Ⅰ 孤立イオンの磁気的性質 1.電子の磁気モーメント 2.イオン(原子)の磁気モーメント 反磁性磁化率、Hund結合、スピン・軌道相互作用

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Ⅰ 孤立イオンの磁気的性質 1.電子の磁気モーメント 2.イオン(原子)の磁気モーメント 反磁性磁化率、Hund結合、スピン・軌道相互作用 g因子、遷移金属・希土類イオンの基底状態 3.孤立イオンの磁化率

Ⅰa 電子の磁気モーメント ・電子のスピン磁気モーメント ・電子の軌道磁気モーメント(古典的導出) r v 磁場がないとき

磁場がある場合 レンツの法則 ・磁性体と磁場との相互作用エネルギー 反磁性磁化

反磁性磁化率 ・反磁性体に働く力 磁場勾配が必要 (磁気浮上、磁気配向)

n l lz sz Ⅰb 磁性イオン(原子)の磁気モーメント ・イオンの電子配置 Ⅰb 磁性イオン(原子)の磁気モーメント ・イオンの電子配置 1電子状態:n(主量子数), l, lz, sz, によって指定される。 n   l lz   sz 1 0 2 0, 1 3 0, 1, 2 - l ~ + l   +1/2, -1/2 0, 1, 2, 3 (2(2 l+1)重に縮退)    s, p, d, f 合成スピン 合成軌道角運動量 ・イオンの磁気モーメント ・閉殻イオン (He、Li+、Na+、F-、Cl-) 反磁性

・不完全殻イオン (3d, 4d, 4f, 5f, shells) 電子間の相互作用がなければ n個の電子、(3d)n: 10n個の状態が縮退? No パウリ原理によってn個の電子のとり得る状態の数は 10・9・8・・・(10-n+1). 電子間のクーロン相互作用によって更に縮退が解ける。 多電子系の基底状態(Hundの規則)   (1)全スピンの大きさ S が最大である。   (2)そのSに対して可能な最大の L を持つ。  基底LS多重項:(2S+1)(2L+1)重の縮退

ne 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 S L 練習問題: 3d遷移金属イオンの基底多重項を求めよ。 練習問題: 3d遷移金属イオンの基底多重項を求めよ。 Ti4+, Ti3+, V3+, Cr3+, Mn3+, Fe3+, Fe2+, Co2+, Ni2+, Cu2+, Cu+  V 4+, Mn4+, Mn2+ ne 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 S L

練習問題: 3d遷移金属イオンの基底多重項を求めよ。 答え Ti4+, Ti3+, V3+, Cr3+, Mn3+, Fe3+, Fe2+, Co2+, Ni2+, Cu2+, Cu+  V 4+, Mn4+, Mn2+ ne 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 S 0 1/2 1 3/2 2 5/2 2 3/2 1 1/2 0 L 0 2 3 3 2 0 2 3 3 2 0

希土類イオン 4f電子系(l=3)  基底LS多重項はスピン・軌道相互作用によって更に分裂する。 (直感的には)電子から見て回転する原子核が作る電流による磁場(B)が電子のスピン磁気モーメントと相互作用する。 Ze e スピン軌道相互作用 電子数が 2l+1 より少ないとき 電子数が 2l+1 より多いとき

・希土類イオン(4f 状態) ・磁気モーメント Wigner-Eckertの定理 Lande’s g-factor

・フント則が成り立つ理由:(原子内)交換相互作用 2個の電子が2つの直行する軌道を1個ずつ占有する場合。 波動関数 スピンの組み合わせにより4つの状態がある

2電子系のハミルトニアンを対角化 1電子の準位を決めるハミルトニアン 電子間クーロン相互作用 行列要素の計算 Kab: クーロン積分 Coulomb integral Jab: 交換積分 exchange integral

対角化すると エネルギー固有値 固有状態 合成スピン triplet singlet 有効ハミルトニアン

triplet 状態がクーロンエネルギーを得する理由 波動関数の軌道部分 triplet singlet トリプレット状態では、電子相関の効果を考えなくても、パウリ原理によってクーロン・エネルギーが小さくなるような電子配置をとる。

Ⅰc 孤立イオンの磁化率 ・1電子スピン エネルギー 磁気モーメント Sz=1/2 S=1/2 Sz=-1/2 Curie’s law

・一般のJ多重項 Brillouin 関数 Curie’s law