飼料用米について 九州大学農学部 生物資源環境学科 農政経済学分野 農政学研究室 案浦 拓也 Takuya Annoura 2011年4月27日.

Slides:



Advertisements
Similar presentations
平成27年度 平成27年度 お問い合わせ先 東北農政局福島地域センター 農政推進グループ 024-534-4157 東北農政局福島地域センター 会津若松支所 0242-28-2700 東北農政局福島地域センター 郡山庁舎 024-922-1614 1 ① ゲタ・ナラシ対策の交付対象者は、認定農業者、集落営農、
Advertisements

運動の重点推進事項(期間:10年間) (1)普及啓発 (2)資源循環システムづくり (3)土壌診断の実施 (4)環境にやさしい農業技術の実証・普及 (5)「有機の郷づくり地域」の拡大 1.
食物自給率の向上 無駄のない社会を目指して 農業クレジットカードの提案. 問題点 自給率はカロリーベースで 40% 、生産額ベースで 66% ( H19 年度・農林水産省) 農業就業人口 299 万人のうち 60% は 65 歳以上 田面積は 252 万 ha 、作付面積は 162 万 ha (生産調整)
なぜ貧しい国はなくならないのか 第4章 飢餓は是が非でも避けた い 堀佑太. 第1節 経済発展と農業問題 第一の農業問題 食糧不足 人口増加により未開の耕地が減少、また畑の休閑 期間が短くなり、土地の肥沃度が減少する にもかかわらず、生産性を上げる技術が開発され ないと食糧不足が起こる.
通信販売における リピート率の重要性と戦略
多々納 裕一 京都大学防災研究所社会システム研究分野
23年産米の需給調整対応について 平成 23 年 3 月 北海道農政事務所.
③新たな作目や品種の特徴を活かした需要拡大
コメの成長戦略~コメの未来を考える~ 富山大学 経済学部(夜間)  山田(潤)ゼミ .
北海道情報大学 情報メディア学部 情報メディア学科 新井山ゼミ 瀬戸 裕
産地パワーアップ事業の取組事例 (北海道)
食料自給率 中京大学 山田ゼミ.
耕作放棄地を活かして地域を元気にしよう!
耕作放棄地を活かして地域を元気にしよう!
稲作農業の体質を強化するため、稲作農業者が行う
稲作農業の体質を強化するため、稲作農業者が行う
第1章 国民所得勘定.
稲作農業の体質を強化するため、稲作農業者が行う
食料自給率の「なぜ?」             著者 末松広行 稲葉ゼミ  06a2139z 半田哲也.
穀物はなぜいつも店先にあるのか? ~主要穀物の生産、流通、管理~ 第6班.
(地区水田の7割を利用権設定等で集積する特定農業法人)
葬られた野菜たち ~そして大根は闇の中へ~
九州沖縄農業研究センター水田作・園芸研究領域
4.意思決定の問題 タイ東北部、コンケーン県パーカム村の大豆栽培
ラオス・ビエンチャン平野における稲作の環境対応事例
■5万円/10アールを助成(集約化要件を満たす場合6万円)
第7章 途上国が「豊か」になるためにすべきこと
第2回 バリューチェーン1 【 Value Chain(価値連鎖) 】
規格外野菜 ~安定供給プロジェクト~ 明治大学 商学部 二瓶ゼミナール E-thmar.
第1問 Q.大豆を食べると、どんな良いことがある? ①体を作る ②ガンになりにくい ③血行促進につながる ④美容にいい.
トウモロコシの動向 2班.
日本の農業の問題点 1126599c 野喜崇裕.
木の利用 5班 田村浩幸 徳直哉 中家葵 長濱大介 西村陽平.
④新規用途開拓による地域農林水産物の需要拡大、ブランド向上
QUESTION  原材料は何だと思いますか?. QUESTION  原材料は何だと思いますか?
製品ライフサイクルと マーケティング戦略.
食糧自給率低下によって 日本が抱える危機とその対策
国産農林水産物・食品への理解増進事業 平成28年度補正予算(農林水産省)国産農産物消費拡大対策事業のうち 【事業目的】 【補助対象事業】
荒れている農地を活かして地域を元気にしよう!
地域未来投資促進法に基づく千歳市基本計画及び支援策
稲WCS(稲発酵粗飼料)って、何ですか?
稲葉ゼミ第二回書評 「データブック 食料」西川 潤 岩波ブックレット (2008年8月6日発行)
(新)ふくしまアグリイノベーション実証事業【水田メガファームモデル事業】
輸入規制政策の分析 ー豚肉の輸入関税と消費者余剰ー
世界の食糧問題 ~国際社会という視点から慢性的飢餓に どう立ち向かうか~
堆肥を使用する際にはご留意ください! 〇 耕種農家・育苗業者の皆様へ 〇 輸入飼料を給与した牛に由来する 被害を未然に防止するために
堆肥を販売・譲渡・施用する際にはご留意ください!
堆肥を使用する際にはご留意ください! 〇 耕種農家・育苗業者の皆様へ 〇 輸入飼料を給与した家畜に由来する 被害を未然に防止するために
④ 新規用途開拓による地域農林水産物の需要拡大、ブランド向上
On the Present and Future of the Rice Production in China
タイのバイオ燃料事情 二班:板倉 関矢 元木.
日本の食料自給率について 応用生命学科 石渡隆之 森林科学科 大島渉.
省CO₂型リサイクル等高度化設備導入促進事業
(ほ場整備を契機に設立、WCS用稲作付けに特化した法人運営)
平成21年度北海道地域マッチングフォーラム 「ジャガイモシストセンチュウ拡大防止に 向けた新しい検診法と防除技術」 参加費無料
耕作放棄地を活かして地域を元気にしよう!
日本のエネルギー資源 2008-09-13 MK6328 白石 彩奈.
事業目的・概要等 イメージ 脱炭素社会を支えるプラスチック等資源循環システム構築実証事業 背景・目的 期待される効果 事業スキーム 事業概要
書評報告 “トウモロコシ”から読む世界経済 光文社新書  江藤隆司著 06A2100H 谷澤 佑介.
②生産履歴の明確化や減農薬栽培等による付加価値向上
主要穀物の価格動向.
主要穀物の 需要と生産状況 7班 07A024 奥藤智代 07A043 小西郁里 07A052 坂田秋沙 07A053 坂本典子
今の農業って? ~農業人材プロジェクト~ 桜美林大学  石田ゼミ Bグループ 鈴木・加藤・小林・山田.
L2-Techリストの更新・拡充・情報発信
経済学科の紹介 他大学との違いはなにか? 2019/5/26.
TPP 日本の米が生き残るには c 小松拓司 c 仲野謙心.
産地パワーアップ事業の取組事例 (北海道)
食生活と環境 (2)-ア-a-D2.
産地パワーアップ事業の取組事例 (北海道)
中山間地の環境保全と集約型農業の促進を目的とした
Presentation transcript:

      飼料用米について 九州大学農学部 生物資源環境学科 農政経済学分野 農政学研究室 案浦 拓也 Takuya Annoura 2011年4月27日

目次 1、背景 2、飼料米生産のメリットと課題 3、多収性品種について 4、グリーンコープの取り組み 5、飼料米生産における支援措置 6、今後の予定 7、参考文献

背景 ・日本の食料自給率は約40%であり、飼料自給率は約25% ・生産調整や生産者の高齢化による耕作放棄地の拡大 ・米の消費量の低下 多面的な機能を持つ水田を保護し、自給率向上のために 飼料用米に注目

飼料用米生産のメリット① <稲作農家へのメリット> ・排水の悪い水田や圃場整備を行っていない水田でも作付でき る ・田植えから稲刈りまでの栽培体系が主食用米と同じなので取 り組みやすい。 ・特別な農器具などの投資が要らない。 ・麦や大豆の生産と組み合わせることで連作障害にならない。

飼料用米のメリット② <畜産農家へのメリット> ・輸入トウモロコシの代替として配合飼料の原料にできる ・長期保存が可能 ・既存の配合飼料と同様の扱いで与えられるので特別な 設備や投資はいらない

肉質への影響 ・筋肉内脂肪率が上昇し、肉汁の流出が少ない ・加熱損失率が少なく加熱してもうまみが逃げない ・脂肪融点が低下し、口どけが滑らか ・オレイン酸の増加により、コレステロールを下げる働き ・リノール酸低下により、風味がよくなる ・肉の色、脂肪の色が従来のものよりも淡く、白い

飼料用米生産の課題 <生産面での課題> ・飼料用米生産に対する需要の把握 ・採用する品種 ・コストの低減 <流通面での課題> ・どのような規格、包装形態をとるか <利用面での課題> ・どれだけ給仕するか、どのように付加価値を付けるか

現在育成されている多収量品種 多収量品種 生産地域 収量(10aあたり) ミズホチカラ 九州 725kg タカナリ 関東以西 758kg ホシアオバ 関東以西、東北南部 694kg 夢あおば 東北中南部、北陸、関東以西 722kg 北陸193号 北陸、関東以西 780kg べこあおば 東北中南部以南 732kg モミロマン 823kg みなゆたか 東北北部および中山間地 きたあおば 北海道 825kg 参考:農林水産省HP

多収量品種 ミズホチカラ(多収、暖地向き多用途品種) 特性 ・玄米収量が一般食用米よりも約20%多収である。 ・倒れにくく、直播栽培でも栽培可能 ・九州を中心とする暖地での栽培に適している。 ・枯れ上がりが遅く、脱粒しにくいため、成熟期を過ぎてか らの収穫でもロスが少ない 用途 飼料用米のほかバイオエタノール原料や米粉パン用の加 工原料等様々な用途がある

グリーンコープの取り組み 2006年10月 国産穀物使用の産直卵の提案 2007年 6月 産直卵の供給開始 2008年度 約30トンをテスト栽培し、2009年に向け栽培依 頼を行政、農協、経済連などに行った。 価格 50円/kg(玄米) 40円/kg(籾) ※生産者がグリーンコープの飼料メーカーである伊藤忠飼料門司工場に持っていく条件

グリーンコープの取り組み 結果 2009年度 約1300トンの確保 糸島農協140トン(籾) 熊本経済連800トン(籾)、388トン(玄米) 今後の目標 ・現在国産飼料を使用した産直卵は全体の5%を三倍に増やす。 ・産直卵の飼料に飼料米を入れる。 ・国産穀物で育てた産直若鶏の供給を開始する。 ・産直若鶏の飼料に飼料米を使用する ・豚肉などの他の畜種の飼料原料として飼料米を使用する。 ・2010年度の飼料米の2800トンの確保を目標としている

米粉用米、飼料米生産における支援措置 ①水田利活用自給力向上事業 2010年度予算2167億円 目的  2010年度予算2167億円  目的  水田を有効利用して、米粉用米、飼料用米、麦、大豆等 の生産を行う販売農家に対し主食用米並みの所得を確 保しえる水準を国からの直接支払いにより実施 対象 補償額(10aあたり) 新規需要米 80000円 麦、大豆、飼料作物 35000円 そば、なたね 20000円 二毛作助成 15000円

米粉用米、飼料米生産における支援措置 ②多収性稲種子の安定供給支援事業 2010年度予算 0.6憶円 目的   2010年度予算 0.6憶円 目的 米粉・飼料用米等の低コスト生産に必要な多収性稲種子   の安定供給をはかる取り組みを支援する 内容 (1)種子の需要調査、生産計画の策定 (2)種子生産の技術指導 (3)種子の安定供給システムの構築支援

米粉用米、飼料米生産における支援措置 ③自給率向上戦略的作物等緊急需要拡大事業 2010年度予算 27億円 目的   2010年度予算 27億円 目的 国産の麦、大豆、新規需要米に食品製造事業者による商品開 発重要開拓の取り組みを促進。また実需者ニーズに即した 新品種、新技術の導入の取り組みを強化し需要に即した生 産流通体制を整備。 内容 (1)需要拡大に資する生産技術を導入する取り組み (2)産地・生産者と食品製造事業者との結びつきを強化する取 り組み (3)国産原材料を用いた商品開発等の取り組み

今後の予定 ・飼料米、新規需要米、戸別所得補償について詳しく学ぶ ・補助金について理解を深める ・飼料用米のどこに焦点をあてていくのか考える。

参考文献 宮崎利明(2009): 「グリーンコープにおける飼料米の取り組みについて」 (2010年11月15日閲覧) 宮崎利明(2009): 「グリーンコープにおける飼料米の取り組みについて」 (2010年11月15日閲覧) http://www.maff.go.jp/kyusyu/seiryuu/chikusan/jikyuusiryou/pdf/h21matching_3.pdf   農林水産省「飼料米の取り組みについて」 (2010年11月15日閲覧) http://www.maff.go.jp/j/soushoku/keikaku/shiryouyoumai/pdf/siryo_torikumi.pdf 農林水産省「飼料用米の先行事例集」 (2010年11月29日閲覧) http://www.maff.go.jp/j/soushoku/keikaku/shiryouyoumai/pdf/siryou.pdf   農林水産省「飼料米についての利活用実証成果集」 (2010年12月13日閲覧) http://www.maff.go.jp/j/chikusan/sinko/lin/l_siryo/siryo_mai/pdf/45.pdf 「新しい多収米品種」  (2011年1月20日閲覧) www.s.affrc.go.jp/docs/producer/rice/pdf/tasyuumai_p.pdf 農林水産省「耕作放棄地の現状と課題」  (2011年1月20日閲覧) http://www.maff.go.jp/j/nousin/tikei/houkiti/