山口県での週1回ビタミンK投与の 全県的取り組み

Slides:



Advertisements
Similar presentations
日本産科婦人科学会 産婦人科医療提供体制検討委員会 の活動概要
Advertisements

新生児蘇生法講習会「専門」コース(Aコース)
中核病院小児科・地域小児科センター登録事業について
第8回東北母乳の会 inあおもり テーマ つなげよう、ひろめよう母乳育児
市町村による精神障がい者の地域移行を進めるための支援策について(案)
第14回地域医療講演会 『病原体に対する免疫応答』 演者:東京医科歯科大学医学部附属病院 『熱傷後TSSを発症した一例』
日本産科婦人科学会 医療改革委員会の活動概要
前立腺癌 Expert Meeting in Mie
英国の小児医療提供体制から学ぶこと 森 臨太郎.
事案検証と再発防止に対する 奈良県産婦人科医会の取り組み 元奈良県産婦人科医会会長 平野 貞治 第39回日本産婦人科医会学術集会
日本人在胎期間別出生時体格基準値の作成 昭和大学小児科 板橋 家頭夫 分担研究者 研究協力者
学校保健・保健活動セミナー 「発達障害:ライフスキルの教え方」 「子どもの成長について」 (北関東甲信越)
平成26年度拡大医療改革委員会 兼 産婦人科医療改革 公開フォーラム
NIPTチェック表 はい はい 検査希望者(氏名) は採血予定日( 月 日)に 在胎 週 日であり上記要件を満たします. 紹介医 日付 .
重症心身障害児者等 コーディネーター育成研修 3 支援体制整備④ 資源開拓・創出方法
大阪府高齢者保健福祉計画推進審議会専門部会 委員候補(案)
大阪大学医学部附属病院 総合周産期母子医療センター 和田和子
第15回北陸言語聴覚学術集会 日 時: 平成27年10月18日(日) 9:50~15:35(9:15~受付開始)
第3回 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会 関東地方会
【チーム及び必要に応じて、対象者情報に詳しい者】
    「超低出生体重児の後障害なき救命に関する研究」
市・町の保健活動の業務チャート(母子保健 保健所あり)
平成25年度 堺ブロック 合同総会報告.
家族計画と人工妊娠中絶 今日は生命の誕生について勉強します。 皆さんが生まれたとき、家族の方たちはどんな思いだったで しょう。
一般社団法人 大阪府内科医会 ご案内 大阪府内科医会の主な活動内容 ◆ 大阪府内科医会とは・・・・?
~みんな違うことが当たり前になるように~
②不妊に悩む方への支援について 都城保健所における不妊に悩む方への支援についてご説明します。.
『 社交不安障害の精神薬理と薬物療法 』 岡山県精神神経科 診療所協会学術講演会 小山 司 先生 製品紹 19:30~19:40
~三重県(地方)と名古屋市(都市)の比較検討から~ 三重県産婦人科医会2) 愛知県産婦人科医会3) 三重大学4)
「保育所等におけるアレルギー対応」 厚生労働省 平成28年度保育所等事故予防研修会 国立病院機構 福岡病院 名誉院長 西間 三馨
○○○学会 CO I 開示 筆頭発表者名: ○○ ○○
高齢者の救急搬送に係る意見交換会 資料7 1 意見交換会開催に至る経緯と今年度の取り組み  平成26年度    病院連絡会議にて,高齢者の救急搬送に関して,患者及び家族の延命治   療の希望確認ができているかの課題提起がなされた。  平成27年度   (1)介護サービス事業者協議会主催研修会および施設ごとの講演会の開催.
基調報告 「産婦人科勤務医の就労環境の実態 ー日本産婦人科医会調査から」
YMCA訪問看護ステーション・ピース 第2回 小児研修会のご案内
北海道東部地域における 産科医療危機への取り組み 釧路赤十字病院  米原 利栄.
第23回「そらまめの会」交流会のご案内 ☆第23回「そらまめの会」交流会☆
大阪府医療人キャリアセンター                  のご案内 周産期(産婦人(産)科)コースVer. 平成24年1月24日.
都道府県も国民健康保険制度を担うことになりました
特定健診・特定保健指導と 医師会の役割    平成18年12月20日 日本医師会常任理事        内田健夫.
【チーム員及び必要に応じて、対象者情報に詳しい者】
奈良県健康長寿共同事業について 平成23年度より、県と後期高齢者医療広域連合が 「奈良県健康長寿共同事業実行委員会」を設置し
Diabetes & Incretin Seminar in 福井
都道府県も国民健康保険制度を担うことになりました
第二回富山ワクチンフォーラム 日時:平成25年10月7日(月) 19:15~21:00 場所:ANAクラウンプラザホテル富山 3階 鳳の間
マンモグラフィ検診を受けよう 「かるぽーと」 高知市九反田2-1 入場無料 2009年 3月 21日(土) 市民公開講座
市・町の保健活動の業務チャート(母子保健 保健所なし)
問い合わせ・申込先/町保健福祉課 健康推進グループ TEL
天理市第1号訪問事業 (短期集中予防サービスC)について
NIPTチェック表 ご自身で予約された後,チェック表を主治医に確認を受け(最下段) 紹介状とともに受診当日ご持参ください
長崎市① 長崎市における平和学習スポット (社)長崎県観光連盟.
平成26年1月26日 日本産科婦人科学会 拡大医療改革委員会 兼 産婦人科医療改革公開フォーラム 議事次第
重症心身障害児者等 コーディネーター育成研修 2 計画作成③ 重症心身障害児者等の ニーズ把握事例 ~久留米市のコーディネートの現状~
「産婦人科医療改革グランドデザイン2015案について」
能登脳卒中地域連携協議会総会 『脳卒中予防のための抗血栓療法と地域医療戦略(仮)』
東播磨小児在宅医療連携協議会 主催フォーラム ~在宅医療的ケア児(者)への災害対応~
日本産科婦人科学会 年度別入会者数(産婦人科)の推移 ー最新データからー Ver. 3
潰瘍性大腸炎 クローン病 第6回患者会フローラ
奈良県健康長寿共同事業について 平成23年度より、県と後期高齢者医療広域連合が 「奈良県健康長寿共同事業実行委員会」を設置し
産科婦人科研修コース 産婦人科 コース コースに入る要件 3年目 4年目 5年目 6年目 7年目 8年目 9年目 連携大学 連携病院 周産期
医療活動訓練 ~小児周産期医療~ 資料3 ・発災:平成30年2月16日午後11時 ・震源地:大阪府北部 M7.5 最大震度7
公開シンポジウム 東日本大震災に負けない ー全国産婦人科医の連携ー 日本産婦人科医会の対応 日本産婦人科医会常務理事 日本医科大学 中井章人.
受付の混乱を防ぐためe医学会カードを必ずお持ちくださいますようお願い申し上げます。
模擬退院カンファレンス 退院後の療養計画立案を目指した模擬退院カンファレスを行いました。
高齢者の救急搬送に係る意見交換会 資料7-1 1  意見交換会開催に至る経緯  平成26年度    病院連絡会議にて,高齢者の救急搬送に関して,患者及び家族の延命治療 に関する意向確認ができているかという課題提起がなされた。  平成27年度   (1) 介護サービス事業者協議会主催研修会・施設ごとの講演会(救急課)                  
百葉の会 各事業所が日々実践しているケアを発表します
就学前障害児の発達支援の無償化における 事務のフローについて
RID2790 クラブHP制作について RID2790 クラブHP制作について 広報・公共イメージ向上委員会.
~妊娠・出産・子育て期までの切れ目ない支援~
秋田の現状 離れられない、学べない 平成23年度「拡大医療改革委員会」兼 「産婦人科医療改革 公開フォーラム」
50名 『新生児フィジカルアセスメント ~赤ちゃんのココロを聴く~』 寺澤大祐先生 gifukyouiku@gmail.com
Presentation transcript:

山口県での週1回ビタミンK投与の 全県的取り組み 第23回日本産婦人科・新生児血液学会学術集会 ビタミンKフォーラム 平成25年6月7日 山口県での週1回ビタミンK投与の 全県的取り組み 山口県小児科医会・金子小児科    金子淳子 山口県小児科医会乳幼児保健検討委員会    鈴木英太郎,内田正志,守分 正,河野祥二    門屋 亮,藤原元紀,井上 保,鮎川浩志 山口県小児科医会    田原卓浩,金原洋治

山口県では、県内で出生した児に対して 平成24年8月から ビタミンK生後3か月まで週1回投与を 開始した はじめに 山口県では、県内で出生した児に対して 平成24年8月から ビタミンK生後3か月まで週1回投与を 開始した

ビタミンK週1回投与早期導入の背景 山口県では、“赤ちゃん1か月健診”を 公費で小児科医が 勤務している病院あるいは診療所で おこなっている

山口県の1か月健診 ・広域化 各市町相互乗り入れ ・委託料 5,600円 ・償還払い 県外での受診に対して・平成20年度から ・広域化 各市町相互乗り入れ ・委託料  5,600円 ・償還払い 県外での受診に対して・平成20年度から ・健診担当医 ・小児科専門医のみ 1市 ・小児科標榜医 3市 ・手上げ方式 7市6町 ・小児科医+産婦人科医 1市

平成23年度1か月健診受診率 79.1% 95.7% 91.6% 88.7% 97.6% 92.6% 95.8% 95.1% 萩市 山口市 岩国市 周南市 山口市 萩市 下関市 美祢市 防府市 宇部市 79.1% 95.7% 91.6% 88.7% 97.6% 92.6% 95.8% 95.1%

山口県小児科医会 1か月健診充実への取り組み (平成24年度) 1か月健診に関する講演会開催 (愛着形成支援、母親へのメンタルヘルス支援)  山口県小児科医会     1か月健診充実への取り組み (平成24年度)  1か月健診に関する講演会開催 (愛着形成支援、母親へのメンタルヘルス支援) 1か月健診マニュアル作成 エジンバラ産後うつ病質問票(EPDS)の導入 ビタミンK週1回投与 山口県小児科医会 金原洋治会長

ビタミンK週1回投与開始までの流れ 平成23年10月 ビタミンK投与状況調査 (県内産科分娩施設) 内訳 総合病院 13施設 開業産科 23施設 助産所 1施設 週1回投与  開業産科 1施設 導入検討中 総合病院 1施設 (他のすべての施設は3回投与)  計37施設

ビタミンK週1回投与開始までの流れ 平成24年5月 平成24年7月 県小児科医会理事会で協議 週1回投与の導入を決定 県小児科医会理事会で協議 週1回投与の導入を決定 平成24年7月 小児科医会会長と産婦人科医会会長とで 週1回投与の導入を決定 小児科医会と 山口大学総合周産期母子医療センター医師とで 週1回投与の導入を決定

ビタミンK週1回投与開始までの流れ 平成24年8月 県内の産科分娩施設と小児科に 小児科医会会長からの推奨文を発送

ビタミンK2シロップ投与スケジュールの統一  山口県小児科医会長  金原洋治  日本ではビタミンK欠乏性出血症を予防するために、1989年より①出生時、②生後1週目(産科退院時)、 ③1か月健診受診時の3回、ビタミンK2シロップ1ml(2mg)を経口的に投与しています。ところが、現行の 3回投与では、頭蓋内出血をおこす事例があることがわかりました(1999~2004年の間の発症頻度は 出生10万人に対して1.5人)。EU諸国の調査によると、日本と同様の3回の投与では頭蓋内出血の発症が 出生10万人に対して0.44人みられた一方で、週1回投与された乳児からは頭蓋内出血は1例も発症していませんでした。   これらの調査から、日本小児科学会新生児委員会で、ビタミンK2投与についてのガイドライン改訂が おこなわれ、新しいガイドラインでは、これまでの3回投与を基本として、選択肢として週1回の投与が 付記されました。その内容は、①1か月健診の時点で人工栄養が主体(おおむね半分以上)の場合には、 それ以降のビタミンK2シロップの投与を中止してよい、②出生時、生後1週間、および1か月健診時の3回投与では、わが国およびEU諸国の調査で乳児ビタミンK欠乏性出血症の報告がある。このような症例の発生を予防するため、出生後3か月までビタミンK2シロップを週1回投与する方法もある、とあります。従来の3回投与と生後1週以降1週間おき投与の両論併記ですが、すでに県内外の多くの施設で1週おき投与が開始されています。  以上より、山口県小児科医会では以下の方法で、ビタミンK2シロップを投与するスケジュールを推奨します。 ①出生後 産科で投与。 ②生後1週(産科退院時) 産科で投与。 ③生後2週 産科退院時に③④2回分のビタミンK2シロップを渡す。 ④生後3週 ⑤生後4週(1か月健診) 健診をおこなう小児科で内服、ないしは渡す。 ⑥から⑬までの8回分は小児科で渡す。 ただし、生後1か月の時点で、人工栄養(ミルク)主体の場合は ビタミンK2シロップを渡さなくてもよい。 ⑥生後5週 ⑦生後6週 ⑧生後7週 ⑨生後8週(2か月) ⑩生後9週 ⑪生後10週 ⑫生後11週 ⑬生後12週(3か月) ①出生後 産科で投与。 ②生後1週(産科退院時) 産科で投与。 ③生後2週 産科退院時に ③④2回分のビタミンK2シロップを渡す。 ④生後3週 ⑤生後4週(1か月健診) 健診をおこなう小児科で内服、 ないしは渡す。 ⑥から⑬までの8回分は小児科で渡す。 ただし、生後1か月の時点で、 人工栄養(ミルク)主体の場合は ビタミンK2シロップを渡さなくてもよい。 ⑥生後5週 ⑦生後6週 ⑧生後7週 ⑨生後8週(2か月) ⑩生後9週 ⑪生後10週 ⑫生後11週 ⑬生後12週(3か月)

ビタミンK週1回投与開始までの流れ 講演会開催 ・小児科医会会員への周知 平成24年12月 日本小児科学会山口地方会特別講演 ・産科との連携   平成24年11月 山口県産婦人科医会総会講演 「新生児・乳児へのビタミンK2製剤投与の ガイドライン改訂と投与法の変更‐意義と過程‐」               小児科医会会長 金原洋治 ・小児科医会会員への周知   平成24年12月 日本小児科学会山口地方会特別講演 「乳児のビタミンK欠乏性出血症ゼロを目指して」             産業医大名誉教授 白幡聡先生

乳児のビタミンK欠乏性出血症ゼロを 目指して 第73回 山口県小児科医会学術講演会 日時:平成24年12月9日(日) 会場:山口大学医学部 第3講義室 乳児のビタミンK欠乏性出血症ゼロを 目指して 産業医科大学名誉教授 白幡 聡 先生  3回投与ではビタミンK欠乏性出血症を十分予防することができず、 私は週1回投与への批判や不安はあたらないと考えるので 発症ゼロをめざして週1回の投与を進めていただきたいと望んでいる。 広報委員より:山口県小児科医会は山口県産婦人科医会と協力して、 全県的に生後3か月までのケイツーシロップ毎週内服を 平成24年から開始しました。

ビタミンK投与の実際(山口県) ・産科分娩施設 出生後、生後1週(退院時)に投与 退院時2回分のビタミンK製剤を渡す

週1回ビタミンK投与に関する問題点 家族・保護者への啓発 服薬アドヒアランス 製剤の費用負担

服薬アドヒアランスについて 自験例では・・ 1か月健診をおこなった160名 (週1回投与を開始した平成24年7月~平成25年5月) 1か月健診をおこなった160名 (週1回投与を開始した平成24年7月~平成25年5月) 産科から手渡されたビタミンKを 内服していなかった児は1名のみ

ビタミンK製剤にかかる費用について 山口県では、1か月健診は公費であり ビタミンK投与は無料でおこなわれてきた

平成21年のビタミンK欠乏性出血症の事例以降 県内ではlate VKDBの事例は発生していない

まとめ これまでの投与方法で late VKDBが 予防できない現状では、週1回投与が 現在のところ最良の方法であると考えられる。 山口県小児科医会と山口県産婦人科医会は 平成24年8月より週1回投与を導入した。 家族・保護者への啓発と 服薬アドヒアランスについては 今後実施状況を評価し 高い実施率を維持することが 課題である。

まとめ 山口県で週1回投与が一斉に導入できた背景には、 小児科医による公費1か月健診が全県でおこなわれ ていることが大きく関わっている。 山口県で週1回投与が一斉に導入できた背景には、 小児科医による公費1か月健診が全県でおこなわれ ていることが大きく関わっている。 さらに、産婦人科医会との密な連携が得られ、 大学総合周産期母子医療センターとの 協力が図られたことが、投与方法変更の 速やかな導入につながった。