ランダム不均質媒質中の非等方震源におけるベクトル波エンベロープ合成

Slides:



Advertisements
Similar presentations
基本編: はじめての UNIX UNIX の基本的なコマンドを使ってみよう . 応用編:地震波形を使って震源を決めてみよ う 1.波形データをインターネットから取得しよう 2.地震波形を読もう 3.震源を決めてみよう 地球惑星物理学実験 II.
Advertisements

2004 年新潟県中越地震と スマトラ沖巨大地震の 震源で何が起こったのか? 八木勇治 (建築研究所・国際地震工学セン ター)
相対論的場の理論における 散逸モードの微視的同定 斎藤陽平( KEK ) 共同研究者:藤井宏次、板倉数記、森松治.
高精度画像マッチングを用いた SAR衛星画像からの地表変位推定
「統計的モデルに基づく地球科学における 逆問題解析手法」
復習.
HBT干渉法における 平均場の効果の準古典理論
スペクトル法による数値計算の原理 -一次元線形・非線形移流問題の場合-
情253 「ディジタルシステム設計 」 (2)modem2
9月27日 パラボラミラーによる ミリ波ビーム絞り
「データ学習アルゴリズム」 第3章 複雑な学習モデル 3.1 関数近似モデル ….. … 3層パーセプトロン
水戸市に建つ超高層免震建物の 強震観測例 2011年9月27日 ハザマ 境 茂樹 東京工業大学建築物理研究センター講演会
成層圏突然昇温の 再現実験に向けて 佐伯 拓郎 神戸大学 理学部 地球惑星科学科 4 回生 地球および惑星大気科学研究室.
デジタル信号処理①
5.アンテナの基礎 線状アンテナからの電波の放射 アンテナの諸定数
応用編:地震波形を使って震源を決めてみよう
酒井哲郎:海岸工学入門,森北出版 第3章(pp.27-36)
前回の内容 結晶工学特論 第4回目 格子欠陥 ミラー指数 3次元成長 積層欠陥 転位(刃状転位、らせん転位、バーガーズベクトル)
ベイズ基準によるHSMM音声合成の評価 ◎橋本佳,南角吉彦,徳田恵一 (名工大).
いまさら何ができるのか?何をやらねばならないのか?
羽佐田葉子 2007年3月24日 アクロス研究会@静岡大学
ー 第1日目 ー 確率過程について 抵抗の熱雑音の測定実験
ー 第3日目 ー ねじれ型振動子のブラウン運動の測定
川崎浩司:沿岸域工学,コロナ社 第4章(pp.58-68)
電気回路学Ⅱ エネルギーインテリジェンスコース 5セメ 山田 博仁.
2.伝送線路の基礎 2.1 分布定数線路 2.1.1 伝送線路と分布定数線路 集中定数回路:fが低い場合に適用
前回の内容 結晶工学特論 第5回目 Braggの式とLaue関数 実格子と逆格子 回折(結晶による波の散乱) Ewald球
フォワード波動場と逆伝播波動場 2つの波の掛け合わせ(図2)
強震動予測手法に用いる ベンチマークテスト その1:概要
計測工学 復習.
CMB非等方性による、 インフレーション起源の背景重力波 のもつ偏極成分の検出法
1923年関東地震の強震動シミュレーション 古村孝志 (東大地震研究所) より“短周期地震動”予測を目指してー現状と課題
太陽風プロトンの月面散乱による散乱角依存性の研究
統計的震源モデルと 半無限平行成層グリーン関数 による高振動数強震動の計算法
多重ベータ分布を用いた音色形状の数理モデリングによる
制御系における指向性アクチュエータの効果
YT2003 論文紹介 荻原弘尭.
黒体輻射 1. 黒体輻射 2. StefanのT4法則、 Wienの変位測 3. Rayleigh-Jeansの式
逐次伝達法による 散乱波の解析 G05MM050 本多哲也.
Taniguchi Lab. meeting 2004/10/15 Shigefumi TOKUDA
プラズマ発光分光による銅スパッタプロセス中の原子密度評価
量子力学の復習(水素原子の波動関数) 光の吸収と放出(ラビ振動)
東邦大学理学部物理学科 宇宙・素粒子教室 上村 洸太
ー 第3日目 ー ねじれ型振動子のブラウン運動の測定
(昨年度のオープンコースウェア) 10/17 組み合わせと確率 10/24 確率変数と確率分布 10/31 代表的な確率分布
光の回折 点光源アレイ.
電磁気学Ⅱ Electromagnetics Ⅱ 8/4講義分 電気双極子による電磁波の放射 山田 博仁.
Mini-RT装置における 強磁場側からの異常波入射による 電子バーンシュタイン波の励起実験
Bruciteの(001)面における真の接触面での摩擦特性
両端単純支持梁の フィードフォワード外乱抑制制御系における 指向性アクチュエータの効果
文化財のデジタル保存のための 偏光を用いた透明物体形状計測手法
偏光X線の発生過程と その検出法 2004年7月28日 コロキウム 小野健一.
ベイジアンネットワーク概説 Loopy Belief Propagation 茨城大学工学部 佐々木稔
統計的震源モデルと 半無限平行成層グリーン関数 による高振動数強震動の計算法
ICRR共同研究発表会(2003/12/19) 神岡100mレーザー伸縮計の概要と観測記録              新谷 昌人(東京大学地震研究所)
資料: 報道発表資料 気象庁マグニチュード算出方法の改訂について。
スラブ内地震の震源過程と強震動 神戸大学理学部  筧 楽麿.
多重ベータ混合モデルを用いた調波時間構造の モデル化による音声合成の検討
インフレーション宇宙における 大域的磁場の生成
川崎浩司:沿岸域工学,コロナ社 第4章(pp.58-68)
ナイキストの安定判別に基づく熱音響システムの自励発振解析における発振余裕と 定常発振状態における圧力振幅の関係
HMM音声合成における 変分ベイズ法に基づく線形回帰
ベイズ基準による 隠れセミマルコフモデルに基づく音声合成
落下水膜の振動特性に関する実験的研究 3m 理工学研究科   中村 亮.
原子核物理学 第7講 殻模型.
強震動予測に用いる手法の ベンチマークテスト ーその2 理論的手法ー
地上分光観測による金星下層大気におけるH2Oの半球分布の導出
多重関数を用いた調波時間スペクトル形状のモデル化による音声合成 1-P-4
       より短周期地震動予測をめざした複雑な地下構造 のモデル化に関する考察 (株)清水建設  早川 崇 佐藤俊明 2003年4月8日 「大都市圏地殻構造調査研究」成果報告会 ─ 大大特I「地震動(強い揺れ)の予測」─
磁場マップstudy 1.
Presentation transcript:

ランダム不均質媒質中の非等方震源におけるベクトル波エンベロープ合成 2009/5/18 地球惑星科学連合大会 S157-007 ランダム不均質媒質中の非等方震源におけるベクトル波エンベロープ合成 澤崎 郁・佐藤春夫・西村太志 東北大・理・地球物理

本研究の目的 高周波の直達波エンベロープの再現→強震動予測に有効 非等方震源に対する理論的なエンベロープ合成 Sato and Korn (2007): 前方散乱モデル,ベクトル波  →直達波の再現に適する.ただし2次元ランダム不均質媒質 Takemura et al. (2009): 差分計算により直達波振幅の方位依存性を再現 本研究:  前方散乱モデルに基づき,非等方震源の効果を組み入れた3次元ランダム不均質媒質中での3成分エンベロープ合成を行う 観測記録と比較し,直達波エンベロープの再現が可否を調べる

数理的背景(1) (Sato and Fehler, 1998) l(地震波長)<<a(速度揺らぎの相関距離)の場合,P波とS波の伝播を独立に表現できる.伝播の過程でS波の極性は保存される (1) f: スカラーポテンシャル B: ベクトルポテンシャル a: P波速度 b: S波速度 (2) ポテンシャルを周波数ごとに球面波展開 (3) Uが従う放物型方程式

数理的背景(2) (Sato and Fehler, 1998) (4) 伝播方向に直交する面内の2点間で,Uの相互相関関数のアンサンブル平均G1を定義. 後方散乱および変換散乱を無視(マルコフ近似)した場合, G1は(5)式に従う. (5) Sato (2007) (6) (P:速度揺らぎのパワースペクトル) (7) (5)式の微分を差分化

数理的背景(3) (8) (7)式をフーリエ変換して波数領域で表現. :半径rの球面における波の伝播方向分布(角度スペクトル) :波が距離rからr+Drまで伝播するときの散乱角分布 モンテカルロ法より粒子の伝播方向を確率的に与え,(8)式を繰り返し用いて震源から観測点までの粒子軌跡を求める 詳細はTakahashi et al. (2008)参照

Stochastic ray path method Williamson (1972)の拡張 ①震源から観測点までを多数の厚さDrの球殻に区切る ②震源輻射特性の重みをつけて粒子を放出 ③球面上で散乱角分布に従う乱数により散乱角を定める ④最外殻(震源距離R)における粒子の振動方向を求める ⑤粒子の走時の頻度分布から,MSエンベロープを作成

計算条件 Von-Karman型ランダム媒質を仮定 速度揺らぎ強度e=5% 速度揺らぎ相関距離a=5km Dr=2km ES/EP=23.4 Saito et al. (2005) Von-Karman型ランダム媒質を仮定 速度揺らぎ強度e=5% 速度揺らぎ相関距離a=5km k (高波数側のべきを決める量)=0.5 Dr=2km  ES/EP=23.4 VP=6.0km/s  VS=3.46km/s 粒子数:500,000個 内部減衰は無視

RMSエンベロープの方位依存性(10Hz,80km) SMAX/PMAX =8.04 6.31 6.16 1.57 3.21 2.98 4.39 ・A方向: P, S波とも振幅最小 ・E方向:S波振幅最大 ・G方向:P波振幅最大

RMSエンベロープの周波数依存性 (E軸とG軸, 80km) SMAX/PMAX 1-2Hz 2-4Hz 4-8Hz 8-16Hz E軸 7.30 6.91 6.44 6.06 G軸 1.33 1.42 1.51 1.60 ・高周波ほどSMAX/PMAXの方位依存性が小さい ・後続波(P,S波走時の1.2倍以降)ではE軸とG軸方向のエンベロープに違いが見られない

観測記録との比較 SMNH04(45°) HRSH02(0°) 1-2Hz 1.55 1.76 13.6 5.66 2-4Hz 4.68 5.00 4-8Hz 5.61 4.73 8-16Hz 5.54 3.86 1.44 2.13 2.83 1.69 MW4.3 0° 45° ・e=5%, a=5km, k=0.5 ・QP=QS=200,300,600,800 (1-2, 2-4, 4-8, 8-16Hz, Carcole and Sato, 2009) :観測(3成分和) :理論(最大振幅で規格化)

RMSエンベロープの震源距離依存性 S波エンベロープ(3成分和)の距離減衰(10Hz) ・最大振幅の方位依存性が震源距離と共に消失 50km

まとめ Stochastic ray path methodによる,非等方震源に対する地震波エンベロープ合成 エンベロープの直達波部分の方位依存性を再現 後続波では方位依存性見られない 高周波ほど方位依存性が見られない 節面方向から0°,45°における理論エンベロープと観測エンベロープを比較 P波S波の最大振幅比は理論と観測でほぼ一致 直達波のエンベロープ形状をおおむね説明可能 謝辞:本研究では防災科学技術研究のKiK-netの強震記録を使用させていただきました.記して感謝いたします.