生物科学科(高分子機能学) 生体高分子解析学講座(第3) スタッフ 教授 新田勝利 助教授 出村誠 助手 相沢智康

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ウイロイド (Viroid) は塩基数が 200 ~ 400 程度と短い環状の一本鎖 RNA のみで構成 され、維管束植物に対して感染性を持つもの。分子内で塩基対を形成し、多くは 生体内で棒状の構造をとると考えられる。 ウイルスは蛋白質でできた殻で覆われているがウイロイドにはそれがなく、また プラスミドのようにそのゲノム上にタンパク質をコードすることもない。複製は.
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第 2 章 : DNA 研究法 2.2DNA クローニング クローニングベクター 大腸菌以外のベクター ゲノム分子生物学 年 5 月 7 日 担当 : 中東.
日本バイオインフォマティクス学会 バイオインフォマティクス カリキュラム中間報告
序 論 生化学とは 生化学はbiochemistryという名で表したように簡単にいえば生命の化学である。ギリシャ語ではbiosは生命という意味である。つまり生化学は化学的理論と技術および物理学、免疫学の原理と方法を応用し、生体における化学構成と化学的変化を研究する学問である。
生物学 第6回 転写と翻訳 和田 勝.
RNA i (RNA interference).
遺伝子発現 B4ゼミ発表 酒井大輔 2004年 5月10日.
特論B 細胞の生物学 第2回 転写 和田 勝 東京医科歯科大学教養部.
生物学基礎 第4回 細胞の構造と機能と      細胞を構成する分子  和田 勝 東京医科歯科大学教養部.
動物への遺伝子導入 hGH 遺伝子 右:ひと成長ホルモン遺伝子を 導入したラット 左:対照ラット
特論B 細胞の生物学 第3回 タンパク質の形と働き 和田 勝 東京医科歯科大学教養部.
細胞と多様性の 生物学 第4回 細胞におけるエネルギー産生 と化学反応のネットワーク 和田 勝 東京医科歯科大学教養部.
細胞と多様性の 生物学 第3回 転写と翻訳 和田 勝 東京医科歯科大学教養部.
5/21~6/11 担当講師 柘植謙爾(つげ けんじ) (6)第4章 ゲノム配列の解析
奈良女子大集中講義 バイオインフォマティクス (1) 分子生物学概観
COMPASS実験の紹介 〜回転の起源は?〜 山形大学 堂下典弘 1996年 COMPASS実験グループを立ち上げ 1997年 実験承認
緩衝作用.
3)たんぱく質中に存在するアミノ酸のほとんどが(L-α-アミノ酸)である。
コアB-1 個体の構成と機能(5)生体物質の代謝
分子医学の急進展:遺伝子を中心として.
臨床診断総論 画像診断(3) 磁気共鳴画像 Magnetic Resonance Imaging: MRI その1
セントラルドグマ 遺伝情報の流れ DNA→RNA→蛋白質→代謝などの生命活動 DNA→遺伝情報を記録した「設計図」 全部の「設計図」→ゲノム
F)無節操的飛躍と基礎科学(20世紀~) 1.原子の成り立ち:レントゲン、ベックレル、キューリ(1911) 、ラザォード、モーズリー、ユーリー(重水素、 1934)、キューリ(1935)、チャドウィック(中性子1935)、ハーン、シーボーグ 2.量子力学 :プランク(1918), アインシュタイン(1921)、ボーア(1922)、ドブローイ(1929)、ハイゼンベルグ(1932)、ゾンマーフェルト、シュレーディンガー(1933)、ディラック(1933)、ハイトラー、ロンドン、パウリ(1945)、ボルン(1
生物学 第10回 突然変異、ちょっと詳しく 和田 勝.
2016年度 植物バイオサイエンス情報処理演習 第7回 情報解析(1) 配列相同性解析・1
生物科学科(高分子機能学) 生体高分子解析学講座(第3) スタッフ 教授 新田勝利 助教授 出村誠 助手 相沢智康
翻訳 5’ → 3’ の方向 リボソーム上で行われる リボソームは蛋白質とrRNAの複合体 遺伝情報=アミノ酸配列
疾患遺伝子:病気は遺伝によって決まるのか
NMR(核磁気共鳴分光法)を利用した有機化合物の構造決定と定量
メンデルの分離の法則 雑種第1世代どうしを交配すると草丈の高いものが787個体、草丈の低いものが277個体であった。
生物学基礎 第5回 遺伝子の本体を求めて  和田 勝 東京医科歯科大学教養部.
Deep Learningを用いたタンパク質のコンタクト残基予測
膜タンパク質の 立体構造予測.
奈良女子大集中講義 バイオインフォマティクス (9) 相互作用推定
SVMを用いた生体分子への 金属結合部位予測手法の提案
第19回 HiHA Seminar Hiroshima Research Center for Healthy Aging (HiHA)
旭川医科大学教育研究推進センター 阿久津 弘明 化学 中村 正雄、津村 直美
神奈川科学技術アカデミー バイオインフォマティクスコース 蛋白質立体構造予測 I,II,演習
荏原病院放射線科・総合脳卒中センター 井田正博
2017年度 植物バイオサイエンス情報処理演習 第5回 公共データバンクの遺伝子情報
2018年度 植物バイオサイエンス情報処理演習 第5回 公共データバンクの遺伝子情報
2017年度 植物バイオサイエンス情報処理演習 第1回 情報検索(1) ビッグデータを眺める
産学連携BICSシンポジウム シリーズ3回 (日本化学会春期年会 平成18年3月28日)
Keigo Gohda / CAMM-Kansai
参考書 MOLECULAR BIOLOGY OF THE CELL 邦訳 細胞の分子生物学            B.Albertほか    
Chemistry and Biotechnology
イントロ DNA配列 意味. イントロ DNA配列 意味 3 DNA配列は化学的配列空間 を占める 4.
生物学 第6回 遺伝子はDNAという分子だった 和田 勝.
烏骨鶏のミトコンドリア 全長塩基配列について
質量分析の概要 対応ページ:p1~13 担当:伊藤.
遺伝子の解析 第1弾 DNAについて&PCR法
Central Dogma Epigenetics
2008年ノーベル化学賞について.
生命科学基礎C 第1回 ホルモンと受容体 和田 勝 東京医科歯科大学教養部.
膜タンパク質のインフォマテイクス 必要とされている課題.
生体親和性発光ナノ粒子の医薬送達担体への応用
「骨粗鬆症や癌を予防するビタミンDの作用メカニズム 」
植物系統分類学・第14回 分子系統学の基礎と実践
サポートベクターマシンを用いた タンパク質スレッディングの ためのスコア関数の学習 情報科学科4年 81025G 蓬来祐一郎.
遺伝性疾患・先天性疾患  染色体・遺伝子の異常とその分類  遺伝性疾患  先天性疾患.
タンパク質.
Department of Neurogenomics
遺伝的交叉を用いた 並列シミュレーテッドアニーリングによる タンパク質立体構造予測
11月21日 クローン 母性遺伝.
MD計算による血小板細胞膜蛋白とリガンド結合の立体構造および結合の力学特性の解明(loss of function 型変異体に関して)
化学1 第11回講義 ・吸光度、ランベルト-ベールの法則 ・振動スペクトル ・核磁気共鳴スペクトル.
遺伝統計学 集中講義 (6) 終わりに.
集中講義(東京大学)「化学システム工学特論第3」 バイオインフォマティクス的手法による化合物の性質予測(1) バイオインフォマティクス概観
2018年度 植物バイオサイエンス情報処理演習 第9回 公共データバンクの代謝パスウェイ情報
分子生物情報学(0) バイオインフォマティクス
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生物科学科(高分子機能学) 生体高分子解析学講座(第3) スタッフ 教授 新田勝利 助教授 出村誠 助手 相沢智康 http://altair.sci.hokudai.ac.jp/ 生物科学科(高分子機能学) 生体高分子解析学講座(第3) スタッフ 教授 新田勝利 助教授 出村誠 助手 相沢智康

タンパク質工学:キーワード タンパク質工学の利用分野 タンパク質工学とは ゲノム・遺伝子・タンパク質 DNA分子の塩基配列とアミノ酸配列  学術、工学、農学、医薬 タンパク質工学とは  遺伝子組換え技術、遺伝子化学合成技術、新しいタンパク質の人工合成 ゲノム・遺伝子・タンパク質  ゲノム遺伝子>遺伝子 DNA分子の塩基配列とアミノ酸配列  コドン、アミノ酸の一次配列 タンパク質分子とアミノ酸配列  ペプチド結合、ヘリックス、シート 立体構造解析と NMR  ノーベル化学賞 K.Wüthrich

タンパク質工学の利用分野  学術 工学 農学 医・薬

Protein Engineering タンパク質工学の利用分野 学術:タンパク質の立体構造、生物進化 工学:安定化酵素、ナノテクノロジー 農学:遺伝子組換え作物、クローン家畜 医・薬:病気の治療、遺伝子診断(遺伝病)

Journal Protein Engineering この学術雑誌は、タンパク質の機能を理解するために重要な構造と生化学的知見の最新研究を紹介する専門誌

タンパク質工学とは?  遺伝子組換え技術  遺伝子化学合成技術  新しいタンパク質の人工合成

◎タンパク質工学とは? 遺伝子組換え技術と遺伝子化学合成技術を使い、設計した新しいタンパク質を人工的に合成すること。 課題:転写、翻訳は生物の力を借りるしかない

タンパク質工学に重要な2つの技術

ゲノム・遺伝子・タンパク質  ゲノム遺伝子 > 遺伝子

ゲノム・遺伝子・タンパク質 ●遺伝情報(ゲノム)の伝達 ヒト細胞1個あたり 染色体数 46 (22+X)+(22+Y) ●遺伝情報(ゲノム)の伝達       ヒト細胞1個あたり   染色体数 46 (22+X)+(22+Y)   遺伝子数 約10万(105)   塩基対数 30億 (3 x 109) 全長約1m  大腸菌ゲノム   塩基対(4 x 106) 全長約1.4mm ●遺伝情報(遺伝子)の発現  ヒト   発生・分化→約60兆個(6 x 1013)   セントラルドグマ    (DNA→RNA→タンパク質)   ゲノムの5%だけタンパク質として発現   発現時間(一生):7x105 hr  大腸菌   ゲノムの90%がタンパク質として発現       発現時間(一生) :0.3〜0.7 hr

DNA分子の塩基配列とアミノ酸配列  コドン  アミノ酸の一次配列

DNAの構造 遺伝情報は塩基(Base)配列として記録されている A:アデニン C:シトシン G:グアニン T:チミン 3つの塩基配列で1つのアミノ酸を表す(コドン)

DNA二重らせんは A=T、G ≡ Cの塩基対 でのみ水素結合できる

DNAコドンとアミノ酸 1st 2nd 3rd 5'-end U C A G 3'end Phe Ser Tyr Cys Leu Stop Trp Pro His Arg Gln Ile Thr Asn Lys Met Val Ala Asp Gly Glu

アミノ酸の表記;3文字、1文字

タンパク質分子とアミノ酸配列 アミノ酸の結合:ペプチド結合 アミノ酸残基の配列:一次構造 局所的な規則構造:二次構造        ヘリックス、シートなど

タンパク質は折り畳まれて二次構造・立体構造ができあがる ペプチド結合 ヘリックス シート

タンパク質の一次構造のちがいが立体構造のちがいとなる

立体構造のわずかな違いだけで 機能が異なる場合もある!

立体構造とNMR 原子核の磁気的性質を非破壊で観測できる装置(NMR)を用いて、生体高分子(タンパク質、核酸、糖質など)の立体構造が水溶液に溶けたままの状態で決定できるようになってきた。

MS NMR 生体高分子の構造解析2002 NMRとMS 2002年ノーベル化学賞 Kurt Wuthrich John B. Fenn Koichi Tanaka 1/2 of the prize 1/4 of the prize 1/4 of the prize http://www.nobel.se/chemistry/laureates/2002/index.html

NMR分野のノーベル賞 1952 1952 1991 2002 http://www.nobel.se/ Felix Bloch (1905 - 1983) Stanford University USA Edward Mills Purcell (1912 - 1997) Harvard University USA Kurt Wuthrich (1938 - ) ETH, Switzerland Scripps Research Inst., USA Richard R. Ernst (1933 - ) ETH, Switzerland 化学賞(1991) for his contributions to the development of the methodology of high resolution nuclear magnetic resonance (NMR) spectroscopy. 化学賞(2002) for his development of NMR spectroscopy for determining the three-dimensional structure of biological macromolecules in solution       物理学賞(1952) for their development of new methods for nuclear magnetic precision measurements and discoveries in connection therewith.

核磁気共鳴 Nuclear Magnetic Resonance NMR 1H, 13C, 15N, 31P 原子核の磁気モーメントを超電導磁石の安定磁場中で観測   ↓ 原子核の距離、化学結合の角度、分子運動などが解析できる。∴立体構造解析可能

NMR用超電動磁石のしくみ タンパク質試料 溶液量30~300 μl 濃度0.3~3 mM

磁場強度いろいろ 1 Tesla=10000 Gauss 実用化 研究中 4 x 10-1 T 850 T 3 x 10-1 T 60 T Sun 33 T 10-4 T 2 ~ (25) T 3 x 10-5 T NMR 3 x 10-10 T 2 T MRI

NMR装置の発展 MHzからGHzヘ 1H共鳴周波数(MHz) 32 CW型 60 90 100 FT型 200 270 300 350 400 600 750 800 900 1000 1046 磁場強度(Tesla) 0.8 常電導 (1957) 1.4 2.1 2.3 4.7 超電導 6.3 7.0 8.2 11.7 14.1 17.6 18.8 (1998) 21.1 (2001) 23.4 24.6 (1997*) * T.A. Cross et al., J. Magn. Reson., 125, 212 (1997). 21.1 T 21.6 T (2002)

原子核固有のNMR周波数 磁場強度: 9.4テスラ 1H共鳴周波数=400MHz 磁場強度:18.8テスラ 1H共鳴周波数=800MHz 化学シフト(微細構造による共鳴周波数の変化) 1H:0〜10 ppm, 13C:0〜20 ppm, 31P:0〜600 ppm

NMRデータから立体構造情報の収集 化学結合による1H-1H相互作用の測定(COSY) →アミノ酸残基の同定、化学結合の回転角度情報の収集 空間の近距離1H-1H相互作用(<5Å)の測定(NOESY) →アミノ酸残基の連鎖帰属、原子間距離情報の収集 NOESY

NMRでわかる距離・角度情報 アミノ酸の一次配列から立体構造を決定するために、NMRからわかる原子間距離、結合の回転角度が利用可能

すべてのNMR距離・角度情報を満たす構造 = 立体構造 (K. Wüthrich et al., ) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97(1), 145-150 (2000). Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97(15), 8334-8339 (2000).

ま と め タンパク質工学の利用分野 タンパク質工学とは ゲノム・遺伝子・タンパク質 DNA分子の塩基配列とアミノ酸配列  学術、工学、農学、医薬 タンパク質工学とは  遺伝子組換え技術、遺伝子化学合成技術、新しいタンパク質の人工合成 ゲノム・遺伝子・タンパク質  ゲノム遺伝子>遺伝子 DNA分子の塩基配列とアミノ酸配列  コドン、アミノ酸の一次配列 タンパク質分子とアミノ酸配列  ペプチド結合、ヘリックス、シート 立体構造解析と NMR  ノーベル化学賞 K.Wüthrich