大気圧パルス放電によるメチレンブルーの脱色

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大気圧パルス放電によるメチレンブルーの脱色 Decoloration of methylene blue in aqueous solution using pulsed discharge plasma at atmospheric pressure 生 駒 晋*,宮 崎 泰 至,佐 藤 孝 紀,伊 藤 秀 範 (室蘭工業大学) はじめに 実験装置および実験条件 Electrode : 針対平板配置 針電極 : 真鍮製の平板にステンレス釘を 10mm間隔で1,4,42,88本配置 下部電極 : プラスチック製の容器 (144×104×16mm)の中にジュ ラルミン板(130×90×3mm)を沈 め,接地電極とする ギャップ長(針先から液面までの距離) : 1,4,          7,10mm Discharge chamber : 箱型放電チェンバ (MCナイロン&アクリル製) 内径 : 140×280×125mm (約4.9L) H.V. pulse generator : Blumlein回路 パルス電圧 : 高周波同軸ケーブル(フジクラ, 5D-2V)を2本用いたBlumlein回 路によって発生させ,針電極に 印加する 充電電圧 : +14kV パルス繰り返し周波数 : 20pps(pulse per second) 背景 有害有機化合物(ベンゼン,トリクロロエチレン等)によって汚染された水を促進酸化法で処理する方法が注目されている 促進酸化法 様々な方法により発生させたO3やOH等の酸化剤を用いて水溶液中の有害有機化合物を分解する ・パルス放電   ・紫外線照射   ・光触媒酸化   ・超臨界水酸化    パルス放電 高エネルギー電子による直接分解反応 高エネルギー電子が得られるためH,N,O-,N+のような化学的に活性な種が放電中で生成される(1) 水上でパルス放電を発生させることで化学的に活性な種のうち,特に酸化ポテンシャルの高いOHやH2O2などが生成される(2) 紫外線や衝撃波が発生する(1) (2) 有機化合物の効果的な分解処理に期待ができる 目的  パルス放電を用いて液中の有機化合物を分解し,その分解特性を調査する 比色分析を行うため有機染料の1つであるメチレンブルーを分解対象とし,放電形態および放電中の生成物がメチレンブルー分解に与える影響を調査した Background gas : N2 (純度99.99%),O2 (純度99.5%) バックグラウンドガス中の生成物がメチレンブルー分解に与える影響を調査するため,N2:O2混合ガスの混合比を0:100および80:20に変化させた Substitution of Polluted water : メチレンブルー水溶液 初期濃度:10ppm 初期液量:70g Concentration measurements of methylene blue : レーザおよびPhotonic Multi-Channel Analyzer (PMA) メチレンブルー水溶液へ放電を60分間照射し,そのときの濃度変化を測定した メチレンブルー濃度の測定には,波長630~680nmの赤色のレーザとPMA(浜松ホトニクス製,PMA-11)を使用した,吸光光度法を用いた 最近の報告 Pawlat et al.(3)           水溶液中でのパルス放電におけるパルス繰り返し周波数およびガス流量がメチレンブルー分解に及ぼす影響を調査している Georgescu et al.(4)     溶液にO3をバブリングした状態でパルス放電によるメチレンブルーの分解を行い,O3が メチレンブルーの分解に効果的であることを報告している 25ppm 10ppm 1ppm 比色分析 濃度の違いによる溶液の色の濃淡を利用して分解を比較的簡単に判断できる 実験結果および考察 (1) パルス電圧・電流・電力波形  88needles 42needles (2) 針数の変化がメチレンブルー分解に及ぼす影響 4needles 1needle 針数88本および針数42本 針先から水溶液表面に対してストリーマコロナのような小さな円錐状の放電が発生する 放電が照射されている部分で(1)~(4)式の反応が起きるため分解が進む 針数を42本としたときには,針数88本の場合と比較して放電照射面積が小さいため溶液表面での反応が起こりにくい 針数が88本のときに分解率が最も高く,次いで1本,42本となり,4本のとき最も低い分解率となった 針数を変化させたときのO3濃度の変化は,わずかであった O3の絶対量が少ないためO3以外の物質が主に分解に寄与していることが考えられる 針数4本および針数1本 発光が強い放電が発生し,水面上にプラズマが広がっている 水面上に広がっているプラズマの部分で(1)~(4)式の反応が起きるため分解が進む 放電中の反応過程(1) (2) パルス幅500nsec,放電電圧20kV,放電電流70A  Oxidation potential(1) H2O + e → OH + H ・・・・・(1) 2OH → H2O2 ・・・・・(2) O2 + e → 2O + e ・・・・・(3) O2 + O + M → O3 + M ・・・・・(4) N + O3 → NO + O2 ・・・・・(5) NO +O3 → NO2 + O2 ・・・・・(6) 次のようなことが考えられる 瞬間的な電力は最大で約 1.5 [MW]  メチレンブルーの分解は,放電照射面積の影響を受ける 放電形態の違いによるメチレンブルー分解へのはっきりとした影響は見られない O3は,弱い放電が気相中に広がると生成されやすくなる 1pulse当たりの注入エネルギーは0.7 [J/pulse] 1pulse当たりに注入されるエネルギーは針数に依存しない ただし,針数4本と針数1本の放電は類似しており,放電が照射されている面積もほぼ同程度であることから両者の違いには別の要因が考えられる 主にOHおよびH2O2が分解に寄与していると考えられる (3) ギャップ長の変化がメチレンブルー分解に及ぼす影響 (4) バックグラウンドガスの組成がメチレンブルー分解に及ぼす影響 N2:O2=0:100 分解率は2通りの傾向を示した d=1mmのときに分解率は6%程度上昇した 93% 作用エネルギー密度が14J/(g・ppm)のとき分解率は100%に達した O3濃度は140ppmであった 87% d=1mmのときは,ほかの条件と比較して水面上に大きくプラズマが広がった N2:O2=80:20 作用エネルギー密度が14J/(g・ppm)のとき分解率は40%であった O3濃度は5ppmであった 放電照射面積が大きくなり,溶液の表面付近で(1)~(4)式の反応が盛んに行われたため分解率が高くなっている バックグラウンドガスの組成はメチレンブルー分解に大きく影響を及ぼす まとめ 針数,ギャップ長およびバックグラウンドガスの組成の変化がメチレンブルー分解に及ぼす影響を調査した パルス放電によってメチレンブルーを分解することができ,針数を変化させた場合のメチレンブルー分解率は,針数88本のときが最も高くなった 針数を変化させた場合のオゾン濃度の違いはわずかであるため,針数を変化させたときのメチレンブルーの分解にはOHおよびH2O2が影響していることが考えられる 針数88本および針数42本のときと針数4本および1本のときでは,それぞれ形態の違う放電が観測された 放電照射面積の違いがメチレンブルーの分解に影響していることが考えられる。また,放電形態の違いとメチレンブルー分解の間には,はっきりとした相互関係が見られなかった オゾンを発生させることはメチレンブルーの分解に効果的である (1) M.A.Malik et al.:Plasma Sourse Sci. Technol. 10 (2001) 82.  (2) P.Lukes et al.:J. Phys. D: Appl. Phys. 38 (2005) 409. (3) J.Pawlat et al.:Acta Physica Slovaca 55 (2005) 479.  (4) N.Georgescu et al.:Proceedings of GD 2006 F05 (2006) 497.