事例研究(ミクロ経済政策・問題分析 I) - 規制産業と料金・価格制度 - (#406 再生可能エネルギーと送電系統問題) 2017年 12月 戒能一成
0. 本講の目的 (手法面) - 空間経済モデルを応用した再生可能エネルギー の導入と送電系統問題の関係について理解する → 送電系統の問題は本当に再生可能エネル ギー導入の「制約」か ? (内容面) - 再生可能エネルギー導入の国際比較について 定量的に理解する 2
1. 再生可能エネルギー導入量・比率と国際比較 1-1. 一次エネルギー供給構成の国際比較概観 1-1. 一次エネルギー供給構成の国際比較概観 - 一次エネルギー供給に占める再生可能エネルギー 比率は 2000年頃は日米欧で大差なかったが、 近年 欧州が突出して増加 天然ガス 石 油 石 炭
1. 再生可能エネルギー導入量・比率と国際比較 1-2. 再生可能エネルギー比率の算定方法(1) 1-2. 再生可能エネルギー比率の算定方法(1) - 一次エネルギー供給に占める再生可能エネルギー 比率などの算定方法は 2通り存在、要注意 [IEA方式] [日米方式] - 水力など再生可能電力は - 水力など再生可能電力は 効率 100%で発電と仮定 当該国の平均汽力発電効 率で発電されたと仮定 (利点) (利点) - 汽力発電の殆どない国でも - バイオマスと水力等を一定の 算定可能 仮定の下で公平に評価可能 (欠点) (欠点) - 水力等が相対的に過小評価 - 汽力発電がないと評価不能
1. 再生可能エネルギー導入量・比率と国際比較 1-3. 再生可能エネルギー比率の算定方法(2) [IEA方式] [日米方式] 1-3. 再生可能エネルギー比率の算定方法(2) [IEA方式] [日米方式] (汽力(化石燃料・バイオマス)発電)(汽力(化石燃料・バイオマス)発電) (← IEA方式と同じ) (水力等再生可能発電) (水力等再生可能発電) (~ 過小評価) 汽力発電効率40% 一次エネル ギー投入 9.0MJ (実績) 3.6 MJ (1kWh) 効率100%と仮定 汽力発電効率と同じと仮定 一次エネル ギー投入 9.0MJ (仮定) ≡ 3.6 MJ 3.6 MJ (1kWh) 3.6 MJ (1kWh)
1. 再生可能エネルギー導入量・比率と国際比較 1-4. 対一次エネルギー供給再生可能エネルギー比率 1-4. 対一次エネルギー供給再生可能エネルギー比率 - 一次エネルギー供給に占める再生可能エネルギー 比率は 2000年頃は日米欧で大差なかったが、 2005年以降に欧州が突出して増加 2010年値 IEA式 日米式 欧 0.105 0.141 米 0.059 0.086 日 0.041 0.071 欧州(EU28) 米 国 日 本
1. 再生可能エネルギー導入量・比率と国際比較 1-5. 対最終エネルギー消費再生可能エネルギー比率 1-5. 対最終エネルギー消費再生可能エネルギー比率 - 最終エネルギー消費に占める再生可能エネルギー 比率も同様 ( 主として EUが用いる再生可能エネルギー指標 ) 2010年値 IEA式 日米式 欧 0.150 0.210 米 0.087 0.130 日 0.063 0.114 欧州(EU28) 米 国 日 本
1. 再生可能エネルギー導入量・比率と国際比較 1-6. 再生可能エネルギー内訳構成の国際比較 1-6. 再生可能エネルギー内訳構成の国際比較 - 再生可能エネルギーの内訳構成比率は日米欧 で異なり、日本は水力が半分を占めるが欧米 ではバイオマスが半分を占め最も多い 地熱風力太陽 バイオマス 水 力 欧州(EU28) 米 国 日 本
1. 再生可能エネルギー導入量・比率と国際比較 1-7. 再生可能エネルギー内訳変化の国際比較 1-7. 再生可能エネルギー内訳変化の国際比較 - 再生可能エネルギーの内訳変化では、2005年 以降の欧州ではバイオマスが大幅に増加 (一次エネルギー供給推移) (同5年毎の変化量) バイオマス バイオマス
1. 再生可能エネルギー導入量・比率と国際比較 1-8. バイオマス消費部門別構成の国際比較 1-8. バイオマス消費部門別構成の国際比較 - 欧米と日本が決定的に異なるのは、バイオマス 利用が日本は発電・産業部門に偏っている点 (← 再生可能エネルギー拡大の「戦略上の欠陥」) 欧州(EU28) 米 国 日 本
1. 再生可能エネルギー導入量・比率と国際比較 1-9. 再生可能エネルギーの多面的国際比較手法 - 単純な数値の比較だけではなく、社会的条件 や地理条件などを考慮した多面的比較が必要 - 再生可能エネルギー/一次エネルギー供給比率 (RNE/PES) → エネルギー自給可能性の一指標 - 可住地人口密度 (PDHL) → 再生可能エネルギーによる土地利用 可能性と費用に関する一指標
1. 再生可能エネルギー導入量・比率と国際比較 1-10. 再生可能エネルギーの多面的国際比較(1) 1-10. 再生可能エネルギーの多面的国際比較(1) - 可住地人口密度を揃えて比較した場合の例: 日本の再生可能エネルギー比率は欧州より低? 2000年 2010年 ↑ RNE/PES PDHL →
1. 再生可能エネルギー導入量・比率と国際比較 1-11. 再生可能エネルギーの多面的国際比較(2) 1-11. 再生可能エネルギーの多面的国際比較(2) - 可住地人口密度を揃えて比較した場合の例: 2000→2010年での欧州再生可能エネルギーは 人口密度100人前後の地域で最も大きく増加 ↑ RNE/PES PDHL →
1. 再生可能エネルギー導入量・比率と国際比較 1-12. 再生可能エネルギー比率の比較と考察 - 可住地人口密度を揃えて比較した場合、日本 の再生可能エネルギー比率は欧米に遜色ない - 日本では相対的に降水量が多く、地形が急 峻で水力発電に有利 (= バイオマス不利) - 平地の土地利用・宅地化率が高く農林業生 産が減退気味、国内バイオマス供給拡大難 - 一方でバイオマス利用分野は発電・産業に集中 運輸・家庭部門での利用拡大が殆ど未着手 → 再生可能エネルギー拡大戦略の抜本見直しが必要
2. 国内再生可能エネルギー導入状況と空間分布 2-1. 国内再生可能エネルギー導入量 (2012FY) 一次エネルギー総供給 20169 PJ うち 再生可能エネルギー 1083 PJ (5.4%) → 原子力発電停止分は石炭・天然ガスが代替
2. 国内再生可能エネルギー導入状況と空間分布 2-2. 国内再生可能エネルギー導入量と内訳 - 再生可能エネルギーの半分以上は水力発電 2-2. 国内再生可能エネルギー導入量と内訳 - 再生可能エネルギーの半分以上は水力発電 - RPS法施行(’03)以降風力・バイオマスが増加 するも水力・太陽熱の減少の方が影響大 バイオマス 水力発電
2. 国内再生可能エネルギー導入状況と空間分布 2-3. RPS法(電気事業者新エネ電力特別措置法) - 成立: 2002年制定、2003年施行 - 新エネ電力対象: 太陽光、風力、地熱、水力 (1MW以下水路式のみ)、バイオマス * 2009年から太陽光は一部別枠買取義務化 - 義務内容: 電気事業者は前年度販売電力量 に応じた基準目標量*相当分を新エネ 電力で供給すること * 現在約 1%相当・今後供給状況に応じ引上 - 遵守判定: 3年毎に判定 - 弾力措置: バンキング(過剰達成量持越し)可
2. 国内再生可能エネルギー導入状況と空間分布 2-4. RPS法の効果と限界 - 風力・バイオマスなど特定のエネルギー源は増加 再生可能エネルギー全体への寄与は小さい (cf. 国内発電電力量 945,700 x 10^6kWh(2011)) 固定価格買取制度(2009-) 再生可能エネルギー 国内供給量 風力発電 RPS法買取量 (1kWh = 9.0MJ) バイオマス発電 18
2. 国内再生可能エネルギー導入状況と空間分布 2-5. 再生可能電力固定価格買取制度(FIT法) - 成立: 2011年制定、2012年施行 (RPS法廃止) - 再生可能電力対象: 当初 太陽光のみ (2009) 風力、地熱、中小水力、バイオマスに拡大 - 義務内容: 電気事業者は再生可能電力を、経 済産業省が指定する価格で全量買取ること - 例外措置: 電力の安定供給に支障がある場合、 電気事業者は買取停止可能 ← 相変わらず電力のみが対象、電気料金を介し た費用賦課を前提に問題の量的解決を指向
2-6. 大規模集中型/小規模分散型の相違(電力) 2. 再生可能エネルギーの導入状況と空間分布 2-6. 大規模集中型/小規模分散型の相違(電力) 大規模(通常)電源 大規模集中型再生可能電源 石炭・石油・LNG火力発電 原子力発電 揚水式水力発電 貯水式水力発電 地熱発電 風力発電 メガソーラー式太陽光発電 バイオマス発電(混焼分) 需給調整 高圧変電所 大規模集中型再生可能電源は高圧送変電系統と配電網 を両方経由する . → 輸送問題が重要 . 高圧送変電系統 供給変電所 配電網 小規模分散型再生可能電源 小規模分散再生可能電源は配電網以下を経由する 太陽光発電 水路式水力発電 屋内線 需要家
2-7. 大規模集中型/小規模分散型の事例(電力) 大規模集中型 → 可住地人口密度と負相関 小規模分散型 → 可住地人口密度と正相関 2. 再生可能エネルギーの導入状況と空間分布 2-7. 大規模集中型/小規模分散型の事例(電力) 大規模集中型 → 可住地人口密度と負相関 小規模分散型 → 可住地人口密度と正相関 太陽光発電 正相関 → 小規模分散型 風力発電 負相関 → 大規模集中型 PDHL →
- 国内の風力発電設備容量分布は、可住地人 口密度と負相関を保ちながら拡大 2. 再生可能エネルギーの導入状況と空間分布 2-8. 大規模集中型 : 風力発電 - 国内の風力発電設備容量分布は、可住地人 口密度と負相関を保ちながら拡大 ( → 風力発電設備容量 が極端に低い都道 府県は、外洋に面し ていない「内陸」都 道府県が多い : (海陸風が利用でき ず高地は国立公 園が多い)) PDHL →
2. 再生可能エネルギーの導入状況と空間分布 2-9. 大規模集中型 : 風力発電 2-9. 大規模集中型 : 風力発電 - ln WCi = β0 + β1 * ln PDHLi + β2 * ln SNOWi +β3 * ln RAINi + β4 * ln WINDi + β5 * INLDi + ei (Cross Sec.,’98,’03,’08,’13) WCi: 都道府県別風力発電設備設置容量 (kW) NEDO PDHLi: 都道府県別可住地人口密度 (人/km2) 総務省 SNOWi: 30年平均 10cm以上積雪日数 (days) 東京天文台理科年表 RAINi: 30年平均 降水量 (mm) 同 WINDi: 30年平均 10m/s以上風速日数 (days) 同 INLDi: 内陸都道府県(外洋に面していない都道府県)ダミー (p) β1 PDHL β2 SNOW β3 RAIN β4 WIND β5 INLD β0 . 1998 -1.313 -0.006 +0.134 -0.006 -4.934 +12.17 (0.062)* (0.958)-- (0.949)-- (0.986)-- (0.001)*** (0.457)-- 2003 -0.911 +0.062 +1.393 -0.323 -4.006 +4.390 (0.223)-- (0.638)-- (0.417)-- (0.417)-- (0.010)*** (0.803)-- 2008 -1.356 +0.095 +5.632 -0.352 -4.137 -22.29 (0.077)* (0.480)-- (0.016)** (0.384)-- (0.009)*** (0.215)— 2013 -1.161 +0.176 +5.235 -0.383 -4.592 -20.33 (0.177)-- (0.250)-- (0.046)** (0.403)-- (0.010)*** (0.316)--
2-10. 大規模集中型 : バイオマス (木質: 林業生産) - 国内の林業による木質系バイオマス生産額 は、可住地人口密度と負相関 2. 再生可能エネルギーの導入状況と空間分布 2-10. 大規模集中型 : バイオマス (木質: 林業生産) - 国内の林業による木質系バイオマス生産額 は、可住地人口密度と負相関 (→ 国内生産は停滞: RPS法施行以降の 増加は輸入に依存 ( 間伐材などを国内 集荷することは費用 が嵩むため )) PDHL →
- 国内の公営水力発電量は、可住地人口密度 と負相関 2. 再生可能エネルギーの導入状況と空間分布 2-11. 大規模集中型 : 水力発電 (公営水力) - 国内の公営水力発電量は、可住地人口密度 と負相関 ( → 国内発電電力量は 停滞 : (RPS法上1000kW 以下の流下式水力 のみが対象)) PDHL →
2. 再生可能エネルギーの導入状況と空間分布 2-12. 小規模分散型 : 太陽光発電 (住宅用) - 国内の住宅用太陽光発電設備設置容量は 2-12. 小規模分散型 : 太陽光発電 (住宅用) - 国内の住宅用太陽光発電設備設置容量は 可住地人口密度と正相関を保ちながら拡大 (→ 可住地人口密度と 設備容量の関係は わずかに飽和傾向 あり: 人口密度が 過度に高いと一戸 建住宅の比率が低 下するためと推察 される ) PDHL →
2. 再生可能エネルギーの導入状況と空間分布 2-13. 小規模分散型 : 太陽光発電 (住宅用) 2-13. 小規模分散型 : 太陽光発電 (住宅用) - ln SCi = β0 + β1 * ln PDHLi + β2 * ln HHDIi +β3 * ln SUNSi + β4 * ln RAINi + β5 * ln SNOWi + ei (Cross Sec.,‘98,’03,’08,’13) SCi: 都道府県別住宅用太陽光発電設備設置容量 (kW) NEF. 住宅土地統計調査から推計 PDHLi: 都道府県別可住地人口密度 (人/km2) 総務省 HHDIi: 都道府県別県民所得 (百万円 /年) 県民経済計算 SUNSi: 30年平均年間日照時間 (時間) 東京天文台理科年表 RAINi: 30年平均年間降水量 (mm) 同 SNOWi: 30年平均10cm以上積雪日数 (日) 同 (p) β1 PDHL β2 HHDI β3 SUNS β4 RAIN β5 SNOW β0 . 1998 +0.370 +1.577 +3.344 -0.807 -0.011 -17.24 (0.010)*** (0.021)** (0.012)** (0.017)** (0.663)-- (0.130)-- 2003 +0.197 +1.520 +3.926 -0.392 -0.048 -21.06 (0.180)-- (0.034)** (0.006)*** (0.260)-- (0.096)-- (0.067)* 2008 +0.271 +1.225 +3.279 -0.307 -0.028 -15.68 (0.036)** (0.048)** (0.008)*** (0.309)-- (0.261)-- (0.114)-- 2013 +0.274 +1.395 +3.595 -0.453 -0.029 -16.18 (0.037)** (0.027)** (0.004)*** (0.141)-- (0.248)-- (0.108)--
- 現状日米欧とも再生可能エネルギーの大半は大 規模集中型の水力・バイオマスであり、国・地域別 に比較すると可住地人口密度と負相関になる 2. 再生可能エネルギーの導入状況と空間分布 2-14. 大規模集中型/小規模分散型と空間問題 - 現状日米欧とも再生可能エネルギーの大半は大 規模集中型の水力・バイオマスであり、国・地域別 に比較すると可住地人口密度と負相関になる 水力発電 バイオマス 水 力 バイオマス
- ところで 太陽光発電の普及拡大に政策資源 の大部分を投入する現状の日本の再生可能 エネルギー政策は妥当か? 2. 再生可能エネルギーの導入状況と空間分布 2-15. 大規模集中型/小規模分散型と空間問題 - ところで 太陽光発電の普及拡大に政策資源 の大部分を投入する現状の日本の再生可能 エネルギー政策は妥当か? 太陽光発電 水力発電 バイオマス ? 水 力 バイオマス
3. 大規模集中型再生可能エネルギー拡大上の問題 3-1. 大規模集中型再生可能エネルギーと空間的問題 3-1. 大規模集中型再生可能エネルギーと空間的問題 - 大規模集中型においては、用地取得・周辺環 境対策などの費用と、送電線などの輸送ネット ワーク費用の関係から、最適立地距離が存在 ⇒ 輸送ネットワーク整備の問題が存在 Z* Z* 大都市からの距離 Z ( km ) ※ 風況は一様と仮定 大都市からの距離 Z ( km )
3. 大規模集中型再生可能エネルギー拡大上の問題 3-1. 大規模集中型再生可能エネルギーと空間的問題 3-1. 大規模集中型再生可能エネルギーと空間的問題 - 風況・降水量・地価などに地域差がない場合 → 最適立地点は同心円状 - 風況・降水量・地価などに地域差がある場合 → 最適立地点は点~三日月状 Z* Z* Z*
3. 大規模集中型再生可能エネルギー拡大上の問題 3-2. 再生可能エネルギー導入と時間的問題 3-2. 再生可能エネルギー導入と時間的問題 - 電力などの需給においては、季節別・時間帯 別に変化する需要に対し供給側で追従するこ とが必要(大規模集中型・小規模分散型共通) ⇒ 季節追従・時間帯追従の問題が存在 住宅用太陽光発電と 時間帯追従性問題 (例) 太陽光発電供給 (前日分) + - 家庭電灯需要 00 06 12 18 24 ( 時 )
3. 大規模集中型再生可能エネルギー拡大上の問題 3-3. 再生可能エネルギー導入と需給上の問題点 3-3. 再生可能エネルギー導入と需給上の問題点 問題点 空間的問題 時間的問題 種類 輸送ネットワーク 季節追従 時間帯追従 (大規模集中型) バイオマス ○(貯蔵・輸送容易) ○ ○ 地熱発電 ×ネットワーク要 ○ ○ 水力発電(貯水式) ×ネットワーク要 ×追従不可 ○ 水力発電(流下式) ×ネットワーク要 ×追従不可 ×追従不可 風力発電 ×ネットワーク要 ×追従不可 ×追従不可 太陽光発電(メガ) ×ネットワーク要 ×追従不可 ×追従不可 (小規模分散型) 太陽光発電 ○(需要地設置) ×追従不可 ×追従不可
3. 大規模集中型再生可能エネルギー拡大上の問題 3-4. 大規模集中型と費用最小化距離問題(1) 3-4. 大規模集中型と費用最小化距離問題(1) - 再生可能電源の多くは海岸・山林などに立地 - 戒能モデルを用い費用最小化距離等を試算 稼動率 40%帯 稼動率 80%帯
3. 大規模集中型再生可能エネルギー拡大上の問題 3-5. 大規模集中型と費用最小化距離問題(2) - 山林立地を前提として費用最小化距離・最小 費用を求めると、貯水式水力・風力が最廉価 費用最小化 最小費用(\/kWh) 距離(km) 低稼働率(40%) 高稼働率(80%) 貯水式水力 140 24.6 12.3 地 熱 120 39.5 19.7 風力発電 360 18.7 -- (実現困難) 太陽光(メガ) 440 20.4 -- (実現不能) LNG複合 160 18.2 13.0 石炭火力 240 18.2 11.4
3. 大規模集中型再生可能エネルギー拡大上の問題 3-6. 大規模集中型とRPS・固定買取制度の影響(1) - 現実の制度では場所・時間帯を考慮せず → 風力発電などでは最小費用実現とは限らず 500~600 人/km2 360km 500~600 人/km2
3. 大規模集中型再生可能エネルギー拡大上の問題 3-7. 大規模集中型とRPS・固定買取制度の影響(2) - 送電線など輸送ネットワーク費用を考慮しない、 部分最適な立地点は本来の最適点より遠方 (本来の) 総費用 C 500~600 人/km2 送電費用 Ct C* 発電費用 Cg z* zg
3. 大規模集中型再生可能エネルギー拡大上の問題 3-8. 大規模集中型とRPS・固定価格制度の影響(3) - 風力発電の設備容量は増加したが発電電力 量は非需要期に偏在、季節追従は改善せず 水力発電 風力発電
3. 大規模集中型再生可能エネルギー拡大上の問題 3-9. 大規模集中型と支援政策の問題点 - 大規模集中型再生可能エネルギーにおいては、 3-9. 大規模集中型と支援政策の問題点 - 大規模集中型再生可能エネルギーにおいては、 輸送ネットワークの費用を正しく考慮した場合 その供給の空間構造に費用最小化距離が 存在する 39
3. 大規模集中型再生可能エネルギー拡大上の問題 3-10. 大規模集中型と支援政策の問題点 - 大規模集中型再生可能エネルギーの費用最小 化距離・最小費用などの問題は、通常の火力 発電の空間配置問題と同じ - 従って、送電線など輸送ネットワーク費用の問題 や、季節・時間帯追従の問題を考慮しない形 で供給拡大の支援政策を行うことは不合理で あり、また過度な条件制約は量的拡大を阻害 - 大規模集中型再生可能エネルギーの導入支援 は、輸送ネットワーク費用や季節・時間帯別の価 値を反映した簡明な支援政策に改めるべき
4. 小規模分散型再生可能エネルギー拡大上の問題 4-1. 小規模分散型と時間帯問題 - 小規模分散型再生可能エネルギーでは、主に時 4-1. 小規模分散型と時間帯問題 - 小規模分散型再生可能エネルギーでは、主に時 間帯別の需要に供給側で追従することが必要 ⇒ 特に電力においては蓄電設備の役割が 重要、以下太陽光発電について議論 住宅用太陽光発電と 時間帯追従性問題 (例) 太陽光発電供給 (前日分) + - 家庭電灯需要 00 06 12 18 24 ( 時 )
4. 小規模分散型再生可能エネルギー拡大上の問題 4-2. 太陽光発電設備の価格推移 - 量産効果による価格低減の影響が非常に大 4-2. 太陽光発電設備の価格推移 - 量産効果による価格低減の影響が非常に大 - 固定価格買取制度により出荷量が急増するも 量産効果は飽和傾向 (「不安定成長問題」) 固定価格買取制度(2009-) システム価格 (対数) システム価格 補助開始 (1994) 補助中断(2007-08) 42 累積導入容量(対数)
4. 小規模分散型再生可能エネルギー拡大上の問題 4-3. 蓄電池設備の価格推移 - 蓄電池設備の価格もまた量産効果による価格 4-3. 蓄電池設備の価格推移 - 蓄電池設備の価格もまた量産効果による価格 低減の影響が過去非常に大 - Liイオン電池の国内生産は停滞、効果逓減 Liイオン電池 Liイオン電池 鉛蓄電池 鉛蓄電池
4. 小規模分散型再生可能エネルギー拡大上の問題 4-4. 住宅用太陽光発電の時間帯追従の2方式 - 系統側調整型 (スマートグリッド) 4-4. 住宅用太陽光発電の時間帯追従の2方式 - 系統側調整型 (スマートグリッド) - 需要家側調整型 (ゼロエミッションハウス) 太陽光発電設備 配電網 系統(電力会社) 需給調整 需要家 (配電網強化) (系統側蓄電池) 太陽光発電設備 配電網 系統(電力会社) 需要家 需給調整 (不足分・緊急時) (需要家側蓄電池) 44
4. 小規模分散型再生可能エネルギー拡大上の問題 4-5. 時間帯追従方式別の費用比較・予測 (’08) 4-5. 時間帯追従方式別の費用比較・予測 (’08) - 需要家側調整より系統側調整の方が費用低 - 2020年前後に「系統等価(Grid Parity)」実現 需要側系統等価 Demand Side G.P. 電灯料金 供給側系統等価 Supply Side G.P. 45
4. 小規模分散型再生可能エネルギー拡大上の問題 4-6. 小規模分散型と支援政策の問題点 - 住宅用太陽光発電と時間帯追従に必要な蓄 電池の費用については、量産効果の影響が 非常に大きく、今後価格の逐次低減が期待可 - 現時点での支援費用が多少嵩むとしても、量 産効果による将来の費用低減と大量普及に 寄与するならば現状の支援の正当化は可能 - 逆に量産効果の発現により費用が低減しても なお高額買取などの助成を行うといった「過剰 助成(利権化)」の問題に注意すべき (ex. 旧食糧管理政策下の政府購入米価)
5. スマートグリッドと再生可能エネルギー 5-1. スマートグリッドと大規模集中型 - スマートグリッドとは、IT技術を用いて送変配 電網の機能を補完・強化し、電力需給を円滑 に制御・調整するインフラ技術をいう - 風力・水力など大規模集中型においては、電 源側の出力(電圧)不安定性の問題が存在す る限り、在来型の送電線容量確保と大規模蓄 電容量確保が依然として大きな問題 → スマートグリッドの効果は限定的 ( ⇔ 系統の質的側面より量的側面の影響大 )
5. スマートグリッドと再生可能エネルギー 5-2. スマートグリッドと小規模分散型 - 太陽光発電など小規模分散型においては、 スマートグリッドを用いた送配電網末端での 電力需給の制御・調整は極めて有効 - 特に分散型蓄電や需給調整機能の活用によ り、「大数の法則」による送配電・蓄電設備容 量の節約と合理化が期待できる → スマートグリッドの効果は非常に大 ( ⇔ 系統の量的側面より質的側面の影響大 )