大学院理工学研究科 2004年度 物性物理学特論第7回 -磁気光学効果の電子論(3):バンド理論-

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大学院理工学研究科 2004年度 物性物理学特論第7回 -磁気光学効果の電子論(3):バンド理論- 大学院理工学研究科 2004年度 物性物理学特論第7回 -磁気光学効果の電子論(3):バンド理論- 非常勤講師:佐藤勝昭 (東京農工大学工学系大学院教授)

電気分極と摂動論 時間を含む摂動論 誘電率の対角成分の導出 誘電率の非対角成分の導出 磁気光学効果の物理的説明 磁気光学スペクトルの形状 復習コーナー 磁気光学効果の量子論 電気分極と摂動論 時間を含む摂動論 誘電率の対角成分の導出 誘電率の非対角成分の導出 磁気光学効果の物理的説明 磁気光学スペクトルの形状

電気分極とは,「電界によって正負の電荷がずれることにより誘起された電気双極子の単位体積における総和」 復習コーナー 電気分極と摂動論 電気分極とは,「電界によって正負の電荷がずれることにより誘起された電気双極子の単位体積における総和」 「電界の効果」を,電界を与える前の系(無摂動系)のハミルトニアンに対する「摂動」として扱う。 「摂動を受けた場合の波動関数」を「無摂動系の固有関数」の1次結合として展開。この波動関数を用いて「電気双極子の期待値」を計算。

無摂動系の基底状態の波動関数を0(r)で表し, j番目の励起状態の波動関数をj(r) で表す. 復習コーナー 時間を含む摂動論 無摂動系の基底状態の波動関数を0(r)で表し, j番目の励起状態の波動関数をj(r) で表す. 無摂動系のシュレーディンガー方程式 H 00(r) =00(r) H 0j(r) = j Ej(r) 光の電界E(t)=E0exp(-it)+c.c. (c.c.=共役複素数) 摂動のハミルトニアン H’=er・E(t) (4.22)

復習コーナー 時間を含む摂動論

電気分極Pの期待値を計算 (入射光の角周波数と同じ成分 ) 復習コーナー 誘電率の対角成分の導出  電気分極Pの期待値を計算 (入射光の角周波数と同じ成分 )

復習コーナー 誘電率の対角成分の導出 振動子強度

復習コーナー 誘電率の非対角成分の導出 および

復習コーナー 誘電率の非対角成分の導出 という置き換えをすると若干の近似のもとで 右および左円偏光により基底状態|0>から,励起状態|j>に遷移する確率 円偏光についての振動子強度

右(左)回り光吸収→右(左)回り電子運動誘起 大きな磁気光学効果の条件 復習コーナー 磁気光学効果の 量子論 磁化の存在→スピン状態の分裂 左右円偏光の選択則には影響しない スピン軌道相互作用→軌道状態の分裂 右(左)回り光吸収→右(左)回り電子運動誘起 大きな磁気光学効果の条件 遷移強度の強い許容遷移が存在すること スピン軌道相互作用の大きな元素を含む 磁化には必ずしも比例しない

復習コーナー 電子分極のミクロな扱い E 電界の摂動を受けた 波動関数 無摂動系の 波動関数 s-電子的 p-電子的 摂動を受けた 波動関数 + + - |2> = + +・・・・ |1> <0|x|1> <1|x|0> + - = + + + ・・ |0> s-電子的 p-電子的 摂動を受けた 波動関数 無摂動系の固有関数で展開

復習コーナー 円偏光の吸収と電子構造 px-orbital py-orbital p+=px+ipy Lz=+1 p-=px-ipy |2> p+=px+ipy Lz=+1 20- |1> Lz=-1 10- p-=px-ipy 20 10 光の電界 10は20より光エネルギーに近いので左回りの状態の方が右回り状態より多く基底状態に取り込まれる |0> Lz=0 s-like

復習コーナー スピン軌道相互作用の重要性 Jz=-3/2 Jz=-1/2 L=1 Jz=+1/2 LZ=+1,0,-1 Jz=+3/2 交換相互作用 +スピン軌道相互作用 磁化なし 交換分裂 LZ=0

復習コーナー 反磁性型スペクトル ”xy ’xy 励起状態 基底状態 0 1 2  Lz=0 Lz=+1 Lz=-1 1+2 磁化の無いとき 磁化のあるとき Lz=0 Lz=+1 Lz=-1 1+2 光子エネルギー ’xy ”xy

復習コーナー 誘電率の非対角成分のピーク値 鉄の場合:N=1028m-3, f0=1, so=0.05eV, 0=2eV,  /=0.1eVを代入xy”|peak=3.5を得る 大きな磁気光学効果を持つ条件: ・光学遷移の振動子強度 f が大きい ・スピン軌道相互作用が大きい ・遷移のピーク幅が狭い

常磁性型スペクトル  f=f+ - f- ’xy ”xy 磁化なし 磁化あり 光子エネルギー 誘電率の非対角要素 励起状態 基底状態 0 磁化なし 磁化あり ’xy ”xy 光子エネルギー 誘電率の非対角要素

第7回に学ぶこと Introduction 局在電子系と非局在電子系 スピン偏極バンドと遍歴電子強磁性 バンド電子系における誘電率テンソルの理論 金属磁性体における磁気光学スペクトルの例

局在電子磁性と遍歴電子(バンド)磁性 絶縁性磁性体:3d電子は電子相関により格子位置に局在→格子位置に原子の磁気モーメント→交換相互作用でそろえ合うと強磁性が発現 金属性磁性体:3d電子は混成して結晶全体に広がりバンドをつくる(遍歴電子という) 多数スピンバンドと少数スピンバンドが交換分裂で相対的にずれ→フェルミ面以下の電子数の差が磁気モーメントを作る ハーフメタル磁性体:多数スピンは金属、小数スピンは半導体→フェルミ面付近のエネルギーの電子は100%スピン偏極

局在電子系のエネルギー準位 Mott-Hubbard 局在(Mott絶縁体) 電荷移動型局在(Charge-transfer絶縁体) 電子相関がバンド幅より十分大きいとき 電子の移動がおきるとクーロンエネルギーを損する d↑bandとd↓band間にMott-Hubbard gap NiS2、V2O3など 電荷移動型局在(Charge-transfer絶縁体) Mott-Hubbard gap内にアニオンのp価電子帯 d↑bandとp価電子帯間にcharge transfer gap MnO, CoO, NiO, MnS,

さまざまな絶縁体 (a) Wilson型絶縁体、 (b)Mott絶縁体、 (c) 電荷移動絶縁体 E E E conduction band upper Hubbard band charge transfer gap Wilson gap Mott Hubbard gap valence band lower Hubbard band DOS DOS DOS DOS DOS DOS

局在電子系磁性モデル 常磁性 強磁性 反強磁性 H=-JS1S2 交換相互作用 J>0 J<0

強磁性金属のバンド磁性 多数(↑)スピンのバンドと少数(↓)スピンのバンドが電子間の直接交換相互作用のために分裂し、熱平衡においてはフェルミエネルギーをそろえるため↓スピンバンドから↑スピンバンドへと電子が移動し、両スピンバンドの占有数に差が生じて強磁性が生じる。 磁気モーメントMは、M=( n↑- n↓)Bで表される。このため原子あたりの磁気モーメントは非整数となる。

磁性体のスピン偏極バンド構造 ↑スピンバンド ↓スピンバンド ↑スピンバンドと↓スピンバンドの占有状態密度の差によって 磁気モーメントが決まる Callaway, Wang, Phys. Rev. B16(‘97)2095

単位エネルギーの区間にどれくらいたくさんの状態があるか 状態密度 単位エネルギーの区間にどれくらいたくさんの状態があるか experiment Si Fe experiment 多数スピン calculation 少数スピン calculation calculation

バンドと磁性 通常金属 強磁性金属 交換分裂 Ef ハーフメタル

ハーフメタルと半金属の違い 半金属はsemimetal。伝導帯と価電子帯がエネルギー的に重なっているがk空間では離れている場合をいう。 一方、ハーフメタルは英語でhalf metalでスピン的に半分金属であることを表す。バンド計算の結果、上向きスピンは金属であってフェルミ面があるが、下向きスピンは半導体のようにバンドギャップがあり、フェルミ準位がギャップ中にあるような物質をそう呼ぶ。金属と半導体が半々という意味。 ハーフメタルでは、フェルミ準位付近に重なりがないので、伝導に与る電子は100%スピン偏極している。

金属、半金属、ハーフメタル 金属 半金属 Ef DOS ハーフメタル k DOS E

ハーフメタルの例:PtMnSb L21型ホイスラー合金PtMnSbは室温で大きなカー回転角を示す物質として知られるが、オランダの理論家de Grootによるバンド計算の結果、ハーフメタルであることが初めて示された。 多数スピン(up spin)バンド 少数スピン(down spin)バンド Half metalの典型例とされるPtMnSbのバンド構造

バンド電子系の磁気光学 金属磁性体や磁性半導体の光学現象は,絶縁性の磁性体と異なってバンド間遷移という概念で理解せねばならない.なぜなら,d電子はもはや原子の状態と同様の局在準位ではなく,空間的に広がって,バンド状態になっているからである.このような場合には,バンド計算によってバンド状態の固有値と固有関数とを求め,久保公式に基づいて分散式を計算することになる.

誘電率テンソルの成分を求める式 局在電子系では、各原子の応答は等しいものとして単位体積あたりの原子の数Nをかけたが,金属の場合は,k-空間の各点においてバンド計算から遷移エネルギーと遷移行列を求め,すべてのkについての和をとる必要がある.電子状態がバンドで記述できる系について久保公式に基づいて誘電率テンソルの成分を求める式はWang,Callawayにより導出された.

運動量演算子πとσxy 運動量演算子π 第1項は運動量の演算子,第2項はスピン軌道相互作用の寄与である。導電率の非対角成分

遷移行列要素 遷移行列要素はブロッホ関数の格子周期成分u(k,r)を用いて, と表される。

対角・非対角成分 対角成分の実数部は,散乱寿命を無限大とすると, 非対角成分の虚数部は,        と置き換えると, (4.45)

σxyの評価法 xyを評価するには,スピン軌道相互作用を含めて,スピン偏極バンドを計算し,ブリルアン域の各kにおけるωnm,および,π+とπ-を計算して,式(4.45)に従って全てのkについて和をとればよい.実際,そのような手続きはWangとCallawayによってFe,Niについておこなわれた 最近,バンド計算技術が発展し,多くの物質で第1原理計算に基づく磁気光学スペクトルの計算がなされ,実験ときわめてよい一致を示すことが明らかになった.

磁気光学スペクトルの形 -金属磁性体の場合- 式(4.45)を積分形になおすと次式を得る. ここに, Fnl(ω)=|<n↑|π-|↑l>|2-|<n↑|π+|↑l>|2+|<n↑|π-|↑l>|2-|<n↑|π+|↑l>|2

こんなによく合う第1原理計算と実験結果(1) Feのバンド計算: 計算法により多少の違いはあるが、実験で得られた形状をよく再現しており、回転角の値もほぼ実験値を説明する。 Exp. Krinchik Exp. Katayama Calc. (ASW) Oppeneer Calc. (FLAPW) Miyazaki, Oguchi

こんなによく合う第1原理計算と実験結果(2) (a) (b) (d) (c) こんなによく合う第1原理計算と実験結果(2) ハーフメタルPtMnSbの磁気光学スペクトルの第1原理計算値(P. Oppeneer)と実験値(K.Sato)

平均振動子強度と結合状態密度による表式 もし,遷移確率の平均値を  によって定義し,さらにが大きなω依存性をもたないと仮定し,一定値Fnlとおくなら ここに,Jnl(ω)は結合状態密度といって, 占有状態と非占有状態の状態密度のたたみこみである。

導電率の非対角成分 左右円偏光に対する振動子強度を と定義し を左右円偏光に対する結合状態密度とすると で定義すれば を得る.このように書けば,ωσ"xyが左円偏光と右円偏光に対するバンド間遷移のスペクトルの差として表されることがわかる. で定義すれば

バンド系の磁気光学効果の模式的説明 図 (a)に示すように磁化が存在しないと左円偏光による遷移と右円偏光による遷移は完全に打ち消しあう.この結果,σ“xyは0になるが,磁化が存在すると図 (b)のようにJ-とJ+との重心のエネルギーがΔEだけずれて,σ”xy (したがってεxy‘)に分散型の構造が生じる.σ“xyのピークの高さはσの対角成分の実数部σ’xx が示すピーク値のほぼΔE/W倍となる. ここに,Wは結合状態密度スペクトルの全幅,ΔEは正味のスピン偏極と実効的スピン軌道相互作用の積に比例する量となっている.