独立行政法人 防災科学技術研究所 数値震動台(E-Simulator)開発委員会

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土木構造物の点検の流れ 平成24年11月28日 大阪府都市整備部 事業管理室 平成24年11月28日(水) 09:30 ~ 第1回南海トラフ巨大地震土木構造物耐震対策検討部 会 資料-3 1.
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地図の重ね合わせに伴う 位相関係の矛盾訂正手法 萬上 裕 † 阿部光敏* 高倉弘喜 † 上林彌彦 ‡ 京都大学工学研究科 † 京都大学工学部 * 京都大学情報学研究科 ‡
問題14(12.軸力と曲げを受ける部材):  鉄筋コンクリート橋脚の設計に関する次の記述のうち,間違っているものはどれか.
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コンクリートの強度 コンクリート工学研究室 岩城 一郎.
小課題3.1 震災廃棄物の再資源化と高機能化 概要:震災時の都市機能回復に多大な影響を及ぼすとされている震災廃棄物を対象にその再資源化・高機能化を図る技術を考案し、社会や環境に対する震災廃棄物の影響を最小化する方策を提案する 主要な施設・設備:八王子材料関係実験施設(組織構造分析システム)・SMBC施設(走査型電子顕微鏡)
関東地震 02T3601D 荒木太郎.
1923年関東地震の強震動シミュレーション 古村孝志 (東大地震研究所) より“短周期地震動”予測を目指してー現状と課題
ひび割れ面の摩擦接触を考慮した損傷モデル
地震による斜面崩壊の模擬実験 H2918 勝見 泰次.
モルタルの化学反応による 劣化メカニズムと数値解析
壁式鉄筋コンクリート構造 ・図解「建築の構造と構法」    116 ~119ページ ・必携「建築資料」     76~77ページ.
エレベータの振動解析 (ロープ・かご) 富山大学 大学院理工学研究部(工学) 木村弘之 台北101国際金融センター.
鉄骨構造の特徴 Steel Frame Structure
背景 課題 目的 手法 作業 期待 成果 有限体積法による汎用CFDにおける 流体構造連成解析ソルバーの計算効率の検証
5.建築材料の力学的性質(2) 強度と破壊 理論強度 実強度 理想的な無欠陥状態での強度 材料は原子の集合体、原子を引き離せば壊れる
小課題3.1 震災廃棄物の再資源化と高機能化 概要:震災時の都市機能回復に多大な影響を及ぼすとされている震災廃棄物を対象にその再資源化・高機能化を図る技術を考案し、社会や環境に対する震災廃棄物の影響を最小化する方策を提案する 主要な施設・設備:八王子材料関係実験施設(組織構造分析システム)・SMBC施設(走査型電子顕微鏡)
4章:曲げモーメントを受ける部材 キーワード:非線形挙動、断面解析、終局耐力、 等価応力ブロックによる塑性解析、
鉄筋コンクリート構造の特徴 ・図解「建築の構造と構法」 84~90ページ ・必携「建築資料」 ラーメン構造:74~75ページ
コンクリート構造物の設計法 コンクリート工学研究室 岩城 一郎.
スラブ内地震の震源過程と強震動 神戸大学理学部  筧 楽麿.
各構造物の詳細点検結果 (揺れ・液状化) 平成25年12月25日 資料1 平成25年12月25日(水)13:30~
堆積炭塵爆発に対する大規模連成数値解析 研究背景 研究目的 計算対象および初期条件 燃焼波の様子(二次元解析) 今後の予定
対象:せん断補強筋があるRCはり(約75万要素)
半正定値計画問題(SDP)の 工学的応用について
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■ 背景 ■ 目的と作業内容 分子動力学法とフェーズフィールド法の融合による 粒成長の高精度解析法の構築 jh NAH
問14(第1回):鉄筋コンクリートに関する次の記述のうち、正しいものの数を数字で答えよ. a
建築物の安全基準 建築物の安全性に関する基準を明記している 法律の代表的なものに建築基準法というもの があります。この建築基準法に書かれている 様々な条件に適合していないと日本では建物 を建設することはできません。凄まじい量の規 制がありますが、安全に関するもので建物を 建設する際に満たす必要のあるものをピック.
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独立行政法人 防災科学技術研究所 数値震動台(E-Simulator)開発委員会 東京大学&防災科学技術研究所 東京大学大地震研究所,3/24,2008 超高層ビルの 大規模耐震シミュレーション 独立行政法人 防災科学技術研究所 数値震動台(E-Simulator)開発委員会 堀宗朗(東京大学) 梶原浩一(防災科学技術研究所) 井根達比古(防災科学技術研究所) 1

E-SIMULATOR開発の背景 『地震防災研究基盤の効果的な整備のあり方について』に対する答申 地震災害時空間シミュレーション・システム 数値震動台を中心要素 都市全体を丸ごとシミュレーション 数値震動台のための三次元実大震動実験 E-Defenseの開発 『地震防災研究基盤の効果的な整備のあり方について』に対する答申 2

E-SIMULATOR開発の経緯 3

構造物数値解析の現状 計算科学の発展 建設分野 ハードウェアの進歩 ソフトウェアの高度化 製造業全般での設計支援 自動車,航空機,船舶,電子機器等 建設分野 建設構造物に特化した構造要素の開発 建築・社会基盤構造物の耐震設計に利用 崩壊の手前までのシミュレーションはほぼ完成 4

超大規模数値計算の必要性 構造要素を使った地震応答計算が可能な今日,何故,超大規模計算が必要か? 崩壊過程のばらつきの予測が可能 ばらつきは局所的不均一性に起因 構造要素のチューンアップが無用 計算科学の難問 超大規模数値計算の計算時間は劇的に増加 地震という繰り返し荷重が引き起こす,複雑な挙動の数値計算 構造物に特有の,平たい板の数値計算 構造要素を使った地震応答計算が可能な今日,何故,超大規模計算が必要か? 5

計算科学の難問の説明 超大規模数値計算の計算時間 繰り返し荷重が引き起こす複雑な挙動 構造物に特有の平たい板 計算規模をNとすると計算時間はN logN 計算規模が10倍になると計算時間は30倍 繰り返し荷重が引き起こす複雑な挙動 力がかかったり抜けたりするため,損傷が蓄積 力がかかる度に生じる損傷を精度良く計算する必要性 構造物に特有の平たい板 水平方向の力と厚さ方向の力では異なる板の揺れ方 損傷の度合いによって揺れ方が複雑に変化 6

E-SIMULATORの開発理念 現状の手法を凌駕する,構造物の耐震シミュレーション手法の開発 E-DEFENSEの実験を補完 超大規模数値計算 計算精度と空間分解能(詳細さ)を向上 崩壊過程のばらつきの評価 目標 高い信頼性と精度の,構造物耐震性評価 機能・居住性等の新しい耐震性能の評価 現状の手法を凌駕する,構造物の耐震シミュレーション手法の開発 7

数値震動台の特徴 E-DEFENSEの実大実験に匹敵する,構造物の崩壊過程の詳細なシミュレーション ソリッド要素を使った大規模空間離散化 延性破壊 局所的塑性化・局所的座屈の追跡 脆性破壊 亀裂の追跡 不均一性に起因する地震応答のばらつき 複数の解析モデルを使うシミュレーション E-DEFENSEの実大実験に匹敵する,構造物の崩壊過程の詳細なシミュレーション

構造要素とソリッド要素 構造物 構造要素を使ったモデル ソリッド要素を使ったモデル 構造要素モデル ソリッド要素モデル 計算量 小 大 構造部材の特性をモデル化 ソリッド要素 構造材料の特性をモデル化 構造物 構造要素を使ったモデル ソリッド要素を使ったモデル 構造要素モデル ソリッド要素モデル 計算量 小 大 計算精度 工夫が必要 高い 破壊 ばらつき評価可

数値震動台の要素 マルチスケール 数値解析 対象構造物 破壊モデル 構造 超大規模計算 非線形性 材料 部材 不連続性 建築:超高層,低層,木造 ・・・ 金属:せん断・座屈 コンクリート:亀裂 土木:橋梁,地盤,トンネル ・・・ 地盤:せん断・液状化 対象構造物 破壊モデル 10

超高層ビル 3次元CADデータ 11

ソリッド要素を用いたモデル モデル

ソリッド要素を用いたモデル モデル

ソリッド要素を用いたモデル 1階部分 解析モデル 14

ソリッド要素を用いたモデル 接合部付近のメッシュ 厚さの異なるフランジの接合部 15

ガセットプレート・ダイヤフラム・スチフナ ソリッド要素を用いたモデル ガセットプレート・ダイヤフラム・スチフナ 16

モデルの詳細 31F 1階の天井(2Fの床) 剛体プレート (剛体梁) 基礎梁 基礎梁+剛体プレート

モデルの詳細

モデルの詳細 ガセット・プレート 取り付け部

モデルの詳細

計算結果 固有振動モード(1次)

計算結果 固有振動モード(2次)

計算結果 固有振動モード(6次)

計算結果 固有振動モードの比較 ゆっくりした前後の揺れ ねじれを伴う左右の揺れ 早いクネクネした揺れ

計算結果 阪神淡路大震災の地震動の2倍を入力 揺れは15倍に表示

計算結果 損傷の度合い 青:無,緑:有,赤:損傷大

計算結果 損傷の度合い 青:無,緑:有,赤:損傷大

超高層ビルの耐震シミュレーション 阪神・淡路大震災の地震波やそれを拡大した地震波を使い,地震による揺れや建物の損傷を再現できることが確認された. 超高層ビルでは多数の箇所に小さい損傷が複雑に起こり崩壊に至るが,この計算では損傷一つ一つを細かいところまで正確に表現できることが確認された. 従来の方法ではこのような細かい損傷を精密に扱うことは困難である.E-Simulatorではこれらの損傷を厳密に再現でき,高い予測精度が見込まれる.

不均一性に起因するばらつき 設計で問題となる構造全体の耐力にはさほどばらつかない.しかし,材料の不均一性や構造の施工性に起因して,破壊時の局所的な挙動にはばらつきが生じる. 座屈する方向は右か左か? 亀裂はどのように進展するか? 29

コンクリート供試体 円柱供試体 骨材1つ1つをモデル化

破壊過程 円柱供試体 一様引張 白 モルタル 灰 骨材 赤 亀裂

破壊過程 円柱供試体 一様引張 亀裂の進展

破壊のばらつき 青 少 黄 中 赤 多 亀裂が発生した頻度

都市地震シミュレーション 地震動シミュレーション(防災科研)

都市地震シミュレーション 市販のGIS(TDM)

都市地震シミュレーション 市販のGIS(TDM)

E-SIMULATORの開発計画 平成20年度:E-Defense実大実験の再現 平成21年度以降 実大実験と超大規模数値計算の融合 RC橋脚実験 損傷過程の再現とばらつきの評価 平成21年度以降 各種構造物への適用 スーパーコンピュータの利用 都市の地震災害予測の高度化 国際利用の検討 実大実験と超大規模数値計算の融合 37