南西諸島で梅雨期に観測されたセル群列の構造と形成過程

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南西諸島で梅雨期に観測されたセル群列の構造と形成過程 内藤大輔・坪木和久・前坂剛・ 服部美紀・篠田太郎・上田博 名古屋大学地球水循環研究センタ-

セル群列 21JST 06 JUNE セル群 降水セル 梅雨前線上では大規模収束によって強い対流性降水をもたらす事が多い。 一方、前線の南側海上の強制力の小さい場所ではどのような降水システムが形成されるかはまだよくわかっていません。 2003年の梅雨期に南西諸島で観測があり、その観測期間中の6月6日に前線の南側海上に強い対流性の 降水システムが観測されました。 6月6日21JSTの天気図では梅雨前線が東西にあるときに前線とは異なる降水システムがJMAレーダーで捉えられました。 またその一部を名古屋大学ドップラーレーダーで観測できました。 ドップラーレーダーで見ると強い降水強度を持つ部分はいくつかの降水セルから成るセル群でした。 ここで高度2kmで反射強度は39dBZ以上のものを降水セル、新しい降水セルを10km以内に作るものをセル群と定義します。 さらにこのようにセル群が複数並んだものをセル群列と定義します。 そこで私はどのようにこのようなセル群が列に並んだに興味を持ちましたので、 本研究の目的は、 降水セル

目的 使用したデータ 6月6日21JST頃から7日01JSTにかけて ドップラーレーダーで観測された前線の南側海上 でのセル群列の構造と形成過程を調べる。 そこで本研究の目的は  6月6日22JST頃から7日01JSTにかけて観測された降水セルの特徴と、セル群が北西‐南東に並ぶ  セル群列の構造と形成過程について調べることです。  ・目的は降水セル群の構造と形成過程を調べること。  で、このあとはすぐにセルの説明をした方がいい気がする。 使用したデータ ・名古屋大学ドップラーレーダー (宮古島)   :13仰角(6分毎) ・JMAレーダーデータ ・GOES画像 ・石垣島ゾンデデータ

観測期間 観測期間 2003年  5月26日~6月8日 さらっと流す。 観測範囲

21JST GOSE 23JST IR 石垣島ゾンデデータ 21JST 06 JUNE ISHIGAKI 21JST 06 JUNE GOSE 23JST IR MIYAKO ・そのとき(6月6日21時頃)はどんな場だったかというと・・・  天気図では梅雨前線が西から伸びてきており、前線の先端付近が宮古島に当たります。  またここの21JSTのサウンディングを見ると下層で南東風、上層で西風になっていました。

降水セルとセル群の構造と形成過程 セル群列は複数のセル群から成っているので、まず最初にどのようにしてセル群が形成されたかについて調べました。 セル群は22JSTから01JSTまで同じ特徴をもっていたのでその内の一つを取り上げます。 ここでは2248JSTと2254JSTの例をあげます。上の図は2248JSTと2254JSTのエコーの水平断面図です。 2254JSTではCELL1の南西側に新しい降水セルが発生しています。 これを鉛直断面で見てみると新しいセルは高度2km付近から発生しています。 これらの傾向は21JSTから01JSTまでのすべての降水セルにほぼ当てはまりました。 また降水セルは発達しても高度5kmを超えることはなく、反射強度のもっとも強い部分は融解層よりも下にありました。 次にこのようにして形成されたセル群がどのようにしてセル群列を形成するのかを見てみます。

セル群列の構造と形成過程 示すのは高度2kmにおけるエコーの水平断面図です。 2106JSTには最初セル群Aが形成されます。次に2142JSTにセル群Bが形成し、2つのセル群からセル群列が形成されました。 2324JSTにはAとは異なるAスリーダッシュとBダッシュの間にセル群Cが形成されて3つのセル群からセル群列が形成されました。 AとBの間隔は25km、セル群AスリーダッシュとCの間隔は15km、BダッシュとCの間隔は12kmでした。 ここでAの降水セルは2324JSTまで続かずに途中で消えてしまいます。しかし、20dBZの反射強度の部分は残っていました。この残った20dBZの範囲の中から新たに39dBZまで発達し、セル群になったものをAダッシュとしています。 これはBにも共通して言えることで、20dBZのエコー面積を見てみると、0になっていないことがわかります。 39dBZのエコー面積を見ると0になる部分があります。つまり、一度39dBZのところが見えなくなりますが、20dBZの 部分は残っており、その部分がまた39dBZまで強くなっているということになります。 したがってセル群列として認識できるのは複数のセル群が同時に形成されている時ということになります。

21JST 06 JUNE セル群の並ぶ方向は何と一致しているかというと、 環境場の中層のシアの方向と一致していることがわかりました。 また下層のシアはセル群の中の降水セルが並ぶ方向と一致していました。

まとめ セル群列の構造 梅雨期の南西諸島において、梅雨前線の南側で前線の 走向とは異なる対流性降水システム(セル群列)が観測された。 その構造と形成過程をドップラーレーダーを用いて調べた。 セル群列の構造 セル群列の構造としてはセル群の並ぶ方向は中層のシアに沿う方向でした。 またセル群は北西に移動し、最大で3つのセル群が並びました。その間隔は12~15kmでした。

セル群は新しいものを北西につくり、その後 二つのセル群の間にもう一つセル群を形成し、 セル群列を形成した。 セル群とセル群列の形成過程 1.セル群の形成過程  降水セルが北東‐南西方向に組織化する事  によってセル群が形成される。 セル群は降水セル間の距離が小さく、セル間相互作用によって形成されていると考えられるのに対し、 セル群列はセル群同士の距離が大きいためお互いに作用はしていないと考えられます。 2.・セル群列の形成過程   セル群は新しいものを北西につくり、その後   二つのセル群の間にもう一つセル群を形成し、   セル群列を形成した。  ・また降水セルは生成・消滅を繰り返しており、   2つ以上のセル群が同時に形成された事で   セル群列が形成される。

・観測期間中の6月6日に宮古島付近で梅雨前線による降水域とは別の降水システムが観測されました。  (JMAレーダーの説明)  この降水システムは前線の降水域とは異なる走向をもっており、強い降水強度をもつ塊が並んでいるように  見えます。 この降水システムはドップラーレーダーの観測範囲に入ってきており、強い降水強度のところは降水セルが複数集まったものだということがわかりました。私はなぜこのように強い降水強度をもつセル群が列に並んだかについて興味を持ちました。 ・観測の期間と理由 必要な言葉は 梅雨期の南西諸島での降水システムがどうなっているか? のような言葉。梅雨の研究は九州では観測も多いが、南西諸島は観測例が少ない。 できればライン状降水システムとかいうといいのかな。 梅雨の観測や研究は九州で数多く行われてきています。しかし、沖縄などの南西諸島では 観測の数が少なく、まだわかっていないことも多いと考えられます。 そこで2003年5月26日から6月8日まで沖縄本島と宮古島に名古屋大学のドップラーレーダーを持ち込み、 観測を行いました。観測された現象の中で、私は梅雨前線に関連した6月6日夜に観測された 降水システムを解析しました。 ここで言いたい事は、セルができてることはわかってるから、どのような特徴があるかを述べる。 要はどんなセルが観測されたか。 ・高度2km付近から発生する。 ・移動方向は北西から北北西で、移動速度は8~10m/s ・降水セルは最大高度5kmまでしか発達せず、融解層までは達しない。 ・これらの降水セルはJMAレーダーでみたセル群列の方向と同じところに数多くの降水セルが発生していることが  わかります。 ・セル群としての特徴を述べたい。というかセルが北東-南西方向に組織化されている様子を出したい。 ・南西方向に多くできるということくらいは言う。それがすべてじゃないことは言う必要はないのかもしれない。 ・次にどのようにセル群になるかということですが、  セル群はどれも同じような振る舞いをしたのである一つを取って考えてみます。  2248JSTにある降水セルは2254JSTには地表に達して落ちていて、南西側に新しい降水セルが発生している様子が  見られます。ほとんどの降水セルはこのように発生していました。 ・このようにして形成されるセル群がどのように並んでセル群列を形成したかを見るためにセル群それぞれの  時間変化を見てみます。 ・こで降水セルは高度2kmで反射強度が39dBZ以上の等値線で囲まれた部分とし、降水セルが複数集まったものを  セル群、さらにそれが並んだものをセル群列と呼ぶ。今回ドップラーレーダーのレンジの中に入ってきたセル群列は  最大でセル群が3つ並ぶものでした。 ・ぼくが考えるセル群列ができるため(形成過程)に重要な3つ。  1.まず降水セルができないと何も始まらないので、降水セルができること。(降水セルの説明)  2.降水セルができてもすぐにつぶれてしまってはだめなので、   組織化してセル群になること。(セル群の説明)  3.ひとつではセル群列にならないので、そのセル群が複数並ぶこと。(セル群列の説明)  これらについてどのようにセル群列が形成されたかについて最小単位である、降水セルから順に見ていきます。

・どうやってセル群列になるかを調べるためにセル群列の時間変化を考えてみる。 ・セル群列が現れた全体として捉えることが重要。  セル群列のエコー面積を出した。すると、全体としてエコーの時間変化があることがわかる。  が、比較的反射強度の弱いものと反射強度の強いものではその傾向が異なる。  最後にどうやってセル群列になるかを考えるために現象が起きた領域のエコー面積を考えて見ます。  なお、宮古島にはグランドクラッターが見られたので計算からは除外してあります。