ブラックホール降着流の大局的 3次元磁気流体数値実験 松元亮治 (千葉大理)
ブラックホール降着円盤 Active Galactic Nuclei=Black Hole + Accretion Disk 降着円盤の磁気的活動性
天体磁気活動現象 「ようこう」衛星搭載の軟X線望遠鏡で撮影した太陽コロナと太陽フレア
太陽フレアとそのモデル Shibata et al. 1995
降着円盤における角運動量 輸送問題 重力エネルギーを解放するためには、円盤物質の角運動量を抜き取る必要がある 磁気流体ジェット形成に伴う磁気制動 円盤内部での外向きの角運動量輸送 αディスクモデル: trf = aP a = 0.01-0.1 >> 分子粘性 流体乱流 差動回転に起因する流体不安定性 対流 a = O(0.001) : 小さすぎる 磁気乱流 ストレステンソルの非対角成分が対角成分に比例
ブラックホール候補天体の特徴:激しいX線時間変動 GRS1915+105のX線強度(上)とhard/soft比(下)の時間変化(Belloni et al. 1997) Cyg X-1からのX線強度変化 (Negoro et al. 1995)
ブラックホールのロゼッタストーン: マイクロクエーサーGRS1915+105 VLAで観測した電波強度分布の時間変化(Mirabel et al.1994) Mirabel and Rodriguez (1998)
ブラックホール候補天体の状態遷移:ハードステートとソフトステート 強度が弱い low スペクトルが硬い hard (<-> soft) Cyg X-1のハードステートのスペクトル ソフトステート(high state)のスペクトル。円盤からの黒体放射成分が存在する。
降着円盤のモデル 標準降着円盤モデル (SADM) Qrad Qvis 移流優勢円盤モデル (ADAF) Qadv = Qvis 光学的に厚く、幾何学的に薄いケプラー円盤 Qrad Qvis = 移流優勢円盤モデル (ADAF) 光学的に 厚いADAF 薄いADAF Qadv = Qvis
降着円盤の熱平衡曲線 Q+ >Q- Q+ >Q- Q- >Q+ ADAF 温度 ADAF 光学的に薄い円盤 光学的に厚い円盤 SADM 電子・陽電子対生成を行なうような高温円盤 ADAF 温度 Q+ >Q- ADAF Q+ >Q- Q- >Q+ 光学的に薄い円盤 光学的に厚い円盤 SADM 表面密度
降着円盤の熱平衡曲線(2) Abramowicz et al. 1995 降着率 Slim ADAF SADM 面密度 光学的に薄い 光学的に厚い
白鳥座X-1のX線ショット 表面密度 X線ショット 半径 時間 X線ショット:時間対称なX線強度変化とピーク時のスペクトル硬化が特徴(Negoro et al. 2001) 表面密度 X線ショット 半径 時間 Cyg X-1からのX線強度変化 (根来ら1995) 高密度塊降着による時間対称X線強度変化のモデル(Manmoto et al. 1996)
QUESTIONS 角運動量輸送機構は何か。降着円盤モデルのαの値を決定することができるか? ブラックホール候補天体のX線強度時間変化の原因は何か。それを再現できるか? 低光度降着円盤の構造は移流優勢降着流(ADAF)モデルによって記述できるか? 降着流は準定常的になるか? アウトフローの生成条件は何か?
差動回転円盤における磁気 回転不安定性 Angular momentum Balbus and Hawley (1991)
磁場強度によらず、回転のタイムスケールで不安定が成長する。 k//vA=(15/16)1/2Ωの時に最大成長率(3/4)Ω 成長率 波数
計算機の中に降着円盤をつくる Astrophysical Rotating Plasma Simulator (ARPS)
基礎方程式
降着円盤の大局的3次元MHD数値実験(Newtonian) Initial Condition After 10 Rotation Period b = Pgas/Pmag=100 200*64*240 grid points カラー:密度分布 赤:磁力線 Matsumoto 1999
磁気エネルギーの時間変化 ORBIT
磁気ループ浮上と円盤コロナ形成 Machida et al. 2000 Magnetic Field Lines and Isosurface of Magnetic Field Strength for a model Starting from β=1
ブラックホール候補天体からのX線強度の激しい時間変動 Cyg X-1の時間変動(左図)と 時間変動のパワースペクトル(上図)
シミュレーション結果をもとに計算したジュール加熱率の時間変化 Joule Heating Rate Kawaguchi et al. 2000 PASJ 52, L1 Power Spectrum of Time Variation
電流密度のフラクタル構造 赤道面付近のJ/ρの分布 クラスターサイズの分布 (Kawaguchi et al 2000)
ブラックホール降着流の散逸性3次元磁気流体数値実験 Machida and Matsumoto (2002)
初期条件と計算モデル 中心天体の重力ポテンシャル : pseudo-Newtonian potential φ= - GM/(r-rg) 中心天体の重力ポテンシャル : pseudo-Newtonian potential φ= - GM/(r-rg) rg : シュバルツシルト半径 角運動量 : 初期に一定 R=50rgにおいて ガス圧/磁気圧 =β = 100 磁気レイノルズ数 Rm= 2000 r=2rgで吸収境界条件 太陽フレアシミュレーションと同じ異常抵抗モデルを採用η= min[ 0.05, max [{(J/ρ) – vc}2/Rm , 0.0] ]
密度分布 t = 30630 -130rg<r<130rg Zoom up : Innermost Region
赤道面密度の時間変化 0.03 M/Mo ( -0.5 < logρ < 0) 3000 rg/c ∥ ∥ 50rgでのKepler周期 0.03 M/Mo
プラズマβ(ガス圧と磁気圧の比)の時間変化 磁場増幅 Rm=100 R < 10Rg の平均 (Machida et al. 2002) β~10の準定常状態に至る! 回転円盤内縁では500回転以上
降着率時間変化のPSD PSD 観測されたCyg X-1のPSD 振動数 F^(-1.5) 円盤内縁領域のエピサイクリック振動数。10太陽質量のブラックホールの場合、100Hz 観測されたCyg X-1のPSD 振動数
赤道面の密度分布と磁力線 中心付近の密度分布と磁力線(r<10) T=30590 遠方は磁気乱流状態。10rgより内側では双対称渦状磁場(BSS)が形成される。密度分布は一本腕構造が卓越。
Maxwell Stressの非対角成分 <‐BrBφ/4π>/<P>の時間変化 α~0.1 α~0.03 TIME TIME
角運動量分布: ケプラー分布に漸近 テスト粒子の角運動量変化 点線はケプラー分布、実線はt=29000から31000の平均角運動量分布
磁力線形状の変化 30570 30590 30610 30630 矢印は磁気 リコネクションによって形成された閉じた磁気ループ
太陽フレアと降着円盤フレア リコネクション
密度分布 T=30590 T=30610 T=30630 密度分布の時間変化。円で囲んだ領域では磁気リコネクションによって発生した衝撃波の伝播が見られる。矢印は磁気リコネクションに伴って円盤回転と逆向きの流れが発生している領域。
円盤内縁領域での磁気エネルギー解放 ジュール加熱 電流密度 磁気エネルギー 降着率 time 電流密度と磁力線の時間変化 T=30590
X線強度の時間変化 ピンク:熱制動放射、 緑: ジュール加熱率
まとめ X-ray shot 磁気乱流状態 渦状密度構造が卓越 BSS磁場構造を形成 大スケールのストレス層(電流シート)形成 小スケールの電流シート形成と磁気エネルギー解放 磁気乱流状態 大規模リコネクション 渦状密度構造が卓越 BSS磁場構造を形成 大スケールのストレス層(電流シート)形成
宇宙ジェットの大局的磁気流体 シミュレーション
磁気流体ジェットの加速機構 Blandford and Payne 1982 Maruyama and Fujimoto 1987 When an accretion disk is threaded by large scale poloidal magnetic fields, centrifugal force and magnetic pressure can drive outflows Maruyama and Fujimoto 1987 Lovelace et al. 1991
Steady Model of Axisymmetric Jet (Kudoh and Shibata 1997) Along a Magnetic Field Line
内田・柴田メカニズム
磁気拡散効果を含めた数値実験 (Kuwabara et al. 2000 PASJ) ideal Mildly resistive
3D Structure T=0 T=25 T=33 T=40 T=0 T=25 T=33 T=40 T=0 T=25 T=33 T=40
Works in progress : Implementation of general relativistic code Study the time evolution of rotating black holes with a rotating torus. Simulate how much energy is extracted through magnetic fields. Koide, Shibata, Kudoh, and Meier 2002, Science
一般相対論的MHD数値実験(Koide et al. 1998,1999,2000) V ~0.93c (Γ=2.7)
まとめ ブラックホール降着流の大局的3次元散逸性MHD数値実験を行った。 R<10rgの領域では磁場が双対称渦状(BSS)構造を示し、1本腕の密度構造が卓越する 高密度領域がブラックホールに吸い込まれた後、BSS磁場中の電流シートで磁気リコネクションが起き、磁気エネルギーが解放される シミュレーション結果はブラックホール候補天体Cyg X-1で観測されているX線ショットに先立つ増光、ショット中のスペクトル硬化等を再現する