平成19年2月22日 神奈川労務安全衛生協会 衛生管理推進委員会 衛生管理者能力向上教育 平成19年2月22日 神奈川労務安全衛生協会 衛生管理推進委員会
第4編 健康管理 第1章 有害要因と健康障害 第2章 健康危険調査および疫学的調査等 第4編 健康管理 第1章 有害要因と健康障害 第2章 健康危険調査および疫学的調査等 第3章 健康診断および健康診断結果に基づき事業者 が講ずべき措置に関する実施計画の作成 第4章 疾病管理計画の作成 第5章 健康保持増進対策(THP)
第1章 有害要因と健康障害
「有害要因」とは何か ヒトがその生命を維持し、社会的な活動を継続していくことを阻害する因子
有害要因-物理的要因
有害要因-化学的要因
有害要因-生物的要因 有害要因-社会的要因
要因の特徴(共通点) 物理・化学・生物学的要因の共通点 社会心理的要因の例外性 要因の測定が可能 要因と障害の量的関係を把握しやすい 要因と障害の関係が動物実験などで確認しやすい 工学的手法で曝露のコントロールが可能 社会心理的要因の例外性 再現性がない 動物実験が難しい 個人差が大きい
疾病分類別業務上疾病者数 分類 件数 負傷に起因する疾病 5,370 じん肺およびじん肺合併症 814 物理的因子による疾病 513 作業様態に起因する疾病 368 化学物資等による疾病 284 その他の疾病 260 新/衛生管理(上)《第1種用》第4版 P.87
職業性疾病 有害化学物質による じん肺 金属 窒息性ガス 刺激性ガス 有機溶剤 酸・アルカリ その他の化学物質 酸素欠乏 職業がん 職業性皮膚障害と職業アレルギー 有害エネルギーによる 高温 低温 異常気圧 騒音 振動 非電離放射線 電離放射線 有害生物による 有害な作業要因による 頸肩腕症候群 腰痛 VDT作業に伴う健康障害
ホメオスターシス 神経系・免疫系・内分泌系 生物の本能の一種で、生物(生体)を維持する ために必要な機能のこと。恒常性維持 高温 発汗 高温 発汗 寒冷 産熱ふるえ 有害物質の摂取 解毒・排泄 脱水 渇き・飲水 生物の本能の一種で、生物(生体)を維持する ために必要な機能のこと。恒常性維持
自律神経・・交感神経/副交感神経 内臓・血管・腺などの不随意筋に分布 生命維持に必要な作用を無意識・反射的に調節
交感神経と副交感神経 同一器官に分布しているが,作用は正反対 交感神経 ⇒昼に活発 副交感神経 ⇒夜に活発
7.内分泌・代謝系 生体の生命現象の維持 ⇒ 体内の恒常性を維持 ⇒ その調整役=神経系+内分泌系 各種ホルモンにより調整 ⇒ 体内の恒常性を維持 ⇒ その調整役=神経系+内分泌系 各種ホルモンにより調整 ホルモンを分泌する腺=内分泌腺
【内分泌の器官】 視床下部 下垂体 副腎 甲状腺 副甲状腺 すい臓 胃 十二指腸 精巣 卵巣
標的臓器 ~化学物質による影響が最初に出現する臓器~ 有害要因 標的臓器 疾病 粉塵 肺 肺線維症・がん 鉛 骨髄 貧血 水銀 脳 精神障害 クロム 皮膚 鼻中隔穿孔・がん ベリリウム 肺・皮膚 肺炎・肉芽腫・皮膚潰瘍 一酸化炭素 血液・脳 化学的窒息・低酸素脳症 有機溶剤 脳・皮膚 麻酔作用・皮膚炎
量-影響関係 量-反応関係
量-影響関係 量-影響関係 鉛と尿中δアミノレブリン酸 化学物質の摂取量と生体影響の指標 (代謝産物)が関連していること 量-影響関係 鉛と尿中δアミノレブリン酸 化学物質の摂取量と生体影響の指標 (代謝産物)が関連していること 量-反応関係 鉛と貧血 化学物質の摂取量と生体影響の発生率(発病率)が関連していること
中 毒 化学物質の生体影響が病的なレベルでみられること 中 毒 化学物質の生体影響が病的なレベルでみられること 急性:日単位 亜急性:週単位 慢性:月単位 体内摂取量>排泄量 ⇒慢性中毒発症 蓄積性の指標 ⇒生物学的半減期 閾値;中毒を起こさない摂取量の上限
確率的影響 発癌物質・要因 放射線 化学物質
生物学的モニタリング 1 化学物質の体内摂取状況 2 化学物質に対する生体反応の程度 (曝露モニタリング) (影響モニタリング) 化学物質を取り扱う作業者の健康保持のために必要な情報は 1 化学物質の体内摂取状況 (曝露モニタリング) 2 化学物質に対する生体反応の程度 (影響モニタリング) 3 化学物質による早期の健康障害(事後措置) 1・2を知るために 化学物質そのものの量 化学物質が代謝されてできる物質 化学物質摂取により生じる生体変化を示す物質 を測定する(生物学的モニタリング)
生物学的モニタリングが必要な背景 作業環境や作業方法の改善により作業者の曝露 程度は低下 →今や化学物質による既知の健康 障害が健診 作業環境や作業方法の改善により作業者の曝露 程度は低下 →今や化学物質による既知の健康 障害が健診 ではみつからない 従来の考え方では低濃度・長期曝露による健康 影響についての情報は得られない (今のところほとんどデータがない)
生物学的モニタリングの方法 生物学的暴露モニタリング 鉛・カドミウム・水銀 生物学的影響モニタリング 有機溶剤 代謝されない物質 生物学的半減期の長い物質 生物学的影響モニタリング 有機溶剤 生物学的半減期が短い物質 作業終了直後に測定する必要がある
有機溶剤中毒予防規則では・・・ 従来の自覚症状を中心とした健診の他に、指定の溶剤については体内での代謝物を定量する 分布区分
代謝
半減期とモニタリング
ヘムの合成
鉛健診の分布区分
Biological Monitoring トルエンの代謝経路 Biological Monitoring <代謝経路> ベンジル アルコール ベンズ アルデヒド 馬尿酸 安息香酸 80% トルエン 呼気 20% 尿 クレゾール トルエン オキサイド 1%
有機溶剤健診の分布区分
分布区分 生物学的モニタリングの結果から区分を決める 分布1; 少ない群 分布2; 中間群 分布3; 多い群 分布1; 少ない群 分布2; 中間群 分布3; 多い群 作業環境管理・作業環境管理を見直し 分布3に属する人数を減少させる 分布1・2に属するものの測定値を上昇させない
「作業関連」の意味 作業が発症要因の一つになっている。 作業が発症や再発の誘引となっている。 作業が健康障害の増悪因子となっている。 健康障害と作業の因果関係が明確でないものに用いられる。
作業に関する疲労の要因 <労働> 作業強度(作業密度) 勤務形態(夜勤、交替制)、作業時間 <内的環境> 不安、興味の喪失、意欲の低下 拘束感、危機感 過大責任、不満、不安、自己暗示 <人的環境> 人間関係 健康状態 加齢 <物的環境> 騒音、低照度、 高温多湿、振動 空気中のCO2濃度
「作業関連」の背景 労働衛生では従来、健康障害と作業の因 果関係が明確なものが対象であった。 労働衛生では従来、健康障害と作業の因 果関係が明確なものが対象であった。 現在では、作業側の要因の内容に心理・ 社会的なものが入り込んできている。 作業側の要因と、労働者の持つ個体側の 要因の相互関係に注目することが重要
作業関連疾患の例(WHO) 行動偏倚と心身症 (喫煙、過剰飲酒、過食など) 高血圧 虚血性心疾患 慢性非特異性呼吸器疾患 運動器系障害
作業関連疾患について 職業病 作業 関連疾患 生活 習慣病 大 作業要因 小 小 個人的要因 大 発症・増悪要因として 作業に関連した因子 が考えられる疾病のこと 職業病 作業 関連疾患 大 作業要因 小 生活 習慣病 小 個人的要因 大
脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準では・・・ 発症 発症 発症 ② ③ 血管病変の進行 ① 過重労働による 基礎疾患の増悪 【基本的な考え方】 ・ 脳・心臓疾患は、血管病変等が長い年月の生活の営みの中で、形成、進行及び増悪するといった自然経過をたどり発症する。 ・ しかしながら、業務による明らかな過重負荷が加わることによって、血管病変等がその自然経過を超えて著しく増悪し、脳・心臓疾患が発症する場合がある。 ・ 脳・心臓疾患の発症に影響を及ぼす業務による明らかな過重負荷として、発症に近接した時期における負荷のほか、長期間にわたる疲労の蓄積も考慮することとした。 また、業務の過重性の評価に当たっては、労働時間、勤務形態、作業環境、精神的緊張の状態等を具体的かつ客観的に把握、検討し、総合的に判断する必要がある。 ① 業務に関連する疲労の蓄積による血管病変等の著しい増悪 ② 業務に関連する急性の負荷による発症の誘発 ③ 業務に関連する急性の果汁負荷による発症 自然経過 時間の経過 厚生労働省「脳・心臓疾患の認定基準に関する専門検討会報告書(2001)」より
ストレス関連疾患 胃・十二指腸潰瘍 潰瘍性大腸炎 過敏性腸症候群 神経性嘔吐 本態性高血圧 (神経性)狭心症 過換気症候群 気管支喘息 甲状腺機能亢進症 神経性食思不振症 偏頭痛 筋緊張性頭痛 書痙 痙性斜頚 関節リュウマチ 腰痛症 頸肩腕症候群 原発性緑内障 メニエール症候群 円形脱毛症 インポテンツ 更年期障害 心臓神経症 胃腸神経症 膀胱神経症 神経症 不眠症 自律神経失調症 神経症的抑うつ障害 反応性うつ病 その他(神経性○○と診断されたもの)
ストレスによる ホメオスターシスへの影響
第2章 健康危険調査と疫学的調査等 健康危険調査=リスクアセスメント
原材料の有害性調査 ~必要なデータ~ 急性中毒⇒50%致死量 慢性中毒⇒量-反応関係、閾値 感作性 ⇒アレルギー反応 感作性 ⇒アレルギー反応 催奇形性⇒がん原性試験、変異原性試験 生殖毒性 発がん性
作業工程の有害性 触媒や溶剤として使用される化学物質の有害性 中間生成物の有害性 作業環境の有害性 物理的環境(温度・湿度・照明・騒音・振動等) 化学物質・粉塵の気中濃度 赤外線・紫外線・電離放射線等
作業負荷 作業の質 作業時間 作業密度(単位作業時間あたりの作業量) 作業姿勢
労働安全衛生法で定められた健康危険調査 「健康危険調査」のうち化学物質に関する部分を努力義務として事業者に課している。 発がん性があるかどうかを確認することに限定されている。
疫学的調査 集団を対象として、健康障害の頻度と分布を観察し、その発生に関与する要因を明らかにする ⇒少数例のみで、全てを語ることができるか? ⇒労働者集団を対象としての仕事であることに注意
第3章 健康診断および健康診断結果 に基づき事業者が講ずべき措置に関する実施計画の作成 第3章 健康診断および健康診断結果 に基づき事業者が講ずべき措置に関する実施計画の作成
健康診断の種類 一般健康診断 雇入時の健康診断 定期健康診断 特定業務従事者の健康診断 海外派遣労働者の健康診断 結核健康診断 給食従業員の検便 特殊健康診断 有機溶剤健康診断 鉛健康診断 四アルキル鉛健康診断 特定化学物質健康診断 高気圧作業健康診断 電離放射線健康診断 じん肺健康診断 歯科健康診断 指導勧奨健診はP264へ
健康診断の新しい方向 一般健康診断(主として定期健康診断) 労働者の全体的な健康状態を経時的に把握 適切な事後措置を行う事が目的 労働者の全体的な健康状態を経時的に把握 適切な事後措置を行う事が目的 最近の重要課題は生活習慣病対策 特殊健康診断 法令で定められた有害業務の従事者のみ 疾病発生の発見から、曝露調査へと移行して きている(生物学的モニタリング)
健康診断項目の選定 健康診断の実施義務は事業者にある。 健康診断は医師が行わなければならない。 健康診断は厚生労働省令で定める方法で行わなければならない。
健康診断項目の改正(平成10年) 平成20年4月~ LDLコレステロール 腹囲 一般健康診断項目の追加 聴力の検査方法の弾力化 HDLコレステロール 血糖検査(ヘモグロビンA1cで代用可) 聴力の検査方法の弾力化 45才未満(40,35才を除く)で医師の判断 健康診断項目の省略 血糖検査実施時の尿糖 40才未満(35才を除く)のHDLコレステロール、血糖 20才以上の身長 その他 個人票のBMIの欄の追加(体重kg/身長m^2) 以上に伴った健康診断結果報告書の変更
医師の判断による健診項目の省略 「まず省略ありき」ではない 医師の然るべき判断による 省略するに足りる正当な理由
健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置 事業者は、有所見の労働者について、医師等の意見を踏まえ就業上の措置を講ずる。 産業医の選任義務がある事業場では産業医 産業医の選任義務がない事業場では 地域産業保健センターを活用
一般健康診断と健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置 集団としての評価 有所見者数、有所見者率の推移 有所見者のうち、新たになった者、再度なった者、継続してなっている者の割合の推移 有所見から無所見に改善した者の推移 検査結果の平均値とその標準偏差の推移 有所見ではないが、検査結果に大きな変化が認められた者の数と率の推移
じん肺管理区分と事後措置 5段階評価; 地方じん肺審査医の意見に基づき 都道府県労働局長が決定(行政処分) 管理2または3イ 管理3ロ 特殊健康診断と健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置 じん肺管理区分と事後措置 5段階評価; 地方じん肺審査医の意見に基づき 都道府県労働局長が決定(行政処分) 管理2または3イ 就業場所の変更や作業時間の短縮 事業者の努力義務 管理3ロ 作業転換 都道府県労働局長が事業者に指示 管理4 療養
分布区分と健康診断結果に基づき 事業者が講ずべき措置 生物学的モニタリングの結果から区分を決める 分布1; 少ない群 分布2; 中間群 分布3; 多い群 作業環境管理・作業環境管理を見直し 分布3に属する人数を減少させる 分布1・2に属するものの測定値を上昇させない
実施計画の作成と衛生管理者の実務 健康管理目標の確認 実施しなければならない健康診断の種類の確認 健診対象の確認 健診項目の選定 健診の実施方法の選定 場所・日時の選定 健診結果の評価方法の確認 健康診断結果の通知方法の確認 健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置の実施方法の確認 事業場内関係者との話し合い 衛生委員会における審議 必要経費の確定 健康診断の実施 健診結果の判定 健診結果の通知 労働基準監督所長への結果報告書の作成 健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置の実施 健康診断結果の評価 衛生委員会への結果報告書の作成 健康診断結果の記録とその保存
第4章 疾病管理計画の作成
疾病管理 ・・・現場からはあくまでも支援者として関与 疾病管理 ・・・現場からはあくまでも支援者として関与 病気の診断に有用な健康情報の提供 病気の発症と業務との関連を判断するために必要な情報の提供 治療やリハビリテーションを進めるための職場環境作り 職場復帰への配慮 治療効果を維持し、再発を防止 するための職場環境の整備
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第5章 健康保持増進対策(THP)
THPの概要 健康測定の実施 健康指導 衛生管理者の役割 運動指導 心理相談 栄養指導 保健指導 THPの企画・立案・実施への参画 他の産業保健スタッフとの協力 運動実践担当者等の研修受講
THP推進の方法 健康保持増進計画の策定 健康保持増進の実施 健康保持増進実施の評価 健康保険組合との関係 中小規模事業場健康づくり事業 労働災害の発生 生活習慣病の有病率 疾病休業 医療費支出 健康保険組合との関係 中小規模事業場健康づくり事業
THPの実施 フィードバック 運動指導(ヘルスケアトレーナー・ヘルスケアリーダー) 心理相談(心理相談員) 栄養指導(産業栄養指導者) 態度の変容 行動の変容 健康測定 健康指導 知識の理解 運動指導(ヘルスケアトレーナー・ヘルスケアリーダー) 心理相談(心理相談員) 栄養指導(産業栄養指導者) 保健指導(産業保健指導者など)
THPの評価 健康測定 健康指導 健康測定結果の改善(医学検査データ、体力測定などの項目の改善) 直接的効果 運動実施率上昇 食生活状況の改善 喫煙率の減少など 最終的効果 成人病(生活習慣病)の有病率の減少 労働災害発生件数の減少 労働損失日数(病気、負傷によるもの)の減少 医療費(健康保険支払状況) 労災、成人病(生活習慣病)死亡率の減少など
生き生きと安心して 働くことができる 職場環境づくりに向けて