-TAO/MIMIZUKU搭載 『二視野合成装置Field Stacker』-

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-TAO/MIMIZUKU搭載 『二視野合成装置Field Stacker』- 第4回 可視赤外線観測装置技術ワークショップ 中間赤外域における高精度測光の実現 -TAO/MIMIZUKU搭載 『二視野合成装置Field Stacker』- 東京大学大学院理学系研究科天文学専攻 附属天文学教育研究センター 宮田隆志研究室 修士1年

私の研究 TAO望遠鏡に搭載する中間赤外線カメラ「MIMIZUKU」の開発 TAO・・・The university of Tokyo Atacama Observatory       (東京大学アタカマ天文台) 口径6.5m望遠鏡 南米チリ・アタカマ砂漠の標高5640mに設置 南米チリ・アタカマ砂漠チャナントール山頂 高い晴天率(70%) 乾燥している 水蒸気量が非常に少なく、大気の窓が開いている ⇒高い大気透過率を誇り、赤外線観測にとって好条件 MIMIZUKU・・・Mid-Infrared Multi-field Imager for gaZing at the UnKnown Universe (中間赤外分光撮像装置) 波長2-38μmの広範囲を1台でカバー 30μm帯で1秒角と言う世界最高の解像度 Field Stackerによる高精度モニタ観測

TAO+MIMIZUKUの利点 ⇒今までできなかった「高精度な変光モニタ観測」の実現 例:EX Lup (前主系列星の一種) 数年に一度大規模なoutburst を起こす DateはSpitzerによる

ポインティングをずらして参照星を観測する必要があった 近赤外線と中間赤外線の観測の違い 天体の明るさの時間変動を精度良くとらえるには、同じ視野内 に「観測天体」と「参照星」が必要 参照星 観測天体 近赤外線 中間赤外線 地上中間赤外線観測では、観測できる天体が少ない ⇒同一視野内に参照星が入ることは稀 時間変動をとらえるには・・・ (相対測光はもっと広義な意味) ポインティングをずらして参照星を観測する必要があった

中間赤外域の従来の測光観測 観測天体 参照星 30分後 天気が良い日のAPEX たとえば30分後 0.01の方は風速で空間→時間に焼き直してる 絵だけでもいいかも 図を「大気透過率が変化する」観点で描き直す⇒PWV変化にともなう大気透過率変動(PWV:Precipitable Water Vapor、降水量) 測光誤差「1%以内」を目指すのか

往復によるタイム ラグで大気透過率 が変わる 中間赤外域の従来の測光観測 観測天体 参照星 30分後 往復によるタイム ラグで大気透過率 が変わる 天気が良い日のAPEX たとえば30分後 0.01の方は風速で空間→時間に焼き直してる 絵だけでもいいかも 図を「大気透過率が変化する」観点で描き直す⇒PWV変化にともなう大気透過率変動(PWV:Precipitable Water Vapor、降水量) 測光誤差「1%以内」を目指すのか 測光誤差5~10%

リアルタイム相対測光の実現 ⇒高精度な測光観測(目指すは測光誤差1%) Field Stacker (F/S) Field Stacker・・・二視野合成システム MIMIZUKU上部の常温部に搭載 観測天体と参照星を同時観測 従来の方法では観測天体と参照星との往復の際に大気変動パターンが変わり、それが測光精度を下げていた(誤差5~10%) 観測天体と参照星の同時観測が可能になり(相対測光)、赤外域の大気変動成分をリアルタイムで補正できる ⇒これにより測光誤差1%以内の高精度の検出を目指す 11/25到着!! F/Sの概念図 Field Stacker リアルタイム相対測光の実現 ⇒高精度な測光観測(目指すは測光誤差1%)

従来の方法と Field Stackerの違い 従来の観測 Field Stacker 観測天体 観測天体 参照星 参照星 往復によるタイム ラグで大気透過率 が変わる 同時観測なので 大気透過率は ほとんど変わらない 30分後 同時観測 図を「大気透過率が変化する」観点で描き直す⇒PWV変化にともなう大気透過率変動(PWV:Precipitable Water Vapor、降水量) 測光誤差「1%以内」を目指すのか 測光誤差5~10% 測光誤差1%以内

高精度測光の実現のために 測光精度はどうやって決まるのか? ※ただ単純に2視野を合成するだけでは、高精度測光は実現 できない

ひとみとストップとスループット TAO望遠鏡は「副鏡=ひとみ」となるように設計 ⇒天体の明るさは副鏡の面積に比例する   ⇒天体の明るさは副鏡の面積に比例する MIMIZUKU光学系内にはコールドストップがある ピックアップミラーの傾きを変え、ストップが常に副鏡中心を見るように制御さ れているのが理想 ストップの説明 MMZKは装置内にひとみ(ストップ)を持っていて、それを副鏡に合うように設計 →副鏡に対して装置内のひとみがずれると効率が変わってしまう ※制御を誤り、ズレた場所に向けてし まうと、ストップ内に入る副鏡の面積(= スループット)が減ってしまうことになる。 (e.g. スループットの変化 100%→95%)

「測光精度の決まり方」 =「2つのピックアップミラーのスループットの差」 Aは正しいが Bがズレている場合 AとBでスループットに差 ⇒得られる明るさの情報がA,Bで異なる ⇒正しく較正できず、測光誤差となる 両方とも正しく 向けられた場合 高精度な測光観測においてミラーの指向精度が重要

指向精度とスループット 要求指向精度 0.01度 0.047度 0.081度 スループットの低下が「0.5%」となる値をつないだ線 0.5% ミラーは2つあるため測光精度1%の達成 ⇒ ピックアップ鏡一枚当たりのスループット安定性0.5% ※本当はボケを考えるべき →そうすると最初から98%とかになって平らな部分ができる 0.01度のエラーは、副鏡上では1.9mmのズレ 観測効率と測光精度の良い塩梅を見つける 要求指向精度 横軸:ミラーの指向精度 (中心からのズレ) 縦軸:スループット (ストップ径(赤枠)に含まれる副鏡(ピンク)の面積)

各可動部に求められる指向精度 スループットの安定性を重視し、アンダーサイズのコールドストップを採用する F/S可動部のスペックシートから、1つのミラーでは指向精度0.02°程度  ⇒ミラー2つでの指向精度は約0.04° モデル計算の結果から、緑線の条件(ストップサイズを0.3mm小さくした場合、ス ループットは95%で、指向精度要求は0.05°)が妥当な解  ⇒今後はF/S可動部の指向精度を実際に測定していく スループットの安定性を重視するため、アンダーサイズのコールドストップを採用する。 要求スペック:1つの装置ごとに●度以下で制御できないとダメ 全体で許せる光量損失量をかってに自分で決める

F/Sの各可動部 3つの可動部の指向精度を測定中 傾斜ステージ 直動ステージ ⇒0.015度以内で制御可能 ⇒これから ⇒これから 回転ステージ ⇒0.015度以内で制御可能 ⇒これから ⇒これから F/Sの概念図 Field Stacker

傾斜ステージの駆動精度測定の様子 ⇒0.015°以内で制御できた

Relative tilt error checker (仮称) リアルタイムでピックアップミラーの指向状態を確認 角度エラーを0.01度の精度で検出   ⇒小型+望遠カメラを設置 350万画素以上のセンサー 35mm換算で焦点距離280mm以上のレンズ PCに有線接続 検討中の機器 要求を満たすようなカメラ・レンズが見つかり、実現の見込みがある。 アライメントモニター(チェッカー?) 0.001度動かす⇒副鏡上で0.2mm動く 500万画素のカメラ + 50mmレンズ (1/2.5センサーで換算は6.1倍=305mm) 1/2.5インチ,500万画素 CMOSセンサー 換算305mmのレンズ

Summary TAO/MIMIZUKUには、二視野合成装置「Field Stacker」が搭 載されている 従来の中間赤外線観測では測光誤差が5~10%あった  ⇒F/Sを用いて測光誤差1%以内を目指す 測光精度1%達成のためにはピックアップミラーの指向精度が 重要となる 指向精度とスループットの計算より、ストップサイズを0.3mm 小さくした場合、スループットは95%となり、 指向精度要求は 0.05°となる。  ⇒妥当な解。今後は3つの可動部の指向精度を測定していく リアルタイムでピックアップミラーの指向状態を確認する装置 を考案中