カードによる図解を利用した 履修計画立案方法の提案

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カードによる図解を利用した 履修計画立案方法の提案 著者:慶應義塾大学環境情報学部 杉浦 学 発表者:教育情報システム学講座4年 千葉 佑介

本論文を選んだ理由 前期は授業評価に関する論文を講読したので、後期はできるだけ履修計画支援関連の論文を取り上げたかった。 「大学における履修計画の支援」という点で、(私の卒業研究と)研究内容が合致しているから。 FLMの内定者に慶応大学環境情報学部の人がいるので、後日、慶応大の履修システムに関する話を聞けそうだから。

論文の流れ(論文概要) (履修計画を立てる際に特に制約の少ない)慶応大学環境情報学部・総合政策学部において、履修の実態を調査 調査結果から問題点を指摘し、分析 分析結果に基づき、学生の履修計画支援の為の方法論を提案 提案した方法論を効果的に実践する為の履修計画支援システムに関する考察

研究背景について(1) 本研究は、慶應義塾大学 湘南藤沢キャンバス(SFC)環境情報学部・総合政策学部における、学部生の卒業研究である SFCでは、研究活動を重視している為、学生自身の興味分野を中心に自由度の高い履修計画を立てる事が求められている でも、全ての学生に そんなことができるのかな?

研究背景について(2) 大学に入学したばかりの1年生に興味分野の明確化を求めるのは難しい。その為、大学側から道標として、クラスター情報が提示される事になった ■クラスターとは?■(※参考文献1・2より抜粋)  SFCで行なわれている先端研究領域を15に分割したもの。各クラスターには将来就職が可能になると予測される職種や具体的な研究分野等が提示されており、各クラスターに関連の深い授業がリストアップされている。

研究背景について(3) クラスターが導入されているにも関わらず、履修計画立案に迷う学生は後を絶たない クラスターが 役に立ってないのかなぁ? これは調査の必要がありそうだ。

研究目的について(1) 履修の実態を解明し、履修計画の支援できるような方法論を提案すること その為に 方法論を現状に則したものにする為、  方法論を現状に則したものにする為、 クラスターの効果・問題点、履修実態の調査を行う  方法論を実践する環境を学生に提供する為の ツールに必要な条件を考察する その為に

研究目的について(2) 本研究の位置付け SFC大岩研究室enTrance Projectの活動の一環 本論文の方法論は、履修支援システム Cluster Navigation Systemとして実現される予定

実態調査について(1) 目的 SFCにおける履修実態の現状と問題点を探り、履修計画立案支援方法を考察すること 対象 以下に在籍する学生  以下に在籍する学生 SFC 環境情報学部 SFC 総合政策学部 SFC 政策メディア研究科

実態調査について(2) 実施方法  論文内参考資料1「履修計画に関するアンケート」を用いて、担当講師の許可を得、授業中に実施

実態調査について(3) 実施方法 表:実施の詳細と回答者数 調査実施日 授業名 担当者 系列 開講時限 回答者数 02/10/17 対話システム論 大岩 元 クラスター 木曜4限 27人 データ構造とプログラミング 有澤 誠 専門 木曜4・5限 32人 02/10/18 テクニカルライティング 斎藤 俊則 汎用 金曜4限 81人 プログラミング入門 坂田 洋幸 29人 02/10/28 情報教育論 月曜1限 66人 計235人 表:実施の詳細と回答者数

実態調査について(4) 質問意図カテゴリと質問内容 目標と授業選択の関係性調査 授業選択行動に関する実態調査 大学生活全般における目標といえるものがあるか 授業の履修行動が質問①の目標に関連して行なわれているか 質問②が実現できていない場合について、今後そのような志向があるか 授業選択行動に関する実態調査 授業選択の際に重視する事柄は何か 授業選択の際に使用する情報源は何か

実態調査について(5) 質問意図カテゴリと質問内容 クラスターに関する実態調査 授業選択に関連する問題と満足度調査 クラスター設置意図の理解がされているか 質問⑥の理解内容の詳細はどういったものか 所属するクラスターを意識しているか クラスターの提示するガイドラインを授業選択に活用しているか 授業選択に関連する問題と満足度調査 授業選択の際に問題となることはあるか ⑪ 現在までの授業選択に満足しているか

調査結果について(1) 目標と授業選択の関係性調査 多くの学生(70.3%)が漠然と目標を持っており、23.7%の学生は明確な目標を持っている 大半の学生(64%)が目標達成の為に授業選択を行なっている 計画的な授業選択が現在できていない学生(25.4%)にその理由を尋ねたところ、以下のような回答を得た 時間割の都合上(22.0%) 目標が授業選択につながる程はっきりしていない(20.3%) 目標だけが授業選択の動機ではない(15.3%) SFCの学生は履修に対する関心が比較的高いようだ

調査結果について(2) 授業選択行動に関する実態調査 授業選択において、優先度の高い理由は「興味」「授業内容」などであり、優先度の低い理由は「他の学生の評価」「時間割との都合」などであった 単なる興味本位から授業を選択しているということが伺える 授業選択の際に参考にするものは、「Webシラバス」「SFCガイドシラバス(冊子のシラバス)」「時間割」などが有力であり、授業評価結果などはほとんどの学生(92%)が利用していなかった

調査結果について(3) クラスターに関する実態調査 半数以上の学生(58.7%)はクラスターの設置目的を知らない(恐らくもっと多くの学生が詳しくは知らないと推測できる) 全体の36%以上の学生が所属クラスターを決定していない 半分以上の学生(64.6%)が授業選択の際、クラスターを頭の片隅には置いているが、そんな程度ではクラスターを活用できているとは到底言いがたい

調査結果について(4) 授業選択に関連する問題と満足度調査 77.6%の学生が授業選択の際に困った事があると答えている。その理由は以下に挙げるものが有力であった 取りたい科目が必修科目と重なって取れない(66.7%) 履修決定の前に授業内容の把握が十分にできない(11.8%) シラバスと実際の講義内容が異なる(9.1%) それにも関わらず、半数以上の学生(60.9%)が授業選択に満足していると答えている 学生は「計画的に履修できなかった」ことには不満を覚えているが、結果的に興味(本位)を満たしてくれる講義であれば満足するのではないか

調査結果考察(1) 目標と授業選択の関係について 大半の学生は「学生生活の目標」を持っている 大半の学生は少なくとも「計画的に授業を選択し、履修しているつもり」である 授業選択の際に重視するものと学生の持つ「目標」は関連性が不明確である  学生は「目標達成の為に計画的な履修ができている」と 思い込んでいるだけで、授業で得たものはまとまった形 では何もないという状況に陥っている 結論

調査結果考察(2) 履修計画の明確化による評価と改善 目標と授業選択の関係を整理して考える為、計画的な履修計画を明確に表現する必要がある しかし、履修計画は立案から評価まで学生の思考の中で行なわれ、明確にする作業過程を持たない事が多い  何らかの方法で、 履修計画を明確に表現する必要がある 結論

調査結果考察(3) クラスターの限界 クラスターの存在や設置目的を正確に把握している学生が少なく、形骸化してしまっている SFCの学生には、クラスターを有効に活用するだけの前提条件が備わっていない 学生自身が自分の立ち位置(実力・今まで学んで きたこと)を正確に把握することから始めるべき 結論

方法論の提案(1) カードを使用した履修計画の為の方法論 KJ法を参考にしており、目的はカードを用いて履修計画を一枚のマップとして明確に表現する事  川喜田二郎氏が考案した問題解決の技法  あるテーマに関する思いや事実を単位化し、グループ化と抽象化を繰り返して統合し、最終的に構造化して状況をはっきりさせ、解決策を見出す方法 (※参考文献3より)

方法論の提案(2) 図:マップの構成例 目標カード 授業カード コメントカード 品質の高いソフトウェアを 総合的にプロデュースすることの できる人材になる Javaによる プログラミングの基礎を 学ぶ 分析・設計する方法に ついて学ぶ 美しいプログラミングを 書くためのオブジェクト指向 の考え方を身に付ける オブジェクト指向モデリング 児玉 公信 オブジェクトプログラミング 大岩 元 プログラミング入門 坂田 詳幸 WEBアプリケーションの開発 オブジェクトプログラミングの 応用編として、近年流行の WEBアプリケーションを 開発する技術を学ぶ 目標カード 授業カード コメントカード 図:マップの構成例

方法論の提案(3) マップを構成する要素 カード 関連 授業カード 目標カード コメントカード 目標カードと授業カードの関連 目標カード間の関連 授業カード間の関連

方法論の提案(4) カードについて 授業カード 目標カード コメントカード 授業を表現するカード 必ず一つ以上の目標カードとの関連が必要 目標を記述するカード 一つの目標カードに複数の目標を記述してはならない コメントカード 授業、関連に対する説明を記述するカード できるだけ関連に対して用いるべき 必要最小限度の使用に留めることが重要

方法論の提案(5) 関連について 方向性のある関連 “→”や“⇔”などで方向性を記述できる 方向性のない関連  “→”や“⇔”などで方向性を記述できる 方向性のない関連  “ー”などでカード同士を結ぶだけで記述できる 強弱  「ー > ー > ー」のように、線の強弱や色、点線などで関連性の強さを表す

方法論の提案(6) マップを分かりやすくする為の工夫 グループ化 抽象度による階層化 カードの量が増えると全体像の把握が難しくなるので、関連が多く引かれたカード郡を括ってグループ化する 抽象度による階層化 目標カードの抽象度がバラバラだと、具体的目標を探し出して授業カードと関連を作成する作業が困難になるので、抽象度によって目標カードを階層化する

気が付いたら授業選択がバラバラ・・・という 方法論の提案(7) マップの構成方法 ボトムアップ構成法 既に授業選択や履修が終わった後に、次の学期の履修に役立てるという目的でマップを構成する場合に有効 履修が完了した授業群を整理し、次の学期の履修計画の為の道標を得る為に行なう それによって 4年間でふらふらと興味が移り変わり、 気が付いたら授業選択がバラバラ・・・という 事態を避ける事ができる

方法論の提案(8) マップの構成方法 ボトムアップ構成法 以下の順序でマップを作成する 今までに受講した授業名の授業カードを作成する  以下の順序でマップを作成する 今までに受講した授業名の授業カードを作成する 授業カードごとに最低一個の成果を考え、目標カードに記述する 同じ内容の目標カードを極力削除する 目標カードのグループ化を行なう 階層化を行なう

(履修計画を確定する前に)相談する事が容易になる 方法論の提案(9) マップの構成方法 トップダウン構成法 目標カードの階層化から授業選択を行なう方法 目標から授業選択を導出するということを重視 「思いつく目標を適当に書き出す」ところから始める方法と、「なるべく抽象的な目標を1つ書き出す」ところから始める方法の2種類に大別できる それによって 出来上がったマップを授業を担当している 講師や既に履修した学生に見せて (履修計画を確定する前に)相談する事が容易になる

方法論の提案(10) マップの構成方法 トップダウン構成法 以下の順序でマップを作成する(順序1)  以下の順序でマップを作成する(順序1) 思いつく目標をその粒度に関わらず、全て列挙し、目標カードに記述する 目標カード間の関連を見つけ、関連を作成する 階層化する 目標カードのグループ化を行なう 具体的な目標カードを達成する為に必要な授業カードを作成し、その目標カードとの関連を記述する

方法論の提案(11) マップの構成方法 トップダウン構成法 以下の順序でマップを作成する(順序2)  以下の順序でマップを作成する(順序2) できるだけ抽象的で自分が最も重要だと思う目標を1つ探し、目標カードに記述する 最初に作った目標カードを基に、関連性を考えながら他の目標カードを作成し、関連で結ぶ 階層化する 目標カードのグループ化を行なう 具体的な目標カードを達成する為に必要な授業カードを作成し、その目標カードとの関連を記述する

履修計画支援システムについて(1) システム化の利点 ・・・などが考えられる コンピュータ上で方法論が実践できる場を提供する事で、学生にかかる負担を減らせる 自分が作成したマップをいつでも編集可能な状態で保存しておいて、後々の参考にできる マップを他の学生と共有でき、先輩のマップを参考にするなどして活用できる 大学側が提供する履修申告システムと連携し、履修計画申請をスムーズにできる ・・・などが考えられる

履修計画支援システムについて(2) システム化に当たって要求される事 カードツールに対する要求 カードを直感に近い形で操作する事ができるユーザインターフェイス カード作成の手間を軽減する機能

教授法・教材の開発・発展を目的とし、SFCで学期の終わりに実施されている授業調査 (※参考文献4より) 履修計画支援システムについて(3) 支援システムに対する要求 授業情報との連帯。シラバスやSFC-SFSに蓄積された評価に対するリンクなどが必要 永続化。自分が作成したマップがいつでも編集可能な状態で保存しておくことが必要 マップの共有と検索。他人のマップを自分に必要な条件で検索し、参考にする事により、より洗練された計画を練る事ができる 表現力の向上。時間的な制約や単位に関する情報に対しての表現力を高める必要がある 履修申告システムとの連携。これにより、履修申告がスムーズになると思われる

今後の課題について 本研究で提案された方法論は、 Cluster Navigation Systemとして実現される予定 多くの学生に利用される事を目指している 一刻も早く、支援システムを開発・導入し、実験的に評価を行う必要がある

感想 調査段階にとても力を入れていて驚いた 私の卒業研究とは、履修科目選択の際重視するものが全く違うが、SFCという研究をメインにしている場所では非常に有用なシステムになりそうだと感じた 学生が「目標」を設定し、それに応じた授業を履修する事を支援するという考え方は良いなと思った 当たり前の様に論文中で専門用語の略語を使うのはどうかと思った(UI、SFC-SFSなど)

疑問点 いまいち、マップを構成する事による利点が把握できなかった。実験もしていないのに、(この方法論は)本当に有用なのか? 今現在、この研究はどの辺まで進展しているのだろうか?Webには載っていなかったが・・・

自分の卒論にどう生かせそうか 履修支援の方法論をシステム化する利点や研究動機などが参考になりそう 自分の卒論と比べて、研究目的がハッキリしていて分かりやすいと感じた

参考文献 2002年度卒業研究 カードによる図解を利用した履修計画立案方法の提案(http://www.crew.sfc.keio.ac.jp/papers/bachelorsthesis/2002gackt/g-pro.pdf) SFC GUIDE>>履修案内>>クラスター(http://www.sfc.keio.ac.jp/sfc/guide2003/cluster.html) KJ法とは? (http://www.sam.hi-ho.ne.jp/mediacraft/DB/KJ-Method.html) SFC-SFS (http://www.sfc.keio.ac.jp/faculty/lecture/sfc_sfs.html) ※最終閲覧日は全て2004/11/20

質疑応答 よろしくおねがいします。