9月21日 於 東北大学 UC Berkeley 渡利 泰山 Landscape と インフレーション 9月21日 於 東北大学 UC Berkeley 渡利 泰山
Landscape of Vacua とは何か? 低エネルギー有効理論(素粒子・宇宙標準模型)諸々の仮定は、基礎理論の解として理解される(かも)。 我々の解は unique ではない(かもしれない)。 極小点=準安定真空解 極小点周りの、曲率の小さい 方向の数 = 低エネルギー 有効理論に現れる自由度の数 極小点の位置=パラメターの値
内容 Landscape を考える動機 2005年版 String Landscape どうやって確率分布を考えるか? その問題点 問題点の解決法と、その観測的帰結 Vilenkin ’95, Garcia-Bellido Linde ’95 Feldstein Hall TW ’05, Garriga Vilenkin ‘05 Feibvogel Kleban Martinez Susskind ’05-05 , FHW ’05-06, GV ’05-08 他
Landscape を考える動機
なぜ Landscape を考えるか I 我々に見えるのは低エネルギー有効理論と 宇宙の地平線の内側だけなのに、、、。 パラメターの値の意味を考えたいとき、そのパラメターが実は場の期待値であるという状況を考えるのは有効である。 Strong CP 問題の Peccei-Quinn 解 ’77 Braum ‘83, Hawking ’84, 宇宙定数 ひも理論(が目指すところのもの)は 以外に一切のパラメターがなく、低エネルギー有効理論のパラメターは、すべて場の期待値として理解される。 解(真空)が唯一であるかどうかについては、 上の2つの動機は何も言わない。
なぜ Landscape を考えるか II 現時点でのひも理論は、たくさんの真空解をもつ。 (後述)
なぜ Landscape を考えるか III 我々が存在することは、実に奇跡的である。 安定核の多様性(原子の多様性)は BBN 60‘s~ ー (QED correction) (binding energy) (QCD) ---- (Coulomb repulsion) の微妙なバランスの上に成立している。 BBN でなければ、構造形成はおきない。
その中で我々の存在が可能な sub 宇宙に我々はいるのだ、 「何か偉大な存在」が奇跡を起こし、 をしかるべく選んで 我々の存在を可能にした、 というよりは、 ありとあらゆる の選択が宇宙のあちこちでなされていて、 その中で我々の存在が可能な sub 宇宙に我々はいるのだ、 という方がより自然ではないか?
決定論 vs 進化論、それとも第三の道? 単一真空理論 多真空理論 宇宙定数問題 超対称 SU(5) unification 観測者の存在条件、観測量の統計分布 宇宙論的時間発展 対称性、構造 単一真空理論 多真空理論 宇宙定数問題 why small? why now? 超対称 SU(5) unification (unified gauge coupling) クォーク、レプトンの質量の 階層構造 の値が我々の存在を許す。 湯川行列の値までは決まらない。 なぜ3世代なのか? なぜ Strong CP phase は小さいのか? 真の基礎理論の姿は、どの辺にあるのか? 両極いずれかではなく、中道に位置するのかもしれない。
2005年版 String Landscape
String Landscape のうつりかわり Type IIB Type I SO(32) Type IIA M-theory Het SO(32) 11D SUGRA 90年代後半以降 Het E8xE8/CY3 90年代半ば 80年代後半 Potential に山々があると、sub 宇宙と真空解との対応がはっきりする。 「超対称的」な flux compact 化で、計算可能な離散的真空解の集合を得た。 moduli 問題が真に問題ならば、平坦方向の数が少ない解の存在はすばらしい。
真空解がどのように分類されるか compact 内部空間の、topological 情報 低エネルギーでの、ゲージ群、matter の種類と 数を決める。 低エネルギー理論に超対称性を残すための内部 空間の6次元空間 の分類はある程度 知られていて、少なくとも 以上ある。 compact 内部空間の大きさや形状 低エネルギー有効理論のパラメターの値を決める。 flux compact 化 値の決まり方が 程度。
内部空間の大きさを決める 10次元の Lagrangian 4次元の有効理論で 内部空間の大きさが、4次元時空での重力や電磁力の 強さを決める。 基本的アイデア note: QCD 相転移のエネルギー密度は、 QCD instanton factor の関数である。 実際には、QCD 以外のゲージ群が関わっているはずだか、本質は同じ。
体積固定、宇宙定数、超対称性 体積固定ポテンシャル 我々の真空解は、Oにいる。 宇宙定数=0にするため、超対称性の破れの効果が なくてはならない。 Dynamical SUSY breaking ’80s or -branes in Type IIB string KKLT ‘03 低エネルギーで超対称性を要請すれば、ポテンシャルの山は そんなに高くない。 fine-tuning もしくは、 R-symmetry
内部空間のかたちを決める 6次元多様体の形状固定を議論するかわりに、 2次元多様体 の形状固定を論ずる。 基本的アイデアは、 2次元多様体 の形状固定を論ずる。 基本的アイデアは、 複素スカラー場に、topological flux を導入する。 そうすると、 は の関数。 の時、 を与えれば、 が決まる。 Type IIB theory では、複素 3-form を用いる。
低エネルギー有効理論のパラメターの値の分布関数を、 原理的には求めることが可能である。 例 ある種類のゲージ理論の (D3由来)ゲージ結合定数 6次元多様体の warped 構造の度合い Giryavets Kachru Tripathy th/0404243 Denef Douglas th/0404116 低エネルギー有効理論のパラメターの値の分布関数を、 原理的には求めることが可能である。
2005年版 string landscape には、ゲージ群やmatterの種類や数を選ぶ原理がない。 ありとあらゆる真空解がある。 観測者の存在条件、観測量の統計分布 宇宙論的時間発展 対称性、構造 単一真空理論 多真空理論 2005年版 string landscape には、ゲージ群やmatterの種類や数を選ぶ原理がない。 ありとあらゆる真空解がある。 超対称性との相性は、さほどよく(なってい)ない。 このLandscape の統計+観測者の存在条件、のみで現実を理解できるか???? 理解できない部分があれば、それは未知の要素 (時間発展、構造 etc.) があることを示唆している。
確率分布をどう考えるか?
確率分布をどう考えるか? 高エネルギーでの有効理論のパラメター 低エネルギー有効理論の、つまり観測可能なパラメター Vilenkin ‘95 高エネルギーでの有効理論のパラメター 低エネルギー有効理論の、つまり観測可能なパラメター Initial Volume Distribution Volume Factor Anthropic Factor
Initial Volume Distribution Density of Vacuum States その値 を持つ真空解がどれくらいlandscape の中にあるか。原理的には、string landscape などから計算可能。 宇宙空間のうちどれくらいの体積が、そのような真空解に割り当てられているか? Euclidean continuation を用いた、sub-宇宙の 無からの創生: Slow-roll Inflation 以前の時間発展 Vilenkin, Hawking,Linde ’80s
Volume Factor 値 を見る観測者の数は、値 をとるsub-宇宙の中の銀河の数に比例する。 そして、その銀河の数は、その の値をとる sub-宇宙の体積に比例する。 Inflation で宇宙が膨張するなら、その広大な宇宙にはたくさんの観測者が住む。 Inflation Model のパラメターが sub-宇宙によって異なる値をとれるとき、より多くの観測者は、 e-fold number が大きい sub-宇宙に住んでいる。 Vilenkin ‘95 Naturalness の考え方は、この枠組みでは通常とは大きく異なる。
Anthropic Factor とりあえず、低エネルギー有効理論が標準模型になるものだけを考えよう。それ以外の場合には civilization factor astronomer factor とりあえず、低エネルギー有効理論が標準模型になるものだけを考えよう。それ以外の場合には とすることによって。 低エネルギー有効理論の、とくに QCD + QED + 4Fermi と宇宙論のパラメターのみで決まる。 の値にはよらない。 いろいろな物理を取り込んでいくことで、精密化して 行くことが可能である。 SU(5) Unification と両立する。
Anthropic Factor の例 I: 密度揺らぎ は、matter-radiation equality の後、 に Weinberg ’87, Efstathio ’95, Martel, Shapiro, Weinberg ‘97 密度揺らぎ は、matter-radiation equality の後、 に 比例して成長していく。 の組み合わせは不変。 密度揺らぎが non-linear になる 時、matter の エネルギー密度は まで下がっている。 その時点まで、宇宙定数の存在が無視できれば、つまり、 密度揺らぎは、宇宙の大規模構造として残る。 が (観測値の100倍ほど)を超えると、 指数関数的に減少する。
Anthropic Factor の例 II: Tegmark Rees ‘97 密度ゆらぎが成長して 重力による bound system が できると、やがてビリアル化する。 for (COBE normalization) の時、 小さすぎる は、ビリアル化した系から エネルギーが抜けていかず、 から先の重力 収縮が進まない。一方、大きすぎる場合にも、 程度の質量を持つ恒星の数密度が高すぎる。
Inflationary Landscape と その問題点
Inflation と Volume Factor 初期宇宙で Inflation が起きることは “Probable” である。 その方が Volume Factor は大きくなり、 観測者の数は reheat した宇宙の体積に比例。 宇宙の一様性: primordial black holes を減らす。 宇宙の平坦性: curvature dominance では密度ゆらぎが 成長できない。 この2つは、ある程度まで、弱い人間原理の要請である。 我々の sub-宇宙では であるから、 Volume Factor は 少なくとも 程度の パラメター依存性をもたらす。
全体としては実はそれほどうまくいっていない。 確率分布 は、Inflation のパラメターに非常に強く依存する。 Density of Vacuum States のみを調べることにはあまり 意味がない。 真っ先に Inflation パラメターについての確率分布を考える べきである。 Density of States の詳細によらず、Inflation についてなら ばモノをいうことができる。 そして、 小さい 、 Inflation が起きることは “Probable” 全体としては実はそれほどうまくいっていない。 この success は
例1 : Ensemble of Chaotic-Inflaiton Regions Vilenkin ‘95, Garcia-Bellido ’95, Feldstein Hall TW ’05, Garriga Vilenkin ‘05 Landscape of Vacua が Chaotic Inflation を引き起こす領域をたくさん持っていたとする。 初期宇宙においてそのような領域に値をとる 宇宙の体積の分布を とする。 密度ゆらぎ: 総 e-fold number: (if ) は小さければ小さいほどよく、密度ゆらぎは Cosmic string から来るのではないか? No ! from Boomerang maxima WMAP
例2: Ensemble of Hybrid-Inflation Regions Feldstein Hall TW ‘05 密度ゆらぎ: 総 e-fold number: Exponetially small
Inflationary Landscape 一般に、 Slow-Roll Inflation が宇宙の密度揺らぎの起源をつくっている、とすると次の問題がある。 密度ゆらぎ にかんして指数関数的な確率分布が従う。 密度ゆらぎが window の真ん中にある確率はきわめて小さい。 しかも、 である。 密度揺らぎに関する人間原理 window は で与えられ、 sharp cut-off をもてない。 多くのsub-宇宙では は “window” の外にある。
問題点の回避法と、 観測へのつながり
回避する方法I: 連続分布近似の破綻 が連続分布 が指数関数分布 のどちらかを外せばよい。 回避法 I : となる状況。 間の差が、 間の差よりも 大きく、宇宙のほぼすべての観測者は、 パラメター の真空状態にいる。 観測者の存在を許さない真空、例えば (our values)では、 として、排除する。
どのようにしてそのような hierarchial を得るか? 例: Eternal Inflation 不安定真空の崩壊率 と 膨張率 H が をみたすとき、 その不安定真空の体積は永遠にふえ続ける。 Landscape にひとつでもそのような不安定真空があるとき、 Eternal Inflation は起こる。 それらの中で最大の を持つ不安定真空が宇宙の体積 をいづれは dominate し、宇宙開闢の初期条件を消し去る。
Eternal Inflation の不安定真空から標準模型の真空へ 直接遷移する Bubble がつくられると、Bubble 内には エネルギーが空で、Open Universe となる。 それでは構造形成がうまくいかないから、 として、無視する。 Eternal Inflation の不安定真空から、いったん Slow-Roll Inflation を経由して標準模型の真空に降りてくる Bubble Nucleation だけが考察の対象である。 それらを、i でラベルする。
Initial Volume Distribution は、Eternal Inflation の Dominant な不安定真空からの遷移(トンネル)確率で 与えられる。 の間には、大きな hierarchy がありうる。 は、有効理論のパラメター の連続関数として 近似できる保証はない。 とくに、あらかたの標準模型の真空が、 などの条件で排除されて、 Landscape の中にごくまばらにしか存在しない 場合には。 は連続分布近似できない。 Analogy: 人口50万人以上の都市(acceptable SM vacua)を対象に、横軸を 海抜高度(observable)、縦軸を十和田湖からのexp(-距離)( )でplotせよ。
居住可能宇宙のほぼすべては、ただひとつの真空にある。 仙台 仙台以外 我々の観測する の値は 居住可能条件 の範囲内 では、その単一の最大の を持つ真空での値が 何であったか、という偶然による。仙台の人口、標高に 理論的必然性はない。 基礎理論の Landscape をくまなく知ることなしには、 の 観測値を求めることはできない。 ただし、Landscape の Density of Vacuum States (大都市の 標高の統計分布)を知っていれば、観測値の確率分布を知る ことができる。 ( see Susskind et.al. and Refs.)
回避する方法II : がexp 分布でない どのようにして? Chaotic inflation で ではなく。 Curvaton , Modulated reheating Inflation Model のパラメタースキャンのうち、 をかえるものと、Hをかえるものが分離されている。
そうすると、Anthropic factor がごく自然に を window の中から、 を 以下という制限の中で 選び出す。 Anthropic Factor や Initial Distribution や Volume Factor からくる緩やかなpower-law の確率分布 に従って、居住可能宇宙の中のいろいろなsub宇宙 では、いろいろな違った値をとっている。
Take-Home Messages Cosmological Darwinism? String Landscape ’05 Moduli 固定、超対称性との関係 Inflationary Landscape 密度ゆらぎの値は、自由に手で選べない。 指数関数分布 ー問題 この問題を回避する方法 Hierarchial transition rate / curvaton