「すざく」搭載XISのバックグラウンド ――シミュレーションによる起源の解明

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Presentation transcript:

「すざく」搭載XISのバックグラウンド ――シミュレーションによる起源の解明 ○穴田貴康、堂谷忠靖、尾崎正伸、村上弘志、 平賀純子、市川喜徳、村澤哲(宇宙研) 他、「すざく」XISチーム

目次 XISを再現するバックグラウンドシミュレーション XISの実データとの比較 バックグラウンド発生機構 まとめ

本研究の目的 バックグラウンドの 影響の低減が必要 バックグラウンドの発生機構をモデル化することが不可欠 これからのX線天文学 銀河団などの広がった天体の観測 →バックグラウンドの不定性の影響大 硬X線領域における非熱的放射の観測 →べき乗で減少するスペクトル、 バックグラウンドはほぼフラット  →相対的にバックグラウンドが卓越 典型的な 天体からのX線スペクトル バックグラウンドスペクトル エネルギー (keV) バックグラウンドの 影響の低減が必要 バックグラウンドの発生機構をモデル化することが不可欠 モンテカルロシミュレーションによりバックグラウンドを 再現し、発生機構を調べる。

シミュレーションの流れ 2. 3. 1. 検出器モデルを用意 宇宙環境における宇宙線を模擬した粒子を打ち込み、相互作用をシミュレート 3. CCD内に入射した粒子が作った電子の拡散をシミュレート、実際にXISで行われているイベント抽出を行う (シミュレータ:Geant4) 2. 3. 1.

2.検出器モデルに打ち込む粒子 宇宙線環境を模擬したモデル ←すでに構築済みのものを使用 衛星高度(~600km)で予想される宇宙線環境 宇宙X線 (10keV - 6MeV) 宇宙線電子 (100keV – 200GeV) 宇宙線陽子 (30MeV – 200GeV) 宇宙線環境を模擬したモデル ←すでに構築済みのものを使用 衛星高度(~600km)で予想される宇宙線環境 等方的と仮定 (ただし視野方向のX線は除く) cut-off rigidityは8.4GV 打ち込む宇宙線スペクトル

1.検出器モデル(ハウジング) 計算 速度 正確さ XIS モデル △ ◎ 球殻 ○ 穴あき球殻モデル XISモデル XISと同じ10g/cm2 の厚み 質量が同じになるような体積 XISと同じ10g/cm2 の厚み 質量が同じになるような体積 計算 速度 正確さ XIS モデル △ ◎ 球殻 ○ 穴あき球殻モデル  視野方向に穴  物質配置は単純化  (Alの内側に   金のコーティング) まず物質配置を細かく再現したXISモデルを考えました。ところが形状が複雑なため最適化が難しく、計算時間がかかってしまいます。そこで試行錯誤を行い、視野方向に穴のあいたアルミ嗅覚で精度を損なわずに近似できることを示しました。維持したパラメータとしては10g/cm2の厚みと質量です。そこでこの形状の単純化による影響をみます。 XISモデル  物質配置を細かく再現  計算時間がかかる

3.CCD内部における電荷拡散モデル FI 今まで: CCDの中性領域の電荷拡散は考えていなかった (2004年度 狐塚修論) (2004年度 狐塚修論) 今回 : 中性領域における電荷拡散と再結合も盛り込み、より現実に即したシミュレーションを行った  X線 FI 荷電粒子 70mm ドリフト 545mm 軌跡に沿って 電子を発生 等方的に拡散 集めた電荷は格子状に区切った面積でカウントアップし、イベント抽出

CCDに入射した陽子が作るイメージ FI FI BI BI シミュレーション イメージはよく再現 実データ Simulation Real (CCDに1GeVの陽子を 打ち込んだときに作ったイメージ)

絶対フラックスの比較 5ksec(~600フレーム)相当の粒子を打ち込んだ。 CCDに進入した陽子の数で比較 実データ: 30個/フレーム に打ち込まれた粒子数 X線:~1.6×108   電子:~3.1×106 陽子:~3.5×106  実データ: 陽子がCCDに進入 → 大きく広がったイメージ CCDに進入した陽子の数で比較 実データ:     30個/フレーム シミュレーション: 70個/フレーム ファクター2程度の違いで再現  衛星搭載機器による遮蔽の効果  地球上空の荷電粒子バックグラウンドの場所依存性を無視 →シミュレーションのスペクトルを 陽子起源イベント数でスケーリング

スペクトル比較 BI FI FI BI 非X線グレード X線グレード(擬似X線イベント) FI: 全領域 BI: 4keV以上 でよく再現 青: 実データ 赤: シミュレーション 非X線グレード BI FI FI: 全領域 BI: 4keV以上 でよく再現 非X線グレードの スペクトルを再現した のは本研究が初めて X線グレード(擬似X線イベント) FI BI 連続成分の形を 全領域でよく再現

X線グレードを作った CCD進入粒子(バックグラウンド粒子)の種類 不感層は除く FI BI 電子 1029 (64%) X線 462 (28%) その他(陽子等) 133 (8%) 電子 6033 (81%) X線 662 (9%) その他(陽子等) 720 (10%) 720 (10%) 133 (8%) 662 (9%) 電子 X線 その他 (陽子等) 電子 X線 その他 (陽子等) 462 (28%) 6033 (81%) 1029 (64%) このバックグラウンド電子について 発生場所 作った宇宙線粒子 バックグラウンド粒子としては ともに電子が主要成分 を調べる。

バックグラウンド電子の起源 FI 宇宙線陽子 宇宙線陽子 22% 36% 21% 電子 陽子が空乏層で電離により作った電子がそのままバックグラウンドになるのではなく、いったん外に出て再進入したものがバックグラウンドとなる。 電子 21%

バックグラウンド電子の起源 宇宙線電子 BI 宇宙線陽子 61% 25% 電子

狐塚修論との結果の違い (バックグラウンドを作る粒子) X線 電子 コンプトン散乱 空乏層で コンプトン散乱 されるX線が 主成分 空乏層で電離する 電子が主成分 狐塚修論 本シミュレーション 結果の違いを生んだ要因  CCDの空乏層厚が異なる(前:30mm 今:70mm)  CCD内部での電荷検出過程をより現実に即したモデルに改良した → 今後、原因究明が必要。

まとめ 連続成分スペクトルの形をほぼ再現 CCD内部の電荷拡散をモデル化 非X線グレードスペクトル: FI:全領域 BI:4keV以上  CCD内部の電荷拡散をモデル化 連続成分スペクトルの形をほぼ再現 非X線グレードスペクトル: FI:全領域 BI:4keV以上 X線グレードスペクトル: 全領域 X線グレードの起源を解明 バックグラウンド粒子 FI: 電子が6~7割 BI: 電子が8割 バックグラウンド電子をつくる宇宙線 FI: 宇宙線陽子が8割  BI: 宇宙線陽子が6割 宇宙線電子が3割

今後の課題 シミュレーション結果の詳細な解析 シミュレーションの改良 バックグラウンド電子の発生プロセスの解析 バックグラウンド電子以外の成分 シミュレーションの改良 不感層の電場を考慮に入れる Cut-off rigidity依存性を調べる 蓄積領域のバックグラウンドの再現 バックグラウンド低減策の検討 BI: 磁場をかけるのが効果的 FI: 不感層を薄くする