INDEX衛星搭載多色カメラ ならびに電流モニターによる オーロラ微細構造の観測 ○坂野井 健、岡野 章一(東北大) 岡田 雅樹、江尻 全機、菊池 雅行(極地研) 平原 聖文(立教大) 2001Jan11 第1回宇宙科学シンポジウム P29
極域高度数千kmに存在する沿磁力線上向き準静電場領域 磁気圏電子は下向きに加速され電離圏・熱圏へ降下、オーロラ発光と強い因果関係 1.イントロダクション オーロラ粒子加速領域 極域高度数千kmに存在する沿磁力線上向き準静電場領域 磁気圏電子は下向きに加速され電離圏・熱圏へ降下、オーロラ発光と強い因果関係 電離圏イオンは上向き加速(イオンアウトフロー) 加速領域の形成には波動-粒子相互作用が寄与(ミクロ過程) 加速域電位差と沿磁力線電流は比例。グローバルな磁気圏-電離圏結合におけるエネルギー輸送に寄与 2001Jan11 第1回宇宙科学シンポジウム P29
これまでの加速領域の衛星観測 Finger Potential Region (~1000km?) の高時間分解観測 が無い ・ ISIS, S3-3, DE-1&2, Viking, Akebono 最近のトピック 下向き準静電場加速領域の観測、ブラック オーロラとの関連 波動-粒子相互作用(イオンサイクロトロ ン波)の直接(波形)観測 Finger Potential Region (~1000km?) の高時間分解観測 が無い [Elphic et al., GRL, 1998] 2001Jan11 第1回宇宙科学シンポジウム P29
・地上光学観測による観測 オーロラアークの幅 =200-300 m ・20余りのモデルによる加 速領域の幅>1 km → 両者に隔たり 地上光学観測と衛星観測の比較 [Stenbaek-Nielsen et al., 1998] 2 km程度の空間構造は地上光学と粒子 観測が一致。 ・地上光学観測による観測 オーロラアークの幅 =200-300 m ・20余りのモデルによる加 速領域の幅>1 km → 両者に隔たり ・地上観測の多くはパンクロ 2001Jan11 第1回宇宙科学シンポジウム P29
2.INDEX衛星(1号機) ミッション概要 (1) ミッションライフ 3ヶ月以上 (2)打ち上げ ロケット:H-ⅡA(ピギーバック) ミッション概要 (1) ミッションライフ 3ヶ月以上 (2)打ち上げ ロケット:H-ⅡA(ピギーバック) 時期:2002年6 – 9月 (3)軌道 近地点: 680km 遠地点: 680 km 軌道傾斜角: 98.6° (1030 – 2030 MLT) 軌道周期: 98.8分 日陰率: 35.7 %(Max) 運用可能時間: 1日辺りの可視パス数:4 1パス辺りの可視時間:12分(Max) INDEX図面 (4) 運用: KSCと相模原 (5) 運用姿勢 定常時: 低スピンまたはゼロスピン。太陽指向 を基本とするが、観測要求により太陽から最大 10°(TBD)限定時間内で傾けることがある。 Safe Hold時: 太陽指向、スピン (6) ビットレート: 8-131 kbps 2001Jan11 第1回宇宙科学シンポジウム P29
3.理学ミッション (0) 目的 オーロラ粒子の高時間分解能観測とオーロラの単色撮像観測によるオーロラ微細構造の解明 観測器: PI 平原 (0) 目的 オーロラ粒子の高時間分解能観測とオーロラの単色撮像観測によるオーロラ微細構造の解明 観測器: PI 平原 ●粒子観測(ESA/ISA; 班長 平原): 電子、イオンのトップハット型静電スペクトルアナライザ エネルギー掃引 10 ― 16 keV 32 steps(片側16 steps)、1.25 msec/step 空間分解 160 m(片側掃引) ●光学観測(MAC; 班長 岡野): 3波長CCDイメージャ ●電流モニタ(CRM; 班長 江尻): 3つの静電プローブ 2001Jan11 第1回宇宙科学シンポジウム P29
4.多色オーロラカメラ(Multispectral Auroral Camera; MAC) (0) オーロラ単色イメージングの重要性 オーロラ単色イメージによって得られる情報・・・発光原子・分子の同定、発光メカニズム、発光高度、オーロラ電子エネルギーの2次元分布、などなど。 (1)MACの目的 オーロラ発光を高時間分解イメージング観測することにより、オーロラ微細構造を捉える。さらに、多波長観測データを用いて、発光メカニズムやオーロラ電子エネルギーの2次元分布などを明らかにする。 2001Jan11 第1回宇宙科学シンポジウム P29
(2) 基本的な諸元 波長 3 Ch(同時観測)、波長についての詳細は後述 使用CCD: インターライン型CCD (2) 基本的な諸元 波長 3 Ch(同時観測)、波長についての詳細は後述 使用CCD: インターライン型CCD (下記ノイズは民生品カメラでの値) 1 pixel 6.45 μm x 6.45 μm 1024 x 1024 pixels 6.605 x 6.605 mm η~0.6 @ 557.7 nm RO noise~ 9 el @ 5°C dark noise < 1el/sec @ 0°C 対物レンズ: f=50 mm / F1.2 CCD全ピクセルを用いた視野: 7.56°X7.56° 2001Jan11 第1回宇宙科学シンポジウム P29
(3) カメラ図面 2001Jan11 第1回宇宙科学シンポジウム P29
MAC MTM / TTMモデル 2001Jan11 第1回宇宙科学シンポジウム P29
(4) 観測波長および対象 (A) オーロラ許容線 (4) 観測波長および対象 (A) オーロラ許容線 OI 844.6 nm / 777.4 nm, N2(1P) 670.5 nm, N2+(1N) 427.8 nm (B) OI 557.7 nm (C) OI 630 nm [ 対象 ] ・降下電子エネルギーの推定 557.7/630/427.8 → Maxwell分布を仮定し降下電子フラックスの推定[Rees et al., 1974] 844.6/670.5 → 降下電子の全エネルギーと平均エネルギーの推定[Ono and Morishima, 1994] ※ 844.6 nm はおそらく観測不可能。 ・557.7 nm発光メカニズムの解明 557.7 nm発光:降下電子直接衝突とN2(A3Σg+)の衝突[Rees, 1989] ※N2(VK band)の観測が必要。N2(1P) やN2+(1N) から推定できるか? ・HEM(エンハンストオーロラ)等のオーロラ発光高度分布の詳細観測 557.7またはN2(1P) やN2+(1N)。 2001Jan11 第1回宇宙科学シンポジウム P29
EISCATによる電子密度等高度プロファイルとオーロラ発光構造の比較 ASI、ASG(@スバールバード)との同時観測 ・地上観測器との同時観測 EISCATによる電子密度等高度プロファイルとオーロラ発光構造の比較 ASI、ASG(@スバールバード)との同時観測 ALIS@スカンジナビアとの同時観測 SuperDARN / Poker Flat との同時観測 ※地上光学観測は557.7/630/427.8が多い。INDEXカメラも同波長が有利? ・プラズマシート低緯度側境界ダイナミクスのリモートセンシング 557.7 → プラズマシート低緯度側境界のプロトン降下による発光[Ono et al., 1987] ・SAR アーク 630 nm ・フリッカリングオーロラ 衛星光学観測と粒子観測によるフリッカリングオーロラの観測はこれまでない。 高速カメラの特徴を生かせるか? サンプリング~40Hz、空間分解能 < 1km、NEI~ 1 kRの観測モードが可能か? 2001Jan11 第1回宇宙科学シンポジウム P29
衛星データ蓄積可能容量、およびKSCにおけるテレメータ量の制限から、 CCD全ピクセルを用いた連続観測は不可能。また、極域夜側オーロラオーバ (5) 観測モード 衛星データ蓄積可能容量、およびKSCにおけるテレメータ量の制限から、 CCD全ピクセルを用いた連続観測は不可能。また、極域夜側オーロラオーバ ル通過時の250秒間程度のみ観測を行う予定。 以下の4つのモードを設定した。 (A) 粒子同時モード (B) 高度分布モード (C) 画像校正モード (D) 高度詳細モード 2001Jan11 第1回宇宙科学シンポジウム P29
粒子同時モード [ 視野 ] 視野は衛星の磁力線フットポイント。 [ 視野 ] 視野は衛星の磁力線フットポイント。 1bin(16 x 16 pix)辺りの視野=0.12°x0.12°(100km高度で~1.2 x 1.2 km) 1 flame(64 x 64 bin)の視野=7.56°x 7.56°(100km高度で~80 x 80 km) ●撮像サイクル120 msec(露出40msec、休止80msecの繰り返し) ※120 msecで衛星の進 行は約900 m ~ 3/4 bin ※露出タイミングは粒子 の両側掃引(40 msec)とシンクロ 2001Jan11 第1回宇宙科学シンポジウム P29
(B) 高度分布モード [ 視野 ] 視野はリム方向。 [ 視野 ] 視野はリム方向。 1bin(16 x 16 pix)辺りの視野=0.12°x 0.12°(2000km距離で約4 x 4 km) 1 flame(64 x 64 bin)の視野=7.56°x 7.56°(2000km距離で~270 km(V) x 270 km(H) ●撮像サイクル1 sec(露出480 msec、休止520 msecの繰り返し) ※ 1 secで衛星の進行は約7.5 km 2001Jan11 第1回宇宙科学シンポジウム P29
(C) 画像校正モード (D) 高度詳細モード 全CCD画素を用いた撮像。 全CCD画素を用いた撮像。 沿磁力線直下方向のオーロラ詳細画像取得 KSC上空におけるテスト画像取得 1 bin(2 x 2 pix)辺りの視野=0.03°x0.03°(100km高度で~310 x 310 m) 1 flame(512 x 512 bin)の視野=7.56°x 7.56°(100km高度で~80 x 80 km) 露出20 msec、休止1000 msec以上の繰り返し (D) 高度詳細モード 全CCD画素を用いた撮像。 リム方向のオーロラ高度分布詳細画像取得 1 bin(8 x 8 pix)辺りの視野=0.059°x0.059°(2000 km距離で~2 x 2 km) 1 flame(128 x 128 bin)の視野=7.56°x 7.56° (2000km距離で~270 km(V) x 270 km(H) 露出240 msec、休止1000 msec以上の繰り返し 2001Jan11 第1回宇宙科学シンポジウム P29
(6) 感度見積もり N=I (10^6 / 4π)AΩTη N : CCD 1pixel上の電子数 (count / sec) (6) 感度見積もり N=I (10^6 / 4π)AΩTη N : CCD 1pixel上の電子数 (count / sec) I : オーロラ強度(R) A : 対物レンズ面積(cm2) = 13.63 Ω : 1 pixelの見込む立体角(sr) = 1.664 e-8 T : 光学系透過率(0-1) = 0.5 (filter) x 0.8 (optics) η : CCD量子効率(0-1) = 0.6 CCD dark < 1 el/sec@0°C 、RO=9el @5°C (合計10 el) (A) 粒子同時観測モード ・露出40 msecで1 bin(64 pix)における最大輝度(12 bit) = 62 kR/bin ・ノイズ(dark + RO)~25 el / bin ・8 bit化: 上位1 bitと下位3 bit捨て → 感度範囲 31 kR – 120 R, LSB=120R/bit 2001Jan11 第1回宇宙科学シンポジウム P29
・露出480 msecで1 bin(256 pix)における最大輝度(12 bit) = 7.7 kR/bin ・ノイズ(dark + RO)~140 el / bin ・8 bit化: 上位0 bitと下位4 bit捨て → 感度範囲 7.7 kR – 30 R, LSB=30 R/bit (C)画像校正モード ・露出20 msecで1 bin(4 pix)における最大輝度(12 bit) = 11800 kR/bin ・ノイズ(dark + RO)~10 el / bin ・8 bit化: 上位4 bitと下位0 bit捨て → 感度範囲 730 kR – 3 kR, LSB=3 kR/bit (D)高度詳細モード ・露出240 msecで1 bin(64 pix)における最大輝度(12 bit) = 62 kR/bin ・ノイズ(dark + RO)~25 el / bin ・8 bit化: 上位1 bitと下位3 bit捨て → 感度範囲 31 kR – 120 R, LSB=120 R/bit 2001Jan11 第1回宇宙科学シンポジウム P29
(7) データ量 (A)粒子同時観測モード 64 bin x 64 bin をエリアとするデータ量は、 (7) データ量 (A)粒子同時観測モード 64 bin x 64 bin をエリアとするデータ量は、 8 bit x 64 x 64 = 32.8 kbit /frame/ch 120 msec cycleの場合、8.3 frame/sec/ch → 273 kbps/ch 1 orbit のデータ量 = 273 x 250 sec = 68.3 Mbit/ch/orbit = 8.54 Mbyte/ch/orbit (B)高度分布観測モード 1 sec cycleの場合、1 frame/sec/ch → 32.8 kbps/ch 1 orbit のデータ量 = 32.8 x 250 sec = 8.2 Mbit/ch/orbit = 1 Mbyte/ch/orbit 2001Jan11 第1回宇宙科学シンポジウム P29
(8) 熱解析 菊池さん(極地研)の計算を下に若干修正 詳しい解析はレジメ参照のこと。 撮像時の条件 T=196K(- 77degC) (8) 熱解析 菊池さん(極地研)の計算を下に若干修正 詳しい解析はレジメ参照のこと。 撮像時の条件 T=196K(- 77degC) 非撮像時の条件(放熱板が地球を向く場合) T=307degK(34degC) 問題点: 撮像時では温度が必要以上に低く、非撮像時 で放熱板が地球日照領域を望むと温度が高く なりすぎ、1周の間の温度変化が大きすぎる。 現在放熱版と構体結合部分の熱伝導は計算 に入っていないが、熱容量の大きな構体と若干 熱結合させることで温度を安定化させた方がよ いか? また、この見積もりは田口見積もり(CCD207- 223K)や三菱重工業(MHI)見積もり(CCD 286K)と若干食い違う。この食い違いの理由は なぜか? 2001Jan11 第1回宇宙科学シンポジウム P29
5.MTM試験 MTM試験は2000年12月初め より開始されている。 2001Jan11 第1回宇宙科学シンポジウム P29
6.今後の作業スケジュール(予定) 2001年1月ーMTM/TTM試験 5月 FM品完成 5-8月 FM噛み合わせ試験 5月 FM品完成 5-8月 FM噛み合わせ試験 8-10月 ESA/ISA校正実験、カメラ校正実験 11-12月 FM総合試験 2002年6月 打ち上げ 2001Jan11 第1回宇宙科学シンポジウム P29
7.まとめ 2002年6月打ち上げ予定のINDEX1号機には理学ミッションとして粒子と光学観測器が搭載され、オーロラの微細構造の解明を目指す。光学班は岡野教授を班長とし、3波長観測オーロラカメラの開発を進めている。 <課題> 基盤設計、特にコネクタ配置の決定。 CCD動作環境、特にノイズ低減の工夫。 電力消費の正確な見積もり。 熱解析、特にCCD冷却のためのグラファイトシート性能評価および放熱 板への固定法。 フィルタ発注。 FM品製作。 2001Jan11 第1回宇宙科学シンポジウム P29
INDEX-CRMによるオーロラ帯背景プラズマの微細構造の観測 2001年1月9日 2001Jan11 第1回宇宙科学シンポジウム P29
INDEX-CRMの観測目標 オーロラ微細構造を680km高度において、背景電子密度、背景電子温度を高空間分解能(80m程度)で観測する。 太陽光による光電子、衛星構体による航跡(ウェイク)の影響を除去するため、視野が異なる3つの静電プローブにより背景プラズマ密度及び温度を測定し、衛星近傍でのプラズマ密度をモデル計算の比較し、背景プラズマの密度及び温度を推定することを目標とする。 2001Jan11 第1回宇宙科学シンポジウム P29
MAC、CRM取り付け図 2001Jan11 第1回宇宙科学シンポジウム P29
CRM主要諸元(1) 観測目的 オーロラ帯上空における背景電子温度、背景電子密度を衛星自身による擾乱を取り除いて、高空間分解能(80m程度)観測を行う。 主要観測パラメータ(極域高度700kmを仮定) 電子密度(Ne) 102 ~ 104 cm-3 電子温度(Te) 500K(0.05eV) から 5000K(0.5eV) センサー電極 3.5cm×3.5cmの平板電極×3対 入力インピーダンス 500kΩ アンプゲイン 50:1 サンプリング周波数 100Hz A/D変換ビット数 12bit/sample 2001Jan11 第1回宇宙科学シンポジウム P29
CRM主要諸元(2) バイアス電圧 10msec × 32 step = 320msec 2001Jan11
CRMで使用する電極 板厚:1.0t ガラスエポキシ材(FR-4)地のまま 金めっき+アクアダック処理:メッキ厚(TBD) 2001Jan11 第1回宇宙科学シンポジウム P29