ユースケース オブジェクト指向の要求分析のためのモデル。 スウェーデンのイヴァー・ヤコブソンが1990年代前半に開発。 現在、UMLの標準モデルの1つになっている。 システムの要件を外部環境との相互作用に着目して明確化。 ユースケースとは、システムを外部から利用(use)する事例パターン(case)という意味。 ユースケースは、システムが外部環境と相互作用した結果生じる一連のアクティビティを示す。 相互作用とは、一方のリクエストに対して、他方がレスポンスすること。 システム リクエスト 取引先 顧客 リクエスト レスポンス レスポンス リクエスト 他システム レスポンス
ユースケース図 アクター ユースケース 関係 対象システムに直接関わる人やシステムを役割として表わす。 主アクター:対象システムに対する要求をもった人やシステム。 支援アクター:対象システムからの要求に応じる人やシステム。 ユースケース 主アクターの要求を達成する処理。 支援アクターを使って自ら(システム)の要求を達成する処理。 関係 相互作用:アクターとユースケースの間の相互作用。 包含:複数のユースケースが、1つの共通的なユースケースの機能を含む。 拡張:あるユースケースが別のユースケースの機能を拡張したものである。 汎化:類似した機能のユースケースを抽象的なユースケースにまとめる。
ユースケース図 交信X ユースケース1 交信Y ユースケース2 アクターA ユースケース3 交信Z アクターB ビジネスシステム
ユースケースのシナリオ ■基本パス ■拡張パス ■事前条件 ■事後条件 単純な正しいパス(ハッピーパス)、すなわち、間違いや失敗がなく、最も一般的な流れを示す。 ■拡張パス どちらかというと一般的でないパス(選択肢)、または、間違いがあったときに発生するパス(エラー処理)。 ■事前条件 ユースケースを開始するために準備すべきこと。 ■事後条件 ユースケースが正常終了した後に満足されている条件。
オンラインショッピングのユースケース図 商品を選ぶ <<extend>> 顧客 期間限定の商品を注文する 汎化 <<include>> 配送業者 <<include>> ユーザ認証を行なう 商品の状況を確認する 会員 決済する 汎化 オンライン決済する クレジット決済する ネット銀行 クレジット会社 オンラインショッピングシステム
「商品注文」ユースケースのシナリオ ■ユースケース名:顧客からの注文を受け付ける ■要約:顧客から注文を受け、商品を調達して、顧客の元に配送する。 ■基本パス: 顧客から注文を受ける。 商品の在庫を調べ予約する。 顧客に商品の納期と価格を回答する。 配送業者に商品の発送を依頼する。 ■拡張パス: 2a. 商品の在庫がない: 2a1. メーカに商品を発注し、納期を確認する。 3a. 顧客が注文をキャンセルする: 3a1. 注文のキャンセルを記録し、商品の予約を解除する。 ■トリガー:顧客が注文を提示する。 ■事前条件:商品の注文受付準備ができている。 ■事後条件:注文された商品を配送業者に依頼済み。
ユースケースの作成手順 アクターを識別する。 ユースケースを識別する。 ユースケースのシナリオを記述する。 開発対象とするシステムを定義し、それと相互作用(要求と)する外部環境をリストアップ。 システムに処理を要求する主アクターをシステムの左に配置。 システムから処理を要求される支援アクターをシステムの右に配置。 ユースケースを識別する。 主アクターとシステムの相互作用に対応したユースケースを設定。 支援アクターとシステムの相互作用に対応したユースケースを設定。 相互作用を見つけるには「業務イベントモデル」が有効。 ユースケースのシナリオを記述する。 各ユースケースの処理手順を記述(10ステップ以内が適当)。 何も失敗がなくうまくいく状況を仮定して、基本パスを記述。 条件分岐や例外処理として、拡張パスを記述。
業務イベントモデル 依頼者 実行者 ①準備 ②交渉 ④合意 ③実行 要求 代案提示 満足 同意 受入拒否 完了報告 依頼者が実行者に 業務を提示する ②交渉 依頼者と実行者が 実行条件に同意する 代案提示 依頼者 実行者 満足 同意 受入拒否 ④合意 依頼者が業務の成果を受入れ評価する ③実行 実行者が業務を実行し 完了を通知する 完了報告 : 状態 : 業務イベント
オンラインショップの業務イベントモデル ①準備 ②交渉 ④合意 ③実行 HPアクセス 商品の選択 商品の注文受付 商品の再選択 満足 注文確定 ④合意 ③実行 返品 商品の受注処理 注文状況の確認 決済 発送 : 状態 : 業務イベント
ユースケースの演習問題 [問題1] ATMで現金を引き出すときのユースケースを書きなさい。 ユースケース図の作成 ユースケースの作成 アクターを洗い出し、対象システムの範囲を確定せよ。 ATMとアクターとの相互作用を全て挙げよ。 ユースケースの作成 最も重要と思われるユースケースを選び、基本パスを書け。 拡張パスを追加せよ。
ユースケースの演習問題 [問題2] インターネット入試募集要項を読み、次の1~4の手順に従ってインターネット入試をサポートする情報システムのユースケースを作成せよ。 アクターを全て洗い出せ。 アクターとシステムの相互作用をリストアップせよ。 ユースケース図を作成せよ。 ユースケース図の中から最も重要と思うユースケースを1つ選んで、その具体的な実行手順をかけ。