高分解能原子核乾板(NIT)による暗黒物質探索実験

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高分解能原子核乾板(NIT)による暗黒物質探索実験 2007年三者若手夏の学校 中 竜大@名古屋大学 

原子核乾板って? 一種の写真フィルム。荷電粒子が通った跡が銀粒子の形で残る。 (位置分解能~1μm) ⇒特に、寿命の短いような粒子の検出に威力を発揮してきた! (実績:チャーム粒子初検出、ντの初検出、ダブルハイパー核初検出 etc) 現在の解析は自動飛跡読取装置を用いて行われている。

Dark Matter Dark matterはあるはず 証拠 ・銀河の回転曲線(遠方でflat) ・WMAP(ΩDMh2~0.12±0.02) ・重力レンズ              etc http://www.astro.rug.nl/~ruwen/cosmology/img/milkrot.png 回転曲線からこの銀河系にもDark Matterは存在する。 Local halo density~0.3GeV/cm3 ( Maxwell分布をしていると考える) Dark Matterの候補:WIMP(Weakly Interacting Massive Particle) 相互作用が弱くて、重い粒子(光を発しないので、電荷は中性) SUSY、Kalza-Klein・・・など、理論家はいろいろな候補を提示してくれている。

WIMPはMaxwell分布と考えられるので、地球にはWIMPの風が常に吹く。 WIMPsと地球上の検出器の相対運動 VW WIMPはMaxwell分布と考えられるので、地球にはWIMPの風が常に吹く。 WIMPs NIT 200km/sec Vrel = VW + 200km/sec E 200km/sec WIMPsの速度ベクトルVW E S E 銀河中心 シグナルは方向性あり バックグランドは等方的 飛跡検出器を使えば、方向性を捕えられる。

検出原理 原子核乾板でDark Matterのsignalを見つけたい Merit Earth Sun 220km/sec NIT 地下でNITを赤道儀に載せ地球の回転を打ち消す WIMP 夏 冬 Ag Br AgBr crystal WIMPs wind Range of recoil nuclear~ 100nm Ag recoil nuclear Maxwell 速度分布 のWIMP ゼラチン H,C,N,O,S Merit ・飛跡としてsignalが見れる。(飛跡情報はエネルギースペクトルの統計数桁に相当) ・大質量化が可能 WIMPsとの弾性散乱で反跳される原子核の飛跡 原子核乾板を赤道儀にのせWIMPsの風の方向にマウント WIMPs signal ; 方向性あり Background;  等方的

Range =10~100nm order Recoil energy →10~100keV order Vrecoil=(Vsun-VWIMPs)(1-cosθ) →100~1000km/sec Recoil energy →10~100keV order Range =10~100nm order

高分解能原子核乾板 (Nano Imaging Tracker:NIT) OPERA,その他従来の乾板 NIT 200nm OPERA:AgBr crystal size ~200nm NIT:AgBr crystal size ~40nm 2.2 AgBr/μm 11 AgBr/μm 通常の原子核乾板の5倍の高分解能化に成功。 (さらなる高分解能化は技術的には可能)

反跳原子核に対する感度 Brの反跳を仮定して、低速Krイオン(100~1000km/sec)を打ち込んで評価 microscope イオン注入用target chamber microscope (SEM, optical) Kr 15° NIT layer base

Optical microscope picture masked Dark Field Image of Light Microscope Random fog Dose = 108/cm2 シグナルは認識できるが、飛跡としての認識は困難。 飛跡を構成しているかを電子顕微鏡で確認

Kr track(200keV and 600keV) by SEM 200 nm 3 AgBr hit 600 nm Kr 1200km/sec (600keV) 7 AgBr hit Kr 680km/sec (200keV) NIT emulsion is sensitive to 200keV(680km/sec) Kr. でもやっぱり電顕では、大質量の解析は不可能なので、光学顕微鏡での飛跡認識が必要!!

短い飛跡をどう解析する? 低速イオンの飛跡は数個のgrainでclusteringされている。 1 grain like track Separate grain これが~μm以上なら光学認識が可能

飛跡の引き伸ばし技術開 2つの技術を考案 1.ローラーを用いた引き伸ばし技術 化学処理を施すことで、NITを変性させる。 Kr NIT                    飛跡の引き伸ばし技術開  2つの技術を考案 1.ローラーを用いた引き伸ばし技術 化学処理を施すことで、NITを変性させる。 Kr 15° NIT roller NIT

600keV(1180km/sec) Kr trackの引き伸ばし

2.膨潤特性を利用した技術 Kr ion exposure NIT Swell technique of NIT emulsion Range ~100nm order Expected range ~ μm order optical microscope slice

Expanded 200keV Kr track by swell technique Dark field optical microscope image (×100 object lens) 4μm surface

400keV 600keV 未照射 200keV random fogは点のまま

Expansion Kr track data by swell technique 200keV 400keV 600keV 1.5±0.5 μm 3.1±0.8 μm 3.6±0.8 μm range [μm] range [μm] range [μm] efficiency  67% 98% 100% Rate of number of grain [%] Rate of number of grain[%] Rate of number of grain [%] Kr 200keV number of grain Kr 400keV number of grain Kr 600keV number of grain 2 3 4 2 3 4 5 6 7 2 3 4 5 6 7 8 9 電子顕微鏡に匹敵するtrack情報を得ることが出来る。

暗黒物質の探索にはバックグラウンド除去が最大の課題 飛跡検出の場合、二つ以上のgrainがある間隔以内で接近しているとシグナルとなる。 ・外部バックグラウンド(γ、β、中性子・・・) ・内部バックグラウンド(Th、U崩壊系列からの放射性崩壊によるγ/e,β) 対策 ・感度コントロール ・感光メカニズムの違いによる差別化 今後の開発

Background single hitに見えるが、2grain以上がclusteringされていると引き伸ばしたときに飛跡として見えてしまう。 241Am γ 30min exposure ( 2.8MBq) NITは感度を化学的に調整できる。 電子のとまりがけのsingle hitのみしか写らない感度までおとす。

NITの感度コントロール この間での感度コントロールが必要!! 今まで見せていたNIT⇒実は、化学的処理で最大限に感度を上げたもの。 ・増感していないNIT⇒Krに対して、efficiencyが出ない。 ・最大限の増感処理⇒electronのとまりがけに対し感度が高すぎる。 この間での感度コントロールが必要!! 反跳原子核は非相対論的な速度なので、dE/dxは、electron eventと比べて、けた違いに高い。(~300倍以上)

γ/e reject < 10E-5 (99.99999%) (高感度NIT~10E-2) ⇒ 比較的抑えた増感処理 高感度NIT 中感度NIT 感度を落としたものでもKrの飛跡認識は可能! γ/eに対する感度⇒241Amγ線を用いてテスト γ/e reject < 10E-5 (99.99999%) (高感度NIT~10E-2)

解析速度 自動飛跡読み取り装置 現在のscan speed ~40cm2/h (OPERA)=0.18cm3/h = 4.7kg/year 今後、さらなる読み取り速度の向上は十分可能。 将来的に10~100倍以上の読み取り速度をめざす。 (将来的には、100kg以上の実験をやりたい。)

まとめ こんな感じで、現在は基礎開発を地道にやっているところ 数100nmの飛跡を、光学顕微鏡での飛跡認識させることに成功した。  こんな感じで、現在は基礎開発を地道にやっているところ 数100nmの飛跡を、光学顕微鏡での飛跡認識させることに成功した。 新しい増感処理の開発で、最適感度に近づいた。              (今後、詳細なチューニング) γ/eバックグラウンドの5桁以上のrejectを可能にした。  今後のもくろみ 感光メカニズムの違いを光学的に差別化⇒引き伸ばす前にピックアップ

今後の方針 スキャニングシステムの構築

バックグラウンドラン⇒詳細なバックグラウンドの評価    100g~1kgのプロトタイプで実験開始