説明義務(会314) 趣旨 説明の程度 議題に関する質疑応答の機会を確保するとの会議体の一般原則を規定したのみ(通説) 株主に投資判断材料を得る等の特別な情報開示請求権を付与した者(末永説) 説明の程度 (合理的な平均的)株主が議題・議案を理解し、賛否を合理的に判断をするのに客観的に必要な範囲(東京高判S61.2.19百-37〔最高裁で是認〕)
説明の方法 一括回答の可否 役員報酬(退職慰労金)の説明義務 ・・・特に規定なし 一括回答 ・・・事前に寄せられた質問状(次項参照)に対して一括して回答する方法 ⇒一括回答は説明義務違反にはならない(東京高判S61.2.19百37)。仮に一括説明が不十分な場合には株主はあらためて質問すればよい 役員報酬(退職慰労金)の説明義務 ※退職慰労金については会社はなるべく具体的金額を明かしたくない ⇒株主から具体的金額、支給基準について質問があった場合には取締役は、基準の存在、周知性(閲覧可能なこと)、基準が支給額を一意的に算出可能なことを説明しなければならない(東京地判H16.5.13金商1198-18)
説明義務の例外(会314但、会規71) 質問事項が議題と無関係 株主の共同の利益を害する場合(例:企業秘密) 説明に調査が必要なとき(事前の書面質問があった場合を除く) ※質問状が提出されたが当日質問がなかった場合には説明不要(東京地判H1.9.29判時1344-163) ※質問状提出事項については当日の質問を待たずに解答してもかまわない(東京高判S61.2.19判時1207-120) 説明が会社その他の者の権利を侵害する場合(例:第三者の名誉毀損のおそれ) 実質的同一事項について繰り返し質問説明を求める場合 その他正当な理由があるとき
議決権の代理行使 行使手続 委任状を作成して代理人に交付(書式自由) 代理人は総会で委任状を提示 委任状は3か月間保管 ※代理権授与は総会ごと ※上場会社には金商法(いわゆる委任状規則)の規制 代理人は総会で委任状を提示 委任状は3か月間保管
代理権行使に関する問題点 重複行使の取扱い 本人の指示と異なる代理人の議決権行使 委任状の重複交付の場合は日付の遅いもの優先と解すべきか(後行の行為が先行行為の撤回の趣旨を含むから) 書面投票と重複する場合には委任状優先(書面投票は本人欠席の場合の議決権行使手段であり、代理人の出席は株主出席と同視されて書面投票は無効) 本人の指示と異なる代理人の議決権行使 無権代理で無効 ※表見代理成立の可能性はある(委任状に賛否の指示が明記されていなかった場合など) 株主・代理人間の内部的契約違反にすぎず代理人の議決権行使は有効 ※ただし、指示違反に会社が関与していた場合(例:議長に委任された議決権についての指示違反)は無効
代理人の資格制限 判例の一般論 ・・・定款による代理人の資格制限は「合理的理由に基づく相当な制限」であれば許容される 判例の一般論 ・・・定款による代理人の資格制限は「合理的理由に基づく相当な制限」であれば許容される ⇒株主総会攪乱防止という目的は「合理的理由」、代理人資格の株主への限定は「相当な制限」なので定款規定は有効 学説の見解 有効説 無効説 折衷説(公開会社無効、非公開会社有効) ⇒通説は有効説だが、有効説は金科玉条なのか? その後の裁判例による修正 総会の攪乱のおそれがない場合には定款規定の適用を排除(最判S51.12.24民集30-11-1076百-39〈別論点〉) 株主の権利行使が著しく困難となる場合にも定款規定の適用を否定(大阪高判S41.8.8下民集17-7・8-647) ※一般的に閉鎖的な会社の方が制限が許容されやすい ⇒総会の攪乱防止の利益と株主の議決権行使機会の確保の衡量を行っているのではないか
代理人を株主に限る定款規定の効力とその限界 制限は有効 (判例) 攪乱のおそれのない人物の入場可 (下級審裁判例) 入場の可否は会社の裁量 攪乱のおそれがなければ入場させなければならない 攪乱のおそれのない人物も入場不可 制限は無効
各種裁判例から見えてくること 定款規定が有効≠非株主代理人を一切認めない 攪乱の防止というメリットと議決権行使の機会を奪われる株主のデメリットとの比較衡量 株主側の代理人選任の事情、代理人の属性、会社の状況(内紛の有無)等が考慮される
書面投票制度 採用基準 行使手続 株主数1000人以上は採用強制 ただし委任状規則に従った委任状勧誘を行う場合は①の適用なし それ以外の会社は採用は任意 行使手続 会社は招集通知に議決権行使書と参考書類を添付(会301Ⅰ) 株主は賛否を記載して議決権行使書面を総会前日の営業時間終了時(会社がそれより早い締切を定めた場合はそのとき)までに返送(会規69、63③ロ) ※会社は賛否の記載がない場合の処理を定めることが可能(会規66Ⅰ②。次項参照)
電子投票制度 論点 複数の議決権行使書の行使 株主提案に対する賛否の取扱 多数説は行使日時の遅いものが有効 少数説は会社への到達日時の遅いものが有効 ※委任状と重複する場合は委任状優先 株主提案に対する賛否の取扱 ・・・会社提案と株主提案がある場合に、議決権行使書に記載がないケースの扱いはどうなるか 〔判例〕会規66Ⅰ②は、賛否不記載の場合に、会社提案に賛成、株主提案に反対と取り扱うことも許容する(同旨、大阪地判H13.2.28) 電子投票制度 省略
決議 議決権 原則 例外 1株1議決権の原則(会308Ⅰ) 株式の性質による例外 株式の状態による例外 議決権制限株式(会108Ⅰ③) 取締役・監査役の選任にかかる種類株式(同⑧) 拒否権付株式(同⑨) 属人的定め(会109Ⅱ) 株式の状態による例外 単元未満株式(会308Ⅰ但) 相互保有株式(同カッコ書) 自己株式(同Ⅱ) 仮装払込の株式(会52の2Ⅴ,102Ⅲ,209Ⅱ)
決議要件 名称 対象 定足数 定足数緩和 可決要件 ①普通決議 その他 総議決権 の過半数 排除可 出席議決権の過半数 ②普通決議 役員の選任・ 解任(一部) 1/3まで軽減可 ③特別決議 定款変更等 出席議決権の2/3以上 ④特殊決議 譲渡制限等 N/A 総議決権の2/3以上、かつ 議決権行使の可能な株主の半数以上 ⑤(格別) 特殊決議 会109Ⅱの 定め 総議決権の3/4以上、かつ 総株主の半数以上 ⑥総株主 の同意 取得条項等 総株主の同意(総会の議決は不要) 定款による定足数、可決要件の加重は可能
複数議案の提案と議決権行使 例1 会社提案 株主提案 例2 会社提案 株主提案α 株主提案β 「矛盾する議案の両方に賛成することはできない(相反議案選択)」ルール 会社提案 株主提案 株主A(30) 株主B(30) 株主C(25) 株主D(15) 結論は常識に合うが、会社法上、なぜこのやり方が適法なのかは説明がつかない(たとえばCが会社提案と株主提案の両方に賛成してはいけないのか説明ができない)。 例2 会社提案 株主提案α 株主提案β 株主A(30) 株主B(30) 株主C(25) 株主D(15) 例1の相反議案選択ルールを使うと可決議案が存在しなくなる。可決議案を決めるなら、相対多数決(ただし309条1項がネック)採用か、決選投票方式(根拠がない)を行うしかない。
議決権の不統一行使 決議、報告の省略(319。書面決議) 決議の省略 会日3日前までに会社に通知。会社は代理所有でない場合には行使を拒絶可。 ※書面投票とは意味が違うので注意 決議の省略 〔要件〕 議題について総株主が書面・電磁的方法で同意 ※議決権行使書での議決権行使に限定する意味ではない 〔効果〕 決議は成立したものとみなす
報告の省略 会議の省略 〔要件〕取締役が報告事項を全株主に対して通知し、全株主が報告の省略に同意 〔効果〕報告事項について報告があったとみなす 会議の省略 全議題について書面決議が成立すれば総会終結とみなす(会議開催は不要)
(補論)議決権拘束契約 議決権拘束契約の意義と効力 議決権信託 〔一般論〕議決権拘束契約は債権契約として 合弁のように全株主が契約に含まれる場合には、決議の効力に影響すると解するのが有力 議決権信託 株式を信託し、自益権は委託者、議決権は受託者(受益者)に帰属させる 株式を信託し、議決権については委託者が指図し、自益権は受託者(受益者)に帰属 ⇒会310Ⅱへの抵触(原則として310Ⅱの趣旨には反しないが、閉鎖会社、エンプティー・ボーティングの問題がある