親子で考える情報モラル教材の提供と 有効性の検証 ~小学校高学年での実践と一考察~

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親子で考える情報モラル教材の提供と 有効性の検証 ~小学校高学年での実践と一考察~ 親子で考える情報モラル教材の提供と 有効性の検証 ~小学校高学年での実践と一考察~ 兵庫県相生市立双葉小学校の山本です。 本企画は、児童の情報モラルの理解・定着を目標に、小学校高学年の親子向けに、親子でともに考えながら学習を進める情報モラル教材を、eラーニングシステムを利用して提供し、その学習の効果・有効性をさまざまな角度から検証していくことを目的としました。 それでは、企画の概要について説明します。 兵庫県相生市立双葉小学校

企画の概要 学校 家庭 情報社会 教師 保護者 児童 情報モラル教材の提供 望ましい 参画 学校でのかかわり 家庭でのかかわり 近年情報社会はめざましく発達し、インターネット等を日常的に活用する児童が多くなり、同時に、望ましくない経験をする児童も増えています。●小学校から発達段階に応じて必要な情報モラル意識を育成し、情報社会への望ましい参画のできる児童を育成することは、大変重要な課題だといえます。 児童の情報モラル意識を育成するためには、●学校と家庭が連携を取り合い、児童に適切なかかわりを持つことが重要と考えます。 しかし、家庭におけるICT機器の活用状況はまちまちで、児童のインターネット等の活用に対する考え方は、その保護者の価値観により異なります。また、児童が万一の危険にさらされた場合に備え、保護者や家族は高い関心と知識を持つ必要があります。 以上から、学校が家庭の教育力を高めるための取り組みを行う必要があるといえます。 そこで、●本企画では家庭で情報モラルを学ぶことのできる教材を提供しようと考えました。 次に、学習の形態について説明します。 情報モラル教材の提供

企画の概要(学習形態) 児童 親子一緒に考える eラーニング 保護者 親子で考える 教材の開発 いつでも 1対1の濃密な時間 何度でも 本音の話合い 暖かな雰囲気 児童 いつでも 何度でも 適したペース 親子一緒に考える eラーニング 今回の学習のポイントは、●『親子いっしょに考える』『eラーニング』という2つからなります。 児童にとっては●1対1で、本音で、濃密に話し合える、家庭内の暖かな雰囲気のもとで学習を進めること、また保護者にとっては話し合いを通じて、●児童の実態や考え方を捉え、それぞれの家庭に応じた約束が徹底できる利点があるのではないかと考えました。 このように親子がいっしょに学習する時間を確保するには、●いつでも、何度でも、自分たちのペースで学習を行うことのできるeラーニングを用いるのが最適です。 そのため、親子で考えるためのeラーニング教材を新たに作成しました。 教材を作成するに当たり、本企画の対象である5年生の保護者を対象にアンケートを実施しました。 親子で考える 教材の開発 児童の実態や 考え方の把握 家庭に応じた約束の徹底 保護者

学習教材(教材構成) 次の知識や能力を、児童は身につける必要がありますか (N=88) 電子メールのマナー 有害情報への対処 電子掲示板 のマナー 情報発信の責任 携帯電話のマナー 個人情報保護の知識 まず教材を作成するにあたり、保護者は児童にどのような知識や能力を身につけたいと望んでいるかを明らかにしました。 『次の能力を子どもは身につける必要がありますか?』というアンケートに対し、次のような結果が得られました。 「ある」という答えが多かったのは、これら6項目でした。これは、コンピュータやインターネット等の活用場面でさらされている問題に対する不安、児童の健全な育成が阻害されたり、トラブルの被害者になったりすることへの不安が表れていると考えられます。

学習教材(教材構成) 効果的な 学習 身近な問題を中心に学ぶ 次の知識や能力を、児童は身につける必要がありますか (N=88) 情報に関する法理解 ネットワーク技術やウイルス ネットショップやオークション その反面、法律に関することや、技術的なこと、ショッピングやオークションの利用など、小学校段階で児童の生活と関連が薄いと思われがちな問題についての保護者の関心は低いことが明らかになりました。 以上から●、これらの身近な問題を中心に取り上げ、深めることが、効果的な学習につながると考え、教材の構成をつぎのように組み立てました。 身近な問題を中心に学ぶ 効果的な 学習

学習教材(教材構成) 望ましい使用方法 や心構え 選択学習コース 実際に直面しうる 課題 親子で思いを 出し合える課題 はじめに 選択学習コース 電子掲示板・ チャット 情報発信 実際に直面しうる 課題 IDとパスワード 携帯電話 必須学習項目 著作権 個人情報 親子で思いを 出し合える課題 情報収集 電子メール これが、作成した教材の構成です。 まず●身近な情報端末ともいえる携帯電話に関わる教材を中心に位置づけ、●それを補うように携帯電話の使用に関するモラル教材を作成することにしました。さらに、携帯電話の使用と直接的な関係は希薄になりますが、●コンピュータの活用で求められるモラル教材を発展的に作成していくことにしました。 これら教材には、●児童が将来のネットワーク社会に対して明るい展望が持てるよう、望ましい使用方法や心構えを積極的に例示し、●より実践的な話し合いが親子でできるよう、実際に直面しうる課題を提示するようにしました。 ●これら教材はすべて学習するのではなく、3つ程度を各家庭の興味関心に合わせ選択することで、主体的に学習参加できるよう配慮しました。 コース選択による 主体的な学習参加 おわりに

学習教材(教材開発) 学習展開に 変化 事例考察(情報発信教材) 課題選択(携帯電話教材) 約束話合い(個人情報教材) シミュレーション(IDとパスワード教材) クイズ(著作権教材) レポート(電子掲示板教材) テスト(電子メール教材) リンク(情報収集教材) 作成した教材は、児童の学習意欲が最後まで持続するように●学習の展開に変化をもたせるよう心がけました。 事例を紹介する場面の他に、●数個の課題から、自分にあったものを選択する場面、●親子で約束を話し合う場面、●画面上で操作しながら体験できるシミュレーション、●親子で考えられるクイズや●レポート、学習したことを振り返る●テスト、学習内容に関係するサイトを●紹介するリンクなどを織り交ぜて学習を進められるようにしました。 このように作成した教材は、兵庫県立教育研修所のeラーニングサーバに登録し、インターネットを経由して学習できるよう準備しました。 次に学習の実際について説明します。

学習の実際(事前準備) 貸出しPCの準備 無線データ通信 児童の運搬に配慮 紙媒体の積極活用 話合いの留意点 連絡カード 「通信」 本企画では、今後の情報社会を生きる子どもたちには、遅かれ早かれ最低限の情報モラルが必要になるという考えのもと、全家庭で学習を実施しました。 そのため●、インターネット接続環境のない家庭に対して無線データ通信の利用できるコンピュータの貸し出しを行うこととしました。 貸出時や返却時の児童による持ち運びに配慮し、極力軽量なモバイル機を準備しました。 また、保護者の情報スキルの差に配慮し、●紙媒体の資料を積極的に活用しました。 教材で取り上げた課題に、どのような意図があるか、話し合いが効果的に行えるポイントは何かを記した「留意点」のプリントや、学習支援に使用する「連絡カード」を全家庭に配布しました。また、学習実施前や実施中には、「通信」を配布し、親子学習の意義を徹底することに努めました。 話合いの留意点 連絡カード 「通信」

相生市立双葉小学校5年生での実践 平成17年10月17日~11月30日 学習の実際(学習状況) 相生市立双葉小学校5年生での実践 平成17年10月17日~11月30日 それでは、実際の学習風景をご覧下さい。● このように、1ヵ月半の期間、各家庭で親子学習を進めて参りました。 では、考察に話を進めてまいります。 考察の方法としては、学習実施中に連絡カードやレポート・アンケートなどで寄せられた保護者の声から今回の学習の有効性検証を行うこととしました。 また、客観性を得るためにすべての保護者・児童を対象にしたアンケート調査を実施し、この結果を加味して検証を進めました。

児童向け調査 「学習してよかったですか」 「よかったことを教えてください」 考察(親子学習の効果) 児童向け調査 「学習してよかったですか」              「よかったことを教えてください」 まず、児童から見た「親子で考える」学習形態について考察します。 「情報モラル学習をしてよかったですか?」というアンケートに対し、99%の児童が好意的な反応を示しました。また「よかった」理由として「親子で話し合ったこと」は、●電子掲示板を使用したことに続く2番目に挙げられています。 親子で考える●学習形態は、児童が積極的に学習できるという意味において有効であるといえます。 学習に積極的な児童の姿

考察(親子学習の効果) 保護者の意識 児童の 情報モラル定着 抽出家庭向け調査 「子どもの考え方や実態が 捉えられましたか」 児童の考え方や 抽出家庭向け調査 「子どもの考え方や実態が 捉えられましたか」 保護者の意識 児童の考え方や 実態を理解 情報モラル教育の 必要性への気づき 続いて、保護者から見た「親子で考える」学習形態について考察します。 十分時間をかけて学習に取組んだ家庭に対して行った「子どもの考え方や実態が捉えられましたか」というアンケートに対し、ほとんどの保護者から「できた」「かなりできた」という回答を得ることができました。 また、同アンケートの自由記述部分からは「子どもがそんなに興味を持つとは思っていなかった。これからは少しずつ親子で話し合っていきたい」「今まではまだ先のことで関係ないと思っていたが、子どもと話し合うことはもう早いことではないと思った」というように、●児童の情報モラル学習の必要性に気づいたという声も寄せられました。 このような●、情報モラルの定着につながる保護者意識の変化を生むことで、親子での学習は効果的であるといえます。 児童の 情報モラル定着  

考察(eラーニングの効果) 保護者の安心感 学習展開の変化 効果的な 情報モラル学習 全家庭向け調査 「話合いの留意点の   プリントがあって心強かった」 リアルタイムの 対応や支援 保護者の安心感 視覚的な効果 操作しながら学習 学習展開の変化 次に、「eラーニングを用いた」学習形態について考察します。 全家庭に対して行った「話し合いの留意点のプリントがあって心強かったか」というアンケートに対し、「感じた」と答えた保護者が約6割ありました。これら学習を進める上で●不安を感じている保護者の質問や疑問に対し、すぐに対応・支援ができ、学習者に安心感を与えられるという点で、eラーニング形態は有効であったといえます。 また保護者の感想には●、「文章や図に記してあることで、子どもと話すときにも分かりやすくて助かった」「教材を見るだけでなく実際に体験させるのは、記憶に残りやすくゲームのようで楽しかった」といった声が寄せられました。 ●eラーニングによる学習形態は、家庭での情報モラル学習に効果的であったといえます。 効果的な 情報モラル学習  

考察(課題) 保護者への啓発 一部家庭向け調査 「学習が十分できなかった 理由は何ですか」 学習実施前の 十分な説明 一部家庭向け調査 「学習が十分できなかった 理由は何ですか」 保護者への啓発 学習実施前の 十分な説明 最後に本企画の課題について述べます。 アンケート調査で学習が十分できなかったと回答した家庭に対し、さらにその理由を尋ねたところ、グラフのような結果が得られました。 約9割の保護者は親または子どもに学習を行う時間がなかったと答えています。 これは、児童への情報モラル育成の必要性が保護者に浸透できていなかったといえます。 ●保護者説明会の実施時期や会の持ち方について、十分に検討する必要があります。 また、中には情報教育や情報モラル教育自体が不要とする意見も少数ながら寄せられました。 ●今後の学習活動でICT機器を積極的に活用し、その利便性や子どもの学びの変化を実感してもらうことが大切といえます。 学習活動への 積極的なICT活用

おわりに 学習や生活でのネットワーク利用の増加 =児童の更なる情報モラル理解・定着 教材の改善 CD-ROM教材化 教材モデルとしての普及 今後、学習や生活のいろいろな場面で児童のインターネット等の活用が広がるにつれ、更なる情報モラルの理解定着が求められることになります。 今回の企画で用いた教材をさらに改善し、CD-ROM教材にモデル案として完成させ、今後普及を図り、少しでもその要望にこたえられるようにしていきたいと考えています。 以上で終わります。