太陽シミュレーション研究会 2006年6月14・15日 本郷 リコネクション・フレア後期 横山 央明 (東京大学地球惑星)
Carmichael (1964); Sturrock (1966); フレアの磁気リコネクションモデル Carmichael (1964); Sturrock (1966); Hirayama (1974); Kopp & Pneuman (1976) (Ohyama&Shibata 1996) このフレアを説明するモデルとして現在ほぼ確立されつつあるのがこの「磁気リコネクションモデル」です。このモデルではコロナ中に何らかの理由でできた反平行の磁力線があるところから出発します。その間の電流シートで磁気拡散の効果によって磁力線のつなぎ変えが起きる。つなぎかわる際に磁力線がリラックスする。その結果、磁場のエネルギーが熱やバルク運動のエネルギーに動的な時間スケールで転換される。その過程がフレアとして観測されるものです。さきほど紹介した「常田フレア」はこのモデルの強い証拠だといえます。というのは、このモデルではつなぎ変わった磁力線がこのようにとがった構造になるのですが、観測はその構造をまさにとらえたといえるからです。さらにこのモデルでは時間発展するにしたがって新しい磁力線が次々につなぎ変わりますので全体として自己相似的に拡大していくがこれも観測と矛盾がありません。そしてもうひとつ、くわしい解析によるとこのカスプの温度は外側ほど高いことがわかっている。つまりエネルギー解放は外側ほどあとに起こったことをしめしておりこれもモデルとあっている点です。 (Tsuneta et al. 1992) (Masuda et al. 1994)
リコネクション流入流の観測 Yokoyama et al. (2000) Yohkoh/SXT SOHO/EIT まずはリコネクション流入流です。これはリムで起こったフレアで、常田フレアと同じように美しいカスプ軟X線ループが見えました。いってみれば教科書的なフレアだったのです。このフレアはSOHO衛星のEITによろ極紫外線観測が同時になされており、その結果が驚くべきものだったのです。こちらのムービーを見てください。涙形をしたボイドが飛び立つとともに足元にループができてそれが成長していくさまがわかるとおもいます。よく見てほしいのはその涙方ボイドの根っこのあたりです。飛び立つとともにこの根っこの部分がくびれてその両側から流れが入ってきているのがわかると思います。この部分をよくみるとちょうどカスプ型をしていることがわかっていただけると思うのですが、これはこちらの軟X線の画像を重ね合わせた結果、高温プラズマ(ここでは数百万度以上ですが)が満たしているために、紫外線では暗く見えているのだということがわかりました。この観測は紫外線のラインなのですが感度が百万度のプラズマにあります。そしてそのカスプの頂上付近にむかって左右から入っていく流れがみられたわけです。
流入流の観測 J. Lin et al. (2005) MA=0.01-0.23
太陽風中のリコネクション Phan et al. (2006 Nature) MA=0.03
最近の理論・シミュレーション研究 3次元リコネクション ミクロマクロ相互作用(杉山・草野) 「乱流」(Lazarianほか) 相対論 渡邊・横山 解析的研究 新田 運動論リコネクション 多数
3次元リコネクション Ugai & Shimizu (1996) 拡散領域の空間サイズが、電流に沿った方向にある程度あれば2次元と同じ結果 Linton & Priest (2003) パッチーリコネクション
最近の理論・シミュレーション研究 3次元リコネクション ミクロマクロ相互作用(杉山・草野) 「乱流」(Lazarianほか) 相対論効果 渡邊・横山 解析的研究 新田 運動論リコネクション 多数
空間スケールのギャップ d = ri ~ 10 m d; 電流シートの厚み ri ; イオンLarmor半径 プラズマミクロ過程による抵抗が効く空間スケール d = ri ~ 10 m d; 電流シートの厚み ri ; イオンLarmor半径 フレアの空間スケール 104 –105 km 106から107ものギャップ! 安定であるとは考えがたい まずはイントロダクションです。 ようこうやSOHOなどの観測により、フレアを説明するモデルとして磁気リコネクションが広く受け入れられるようになりました。そのいっぽうで磁気リコネクションの理論はまだ完全にできあがってはいません。特に磁力線がつなぎかわる拡散領域の構造やその物理過程についてはいくつか解決するべき問題が残されています。今日お話しするのはそのような課題のひとつです。 ここでは、空間スケールのギャップの問題とよびます。磁気リコネクションによって磁力線がつなぎかわるためには磁気拡散が効かなければなりません。コロナのような高温プラズマでは、粒子間の衝突頻度が低いために、Coulomb粒子衝突によるSpitzer抵抗ではなく、プラズマミクロ過程により磁気拡散が起こると考えられています。そのような拡散が効くためには電流シートの厚みがイオンのLarmor半径程度にまで薄くならなければなりません。コロナの場合その大きさは10メートル程度です。いっぽうみなさんご存知のとおりフレア自身の空間スケールは1万キロメートルから10万キロメートルあります。ここでいうフレアの空間スケールとは、フレアで消費される磁場がしめる大きさのことを指します。単純に考えると、1万キロメートル程度の空間をしめる磁力線が必ずこの10メートルの空間を通過する必要があるということです。この二つの値の間には6桁から7桁ものギャップがあります。このような構造が安定に存在できるとは考えにくいです。ではどうなっていると推測されるのか?
フラクタル電流シート Tajima & Shibata (1997) 実現可能性? 「大域的電流シート」 >1 km ~104 km
x y z t=0 Bx 横山(2001) 初期状態 磁場ベクトルポテンシャルに有限擾乱を与える。 この図は初期状態を3次元的に示したものです。灰色のにょろにょろしたのが磁力線です。Xy面とyz面とに示してあるのはBxの分布です。磁場ベクトルポテンシャルに有限擾乱をあたえた結果、磁力線にうねりが生じているのがわかってもらえると思います。また壁のプロットから、小さなスケールの擾乱であることがわかっていただけると思います。
結果 t=40 z では、結果です。これは80Alfven時間が経過したときの図です。かべの矢印は速度のxy面内成分をしめしたものです。みておわかりのようにリコネクションが発展しています。しかし、よくみると初期にあたえた擾乱がきれいになくなってしまっているのがわかります。そのへんの事情をムービーで示します。 y x ムービー
反平行磁場に、有限ランダム擾乱を初期に与えて、その後の経過を見る。 研究の最終目標 磁気流体シミュレーションで磁気乱流リコネクションを実現し物理を調べる。 現在の研究 3次元シミュレーション 反平行磁場に、有限ランダム擾乱を初期に与えて、その後の経過を見る。 そこでこのような背景のもと、わたしも研究をはじめてみました。この研究の最終目標は、磁気流体シミュレーションで、磁気リコネクションを実現してみようというものです。実際のところを正直に申しますと、コンピュータ資源の制約などからこれを直接検証するのはなかなか困難です。ですが、それに向かって少しづつ研究をすすめるというのが目標です。で今日の講演ですが、3次元シミュレーションの結果についておはなしします。反平行磁場に、有限ランダム擾乱を初期に与えて、その後の経過をみるシミュレーションを行いました。結果を先に申しますと、擾乱は維持されず、リコネクションレートへの影響はありませんでした。
エネルギー解放率は、擾乱の影響をあまり受けない。少し小さくなる。 エネルギー解放率の時間変化 それはともかくも、多少は磁場の擾乱は残っているので、その結果エネルギー解放はどうなるのか、というのを調べました。それがこの図です。これは、箱全体の磁気エネルギーの時間変化、つまりエネルギー解放率を時間の関数として描いたものです。緑の線が擾乱なし、黄色と茶色とが擾乱ありで、それぞれ振幅がもとの磁場に対して0.5倍、1.0倍です。これをみてわかるとおり、エネルギー解放率は、擾乱の影響をほとんどうけていません。むしろ少し小さくなっているぐらいです。これは音波の影響じゃないかと思っています。 Time エネルギー解放率は、擾乱の影響をあまり受けない。少し小さくなる。
「乱流」リコネクション 田沼他(2001) ティアリング不安定のくりかえしによる、非定常的リコネクション 電流シートの厚み
研究ネタ提案 :乱流リコネクション 3次元化 長時間計算 準定常的なリコネクションレートの定量化 外部擾乱の付加 磁気中性点をつらぬく縦磁場上を伝播するAlfven波の影響
Nagashima & Yokoyama (2006 ApJ) リコネクションレート method 1 の結果について。 × X class △ M class □ C6-C9 Petschek model (fitting) 仮定: η:Spitzer抵抗 磁気Reynolds数
「乱流」的拡散の観測 拡散領域や衝撃波などの拡散構造の厚みの観測 ミクロ物理が効いているとすると数メートル 乱流なら100km??
研究ネタ提案 そのほか 物理過程の付加 放射冷却効果 粒子加速過程(経験的モデルによる) 大bリコネクション 光球への応用
太陽フレアの磁気リコネクションモデル Carmichael (1964); Sturrock (1966); Hirayama (1974); Kopp & Pneuman (1976)
時間発展
研究ネタ フレア後期について 高解像度計算 フレアループの冷却(ポストフレアループ) リコネクションの継続・終了 粒子加速過程(経験的モデルによる) Fisher et al. (1985) 厚い標的モデルによる非熱粒子によるエネルギー注入の2次元・3次元版 うまくいったら増田硬X線源や、ループ頂上のライン幅増大(Mariska & McTiernan 1999 ようこうBCS観測)について、なにか言えるかも。
計算モデル 3次元抵抗ありMHD プラズマ 磁気Reynolds数 グリッド数 1282 x 32 64 8 z も周期境界 計算モデルの詳細はつぎのとおりです。このような3次元の箱の中で抵抗ありの磁気流体力学方程式系を解きます。初期は力学平衡状態で、反平行磁場の間に高密な電流シートがあります。磁場のプラズマベータは0.3でAlfven速度が音速の2倍です。電流シートの厚みを単位として半径10の球の内部にだけ抵抗をかけます。その磁気Reynolds数は200です。この初期状態に有限振幅の擾乱を与えます。それは次のスライドで、、、。 グリッド数は128 x 128 x 32です。境界条件は電流シートと平行なy方向の上下だけが壁で、それ以外は周期境界です。90Alfven時間ぐらいまで30000ステップで計算して、野辺山太陽電波のSX5システム2cpu並列で約5時間半かかる計算です。 z も周期境界
擾乱の拡散 初期 初期にあたえた擾乱はあっというま、数Alfven時間のあいだに拡散してしまいます。これは、初期に磁場に与えた擾乱で、磁気圧に不均一が生じ、その結果音波が発生して、衝撃波で熱化したためによるものであると考えています。
擾乱の拡散 x t=0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 Bx P Vx Along y=2,z=0 時間 初期擾乱から音波が発生 それをみるために、初期に磁場があった領域内での1次元分布の時間変化を示します。示した物理量は磁場・圧力・たて速度です。時間とともに磁場の擾乱が減少するいっぽうで圧力・たて速度の振幅が大きくなっているのがわかるとおもいます。その結果、磁場自身の擾乱は小さくなってしまい先のような結果になっています。 初期擾乱から音波が発生
乱流リコネクション Lazarian & Vishniac (1999) : large-scale magnetic Mach number of the turbulence