蛍光X線分析装置
走査型蛍光X線分析装置の光学系(概略図) 注)一次X線の波長分布はターゲット材質や印加電圧によって異なる 一次X線フィルター サンプル(例:ステンレス) 分光結晶 X線管 ソーラースリット Ni Ka Fe Ka 検出器 Cr Ka 蛍光X線 ソーラー スリット 注)検出器は2種類(SCとF-PC) 測定線によって切り替える 視野制限スリット
走査型と同時型装置 走査型 多元素同時型 各測定X線に専用の 1つの走査型ゴニオメータ 複数の固定型ゴニオメータ 選択可能な 検出器 選択可能なスリット 各測定X線に専用の 走査型 多元素同時型 1つの走査型ゴニオメータ 複数の固定型ゴニオメータ 選択可能な 検出器 分光結晶 固定ゴニオメータ 種々の測定X線にフレキシブルに対応可 装着された測定X線にのみ対応可 測定X線が複数の場合は光学系 条件を変えて順次測定していく 複数の測定X線を同時測定可能 工程管理の迅速分析に最適 ピーク近傍のバックグラウンド測定や 定性分析が可能
蛍光X線・X線回折装置使用における注意点 通常の使用方法で測定している限り,X線被爆に 至る事故は発生しません. インターロックは絶対に殺さない. メンテナンス作業前に必ずX線(電源)がOFFに なっている事を自分で確認する. X線は電源が切れていれば出ない. メンテナンス作業では高電圧にも注意する. X線発生装置や検出器では数kV~数十kVの高電圧を使用 している. チャージアップにも注意が必要.
X線(放射線)の発見 ウイルヘム・コンラッド・レントゲン博士 1895年、レントゲン線(X線)を発見。 真空放電の実験中に放電管の電極から、 ・目には見えないが、 ・写真乾板を感光させ、 ・蛍光物質を光らせ、 ・物質を突き抜ける という不思議な性質をもった光線のようなもの が出て来ることを発見した。 そして、この正体のわからないものをX線と 名づけた。
X線とは何か(電磁波の分類) 軟 X 線 硬 ・X線は波長の短い電磁波 X線の波長 : 0.01~100Å 遠 紫 外 可 視 近 赤 マ 10-10 10-8 10-6 10-4 100 102 104 cm 10-2 100 102 104 108 1010 1012 Å 電磁波の波長 X線の波長 : 0.01~100Å 軟 X 線 遠 紫 外 可 視 近 赤 マ イ ク ロ 波 超 短 長 硬 γ ( 1Å = 0.1nm = 10-8cm )
X線の性質 X線は可視光と同様に電磁波である 波動性 粒子性 γ線 :原子核が壊変することにより発生 γ線 :原子核が壊変することにより発生 X線 :電子をターゲットに衝突させて発生 波動性 干渉や回折現象を起こす 粒子性 あるエネルギーを持った粒子(光量子)として振る舞う E ≒ 12.4/λ E :エネルギー(keV) λ:波長(Å)
X線と放射性物質 ・ X線 ・ 放射性物質 電源を切ればX線は出なくなる. いつでも放射線が出ている. ・ X線 電源を切ればX線は出なくなる. ・ 放射性物質 いつでも放射線が出ている. 放射線(α線)を照射された別の物質も放射化される. ON OFF zzz・・・z 238U α線
X線の性質 ・写真(感光)作用 ・蛍光作用 ・イオン化作用 ・高透過率 ・回折現象 ・低屈折率で,電場・磁場の影響を受けない ・全反射現象 写真乾板を感光させる → レントゲン写真・非破壊検査 ・蛍光作用 ZnS,CdS,NaI等に照射すると蛍光を発する → 検出器のシンチレータ ・イオン化作用 大気等をイオン化する → PC(比例計数管),SSD(半導体検出器) ・高透過率 様々な物質を透過する → レントゲン写真・非破壊検査 ・回折現象 結晶性の物質に当たると反射波が干渉し,特定の方向に強い反射を示す → X線回折,分光結晶 ・低屈折率で,電場・磁場の影響を受けない X線を屈折(レンズ)で集光させることは困難 ・全反射現象 低い角度で入射させると物質表面や膜界面で全反射する → 全反射蛍光X線分析法,X線反射率測定法
蛍光X線分析の原理 紙 プリズム 太陽 白色光線 緑インク(青+黄) X線管 白色X線 分光結晶 検出器 黄銅(Cu+Zn) Zn Cu
電子を高速でターゲットに衝突させると X線が発生する X線管でのX線の発生 電子を高速でターゲットに衝突させると X線が発生する フィラメント 高電圧 - ターゲット
X線の発生(制動放射) 物 質 衝 突 制 動 e- 連 続 X 線 反跳電子 熱 電子 物 質 衝 突 制 動 e- 連 続 X 線 反跳電子 熱 電子 物質に衝突した電子が物質内で減速される際に,奪われた運動 エネルギーが熱やX線に変換される. この現象を「制動放射」といい,放射されるX線は連続的な波長 分布を示し,一般に連続X線や白色X線と呼ばれる.
X線の発生(特性X線,蛍光X線) 物質中の原子の核外電子が入射してきた電子やX線光量子の衝突により 物質中の原子の核外電子が入射してきた電子やX線光量子の衝突により 弾き出されると,外殻の電子がその空孔に遷移し,エネルギー準位の差に 相当する波長を持ったX線が放射される. この時放射されるX線は元素に 特有の波長を持ち,特性X線や固有X線と呼ばれている. また,X線 の入射により発生するX線を特別に蛍光X線と呼ぶ. 衝 突 e- 特 性 X 線 弾き出された 電子 核 外殻電子の遷移 X線 物質中の原子
X線管の原理 サイドウィンドウ型X線管 エンドウィンドウ型X線管 ターゲット ターゲット 水冷 + 水冷 電子 - - フィラメント + Be窓 Be窓 X線 X線 サイドウィンドウ型X線管 エンドウィンドウ型X線管
励起電圧 V0 : 励起エネルギー(keV) λabs: 励起しようとする スペクトルの吸収端波長(Å) W-KαとU-Kαのスペクトルは スペクトルの吸収端波長(Å) W-KαとU-Kαのスペクトルは X線管電圧60kVでは発生しない
連続X線と特性X線 連続X線(白色X線) 特性X線(固有X線) いろいろな波長がある 波長がそろっている 蛍光X線法 放射線透過試験法 X線回折法 波長がそろっている X線の波長分布 波長 X線強度 特性X線 連続X線
X線の回折現象(Bragg条件) X線がその波長と同程度の周期で、規則的に原子が配列した物質(結晶)に入射すると、X線は特定の方向へ散乱される 回折現象 q d Braggの回折条件 2d sinθ = nλ d :格子面間隔 λ:X線の波長
元素と回折角 分光結晶:LiF(200) 2d=4.028Å 計算 Bragg条件 Fe-Kαのλ:1.938Å LiFの2d:4.028Å 1次線では n=1
元素別最適分光素子(結晶) : 最良 他にLiF(420),Graphite,NaCl EDDT等 : 良 : 使用可 : 最良 他にLiF(420),Graphite,NaCl EDDT等 注)RXシリーズ(人工結晶)は弊社の製品です : 良 : 使用可
放射線検出器の種類
X線検出器の原理 シンチレーション計数管(SC) ガスフロー型比例計数管(F-PC) 発光体(NaI) 陽極 陰極 X線 計数回路へ ダイノード Be窓 遮光材料 光電子増倍管 計数回路へ 電気パルス X線 分析窓 Ar→Ar++e- ガス入口(PRガス) 芯線(陽極) ガス出口 GDS:ガスデンシティスタビライザ 計数回路へ 電気パルス シンチレーション計数管(SC) ガスフロー型比例計数管(F-PC)
X線分析におけるX線強度の単位 国際単位系(SI単位) C/kg (クーロン毎キログラム) X線分析 → X線が空気中を通過した際, 1kgの空気との相互作用により生成した総電荷量 X線分析 kcps (Kilo Counts Per Second) → 単位時間に計数管の窓を通して入射する X線光量子の数
蛍光X線分析装置で何がわかるか? どんな元素がはいっているか? どの元素がどれくらいはいっているか? BeからUまで分析可能 ppm(1/1000000)オーダーから分析可能 鉄? アルミ? チタン? 銅? 鉛?
ステンレス(バルク試料)の分析例 Fe Cr Mo Ni Rh Si 0.441 wt% Cr 18.4 wt% Mn 1.73 wt% Fe 67.1 wt% Co 0.233 wt% Ni 10.1 wt% Cu 0.216 wt% Mo 1.82 wt% Fe Cr Mo Ni Rh
波高分析器(PHA)の原理
FP法と検量線法 検量線法 FP法 実測強度(IM) 理論強度(IT) 含有率等(W) ・実測強度と含有率・膜厚の相関 ・横軸範囲が広い場合は曲線 ・含有率固定で膜厚分析 膜厚固定で含有率分析 ・多数の標準試料が必要 ・実測強度と理論強度の相関 ・横軸範囲によらず直線 ・膜厚・組成同時分析 ・少数の標準試料で分析可 ・多層膜分析 ・FP感度曲線 /検量線 ・分析 ・標準試料 ・その他
FP法による定量分析の原理 I理論強度 = f (化学組成,物理定数,装置ファクター) 化学組成 W i : 分析元素の化学分析値 W j : 共存元素の化学分析値 r, t : 密度,厚さ 物理定数 m (l) : 全質量吸収係数 t i (l) : 光電効果による吸収係数 w i : 蛍光収率 g i : ジャンプ比 P i : 遷移確率 l i , li edge : 蛍光X線の波長,吸収端の波長 装置ファクター I 0 (l) : 波長lの1次X線の強度分布 y 1, y 2 : 入射角度,取出角度 K (l i ) : 装置感度 I理論強度 = f (化学組成,物理定数,装置ファクター)
注)実際は“膜厚×密度=単位面積当たりの総付着量”として各元素の存在量を定義して理論強度を算出する FP法による薄膜分析の考え方 膜厚・組成既知の試料から発生する蛍光X線強度は理論計算可能 I理論強度 = f (膜厚・組成,物理定数,装置ファクター) 既知 未知 1) 標準試料 : 理論強度と実測強度の相関(感度)の決定 I測定強度(標準試料) = K感度係数×I理論強度(標準試料) 2) 未知試料 : 膜厚・組成をパラメータとしたシミュレーション I測定強度(未知試料) = K感度係数× I理論強度(未知試料) I’理論強度(未知試料) = f (膜厚・組成,物理定数,装置ファクター) 注)実際は“膜厚×密度=単位面積当たりの総付着量”として各元素の存在量を定義して理論強度を算出する
FP法による定量分析 分析結果 試料モデルからの シミュレーション 実試料の測定 実測強度 e1, el2….. 理論強度 基板 実測強度から求めた理論強度 基板 e1, el2….. 収束判定 分析結果 理論強度 実測強度 モデルから求めた理論強度 試料モデル IT el1 = f (膜厚・組成,物理定数,装置ファクター) IT el2 = f (膜厚・組成,物理定数,装置ファクター) … 理論強度計算 膜厚:T 実試料の測定 試料モデルからの シミュレーション
日常管理分析フローチャート OK NG PHA調整 チェック試料の測定 標準化 未知試料の測定 注意:3回以上標準化を行っても分析値が規格内にならない場合は装置管理担当者もしくはリガクのサービス担当者にご連絡ください チェック試料での管理分析 チェック試料を使用しない管理分析