メディア社会学(第1回後半~3回目くらい) 2012年9月4日(火) 1
その学際性と固有性 何であれ、比較が重要な学問 1.社会学とは? その学際性と固有性 何であれ、比較が重要な学問 2
1.1社会学の目的 -行為の意味理解ー 学問分類の中での社会学 本屋さんの分類における社会学 社会学と社会調査 社会学の定義-無数 しかし共通項はあるのでは? → 行為の意味理解 3
「概念の意味」の延長としての(を支えるものとしての) 「行為の意味理解」 の3水準 [1] 動機、目的 [2] 概念の意味 「概念の意味」の延長としての(を支えるものとしての) [3] 世界観(意味世界) 4
〔3〕 世界観(意味世界) 究極のもの これを直接問う?→ 社会学の仕事? 宗教家、哲学者の仕事 では、社会学者は? 「人はなぜ生きているか」 「人はどのように生きるべきか」 「人はどこから来て、どこに行くのか」 これを直接問う?→ 社会学の仕事? 宗教家、哲学者の仕事 では、社会学者は? 5
哲学者等と社会学者の「問い」の対比① 哲学者: 「人はなぜ生きているのか」 倫理学者: 「人はいかに生きるべきか」 宗教学者or宗教家: 「人はどこから来て、どこに行くのか」 社会学者 → これらの「問い」に対する自分自身の答え は棚上げ 6
哲学者等と社会学者の「問い」の対比② 社会学者の「問い」 「人はなぜ生きているか」 ↓ ×(棚上げ) 「人はなぜ生きているか」 ↓ 「「人はなぜ生きているか」の答えを多くの人はどのようにもっているのか」(やや質的) ↓ 「Aの属性の人はBの属性の人より、「人はなぜ生きているか」の答えをCと考えているのではないか」(やや定量的) ×(棚上げ) 7
哲学者等と社会学者の「問い」の対比③ 上記Aの属性、Bの属性の例 マックス・ウェーバ『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』 カルヴァン派とカトリック 属性とは? 宗教、母語、人種、性別、年齢、学歴、職業、年収、居住地、家族構成、その他 変化しづらいもの 8
哲学者等と社会学者の「問い」の対比④ あるいは別の例 A:「神(仏)の存在はあり、人の行為の目的は他人のために尽くすことにある」と考える人 B:「神(仏)の存在はあるが、人の行為の目的は自分の欲望を満たすことにある」と考える人 C:「神(仏)の存在はないが、人の行為の目的は他人のために尽くすことにある」と考える人 D:「神(仏)の存在はないので、人の行為の目的は自分の欲望を満たすことにある」 9
哲学者等と社会学者の「問い」の対比⑤ ー「世界観(意味世界)」から「概念の意味」へー 哲学者等と社会学者の「問い」の対比⑤ ー「世界観(意味世界)」から「概念の意味」へー 社会学 の仕事 人々の意味世界の探求 窮極から日常まで 色々な言葉の意味(概念)の相違 人々の意味世界の分岐 10
〔2〕概念の意味 -概念の多様性と意味世界の分岐の例:「結婚」①ー 以下のどれが「結婚」の必要条件? 1)ひと組の男女がまずいること 2)ひと組の男女(カップル)が愛しあっていること 3)ひと組の男女(カップル)が性的関係を保つこと 4)ひと組の男女(カップル)が性的関係を排他的に独占すること 11
〔2〕概念の意味 -概念の多様性と意味世界の分岐の例:「結婚」②ー 5)ひと組の男女(カップル)が生活を共にすること 6)ひと組の男女(カップル)が子供を作ること 7)ひと組の男女(カップル)が結婚式をあげて神仏の前で永遠の愛を誓うこと 8)ひと組の男女(カップル)が役所で結婚の書類を書く 9)ひと組の男女(カップル)が家計を一緒にする 12
〔2〕概念の意味 -概念の多様性と意味世界の分岐の例:「結婚」③ー そもそも「ひと組のカップル(男女)」という表記??? 結婚の必要条件 不明確化 ↓ 結婚概念が曖昧に 「同棲」「事実婚(内縁)」「結婚」「恋愛」「同性 (愛)婚」 境界不明瞭化 13
〔2〕概念の意味 -概念の多様性と意味世界の分岐の例:「結婚」④ー 「恋愛」と「結婚」に求める意味合い → 人によって多様化 「恋人関係」の意味合いも ドラマや小説のネタ ある状態に当て嵌める言葉の相違 その言葉の意味合いの相違(定義の違い→異なる価値の葛藤) 親子や男女で 14
〔1〕動機、目的の多様性 ー「タイプ」の多様性と意味世界の分岐①ー 1.性格 2.容姿 3.地位 4.経済力 15
〔1〕動機、目的の多様性 ー「タイプ」の多様性と意味世界の分岐②ー 恋愛と結婚を結びつけるのは、どっち? タイプの違い→恋愛観の相違→恋愛という言葉の意味づけの相違→結婚観の相違→人生設計や生きることの意味(何のため、誰のため生きるか)の相違 人物本位の人 物質的安定性本位の人 16
性規範や結婚を宗教や国家が管理しようとするのは何故?① 性のタブー ・・・ 宗教上の「法」(規範) 結婚式 ・・・ 神の下で誓う 性、愛、結婚←宗教は管理・統制 人々の生き甲斐、窮極の意味世界に関わる 「何故生きているか」が自分らと異なる人が、神罰も受けずに生きている ・・・ 堪えがたい、理解しがたい 17
性規範や結婚を宗教や国家が管理しようとするのは何故?② 宗教上の法→世俗の法 国家の重要な関心事・・・戸籍の管理・・・国籍の管理・・・国民と「非」国民の境界線を明確に。 血統を明らかにすることは、戸籍管理の前提。 血統・・・貞操観念と不可分 18
性規範や結婚を宗教や国家が管理しようとするのは何故?③ 例、アメリカ大統領選の争点 妊娠中絶禁止・容認(ロムニー候補が共和党保守派の支持を得るため中絶禁止に廻るとも) 同性愛者の結婚の禁止・容認(オバマ大統領は容認発言をし、ロムニー候補が攻撃) パターナリズムかアンチパターナリズムか 19
〔1〕動機、目的の多様性 「授業」履修理由の多様性と意味世界の分岐① 1.単位取得 2.友だちに会う 3.就職に有利な知識を得る 4.知的向上心を満たす etc ↑ 進学理由、大学選択理由 大学の定義・意味世界での大学の比重 20
3つの水準の関わり 具体的な 優先順位 [2] 概念規定 背景 [3]意味世界 [1] 動機 この優先順位に基づく時間やお金の配分 → 具体的な行動(行為) 21
「自己」概念の多様性① 西欧対東洋の世界観・死生観・自己観 明治期の作家たちの近代的自己の確立の悩み 家族を自分の延長?親戚は? 乃木希典殉死事件 家族を自分の延長?親戚は? ファン心理 ・・・ 自己の延長? 子供に降り掛かる不幸に対する親の意識 領土問題 ・・・ 国民感情 22
「自己」概念の多様性② 「親から貰った体を大切にする」 整形、歯の矯正、化粧、マスカラ、アイパット 整形、歯の矯正、化粧、マスカラ、アイパット 売春、売血、臓器売買、子宮貸す、精子バンク 生死の境界 例 臓器移植法 生命維持装置 23
1.2行為の意味理解の方法① -集団を分けるー 集団の分節化 ・・・ 一枚岩な把握 相互比較 「AよりもBの方がCであるのでは?」 という命題に 24
1.2行為の意味理解の方法② -「HOW」と「WHY」ー → 行為の意味理解 25
1.2行為の意味理解の方法③ -「WHY」を知る:クロス集計①ー 時間的に先行する変数(独立変数、説明変数、原因変数)・・・属性など 現在の意識や行動についての変数(従属変数、被説明変数、結果変数) タイムマシーンがない限り、時間の前後=原因・結果 前者ごとに後者の結果が変わる 26
1.2行為の意味理解の方法④ -「WHY」を知る:クロス集計②ー 属性や過去の経験、記憶などの変数 原因変数といういい方 WHYの部分に多くかかわる。 属性的な原因変数、過去の経験→世界観、人生観→意識→行動 (矢印の中間部分は媒介変数ともいわれる) 27
1.2行為の意味理解の方法⑤ ー「WHY」を知る:クロス集計③比較の観点ー 「Aを知る」 → 「非AとAとを比較することで初めて分かる」 若乃花は小兵か? 28
1.2行為の意味理解の方法⑥ ー「WHY」を知る:クロス集計④比較の観点ー 日本人は集団的か? 春日の学生はヲタか? 基準、目盛りづくり・・・比較の作業
1.2行為の意味理解の方法⑦ ー「WHY」を知る:クロス集計⑤比較の観点ー 集団や個人の属性、あるいは記憶や過去の経験、先有傾向ごとに 人々の意識や行動を分析する 言い換えると、 過去の変数(属性などの要因)ごとに現在の意識や行動を比較
1.2行為の意味理解の方法⑧ ー「WHY」を知る:クロス集計⑥比較の観点ー さらに言い換えると、 時間的に先行する要因の差 → 行為の類型に差 前者が行為の「原因」、後者が「結果」に 前者が行為の「動機」、「意味」に
1.2行為の意味理解の方法⑨ -「WHY」を知る:クロス集計⑦比較の観点ー 具体的には、 「AよりもBの方がCである(かどうか)」 という命題の形にする A、Bは変数Xの値(両極的な値)。 Cは変数Yの片方の値。もう一方の値はDとでも想定できる 。
1.2行為の意味理解の方法⑩ -「WHY」を知る:クロス集計⑧比較の観点ー 言い直すと、 比較 → 属性等による類型化 属性、過去の経験・記憶ごとに人々をグループ分けし、グループごとの意識や行動の差を調べる。
色々な意味でのボーダレスな時代(桜井哲夫) 属性の説明力の低下① 今までの議論の前提 属性によって、人々の現在(の意識や行動)充分に説明できる。 現在の状況 : 上記の前提、崩れつつある 属性で当然予想される行為様式と違う行動 色々な意味でのボーダレスな時代(桜井哲夫)
属性の説明力の低下② 男らしくない男 性同一性障害や同性愛が市民権を得る 大人びた若者 いつまでも子どもっぽい大人 大西ケンジ 化粧し、ギャル系ファッションを真似る小学生 いつまでも子どもっぽい大人 パラサイトシングル(山田昌弘)、モラトリアム(小此木啓吾)
属性の説明力の低下③ 先生らしくない教員 教員や警官による犯罪の多発 ニュースになるということは、じつは頻度そのものは低いのだが 親による実子の虐待や保険金目当ての殺害等々 ← 自分ももっと青春を ← 非婚の元クラスメート、離婚の増大 宗教家の性やお金を巡るスキャンダル
属性の説明力の低下④ 性別、年齢、職業 → それに相応しい役割を貰う → 役割を演じる → 役割に必要なもの以外を求めない(欲望 の制限) → それに相応しい役割を貰う → 役割を演じる → 役割に必要なもの以外を求めない(欲望 の制限) 様々な欲望を掻き立てるメディア社会 (欲望をもって貰わないと社会は飽和状態に) → もう一つの自分、もっと違った自分
属性の説明力の低下⑤ 「属性などの独立変数・・・変化しづらい変数」(社会学の教科書曰く) ???・・・ 現代社会 性 性同一性障害が病気として公認され、日本でも手術後の戸籍の変更を認める 椿姫彩菜、佐藤かよ等、戸籍上男性の女性タレントの活躍
属性の説明力の低下⑥ 年齢詐称 ・・・ サッチー(楽天イーグルス監督夫人)、井川遙、夏川純(和田アキ子の前で嘘ついた勇気は称えられる)、はるな愛(大西ケンジ) 学歴 ・・・ 古賀潤一郎(福岡二区、もはや過去の人ですね)、サッチー、進学率の向上 → 学歴インフレの進行、生涯学習社会、大学院進学率の上昇←従来は18、19歳でその人の学歴がほぼ決まる社会だった。
属性の説明力の低下⑦ 職業 未既婚 終身雇用制の揺らぎ、リストラ、中途採用の相対的上昇、フリーター、ニートの増加 従来 : 未婚 → 既婚への一方向的な矢印がほとんど。 現在 : いずれの方向も均等に近くある。またパラサイトシングルの増加
属性の説明力の低下⑧ 家族構成 ・・・ 昔に較べ変わりやすい。 熟年離婚の増加。結婚して突然、子供や親が増える。 落語の「中沢家の人々」 三遊亭圓歌の創作落語。 アメリカンジョーク 「あなたの息子と私の娘が、私たちの息子をいじめている」
属性の説明力の低下⑨ 属性の説明力の低下 属性としての類型と、行動を繋ぐ(媒介させる)もの 1. 社会学の有効性の低下 2. 社会学の新たな可能性 → でも、ますます学際性の迷路に 属性としての類型と、行動を繋ぐ(媒介させる)もの 世界観 ・・・ これを見る方法は? 理念型
1.3 社会学の独自の類型論 -理念型ー 理念型(理想型)(イデアルティプス) ウェーバーが提唱
マックス・ウェーバー(1864-1920) wikipediaからの画像及びhttp://www. geocities
理念型① 「社会学独自」 (?) 通常の類型論・・・平均的な像 VS 理念形・・・極端な事例、両極端、色立体、 研究者の想念(頭の中)OK 現実の多様性 索出的
理念型② 現実の世界に対応物がなくて構わない マックス・ウェーバー『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』 禁欲的カルヴィニスト あの世のためだけに金儲け 本当?
理念型③『プロ倫』(1) 『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』(通称・プロ倫)についてのやや詳しい説明 救霊予定説 不安 → 恩寵の証 → 蓄財 人に喜ばれる行為 → 儲け 禁欲的蓄財 → 資本の蓄積、産業基盤 → 雇用の促進
理念型④『プロ倫』(2) ベンジャミン・フランクリン「時は金なり」 「遊びは二重の出費」 (ウェーバーの挙げているものではないが、) プロテスタント的行動の例 ・・・ 『エデンの東』 カトリック的行動 ・・・ カーニバル、宵越しの金は持たない南米
理念型⑤ 丸山真男『日本の思想』(1960年、岩波新書) 丸山真男 「実感信仰」と「理論信仰」 「タコツボ型」と「ササラ型」 日本の戦後最大の政治学者の一人とされる。ウェーバーの影響を受ける。 「実感信仰」と「理論信仰」 「タコツボ型」と「ササラ型」 「であること」と「すること」 Amazon.co.jpからの画像
丸山真男(1914-1996) http://doraku. asahi 丸山真男(1914-1996) http://doraku.asahi.com/special/gorin/1996/photogallery/1996_10.html 並びに http://members3.jcom.home.ne.jp/mm-techo.no_kai/からの画像
「実感信仰」と「理論信仰」① 丸山の問題意識 ① キリスト教とマルクス主義 なぜ日本で根付かないか? ← 不寛容な者への不寛容 無限抱擁 ① キリスト教とマルクス主義 なぜ日本で根付かないか? ← 不寛容な者への不寛容 無限抱擁 ② 日本の学問・制度 ・・・ 直輸入 背景部分、根っこを無視した移植
「実感信仰」と「理論信仰」② 実感信仰 ・・・ 担い手・庶民 背景 : 維新以降、西欧の進んだ文明流入 エリート官僚、知識人への反撥 エリート官僚、知識人への反撥 「現実と理論は違うんだ」 「理屈じゃない」「上から外国の難しい理論や仕組みを押しつけられても分からないよ」 →抽象と現実との往復関係 欠如
「実感信仰」と「理論信仰」③ 理論信仰 理論を絶対視 理論をその背景にある現実との相互作用でみない 庶民蔑視 担い手・知的エリート(帝国大卒の官僚・学者) 理論を絶対視 理論をその背景にある現実との相互作用でみない 庶民蔑視
「実感信仰」と「理論信仰」④ 庶民 ・・・ 日本の一般的文化風土 理論の首尾一貫性、体系性への嫌悪 マルクス主義やキリスト教を排除 日本の固有信仰にルーツ(神仏習合) 寛容な人々(何でも受け入れる文化)(12月末から1月初めの皆さんの行動様式) → 逆に、「不寛容な人々」を排除
「実感信仰」と「理論信仰」⑤ 知識人 首尾一貫した理論に惹かれる マルクス主義やキリスト者 日本の風土への反撥 首尾一貫した理論に惹かれる マルクス主義やキリスト者 理論や制度を絶対的なもの(信仰の帰依の対象)として受け取り、庶民に押しつけようとした
「実感信仰」と「理論信仰」⑥ 庶民、知識人どちらも 現実と理論との相互作用で捉えない ↑ 西欧の学問、制度が生煮え状態で入る 本来の学問 ↑ 西欧の学問、制度が生煮え状態で入る 本来の学問 理論と現実の相互参照・絶えざる修正
「実感信仰」と「理論信仰」⑦ 理念型である理由・・・グレーの部分 現実の知識人は現実との相互作用を無視はしないどころか、それを何とか定着させようと。 現実の庶民は理論や制度の有効性を全否定するばかりではない。
「タコツボ型」と「ササラ型」① 丸山の問題意識 日本の学問・・・輸入学問 背景無視した輸入、根っこの部分みない →細分化された成果の部分のみ輸入 欧米の学問・・・根っこの部分、共通性がある 枝分かれして今の学問に ギリシア・ローマ以来の伝統
「タコツボ型」と「ササラ型」② タコツボ型 ササラ型 専門が閉ざされており、相互の交流のない学問ないしは文化 日本 専門に分かれているが、根の部分、底の部分は他の領域に繋がっている学問ないしは文化 欧米
「タコツボ型」と「ササラ型」③ ここでの丸山の問題(丸山批判) こんなにきれいに日本-タコツボ、欧米-ササラと分かれるのか? 近代(化)主義者、「向こう良い・日本ダメ」 理念型の提示なのか、理念型に基づく現実の描出なのか? ウェーバー自身の問題
「であること」と「すること」① 丸山の関心 属性価値から達成価値へ 政治の世界と学芸の世界の価値逆転 政治・・・本来 達成価値 重視されるべき 現実 属性価値 重視 学芸・・・本来 属性価値 重視されるべき 「私は誰であるか」の存在証明 一つの作品を目指す 現実 達成価値 重視
「であること」と「すること」② 「であること」 「すること」 「であること」 地盤・看板・経歴(家柄・血筋・性別)で選ばれる政治家(丸山は学歴はここに入れていないというか微妙) 「すること」 何をしたいか?何をしたかで選ばれる政治家
「であること」と「すること」③ 日本「であること」で選ばれる 欧米「すること」で選ばれる 成果と今流にいえば「マニフェスト」
「であること」と「すること」④ 学芸の領域 本来、真実は一つ 本質的な問いは「量」ではなく「質」 しかし現実、 答えが一つという意味ではない。 目指すべき最終目標は一つ 本質的な問いは「量」ではなく「質」 しかし現実、 芸術 ・・・ 作品一つ ・・・ 食べられない 学問 ・・・ 業績一つ ・・・ 評価されない
丸山真男への批判・評価① 批判はあるが、基本的に大きな存在 日本と欧米を対比し、日本に欠如するものを指摘するのみ 極端なまでの近代主義者 しかしヨーロッパ近代の歪みが指摘される現代において、近代主義は限界がある cf.「未完の近代」(ハーバーマス)
丸山真男への批判・評価② 理念型は本来、現実を見るモデルに過ぎないのに、理念型の提示と現実の証明とを混同している(ウェーバー自身にも向けられる批判) 中間的事例の調査(少なくとも報告)がない。極端な事例のみ。 知識人としての自分を相対化しえていない 左派なのにエリート主義
理念型的把握と 行為の意味理解との関係について① 社会学の基本(比較による行為の意味理解) (実際には右側の「意識・行動」にある程度くいこむ) 世界観・行動様式の純粋なものが、理念型 属性の差 意識・行動の違い 世界観・行動様式(エートス)≒理念型
理念型的把握と 行為の意味理解との関係について② 上記の例 今までの話から 1)『プロ倫』 属性 プロテスタント、カトリック 世界観・エートス 意識・行動 禁欲的蓄積・勤勉(プ) 消費・何もしない(カ)
理念型的把握と 行為の意味理解との関係について③ ここでの「世界観」 蓄財によって恩寵の証を得る(プ) 閑暇に価値がある(一部のカ)等々 「エートス」 他人のためになることをして儲け、そして使わずに貯める(プ)
理念型的把握と 行為の意味理解との関係について④ 2)『日本の思想』 属性 ・・・ 庶民、知識人 ↓ 意識や行動 ・・・ 実感信仰、理論信仰 世界観 (庶)無限抱擁性、中心性の欠如←日本の固有信仰(神道)由来 (知)日本の封建遺制への反撥→体系的なものへの憧れ、西欧崇拝
理念型的把握と 行為の意味理解との関係について⑤ 以下、①の一部繰り返し (実際には右側の「意識・行動」にある程度くいこむ)??? ただしそうも言えない → 例えば宗教上の教義 属性の差 意識・行動の違い 世界観・行動様式(エートス)≒理念型
理念型的把握と 行為の意味理解との関係について⑥ 宗教上の教義 ・・・ 世界観、エートスを典型的に示す しかし多分、昔のキリスト教徒でさえ以下の文言を守った人は多いといえるのか?(亀井勝一郎) 「すべて色情を抱きて女を見るものは既に心のうちに姦淫したるなり」(マタイ書)
理念型的把握と 行為の意味理解との関係について⑦ 再び①の変容バージョン 属性の差 現実の意識や行動の違い 背景となる純粋な世界観・ 行動様式(エートス)≒理念型
理念型的把握と 行為の意味理解との関係について⑧ 人々の世界観や思想 ・・・ 二つの再構成の方向 1. ボトムアップ的な再構成 彼らの日常生活そのもの 彼らの日常生活を繋ぎ合わせて、 おぼろげに浮かぶもの 2. トップダウン的な再構成 教義 ・・・ 教義の彼らなりの解釈 ・・・ × ○ △ ○
理念型と学問の二分類① (この項目は発展的内容) ウェーバーの問題関心 人文・社会科学がいかにして科学たりうるか? ウェーバーの哲学上の師、リッケルトの師ヴィンデルバント(1848-1915)の学問の二分 自然科学 ・・・ 法則定立科学 人文・社会科学(歴史的文化科学) ・・・ 個性記述科学
理念型と学問の二分類② リッケルト(1863-1936) ウェーバー 理念型 一般化的方法 ・・・ 自然科学中心 個性化的方法 ・・・ 人文・社会科学中心 ウェーバー 理念型 モデルを作る ・・・ その点は一般化的方法に近い 極端な事例 ・・・ その点は、個性化的方法
理念型と学問の二分類③ ウェーバーの方法 マルクス ・・・経済領域が思想・文化領域を決定する。 一部のウェーバー解釈 マルクスの逆との見方も 下部構造決定論(非常に粗っぽくいえば)。 ・・・経済領域が思想・文化領域を決定する。 一部のウェーバー解釈 宗教などの文化が、経済を決定づけると。
注釈 上部構造・・・政治・社会・文化 「社会の経済的土台(下部構造)の上に形成される政治・法律・宗教・道徳・芸術などの意識形態(イデオロギー)と、それに対応する制度・組織」 http://note.masm.jp/%BE%E5%C9%F4%B9%BD%C2%A4/ 下部構造・・・経済 「史的唯物論で、一定の発展段階にある社会構成の基礎となる物質的な生産関係の総体」 http://note.masm.jp/%BE%E5%C9%F4%B9%BD%C2%A4/
理念型と学問の二分類④ 『プロ倫』に即すと、 「プロテスタント→恩寵への不安→蓄財・禁欲」 信仰 → 経済的行動ゆえ、 上部構造決定論とも。
理念型と学問の二分類⑤ 大塚久雄(1907-1996) 『社会科学の方法』(1966)では、その見方(ウェーバーは上部構造決定論だという見方)を否定 理念型は、一般化的方法と個性化的方法の折衷ゆえ 上部構造 → 下部構造の一方的規定ではない 双方が「親和性」をもつと。(シュパンヌング)
大塚久雄(1907-1996)http://drc. diamond. co. jp/sales/pdf/200309/index 大塚久雄(1907-1996)http://drc.diamond.co.jp/sales/pdf/200309/index.html及びスパイシー、さらにhttp://hurec.bz/mt/archives/2006/08/294_199711.htmlからの画像
理念型から価値自由へ 研究者自身の信仰、世界観、価値観 → 棚上げ 人々の価値観 → 純粋な型で抽出 ・・・ 理念型 「棚上げ」を学術用語で → 純粋な型で抽出 ・・・ 理念型 「棚上げ」を学術用語で → 「価値自由」
価値自由 「価値中立性」とも。 「価値自由」でいう「自由」の語感 「・・・から解き放たれた」「・・・が欠如した」 日本語の日常の「自由」の語感 → 120-180度違う(要注意!!) 「・・・から解き放たれた」「・・・が欠如した」 「(特定の)価値(観)から解き放たれた」 = 「中立的な」
価値自由と価値関係① 価値自由 価値関係 特定の価値観や価値判断から研究者が解き放たれて、中立的に研究対象に臨む 研究対象のもつ価値観は価値判断を尊重し、それを内在的に追っていく OR 研究対象当人の究極の価値(多くの場合宗教観や革命の理想などになる)から位置づけた個々の事柄の価値付け・価値判断の体系を追うこと。
価値自由と価値関係② 価値自由 → 価値関係を可能に 価値関係の研究 → 理念型の追究の基礎 価値関係を価値自由に追う例 → 価値関係を可能に 価値関係の研究 → 理念型の追究の基礎 価値関係を価値自由に追う例 若者文化が分からないと言っていたマクルーハン ・・・ ミイラ取りがミイラに オウム真理教やネオコンに対する私の態度
政策論の問題 -価値自由との関係でー ウェーバー 「べき論」 とはいえ、ウェーバー自身、研究者の窮極の価値を否定はせず ウェーバー 社会政策学会で、価値自由を唱える 一部のマルクス主義者を批判 「べき論」 科学ではなく、論説・主張 とはいえ、ウェーバー自身、研究者の窮極の価値を否定はせず 現代のウェーバー解釈
現在の「価値自由」解釈① 研究者の研究の動機部分 → 価値を含むのは当然 虚心に研究対象の人々に向き合う 自分の価値と反対の世界観をもつ人々 → 価値を含むのは当然 虚心に研究対象の人々に向き合う 自分の価値と反対の世界観をもつ人々 彼らの動機や意味世界をきちんと把握 → 似たことを別の表現で(次のスライド)
現在の「価値自由」解釈② 人間は必然的に価値判断を持つ 研究者も例外ではない 価値判断をなるべく減らす努力は可能 それでも残る価値判断の部分 自分及び他人に正直に話す → 価値判断による歪みを最小限に 反対の例 : 中立的な装いの調査報告 → 大いに人を欺くことに