平均場理論計算による sd-shell ハイパー核の形 1. sd殻核と変形 2. 自己無撞着平均場理論 と核変形 萩野浩一 (東北大学) Myaing Thi Win (東北大学) L 1. sd殻核と変形 2. 自己無撞着平均場理論 と核変形 3. Skyrme ハートリー・フォック法によるハイパー核 の変形 : 25LMg, 27LMg, 27LSi, 29LSi 4. Summary
はじめに:sd 殻核と変形 ハイパー核の興味の一つ:不純物効果 Lを付け加えることで原子核の性質がどのように変化するか? 大きさ、形、密度分布、一粒子エネルギー、殻構造、核分裂、、、 最も有名(顕著)な例: 7LLi における B(E2) の減少 K. Tanida et al., PRL86(‘01)1982 http://lambda.phys.tohoku.ac.jp/~tamura/hyperball/press/press.htm 2
2体系を仮定すると(それぞれの クラスターが励起をしないとすると) r E2 オペレーター: B(E2) の減少 E2 有効電荷: の減少 K. Tanida et al., PRL86(‘01)1982 E2 オペレーター: B(E2) の減少 E2 有効電荷: の減少 T. Motoba, H. Bando, K. Ikeda, PTP70(‘83)189 E. Hiyama, M. Kamimura, K. Miyazaki, T. Motoba, PRC59(‘99)2351 eE2 = 0.667 e for a + d 0.673 e for 5LHe + d
より重い原子核ではどうなるか? sd 殻核 小池さんの トーク p 殻核 http://atom.kaeri.re.kr/ton/nuc6.html
Be より重い原子核では基底状態は殻模型的 (クラスター的状態は励起状態に現れる:threshold rule) より重い原子核ではどうなるか? 池田ダイアグラム 6Li = a + d クラスター構造 高田健次郎、池田清美 「原子核構造論」(朝倉書店) Be より重い原子核では基底状態は殻模型的 (クラスター的状態は励起状態に現れる:threshold rule)
多くの open-shell 核は基底状態において変形している 有限量子多体系の特徴 (回転)対称性の自発的破れ 殻模型的(平均場的)構造と核変形 http://t2.lanl.gov/tour/sch001.html 多くの open-shell 核は基底状態において変形している 有限量子多体系の特徴 (回転)対称性の自発的破れ 変形核の B(E2) B(E2) の変化は変形度の変化と解釈される 6
sd 殻の原子核:変形が顕著 変形の一つの証拠 回転スペクトル 0+ 2+ 4+ 6+ 8+ 1.137 4.123 8.113 14.15 (MeV) 24Mg L を付け加えると変形はどのように 変化するのか?
自己無撞着平均場理論と核変形 有効ポテンシャル中の一体問題 ポテンシャルはエネルギーが最小となるように 決める(変分原理の考え方) 他の核子との相互作用を平均的に取り扱う 有効ポテンシャル中の一体問題 ポテンシャルはエネルギーが最小となるように 決める(変分原理の考え方) ポテンシャル中の独立粒子運動 エネルギーが低い準位に 下から詰める(スレーター行列式)
Hartree-Fock 法と対称性 =H 近似解(固有状態ではない) =H の持つ対称性を必ずしも持つ必要はない 対称性の(自発的)破れ 利点: 独立粒子の単純な描像を保ったまま主要な多体相関を 取り入れることができる 不利な点: 実験と比べるためには(原理的には)破れた対称性 を回復する必要がある。 並進対称性: HF では常に破れる 回転対称性 変形解 エネルギーを最適化するように原子核の形が 自動的に決まる = ハイパー核の形の議論には 都合がいい。
Skyrme 力 (非相対論的、密度依存型デルタ関数) Gogny 力 (非相対論的、有限レンジ) よく使われる有効核子間相互作用 Skyrme 力 (非相対論的、密度依存型デルタ関数) Gogny 力 (非相対論的、有限レンジ) 相対論的平均場モデル(相対論的、「中間子交換」) M.V. Stoitsov et al., PRC68(’03)054312
ハイパー核の形 J. Zofka, Czech. J. Phys. B30(‘80)95 VNN: 3 range Gauss VLN: 2 range Gauss を用いたハートリー・フォック計算 を加えたときの四重極モーメント(変形度)の変化は大きくて 5% 程度 例えば、b = 0.5 b=0.475
ハイパー核の変形 Zhou et al. による Skyrme-Hartree-Fock +BCS 計算 (簡単のために軸対称変形を仮定) (簡単のために軸対称変形を仮定) ハイパー核と芯核はほとんど同じ 変形 変形度は L をつけると若干 小さくなる X.-R. Zhou et al., PRC76(‘07) 034312
ハイパー核の変形 Zhou et al. らによる Skyrme-Hartree-Fock 計算 Relativistic Mean-Field (RMF) approach だとどうなる? 非相対論極限 (V と S の強い打ち消しあい) cf. D. Vretenar et al., PRC57(‘98)R1060 L による V と S の変化が増幅 される(RMF の特徴)
変形ハイパー核に対する RMF 計算 quark model 17LO Ls and Lw couplings 変分原理 etc. cf. D. Vretenar et al., PRC57(‘98)R1060 Ls and Lw couplings 変分原理 etc. 自己無撞着解(iteration)
変形ハイパー核に対する RMF 計算 自己無撞着解(iteration) (intrinsic) 四重極モーメント ハイパー核への適用: パラメーター・セット: NL3 及び NLSH 軸対称変形 核子間の対相関: Constant ギャップ・アプローチ L 粒子: the lowest energy level (Kp =1/2+) 変形調和振動子基底による波動関数の展開 変形パラメーター: (MeV) (fm)
Ne isotopes Si isotopes ほとんどの原子核で芯核とハイパー核は同じような変形 ただし、ハイパー核の方が若干変形度が小さい Skyrme-Hartree-Fock 計算(Zhou et al.) と同様の結論 L 例外: 29LSi オブレート(28Si) 球形 (29LSi) Myaing Thi Win and K.H., PRC78(‘08)054311
エネルギー曲線(拘束条件付き Hartree-Fock) エネルギー曲線が比較的平らであれば L の付加による 核変形の大きな変化 NLSH パラメーターや対相関の他の取り扱い法(constant G アプ ローチ)でも同様の結論 Myaing Thi Win and K.H., PRC78(‘08)054311
この結果を受けて、Hans-Josef Schulze 氏 とともにより系統的な Skyrme-Hartree-Fock の計算を行った: 確かに RMF の方が L の影響が強い ただし、SHF でも条件がそろえば (エネルギー曲線が平坦であれば) 核変形の大きな変化が起こりうる H.-J. Schulze, Myaing Thi Win, K.H., H. Sagawa, PTP123(‘10)569 エネルギー曲線の平坦さが キーポイント
ハイパー核の3次元変形 Hartree-Fock 計算 これまでの計算では軸対称性を仮定(計算の簡単のため) 軸対称性を破る変形(三軸非対称)における L 粒子の効果? q,f z 小池武志氏のスライドより
ハイパー核の3次元変形 Hartree-Fock 計算 よく言われること: 軸対称変形に沿ってバリアーが高くても、非軸対称方向 には平坦になっている場合がある(変形共存) 3次元 (b,g) 変形面でエネルギーを議論することが 重要になるかもしれない?
ハイパー核に対する Skyrme-Hartree-Fock 計算 最も簡便 3次元メッシュ計算(「格子ハートリー・フォック」) 波動関数の虚時間発展(「摩擦冷却法」) コンピューター・コード ev8 P. Bonche, H. Flocard, and P.-H. Heenen, NPA467(‘87)115, CPC171(‘05)49 ハイパー核への拡張 M. Rayet, NPA367(‘81)381 *実際の計算に用いたのは山本さんらの No.1 力 + SGII (NN) (Y. Yamamoto, H. Bando, and J. Zofka, PTP80(‘88)757) *密度依存型対相関力により核子間の対相関も BCS 近似で考慮 *L 粒子は最低エネルギー状態に入れる
24Mg, 25LMg +L Myaing Thi Win, K.H., T. Koike, arXiv:1010.5561 [nucl-th]
26Mg, 27LMg +L Myaing Thi Win, K.H., T. Koike, arXiv:1010.5561 [nucl-th]
考察 L が最低エネルギー状態に入ると 球形に変形が drive される ( L が励起状態にあると?) b が同じであればプロレートの方が エネルギーが得 24Mg, 26Mg, 26Si, 28Si いずれの 原子核でも L が加わると g 方向の エネルギー曲率が小さくなる 実験で見えないか? (22+ 状態のエネルギー) 定量的な見積もり:RPA or GCM
まとめ L ハイパー核の形:平均場計算の立場から sd シェル核では核変形が重要なキーワード RMF: L の影響が強く出る傾向 28Si の変形が L を加えることで大きく変化 SHF: L の影響はやや弱いが条件がそろえば大きな変形の変化 3次元計算 g 振動エネルギーの変化が示唆 次のステップ: 平均場近似を超えた計算をしてスペクトルを出す 角運動量射影(回転スペクトル) GCM or RPA (振動スペクトル) RMF で3次元計算ができると面白いかもしれない