べることで端の方向がわかるかもしれない、というのが私の話の内容です。 谷間反射 擬スピンはそのまま ラマンGバンド

real spin スピンと擬スピン 擬スピンを議論するためには、実スピンの知識は欠かせませんので、まずそれから説明させてください。上スピンと下スピンというのが有りまして、波動関数はこのような二成分で表すことができます。一般のスピン状態は、それらの足し算で表すことができます。上スピンと下スピンの位相差がある場合を考えましょう。この場合のスピンの方向はパウリ行列の期待値で与えられます。実際に計算してみますと、このようになります。

ジグザグ端での擬スピン反射 定在波

アームチェア端での擬スピン反射

端での擬スピン反射 K,K’でキャンセル 谷間反射 擬スピンはそのまま 谷内反射 擬スピンが反射 端での電子の反射を特徴づけるもう一つの物理量は、擬スピンとよばれる量です。擬スピンに関しては後で詳しく説明しますが、電子状態は波数kの他にスピンに似た擬スピンを量子数として持っています。ここでは、擬スピンを太い矢印で表しました。小さい矢印は波数の方向です。結果を先に言いますと、ジグザグ端では擬スピンの反射が同時に起こります。正確にはジグザグ端に垂直な方向の擬スピンの成分が反転します。一方アームチェア端での電子の反射では、擬スピンの方向は変わりません。もう少し説明を加えると、広がった状態の擬スピンはkxky平面内の成分しか持たず、z成分はゼロです。エッジ状態は特殊で、擬スピンはz方向を向いていまして、kxky平面内の成分を持ちません、こんな感じです。ジグザグ端とアームチェア端でのこの散乱の違いがラマンGバンドに現れうるということと、その違いを用いて逆に、Gバンドを調べることで端の方向がわかるかもしれない、というのが私の話の内容です。 K,K’でキャンセル

二つのゲージ場 1600cm-1 = 0.2eV 電子*光 相互作用 時間反転対称性を破る 電子*格子 相互作用 時間反転対称性を保つ Yu et al., J. Phys. Chem. B105 (2001) 1600cm-1 = 0.2eV ラマン分光では試料に光を当てて、出てきた散乱光の強度をプロットします。縦軸の強度は入射光と散乱光のエネルギーの差の関数としてプロットします。強度には特定のエネルギーのところにピークが現れますが、これは光によってたたき上げられた電子が、電子格子相互作用によりフォノンを放出して、散乱光を出すプロセスによるものです。エネルギー保存則によりピークの位置がフォオンのエネルギーに対応します。 電子*光 相互作用 時間反転対称性を破る 電子*格子 相互作用 時間反転対称性を保つ

レーザー光の偏光依存性 Electron-hole symmetry ちなみに電子と電磁場との相互作用はK、K’に関わらずpをp-eAとすることで得られます。AqとAとの符号の差は時間反転対称性に関係しておりまして電磁場は時間反転対称性を破りますが、電子格子相互作用は時間反転対称性を破りません。 Electron-hole symmetry

レーザー光の偏光依存性 ちなみに電子と電磁場との相互作用はK、K’に関わらずpをp-eAとすることで得られます。AqとAとの符号の差は時間反転対称性に関係しておりまして電磁場は時間反転対称性を破りますが、電子格子相互作用は時間反転対称性を破らないということと関係しています。

まとめ 谷間散乱 擬スピンはそのまま 谷内散乱 擬スピンが反射 K. Sasaki et al., arXiv:0911:1593 定常波の擬スピン 擬スピンの干渉効果 谷内散乱 擬スピンが反射 有効質量理論を用いてジグザグ端、アームチェア端におけるGバンド、LOTOモードのラマン強度、KAを調べました。結果はこの表のようになります。RIやKAに関係する電子格子相互作用の行列要素は、擬スピンを計算することで得られます。重要なのはジグザグ端やアームチェア端での擬スピンです。ジグザグ端では谷内散乱で擬スピンy成分がフリップします。これがここが×になっている理由です。一方アームチェア端では谷間散乱で擬スピンは変化しませんが、K点K’点での干渉がありまして、この結果になります。実験で見えているダウンシフトがKAによるものならば、KAはLOにしか起こらないので、これがLOであることがわかります。LOモードはアームチェアの近くでラマン強度がありますので、結局下のエッジがアームチェア端であると考える事ができます。 K. Sasaki et al., arXiv:0911:1593 K. Sasaki et al., PRB 80, 155450 (2009) Cancado et al., PRL 93, 47403 (2004)

フォノン自己エネルギー(コーンアノマリー) 電子格子相互作用による 量子力学的な補正 WALTER KOHN 1923 – LOだけが強い補正を受ける 二つのピーク NTでは知られていることですが、LOTOの縮退は電子格子相互作用で解ける場合があります。コーンアノマリーといわれる現象がありまして、フォノンは電子格子相互作用により、仮想状態として電子ホール対になることができまして、フォノンのエネルギーに補正が生じます。補正項は常に負の量で、大きさはフォノンが電子ホールになる確率振幅に依存します。結果を先に言いますと、ジグザグエッジでもアームチェアエッジでも、LOだけが強いコーンアノマリーを被りまして、LOのエネルギーはTOのエネルギーよりも小さくなります。従ってGバンドのピークはシングルピークではなく、LOとTOに対応した二つのサブピークの和で与えられます。こんな感じです。注意していただきたいのはKAはピークの現れる位置を決めるだけで、ピークの高さ、つまりラマン強度を決めるのは別のプロセスです。KAはconductionとvalenceバンドの波動関数で電子格子相互作用を挟んだものが関係しますが、ラマン強度を決めるのはconductionとconductionバンドの波動関数で電子格子相互作用を挟んだ行列要素です。 計算では、エネルギー差は 20〜50cm-1程度 Dubay et al., Phys. Rev. Lett. 88, 235506 (2002) Ishikawa et al., JPSJ 75, 084713 (2006) Piscanec et al. Nature Materials 6, 198 (2007) Ando, JPSJ 77, 014707 (2008) Sasaki et al., Phys. Rev. B. 77, 245441 (2008)

ラマン強度とフォノン自己エネルギー(理論結果) Edge Orientation Phonon Mode Raman Intensity Kohn Anomaly Zigzag LO × ○ TO Armchair LO LO ×は対応するel-ph相互作用の行列要素が0になることを意味する ジグザグ端 アームチェア端 ラマン強度とコーンアノマリーに関係する電子格子相互作用の行列要素を計算してこの表の結果を得ました。先ほど申しましたようにLOはエッジの形状に関わらずKAを被りまして、エネルギーがTOより小さくなります。ラマン強度で○はラマン強度が強いこと、×は無視できることを意味しています。ジグザグ端の近くではTOのラマン強度がつよくLOのラマン強度は無視できます。したがってGバンドはこのようにTOのみにピークをもちます。一方、アームチャア端の近くではLOが強いラマン強度をもちますのでピークは下側にでることになります。この結果を用いると先ほどの実験結果を次のように考える事ができます。まず、観測されているダウンシフトがコーンアノマリーによるものと考えましょう。その場合、KAはLOにしか起こらないので、このピークがLOによるもとと考える事ができます。さらにLOモードが強度をもつのはアームチェア端近くなので、結局下のエッジはアームチェア端であると結論できます。

擬スピンとラマンGバンド 谷間反射 擬スピンはそのまま 谷内反射 擬スピンが反射 これらの関係を説明する Edge Orientation この表の結果は、先ほどの擬スピンの反射と密接に関係しているのですが、それをみるためにはまず電子格子相互作用がどのようになっているのかを知る必要があります。 Edge Orientation Phonon Mode Raman Intensity Kohn Anomaly Zigzag LO × ○ TO Armchair

電子格子相互作用 Kane and Mele., Phys. Rev. Lett. 78, 1932 (1997) 電子格子相互作用は炭素原子の振動によって生じる飛び移り積分の変化と考えることができます。ボンドの方向が3つありますので、dG-aで表します。dGは原子間距離の変化に比例します。ジグザグ端のLOモードは1軸に関して距離の変化はなくdG_01はゼロになります。2軸と3軸の距離の変化は反対ですので、この関係が成り立ちます。天下り的ですが、dGからこのようにして定義される次のベクトルAqを考えます。格子の変形があるとワイル方程式が、このように変化することを示すことができます。飛び移り積分の変化がないときはAqはゼロで、通常よく知られた質量ゼロのディラック方程式になりまして、そのエネルギー分散関係はK点とK‘点でのディラックコーンになります。電子格子相互作用はK点に関して運動量演算子pをp+Aとして、K’点に関してpをp-Aにすることで得られます。 Kane and Mele., Phys. Rev. Lett. 78, 1932 (1997) Sasaki et al., Prog. Theor. Phys. 113, 463 (2005) Katsunelson and Geim, Phil. Trans. R. Soc. A 366, 195 (2008)

振動方向とゲージ場の向きは直交 このベクトルはLOモードに対してy成分しか持ちません。TOモードに対して同様の計算をすると今度はx成分しか持たない事が分かります。炭素原子の振動の方向とベクトルAqの方向が垂直になっていることに注目してください。

電子格子相互作用の行列要素 LOのコーンアノマリー LOのラマン強度 Ishikawa et al., JPSJ 75, 084713 (2006) 示しましたようにLOモードはエッジに関して垂直なy成分ですので、LOの電子格子相互作用の部分はこのようにsigma_yで与えられます。TOはエッジに平行でしたのでこのようにsigma_xになります。ジグザグ端では、K点の電子はK点に反射されるので、K点のみを考えれば十分です。要するにsigma_xやsigma_yの期待値がラマン強度に関係する行列要素になります。 LOのコーンアノマリー LOのラマン強度

定在波の電子格子相互作用行列要素 定在波 LOモードのラマン強度 キャンセル LOモードのラマン強度は期待できない さて、ジグザグ端近くでの波動関数は波数kの状態とk’の状態の作る定在波になります。この定在波に対してσ行列の期待値を計算する必要があります。LOモードの電子格子相互作用はsigma_yに比例していますが、擬スピンのy成分が端での散乱で方向をかえますので結局キャンセルして0になることがわかります。これがLOのラマン強度が無視できる理由です。TOモードは擬スピンのx成分ですが、x成分はkとk’で同じですので行列要素はゼロになりません。 LOモードのラマン強度 キャンセル LOモードのラマン強度は期待できない

ジグザグ端 LOモードのKA TOモードのラマン強度 Edge Orientation Phonon Mode 一方コーンアノマリーはどうかというとvalenceからconductionへの行列要素でした。実はvalenceバンドの波動関数はconductionバンドの波動関数にsigma_zをかけることで得られます。例えばLOの場合、KAに関係する行列要素は、このように与えられますが、sigma_yとsigma_zをかけるとsigma_xになるので、擬スピンのx成分が関係します。TOも同様にやるとsigma_yになるので、擬スピンの反射よりゼロになります。KAはRIと逆の振る舞いになることに注意してください。 Edge Orientation Phonon Mode Raman Intensity Kohn Anomaly Zigzag LO × ○ TO TOモードのKA

アームチェア端 アームチェア端の場合のベクトルAqはLOTOでこのようになります。対応する電子格子相互作用はこのようになります。運動量保存則により波数のx成分が反転しますので、今度はsigma_xがフリップすると思われるかも知れませんが、そうはなりません。アームチェア端での反射はintervalley反射でK点の電子状態はK’点に反射されます。これはジグザグ端での反射がintravalley散乱であることと異なるところです。しかも、擬スピンはアームチェア端での散乱で方向をかえません。従ってsigma_x,sigma_yの期待値がゼロになることはありませんが、KとK’で同じになるので、この負の符号がキャンセルを出してTOのラマン強度がゼロになります。このキャンセルはKAに対しても同様に効きましてTOにはKAが効きません。

アームチェア端での電子格子相互作用行列要素 Edge Orientation Phonon Mode Raman Intensity Kohn Anomaly Armchair LO ○ TO ×

まとめ arXiv:0910:???? arXiv:0907:2475 谷間散乱 擬スピンはそのまま 谷内散乱 擬スピンが反射 有効質量理論 Edge Orientation Phonon Mode Raman Intensity Kohn Anomaly Laser Polarization Zigzag LO × ○ TO Armchair Simple TBモデル arXiv:0907:2475 谷間散乱 擬スピンはそのまま 有効質量理論を用いてジグザグ端、アームチェア端におけるGバンド、LOTOモードのラマン強度、KAを調べました。結果はこの表のようになります。RIやKAに関係する電子格子相互作用の行列要素は、擬スピンを計算することで得られます。重要なのはジグザグ端やアームチェア端での擬スピンです。ジグザグ端では谷内散乱で擬スピンy成分がフリップします。これがここが×になっている理由です。一方アームチェア端では谷間散乱で擬スピンは変化しませんが、K点K’点での干渉がありまして、この結果になります。実験で見えているダウンシフトがKAによるものならば、KAはLOにしか起こらないので、これがLOであることがわかります。LOモードはアームチェアの近くでラマン強度がありますので、結局下のエッジがアームチェア端であると考える事ができます。 谷内散乱 擬スピンが反射

擬スピン 端の存在をひとまず忘れるとエネルギー固有状態は波数kで指定されます。固有状態の波動関数は平面波とブロッホ関数の積で与えられますが、ブロッホ関数はA原子とB原子の波動関数に相対位相がありまして、波数kとkxとのなす角度θをもちいてこのように書き表すことができます。この固有状態でσ行列の期待値を計算すると、このようになります。このσ行列の期待値は擬スピンと呼ばれますが、擬スピンの方向は波数kの方向を向いていることに注目してください。

コーンアノマリー Farhat et al., PRL 99, 145506 (2007)

Similarities between Spin & Pseudospin a minus sign under 2π rotation real spin pseudo spin Bloch states Berry’s phase

後方散乱の消失 Ando et al., JPSJ67, 2857(98) Ando et al., JPSJ67, 1704(98)

Kosynkin et al., Nature 458, 872 (2009) MnO4- 過マンガン酸塩 グラフェンエッジ ご存知のように、グラフェンエッジへの関心が、世界的にも高まっています。超一流といわれる雑誌に次々とグラフェンエッジに関する研究成果が報告されています。例えば、ライス大学の化学のグループはナノチューブを切り開いて、エッジをつくるための化学反応を報告しています。こちらは多層ナノチューブのTEM像ですが、ある条件下での化学反応の後にグラフェンシートになっているのが観測されています。彼らは過マンガン酸塩が一部のボンドを裁断し、その裁断が連鎖的に続くことでナノチューブが切り開かれると考えています。また、スタンホード大学の実験グループはナノチューブを切り開くのに、プラズマエッチングが有効であると報告しています。 Kosynkin et al., Nature 458, 872 (2009) Jiao et al., Nature 458, 877 (2009)

アームチェア端とジグザグ端 Kobayashi et al. PRB 71, 193406 (05) Niimi et al. ASS 241, 43 (05) Klusek et al., Appl. Surf. Sci. 161 (2000) エッジをつくるモチベーションは何でしょうか?エッジ状態は、確かに興味深いの対象の一つです。エッジ状態のもつ、端での局所状態密度は磁性などの多体効果を出現させる可能性があります。エッジ状態に由来すると考えられる局所状態密度はHOPGでのSTSの実験で観測されています。STSの針をステップ端からの距離を変えて調べるとジグザグエッジに近いところで、局所状態密度の増加が観測されています。針を端から遠ざけると状態密度のコブの高さが低くなってゆきます。またこのコブ構造はアームチェア端近くでは観測されません。これらの特徴はエッジ状態の特徴と対応します。次の問題はエッジのより詳細な物性を調べることでしょうか?アームチェアエッジはエッジ状態がないですが、若林先生の話にもありましたが、特異な輸送現象も期待できて興味深いです。最近では、単層グラフェンでのジグザグやアームチェアの格子構造がTEMを用いて同定できるようになってきています、近い将来エッジ状態の磁性などが実験的に検証されるのではないか、と思います。ところで、ジグザグ端やアームチェア端の影響はエッジ状態に限らず、ディラックコーンを形成する広がった状態にはでないのでしょうか?答えはイエスで、そのような影響を二つ示したいと思います。 STM images of atomic hydrogen etched pit Girit et al., Science 323 1705 (2009)