結合型ワクチンの作用機序と有用性 2018年9月30日 名鉄病院予防接種センター 菊池 均.

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結合型ワクチンの作用機序と有用性 2018年9月30日 名鉄病院予防接種センター 菊池 均

PCV(プレベナー13®)とPPV(ニューモバックス®) ニューモバックスは、「筋肉内注射」または「皮下注射」 プレベナーは、65歳以上には「筋肉内注射」のみ、小児接種は「皮下注射」のみ プレベナー13®とニューモバックス®NPの接種対象者・接種経路など プレベナー13® ニューモバックス®NP 接種対象者 高齢者:65歳以上 小児:2か月齢~6歳未満 【詳細は添付文書参照】*1 2歳以上で肺炎球菌による重篤疾患に罹患する危険が高い者(高齢者を含む) 【詳細は添付文書参照】*2、3 接種経路 筋肉内 皮下 筋肉内または皮下 生物学的製剤 基準名・一般名 沈降13価肺炎球菌結合型ワクチン (無毒性変異ジフテリア毒素結合体) 肺炎球菌ワクチン 製剤写真 剤形 プレフィルドシリンジ バイアル 会社名 ファイザー株式会社 MSD株式会社 *1: 生後6週未満または6歳以上の者に対する安全性及び有効性は確立していない。(プレベナー13®:小児等への接種) *2: ニューモバックス®NP投与対象者(1)脾摘患者(2)鎌状赤血球疾患、あるいはその他の原因で脾機能不全である患者(3)心・呼吸器の慢性疾患、腎不全、肝機能障害、糖尿病、慢性髄液漏等の基礎疾患のある患者(4)高齢者(5)免疫抑制作用を有する治療が予定されている者で治療開始まで少なくとも14日以上の余裕のある患者 *3: 2歳未満の者では、含有される莢膜型抗原の一部に対して十分応答しないことが知られており、また本剤の安全性も確立していないので投与しないこと。(ニューモバックス® NP:接種不適当者) 2 2

肺炎球菌の莢膜とポリサッカライド 90種類以上の血清型が報告されている1) ▶世界各地で血清型分布は異なる2) 血清型19Fの肺炎球菌 ▶莢膜のない肺炎球菌は、ヒトの 免疫で容易に処理できる。 ▶菌は、免疫を逃れるために多糖 類の隠れ蓑をまとった。ヒトの免疫 はポリサッカライドをうまく処理で きない。➡ 重症化しやすい。 【メッセージ】 肺炎球菌には90種類以上の血清型が存在し、血清型ごとに特徴が異なります。 【スクリプト】 肺炎球菌には90種類以上の血清型が存在し、スライドに示す通り、それぞれに異なる特徴を有することが知られています。 このうち、肺炎球菌感染症の起因菌となる血清型は限られており、プレベナー13には13血清型しか含まれていませんが、成人市中肺炎から分離される肺炎球菌の80%以上をカバーすることが報告されています。血清型カバー率は、調査年度、対象疾患などによりさまざまな報告がされていますが、 プレベナー13は、多くの肺炎球菌性肺炎起因菌を対応していることが示唆されています。 photograph by Rob Smith, Wyeth Research 1) Park, I. H. et al.:J Clin Microbiol 45(4):1225, 2007 2) Feikin, D. R. et al.:Clin Infect Dis 35(5):547, 2002 3) Jansen, A. G. et al.:“Invasive pneumococcal disease among adults:associations among serotypes, disease characteristics, and outcome” http://cid.oxfordjournals.org/content/49/2/e23.full.pdf+html 2015年12月21日参照 4) 生方 公子:“V.肺炎球菌の血清型と病原性”改訂ペニシリン耐性肺炎球菌 紺野 昌俊・生方 公子 改訂版 協和企画通信:65, 1999 5) 大石 和徳:臨牀と研究 82(12):1983, 2005 6) Imöhl, M. et al.:J Clin Microbiol 48(4):1291, 2010 3

ワクチンは樹状細胞に認識される。 樹状細胞の分布は 皮内≫筋肉>皮下 ワクチンの効果も 皮内だと筋肉・皮下の1/5の量で同等 筋組織 Ag/Adj 抗原(ワクチン成分)/アジュバント 樹状細胞の分布は 皮内≫筋肉>皮下 ワクチンの効果も 皮内だと筋肉・皮下の1/5の量で同等 の効果が得られる。ただし痛く、痕が 残りやすい。 単球、好中球、樹状細胞など Ag/Adj Ag 抗原を認識して活性化した 単球、好中球、樹状細胞など Ag Ag/Adj Ag Ag Ag B B細胞 Ag 1 Ag Th ヘルパーT細胞 Ag 2 Ag Tfh 濾胞T細胞 3 Ag 濾胞樹状細胞 リンパ節 FDC Ag Ag 形質細胞 Ag 5 4 Bm メモリーB細胞 なし 4 Siegrist, C. A. “Vaccine Immunology ” Vaccines Plotkin, S. A. and Orenstein, W. A. eds. 6th ed. Elsevier:14, 2012

PPVとPCVの液性免疫の経路比較 【T細胞依存性免疫】 タンパク抗原→樹状細胞→Th→B細胞が胚中心に移動→成熟→大量の抗体→メモリー細胞 結合型ワクチンは、ヘルパーT細胞(Th)を刺激する。Thは、抗原提示されたB細胞を脾臓の胚中心へ送り込む。B細胞は成熟・増殖し、形質細胞免疫が多数産生される。形質細胞は多数のγグロブリンを生産する。一部はメモリー細胞になる。 (濾胞外) (胚中心) 脾臓 ・ リンパ節 血液 骨髄 Ag Th B Tfh FDC Bm 1 5 6 2 3 IgG+ IgA+ IgG 7 IgA 8 4 成熟 特異性の高い大量のグロブリンを生産 特異性の高い大量のグロブリン 追加接種 PPV PCV 【T細胞依存性免疫】 タンパク抗原→樹状細胞→Th→B細胞が胚中心に移動→成熟→大量の抗体→メモリー細胞 【T細胞非依存性免疫】 濾胞外B細胞が分化→弱い抗体 なし 5 Siegrist, C. A. “Vaccine Immunology ” Vaccines Plotkin, S. A. and Orenstein, W. A. eds. 6th ed. Elsevier:14, 2012 Siegrist, C. A. “Vaccine Immunology ” Vaccines Plotkin, S. A. and Orenstein, W. A. eds. 6th ed. Elsevier:14, 2012 5

T細胞依存性免疫反応のために、蛋白を結合 抗原:肺炎球菌の 莢膜多糖体 ポリサッカライド キャリアタンパク ポリサッカライドワクチン 結合型ワクチン 正式にはポリサッカライド結合型ワクチン。 キャリア蛋白部分をヘルパーT細胞が認識 し、細胞内に取り込み、ポリサッカライドを 抗原として認識する。 ヘルパーT細胞は、ポリサッカライドを認識できない。 【ポイント】 ・プレベナー13®は、肺炎球菌の莢膜多糖体にキャリアタンパクを結合した「新しい成人用肺炎球菌結合型ワクチン」です。 ・プレベナー13®は、成人を接種対象に世界101か国という多くの国々で既に承認されている、信頼と実績を有するワクチンです。 【解説】 従来の肺炎球菌ワクチンは肺炎球菌の莢膜多糖体を使用した「多糖体ワクチン」(左)であり、肺炎球菌の莢膜多糖体に対する免疫応答が低いことが知られています。 多糖体抗原に高分子のタンパク質を結合させる技術によって誕生したのが「結合型ワクチン」であり、免疫応答がより高められています。 日本では成人用肺炎球菌結合型ワクチンとして、65歳以上の「肺炎球菌(血清型1、3、4、5、6A、6B、7F、9V、14、18C、19A、19Fおよび23F)による感染症の予防を効能効果として有しています。また、既に小児用しては2013年に承認を取得し、国の小児での定期接種化に導入されています。 プレベナー13®は、101か国(2014年2月現在)で成人を対象に承認されており、十分な信頼と実績を有するワクチンです。 キャリア蛋白には、ジフテリアトキソイドや、破傷風トキソイドなどが使われる。 6 1)Pollard, A. J. et al.:Nat Rev Immunol 9(3):213, 2009より作図 6

菌に補体・抗体が結合すると貪食細胞が処理する (オプソニン化と殺滅) 菌に補体・抗体が結合すると貪食細胞が処理する (オプソニン化と殺滅)   好中球 肺炎球菌 莢膜 なし 肺炎球菌の表面には莢膜多糖体が存在し、菌を貪食から保護している。 莢膜に対する抗体と補体が菌に結合しオプソニン化されると、肺炎球菌は貪食される。 ごはんの「ふりかけ」 7 監修:川崎医科大学 小児科学 尾内 一信 先生

免疫低下後の感染では、メモリー細胞が活性化する いちど免疫記憶ができると、血液中のB細胞が減っても、抗原が入ってくると休眠していたメモリー細胞が復帰してきて抗体を産生する。 ポリサッカライドワクチンはメモリーB細胞を作れない。 結合型ワクチンはメモリーB細胞を増やすことができる。 ポリサッカライドワクチンも結合型ワクチンもメモリーB細胞を刺激できる。 だから、PCV→PPV 血液 骨髄 IgG IgA 8 4 特異性の高い大量のグロブリンを生産 PCV PPV ブースター (濾胞外) (胚中心) 初回の曝露 IgG log10 抗体価 初回の反応(一次免疫応答) 10日 30日 1 2 3 4 (免疫記憶) 2度目の曝露 7日 6か月 5 6 7 8 なし 8 Siegrist, C. A. “Vaccine Immunology ” Vaccines Plotkin, S. A. and Orenstein, W. A. eds. 6th ed. Elsevier:14, 2012 8

PPVとPCVの違い ポリサッカライドワクチン(PPV) 結合型ワクチン(PCV) 脾臓のマージナルゾーンB細胞による特異性の 低い免疫 (濾胞外) (胚中心) 脾臓/リンパ節 血液 骨髄 Ag Th B Tfh FDC Bm 1 5 6 2 3 IgG+ IgA+ IgG 7 IgA 8 4 成熟 特異性の高い大量のグロブリンを生産 特異性の高い大量のグロブリン 追加接種 PPV PCV PPVとPCVの違い ポリサッカライドワクチン(PPV) 脾臓のマージナルゾーンB細胞による特異性の 低い免疫 2歳未満はマージナルゾーンB細胞が未発達なので免疫は作れない 摘脾後はマージナルゾーンB細胞が存在しないので免疫は作れない メモリーB細胞を消費して抗体産生。 メモリーB細胞のストックは減少するので、2回目の接種では免疫反応が劣る。 貯金に例えると、収入がないのに貯金を使っちゃう。派手な生活は長く続かない。健康な時に、そんな無駄遣いしていいの? 結合型ワクチン(PCV) 胚中心でB細胞が成熟。 特異度の高い免疫 2才未満でも有効 ⇒ 小児の定期接種で高い効果を上げた。 摘脾後も有効 胚中心で、新たに免疫細胞を作る 一部がメモリーB細胞になる 貯金に例えると、収入があって、貯金も増えている状態。

PPVとPCVの抗体誘導と効果 PPVは、侵襲性肺炎球菌感染症(IPD)を予防する。75歳以上で効果の下落が著しい。 高齢者施設や基礎疾患のある人の肺炎予防効果が示された。 PPVによる市中肺炎(CAP)予防効果は結果が出なかった。 PCVは、OPA上昇率が優れ、年齢による低下も少ない。 PCVによるCAP予防効果はCAPiTA試験で示された。 PCV→PPVによる予防効果はまだ実証されていない。 PPVによるメモリーB細胞の消耗が懸念材料。 10

PPVはブースター効果は見られない 肺炎球菌ワクチン接種後の抗体価の推移 海外データ 血清型1、4、8 初回 接種前 接種後 1ヵ月 初回接種後 6年・再接種前 再接種後 6,000 5,000 4,000 3,000 2,000 1,000 1,600 1,200 800 400 (ngAbN/mL) 接種 再接種 血清型1 血清型4 血清型8 血清型3 血清型7F 血清型12F 血清型18C 初回 接種前 接種後 1ヵ月 初回接種後 6年・再接種前 再接種後 3,000 2,400 1,800 1,200 600 6,000 5,000 4,000 2,000 (ngAbN/mL) 接種 再接種 血清型6B 血清型14 血清型19F 血清型9N 血清型18C 血清型23F 1,000 肺炎球菌ワクチン接種後の抗体価の推移 肺炎球菌ワクチン接種による抗体価の持続期間は人によって異なりますが、通常1回の接種で約5年程持続すると考えられています。 肺炎球菌ワクチンにより誘発された抗体は、接種1ヵ月前後で最大となり、その後徐々に年単位で消退します。 なお、現在 日本国内において 肺炎球菌ワクチンの再接種は認められておりません。 血清型1、4、8、18Cは各々の図の右側の単位を使用する。 11 Mufson M A et al. Vaccine 1991; 9(6): 403-407.より作図

PCVとPPVの年齢層別血清型別OPA上昇率 [65歳以上、肺炎球菌ワクチン未接種]国内第Ⅲ相試験(B1851088試験:非劣性試験) PCVとPPVの年齢層別血清型別OPA上昇率 プレベナー13®(PCV13)群とニューモバックス(PPV23)群の血清型別OPA上昇倍率 400 350 150 100 50 (倍) プレベナー13®(PCV13)群 65~69歳(n=152~174) 70~74歳(n=89~103) 75歳以上 (n=39~45) 接種前後のOPA上昇倍率 年齢によるOPA比低下がみられない。 1 3 4 5 6B 7F 9V 14 18C 19A 19F 23F 6A 対 象: 肺炎球菌ワクチン未接種の65歳以上の日本人高齢者764例 方 法: 1:1比でPCV13又はPPV23の2群に無作為に割付け、いずれかのワクチン0.5mLを1回筋肉内接種した。OPAはワクチン接種1か月後に採血し測定した。 安全性: 接種後14日間に認められた主な副反応は、PCV13群では疼痛44.5%、紅斑27.6%、腫脹21.0%などであった。またPPV23群では疼痛37.6%、新規の全身性筋肉痛17.6%、上腕の可動性の低下17.5%などであった。 250 200 150 100 50 (倍) ニューモバックス®(PPV23)群 65~69歳(n=153~177) 70~74歳(n=95~109) 75歳以上 (n=29~36) 接種前後のOPA上昇倍率 【ポイント】 プレベナー13®は、65歳以上の日本人において年齢にかかわらず優れたOPAの上昇倍率を示しました。 【解説】 こちらは国内第Ⅲ相臨床試験(B1851088試験)で得られたデータを用いて、ワクチン接種前後のOPA上昇倍率を年齢層別に比較した結果です。 ご覧のとおりプレベナー13®は65歳以上のどの年齢層においても優れたOPAの上昇倍率を示しました。一方でPPV23はいずれの血清型においてもプレベナー13®ほどのOPA上昇倍率は得られていません。このことからプレベナー13®はいずれの年齢層においてもPPV23に比べより優れた免疫応答が得られるといえます。 75歳以上でOPA比低下 1 3 4 5 6B 7F 9V 14 18C 19A 19F 23F 6A 12 ファイザー社内資料 国内第Ⅲ相試験(非劣性試験、未接種者、B1851088試験)より作図(承認時評価資料) 12

PPVの侵襲性肺炎予防効果 接種年齢別 Jackson LA1, Janoff EN: Pneumococcal vaccination of elderly adults: new paradigms for protection. Clin Infect Dis. 2008 Nov 15;47(10):1328-38 Shapiro ED, Berg AT, Austrian R, et al. The protective efficacy of polyvalent pneumococcal polysaccharide vaccine. N Engl J Med 1991;325:1453–60. PPVによる重症肺炎予防効果、年齢別 侵襲性肺炎の予防効果(オッズ比)と95%信頼区間。各年齢階級毎に左から接種後<3年, 3-5年, >5年を示す Pneumococcal vaccine effectiveness against invasive pneumococcal disease by age of recipient and time since vaccination. The point estimate of vaccine effectiveness and 95% CI are indicated. Within each age group, 3 data points represent the vaccine effectiveness at !3 years, 3–5 years, and 15 years since vaccination, from left to right. Data adapted from Shapiro et al. [5]. N Engl J Med. 1991 Nov 21;325(21):1453-60.The protective efficacy of polyvalent pneumococcal polysaccharide vaccine. Shapiro ED1, Berg AT, Austrian R, Schroeder D, Parcells V, Margolis A, Adair RK, Clemens JD.Author information Abstract BACKGROUND: Although the protective efficacy of pneumococcal polysaccharide vaccine has been demonstrated in randomized trials in young African gold miners, there has been controversy about its efficacy in older Americans at risk for serious pneumococcal infections. To assess the vaccine's protective efficacy against invasive pneumococcal infections, we conducted a hospital-based case-control study of the efficacy of pneumococcal vaccine in adults with a condition recognized to be an indication for receiving the vaccine. METHODS: From 1984 to 1990, adults in whom Streptococcus pneumoniae was isolated from any normally sterile site were identified by prospective surveillance in the microbiology laboratories of 11 large hospitals; those with an indication for pneumococcal vaccine were enrolled as case patients. For each case patient, one control was matched according to age, underlying illness, and site of hospitalization. We contacted all providers of medical care to ascertain each subject's history of immunization with pneumococcal vaccine. Isolates of S. pneumoniae were serotyped by an investigator unaware of the subject's vaccination history. RESULTS: Thirteen percent of the 1,054 case patients and 20 percent of the 1,054 matched controls had received pneumococcal vaccine (P less than 0.001). When vaccine was given in either its 14-valent or its 23-valent form, its aggregate protective efficacy (calculated as a percentage: 1 minus the odds ratio of having been vaccinated times 100) against infections caused by the serotypes represented in the vaccine was 56 percent (95 percent confidence interval, 42 percent to 67 percent; P less than 0.00001) for all 983 patients infected with a serotype represented in the vaccine, 61 percent for a subgroup of 808 immunocompetent patients (95 percent confidence interval, 47 percent to 72 percent; P less than 0.00001), and 21 percent for a subgroup of 175 immunocompromised patients (95 percent confidence interval, -55 percent to 60 percent; P = 0.48). The vaccine was not efficacious against infections caused by serotypes not represented in the vaccine (protective efficacy, -73 percent; 95 percent confidence interval, -263 percent to 18 percent; P = 0.15). CONCLUSIONS: Polyvalent pneumococcal vaccine is efficacious in preventing invasive pneumococcal infections in immunocompetent patients with indications for its administration. This vaccine should be used more widely. Comment in Pneumococcal vaccine--past, present, and future. [N Engl J Med. 1991] 侵襲性肺炎の予防効果(オッズ比)と95%信頼区間。各年齢階級毎に左から接種後<3年, 3-5年, >5年を示す Jackson LA1, Janoff EN: Pneumococcal vaccination of elderly adults: new paradigms for protection. Clin Infect Dis. 2008 Nov 15;47(10):1328-38 Shapiro ED, Berg AT, Austrian R, et al. The protective efficacy of polyvalent pneumococcal polysaccharide vaccine. N Engl J Med 1991;325:1453–60. 13

[65歳以上、肺炎球菌ワクチン未接種]海外第Ⅲ相試験(3008試験:非劣性試験) PCV13接種後のOPA上昇。高齢でも反応 [海外データ] PCV13とTIVの単独逐次接種群と同時接種群で、PCV13接種後の血清型別OPA GMT(接種1か月後)    1       3       4       5       6B       7F       9V    1,000 100 10 1 100 10,000 1,000 100 10 1 10,000 10,000 1,000 100 10 1 1,000 1,000 1,000 OPA 10 100 100 100 10 10 10 1 1 1 1 前 後 前 後 前 後 前 後 前 後 前 後 前 後 前 後 前 後 前 後 前 後 前 後 前 後 前 後    14       18C       19A       19F       23F       6A    10,000 10,000 1,000 100 10 1 1,000 100 10 1 1,000 100 10 1 10,000 1,000 1,000 1,000 OPA 100 100 100 10 10 10 1 1 1 前 後 前 後 前 後 前 後 前 後 前 後 前 後 前 後 前 後 前 後 前 後 前 後 前:PCV13接種前 後:PCV13接種後 単独逐次接種群 65~69歳(n=94~111) 70~74歳(n=62~86) 75~79歳(n=23~30) 80歳以上(n=16~22) 同時接種群 65~69歳(n=99~124) 70~74歳(n=51~67) 75~79歳(n=23~34) 80歳以上(n=21~27) <PCV13の免疫応答> 【ポイント】 13価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV13)にインフルエンザワクチン(TIV)を同時接種したとき、接種前に比べてオプソニン化貪食活性(OPA)の上昇が年代を問わず認められました。 【解説】 こちらはPCV13とTIVを同時に接種した場合と、それぞれ単独で接種した場合における、PCV13接種1か月後のワクチン血清型別OPAを患者の年代別に示したグラフです。左側の赤いグラフが単独接種群、右側の黄色いグラフが同時接種群です。 その結果、いずれの血清型においてもPCV13接種前に比べて接種後ではOPAの上昇が認められました。しかもその傾向は年代を問わずに共通して認められています。 このことから、PCV13はTIVと同時接種しても、単独接種と同様の優れた免疫応答が期待できます。 ただし、同時接種したときのOPAの上昇は単独接種に比べてやや低下傾向を示します。一方で、同時接種にはワクチンの接種漏れを防ぐことができるという、被接種者のリスクを低減する可能性があります。こうした状況を考慮いただき、被接種者の状況等を踏まえて、両ワクチンを同時接種するか、あるいは別々に接種するかをご判断くださいますよう、お願いいたします。 【参考文献】 ファイザー社内資料 海外第Ⅲ相試験(非劣性、TIV併用、3008試験) <インフルエンザワクチンの免疫応答> PCV13とインフルエンザワクチン同時接種時にも、オプソニン化貪食活性(OPA)は、接種前と比較して上昇が認められた。 PCV13との同時接種において、インフルエンザワクチンの有効性の国際的評価基準である欧州医薬品庁(EMA)の60歳以上の評価基準に適合した。 ※ PCV13をインフルエンザワクチンと同時に接種した場合、PCV13の単独接種に比べ、OPAはやや低下傾向を示す。同時接種によりワクチンの接種漏れを防ぐことが被接種者のリスク低減につながる可能性も考慮し、被接種者の状況等から両ワクチンを同時に接種するか、別々に接種するか判断すること。 対  象:肺炎球菌ワクチン未接種の65歳以上の健康成人1,160例 方  法:1:1比でPCV13とTIVを同時接種し、1か月後にプラセボを接種する同時接種[(PCV13+TIV)/プラセボ]群と、プラセボとTIVを同時接種し、1か月後にPCV13を接種する単独逐次接種[(プラセボ+TIV)/PCV13]群の2群に無作為割付けし、各ワクチン0.5mLを筋肉内接種した。OPAはワクチン接種1か月後に採血し測定した。 安全性:PCV13接種後14日間に認められた主な副反応は、同時接種群(1回目接種)では疼痛40.0%、疲労37.4%、頭痛32.6%などであった。また単独逐次接種群(2回目接種)では疼痛43.4%、疲労28.5%、頭痛24.7%などであった。 【接種上の注意】(抜粋) 2.重要な基本的注意  (4)本剤と他のワクチンを同時に同一の被接種者に対して接種する場合は、それぞれ単独接種することができる旨の説明を行うこと。特に、被接種者が重篤な基礎疾患に罹患している場合は、単独接種も考慮しつつ、被接種者の状態を確認して慎重に接種すること。 14 ファイザー社内資料 海外第Ⅲ相試験(非劣性、TIV併用、3008試験)(承認時評価資料)より作図 14

肺炎球菌結合型ワクチン(PCV7:プレベナー) 【海外臨床試験データ(イギリス)】 PPVはメモリーB細胞数が減少し、PCVは増加する(海外データ) ワクチン接種後のメモリーB細胞数の変化(1回目接種、接種1か月後) 肺炎球菌多糖体ワクチン(PPV23) 25 20 15 10 5 -5 -10 -15 -20 -25 肺炎球菌結合型ワクチン(PCV7:プレベナー) * * * * * 4 6B 9V 14 18C 19F 23F 4 6B 9V 14 18C 19F 23F *:p<0.05(vs PPV23) 多重比較検定 【ポイント】 50~70歳の成人にプレベナーまたは肺炎球菌多糖体ワクチン(PPV23)を接種したところ、プレベナーではメモリーB細胞が増加するのに対し、PPV23では減少することが示されました。 【解説】 高齢者は抗体産生能が低下しているため、肺炎球菌ワクチンを接種しても免疫応答が得られにくくなっています。そこで重要なのがメモリーB細胞の存在であり、その数が将来的な感染予防に大きく関与しますが、結合型ワクチンと多糖体ワクチンでは、接種後のメモリーB細胞の反応が異なることが知られています。 50~70歳の成人にプレベナーまたはPPV23を接種したところ、プレベナーを接種した場合はメモリーB細胞が増加するのに対し、PPV23を接種した場合はむしろメモリーB細胞が減少しました。 このようなメモリーB細胞の反応からみても、特に抗体産生能の低い高齢者に対して肺炎球菌を接種する際には、結合型ワクチンの方が望ましいといえます。 接種前後のメモリーB細胞数の変化(対数換算) ※このスライドには国内で承認された内容以外の情報を含んでいます。 [用法・用量に関連する接種上の注意](抜粋) 1. 接種対象者・接種時期 (1)高齢者 本剤の接種は65歳以上の者に行う。 国内では、PCV7はPCV13に切り替わり、承認整理がされているため現在使用できません。 対 象: 英国の50~70歳の成人348例 方 法: 以下の3群に無作為化し、PPV23及びPCV7を接種した:①PPV23→PCV7→PCV7(112例)、 ②PCV7→PPV23→PCV7(115例)、③PCV7→PCV7→PPV23(121例)。ワクチン接種間隔は6か月とし、ワクチン接種7日前と接種1か月後に採血した。 安全性: 安全性に関する記載なし。 15 Clutterbuck, E. A. et al.:J Infect Dis 205(9):1408, 2012 15

香港:慢性疾患高齢者のPPVとTIVの肺炎による入院の予防効果 海外データ 香港:慢性疾患高齢者のPPVとTIVの肺炎による入院の予防効果 香港でのPPVとインフルエンザワクチンの大規模コホートスタディ。 インフルエンザ単独群と比較して、インフルエンザ+23価肺炎球菌ワクチン併用群は、肺炎による入院を24%減少させた 100 200 300 400 500 ワクチン接種後日数 ワクチン接種 非接種群 PPV+TIV接種群 PPV単独接種群 TIV単独接種群 24%減少 p=0.008 10 8 6 4 2 肺炎による入院率 (%) (p<0.001、log-lank 検定) (日) 対象 : 2007年12月3日から2008年6月30日までにHong Kong West Cluster (中国)の 外来クリニックに来院した65歳以上の慢性疾患患者 方法 : 全患者をプロスペクティブコホート試験に登録した。本期間中、参加者にPPV及びTIVワクチンの接種を勧めた(参加者はPPV+TIV接種、PPV単独接種、TIV単独接種、非接種を選択できた)。 参加者全員を2009年3月31日まで観察した 16 Hung et al. CID. 2010: 51, 1007-1016. 香港政府はこのスタディの結果を分析し、心血管系および脳血管系疾患のある ハイリスク者への23価肺炎球菌ワクチン接種無料化を決定した 16 16 16

PORTスコア別 CAP入院患者のPPV接種と死亡率 PORTスコアは市中肺炎の予後に関する研究。 スコア別死亡率 score 1: 3.2% score 2: 3% score 3: 17% score 4: 41.5% score 5: 57% PORTスコアが 2以上でPPVの 予防効果が大き い傾向 Fisman DN, et al. Clin Infect Dis. 2006;42:1093-1101.

プレベナー13で、肺炎が予防できるか? 18

90 80 70 60 50 40 30 20 10 1 2 3 4 (年) (件) PCV13 プラセボ 累積発症数 ワクチン接種後期間 ※ワクチンに含まれる血清型 [65歳以上、肺炎球菌ワクチン未接種]海外第Ⅳ相臨床試験(CAPiTA試験) 市中肺炎※の予防効果は追跡調査期間(中央値3.97年)を通じて減衰することなく持続 肺炎球菌※による市中肺炎の累積発症数(海外データ) [主要評価項目の事後解析] 対   象: 65歳以上の成人84,496例 方   法: PCV13接種群(PCV13群)またはプラセボ群の2群に無作為に割付け、PCV13血清型肺炎球菌性肺炎の感染の有無を調査した。また、後付け解析にて、両群の累積発症数の推移を調査した。最終時点の累積発症数(本試験の主要評価項目)の解析自体は事前に計画されており、本図は累積発症数を継時的にプロットしたものである(治験総括報告書にも記載あり) 評価項目: [主要評価項目]PCV13のワクチン血清型市中肺炎の初回発症予防効果 [副次評価項目]非菌血症性/非侵襲性ワクチン血清型市中肺炎の初回発症予防効果、ワクチン血清型侵襲性肺炎球菌感染症(IPD)の初回発症予防効果 解析計画: プラセボ接種群に対するPCV13接種群の各感染症発症比が両側95%信頼区間の下限が0を超える場合に非劣性が示されるとした。第1種過誤率を5%に抑えるために、O‘Brien-Fleming法により有意水準は初回0.0052、最終解析では0.0480とした 安全性: 安全性部分集団における接種後7日間の副反応発現率は、PCV13群18.7%(188/1,006例)、プラセボ群14.3%(144/1,005例)で、PCV13群で疼痛36.1%(330/914例)、疲労18.8%(168/895例)、新規の全身性筋肉痛18.4%(165/896例)、プラセボ群で疲労14.8%(130/876例)、頭痛14.8%(130/878例)、下痢8.7%(76/873例)などであった 本試験において死亡はPCV13群で7.1%(3,006/42,237例)、プラセボ群で7.1%(3,005/42,255例)報告され、ワクチン接種後1か月以内の重篤な有害事象はPCV13群で0.8%(327/42,237例)、プラセボ群で0.7%(314/42,255例)報告された。主な重篤な有害事象は、PCV13群では心臓障害72例、悪性および詳細不明の新生物(嚢胞およびポリープを含む)71例、神経系障害35例、プラセボ群では心臓障害74例、悪性および詳細不明の新生物(嚢胞およびポリープを含む)59例、傷害、中毒および処置合併症46例であった(本試験における有害事象による脱落に関する記載なし) 本試験で認められているPCV13群の高い有効性を、プラセボ群に提供しないという倫理的な問題より、本試験は開始5年後に中止され、プラセボ群はPCV13を接種された (件) 90 プラセボ PCV13 80 70 60 累積発症数 50 40 30 20 10 1 2 3 4 (年) ワクチン接種後期間 Copyright © 2015 Massachusetts Medical Society. All rights reserved. Translated with permission 試験期間:2008~2013年、追跡調査期間中央値:3.97年 PCV13:13価肺炎球菌結合型ワクチン Bonten, M. J. M. et al.:N Engl J Med 372(12):1114, 2015(本試験は、ファイザー社の支援を受けた) 19

PCV13接種後、4年間継続して、 ワクチン血清型の市中肺炎が約50%減少。 ワクチン血清型による市中肺炎 累積の発症数 Key Point Vaccination with Prevenar 13* resulted in fewer cumulative cases of all first episodes of vaccine-type community-acquired pneumonia over the 4-year follow-up period compared to placebo. Notes The mean duration of follow-up of subjects in the Community-Acquired Pneumonia Immunization Trial in Adults (CAPiTA) was 3.97 years.1 Reference Data on file. Pfizer Inc, New York, NY. 接種後の年数 PCV13群(Na=42,240) プラセボ群 (Na=42,256) Bonten MJM, et al. NEJM 2015: 372; 1114-1125 20 20 *Trademark

40 30 20 10 1 2 3 4 (年) (件) PCV13 プラセボ 累積発症数 ワクチン接種後期間 ※ワクチンに含まれる血清型 [65歳以上、肺炎球菌ワクチン未接種]海外第Ⅳ相臨床試験(CAPiTA試験) 侵襲性肺炎球菌感染症※の予防効果は追跡調査期間(中央値3.97年)を通じて 減衰することなく持続 侵襲性肺炎球菌感染症※の累積発症数(海外データ) [副次評価項目の事後解析] 対   象: 65歳以上の成人84,496例 方   法: PCV13接種群(PCV13群)またはプラセボ群の2群に無作為に割付け、PCV13血清型肺炎球菌性肺炎の感染の有無を調査した。また、後付け解析にて、両群の累積発症数の推移を調査した。最終時点の累積発症数(本試験の主要評価項目)の解析自体は事前に計画されており、本図は累積発症数を継時的にプロットしたものである(治験総括報告書にも記載あり) 評価項目: [主要評価項目]PCV13のワクチン血清型市中肺炎の初回発症予防効果 [副次評価項目]非菌血症性/非侵襲性ワクチン血清型市中肺炎の初回発症予防効果、ワクチン血清型侵襲性肺炎球菌感染症(IPD)の初回発症予防効果 解析計画: プラセボ接種群に対するPCV13接種群の各感染症発症比が両側95%信頼区間の下限が0を超える場合に非劣性が示されるとした。第1種過誤率を5%に抑えるために、O‘Brien-Fleming法により有意水準は初回0.0052、最終解析では0.0480とした 安全性: 安全性部分集団における接種後7日間の副反応発現率は、PCV13群18.7%(188/1,006例)、プラセボ群14.3%(144/1,005例)で、PCV13群で疼痛36.1%(330/914例)、疲労18.8%(168/895例)、新規の全身性筋肉痛18.4%(165/896例)、プラセボ群で疲労14.8%(130/876例)、頭痛14.8%(130/878例)、下痢8.7%(76/873例)などであった 本試験において死亡はPCV13群で7.1%(3,006/42,237例)、プラセボ群で7.1%(3,005/42,255例)報告され、ワクチン接種後1か月以内の重篤な有害事象はPCV13群で0.8%(327/42,237例)、プラセボ群で0.7%(314/42,255例)報告された。主な重篤な有害事象は、PCV13群では心臓障害72例、悪性および詳細不明の新生物(嚢胞およびポリープを含む)71例、神経系障害35例、プラセボ群では心臓障害74例、悪性および詳細不明の新生物(嚢胞およびポリープを含む)59例、傷害、中毒および処置合併症46例であった(本試験における有害事象による脱落に関する記載なし) 本試験で認められているPCV13群の高い有効性を、プラセボ群に提供しないという倫理的な問題より、本試験は開始5年後に中止され、プラセボ群はPCV13を接種された (件) 40 プラセボ PCV13 30 累積発症数 20 10 1 2 3 4 (年) ワクチン接種後期間 Copyright © 2015 Massachusetts Medical Society. All rights reserved. Translated with permission 試験期間:2008~2013年、追跡調査期間中央値:3.97年 発症者がいない期間は、実線としていない IPD :侵襲性肺炎球菌感染症 PCV13:13価肺炎球菌結合型ワクチン Bonten, M. J. M. et al.:N Engl J Med 372(12):1114, 2015より作図(本試験は、ファイザー社の支援を受けた) 21

予防効果は接種後速やかに認められ、 約4年間減衰(waning)なしで持続した 22 ワクチン血清型による非菌血症性/ 非侵襲性の肺炎の市中肺炎の累積発症数 ワクチン血清型による 侵襲性肺炎球菌感染症の累積発症数 累積の発症数 累積の発症数 接種後の年数 接種後の年数 PCV13群(Na=42,240) プラセボ群 (Na=42,256) Bonten MJM, et al. NEJM 2015: 372; 1114-1125 22

[65歳以上、肺炎球菌ワクチン未接種]海外第Ⅳ相臨床試験(CAPiTA試験) PCV13血清型のCAPとIPDの予防効果[海外データ:オランダ] 肺炎球菌性※1 市中肺炎 [主要評価項目] 肺炎球菌性※1 非菌血症性/非侵襲性市中肺炎 [副次評価項目] 侵襲性肺炎球菌感染症(IPD)※1 [副次評価項目] ※1 ワクチンに含まれる血清型 ※2 非接種で発症した人のうち、ワクチンで発症を予防できた割合 (例)肺炎球菌性市中肺炎:非接種で発症した100人のうち、ワクチンを接種すると45.6人の発症を予防 ※3 肺炎球菌性市中肺炎および肺炎球菌性非菌血症性/非侵襲性市中肺炎の最終解析時の有意水準は 約0.048、IPDの解析の有意水準は0.05 ♯ ワクチン有効性(VE)が0である帰無仮説に対するp値 (%) 80 60 40 20 ワクチン有効性( VE ) ※2 45.6% p<0.001※3 45.0% p=0.007※3 75.0% 【ポイント】 13価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV13)はプラセボに比べ、全肺炎球菌血清型による肺炎球菌性市中肺炎(CAP)および侵襲性肺炎球菌感染症(IPD)の初発を有意に抑制しました。 【解説】 こちらは、探索的有効性評価項目である、全肺炎球菌血清型による各病態に対するPCV13のワクチン有効率を示したグラフです。 PCV13はプラセボに比べ、全肺炎球菌血清型による肺炎球菌性CAPおよびIPDを、それぞれ30.6%および51.8%有意に抑制しました。 【参考文献】 Bonten MJ, Huijts SM, et al. Polysaccharide conjugate vaccine against pneumococcal pneumonia in adults. N Engl J Med. 2015 Mar 19;372(12):1114-25. 対   象:65歳以上の成人84,496例 方   法:PCV13接種群(PCV13群)またはプラセボ群の2群に無作為に割付け、PCV13血清型肺炎球菌性肺炎の発症の有無を調査した 評価項目:[主要評価項目]PCV13のワクチン血清型市中肺炎の初回発症予防効果、[副次評価項目]非菌血症性/非侵襲性ワクチン血清型市中肺炎の初回発症予防効果、ワクチン血清型侵襲性        肺炎球菌感染症(IPD)の初回発症予防効果 解析計画:プラセボ接種群に対するPCV13接種群の各感染症発症比が両側95%信頼区間の下限が0を超える場合に非劣性が示されるとした。第1種過誤率を5%に抑えるために、O‘Brien-Fleming        法により有意水準は初回0.0052、最終解析では0.0480とした 安 全 性 :安全性部分集団における接種後7日間の副反応発現率は、PCV13群18.7%(188/1,006例)、プラセボ群14.3%(144/1,005例)で、PCV13群で疼痛36.1%(330/914例)、疲労18.8%        (168/895例)、新規の全身性筋肉痛18.4%(165/896例)、プラセボ群で疲労14.8%(130/876例)、頭痛14.8%(130/878例)、下痢8.7%(76/873例)などであった        本試験において死亡はPCV13群で7.1%(3,006/42,237例)、プラセボ群で7.1%(3,005/42,255例)報告され、ワクチン接種後1か月以内の重篤な有害事象はPCV13群で0.8% (327/42,237例)、プラセボ群で0.7%(314/42,255例)報告された。主な重篤な有害事象は、PCV13群では心臓障害72例、悪性および詳細不明の新生物(嚢胞およびポリープを含む) 71例、神経系障害35例、プラセボ群では心臓障害74例、悪性および詳細不明の新生物(嚢胞およびポリープを含む)59例、傷害、中毒および処置合併症46例であった(本試験における 有害事象による脱落に関する記載なし)        本試験で認められているPCV13群の高い有効性を、プラセボ群に提供しないという倫理的な問題より、本試験は開始5年後に中止され、プラセボ群はPCV13を接種された 23 Bonten, M. J. et al.:N Engl J Med 372(12):1114, 2015より作図 23

13価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV13)の予防効果は、特に発現頻度の高い血清型3、7F、19Aで高いことが示されました。 [65歳以上、肺炎球菌ワクチン未接種]海外第Ⅳ相臨床試験(CAPiTA試験) PCVによる市中肺炎(CAP)の血清型別抑制効果 [海外データ:オランダ] ※ワクチンに含まれる血清型 PCV13群(n=42,240) 25 15 20 10 5 プラセボ群(n=42,256) 発症数 【ポイント】 13価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV13)の予防効果は、特に発現頻度の高い血清型3、7F、19Aで高いことが示されました。 【解説】 PCV13に含まれる血清型別にCAPの発症数をみると、プラセボ群ではすべての血清型によりCAPの発症が認められており、オランダにおいては13血清型すべてがCAPの原因血清型になっていることが示されました。特に血清型3、7F、19Aによる発症が多く認められています。この高頻度に認められた3血清型において、PCV13は顕著に発症を抑制しました。 【参考文献】 Bonten MJ, Huijts SM, et al. Polysaccharide conjugate vaccine against pneumococcal pneumonia in adults. N Engl J Med. 2015 Mar 19;372(12):1114-25. appendix 1 3 4 5 6A 6B 7F 9V 14 18C 19A 19F 23F 血清型 対象・方法:65歳以上の成人84,496例をPCV13群またはプラセボ群の2群に無作為に割付けてワクチンを接種し、肺炎球菌性肺炎の感染の有無を調査した。 安  全 性:安全性部分集団における接種後7日間の局所および全身の副反応は、PCV13群でそれぞれ38.4%(352/917例)および39.5%(363/918例)、プラセボ群でそれぞれ8.4%(73/867例)および34.7%(315/907例)に認められた。主なものは、PCV13群では疼痛36.1%、疲労18.8%、新規の全身性筋肉痛18.4%、プラセボ群では疲労14.8%、頭痛14.8%、下痢8.7%であった。 24 Bonten, M. J. et al.:N Engl J Med 372(12):1114, 2015 appendixより作図 24

75歳未満の被験者において、13価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV13)はプラセボに比べて有意に市中肺炎(CAP)の発症を抑制しました。 [65歳以上、肺炎球菌ワクチン未接種]海外第Ⅳ相臨床試験(CAPiTA試験) ワクチン血清型肺炎球菌※による市中肺炎(CAP)の 初発に対する年齢層別有効率[海外データ:オランダ] ※ワクチンに含まれる血清型 PCV13群(Na=42,240) プラセボ群 (Na=42,256) 有効性評価 部分集団 合計 発症数 nb ワクチン 有効率(%) (95.2%信頼 区間C) p値d 肺炎球菌性※ CAPの初発 139 49 90 45.56 (21.82, 62.49) <0.001  75歳未満 87 28 59 52.54 (24.09, 70.99) 0.001  75歳以上 52 21 31 32.26 (-22.31, 63.19) 0.21  85歳未満 43 15 46.43 (-4.33, 73.57) 0.07  85歳以上 9 6 3 -100.0 (-1156.63, 57.78) 0.51 【ポイント】 75歳未満の被験者において、13価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV13)はプラセボに比べて有意に市中肺炎(CAP)の発症を抑制しました。 【解説】 年齢層別に、ワクチンに含まれる血清型の肺炎球菌によるCAPの初発を比較したところ、85歳以上を除き、いずれのグループでもPCV13群でプラセボ群よりもCAPの発症は少なく、75歳未満のグループでは有意な抑制が認められました。 なお、このサブグループ解析は事後に実施されたものであり、サブグループを統計学的に解析するだけの検出力を備えていませんでした。 【参考文献】 Bonten MJ, Huijts SM, et al. Polysaccharide conjugate vaccine against pneumococcal pneumonia in adults. N Engl J Med. 2015 Mar 19;372(12):1114-25. appendix a 治験ワクチンを接種された被験者数 b 試験期間中における初発症例数 c 信頼区間はClopper-Pearson法を用いて算出された。信頼区間の下限が0を超えたとき、最終解析において有効とした。 d ワクチン有効率を0という帰無仮説に関するp値 Copyright © 2015 Massachusetts Medical Society. All rights reserved. Translated with permission. 対象・方法:65歳以上の成人84,496例をPCV13群またはプラセボ群の2群に無作為に割付けてワクチンを接種し、肺炎球菌性肺炎の感染の有無を調査した。 安  全 性:安全性部分集団における接種後7日間の局所および全身の副反応は、PCV13群でそれぞれ38.4%(352/917例)および39.5%(363/918例)、プラセボ群でそれぞれ8.4%(73/867例)および34.7%(315/907例)に認められた。主なものは、PCV13群では疼痛36.1%、疲労18.8%、新規の全身性筋肉痛18.4%、プラセボ群では疲労14.8%、頭痛14.8%、下痢8.7%であった。 25 Bonten, M. J. et al.:N Engl J Med 372(12):1114, 2015 appendix 25

〔参考〕 CAPiTA試験の結果を踏まえて米国ACIPが推奨を変更した 65歳以上に対する肺炎球菌ワクチン接種スケジュール(海外資料) 改訂前 改訂後 65歳以上で肺炎球菌ワクチン接種歴がない場合(PCV13、PPSV23ともに接種していない場合) PCV13接種 PPSV23接種 6~12か月 (2015年9月に「1年以上」に改訂2)) 65歳以降にPPSV23の接種歴がある場合 PPSV23接種 PPSV23接種 (65歳以降) PCV13接種 1年以上 65歳未満のときにPPSV23の接種歴がある場合2) PPSV23接種 (65歳未満) PCV13接種 (65歳以上) PPSV23接種 1年以上 1年以上 CAPiTA試験の結果PCV13はワクチン血清型肺炎球菌による市中肺炎に対する予防効果が期待され、アメリカの予防接種諮問委員会ACIPでは65歳以上の高齢者に対して、これまでのPPVの広範な接種に加えてPCV13を接種するという決定を下しました。 5年以上 65歳未満でPPSV23接種歴があり、PPSV23の追加接種が必要な65歳以上の免疫適格者の場合は、まずPCV13を接種しその1年以上経過後、かつ直近のPPSV23接種から5年以上経過後にPPSV23の追加接種を行う。機能的・解剖学的無脾、髄液漏出、人工内耳など65歳以上の免疫不全者では、PPSV23接種後にPCV13を接種する際の間隔は8週以上あける。 PCV13:13価肺炎球菌結合型ワクチン  PPSV23:23価肺炎球菌多糖体ワクチン [用法・用量に関連する接種上の注意](抜粋) 1. 接種対象者・接種時期 (1)高齢者 本剤の接種は65歳以上の者に行う。 1)Tomczyk, S. et al.: MMWR 63(37): 822, 2014 2)Kobayashi, M. et al.: MMWR 64(34): 944, 2015

こちらは、日本呼吸器学会と日本感染症学会の合同委員会が示した、平成27年~30年度に適用される肺炎球菌ワクチン接種の考え方のチャートです。 平成27~30年度 『65歳以上の成人に対する肺炎球菌ワクチン接種に関する考え方』 (日本呼吸器学会/日本感染症学会 合同委員会)  PPSV23未接種者  PPSV23未接種者  PPSV23既接種者 65歳、70歳、75歳、80歳、85歳、 90歳、95歳、100歳の年齢のみ 66~69歳、71~74歳、76~79歳、81~84歳、 86~89歳、91~94歳、96~99歳 5年以上 1年以上 PPSV23 (定期接種) PPSV23 (任意接種) PCV13 (任意接種) PCV13 (任意接種) 6か月~4年以内 PPSV23の接種 間隔は5年以上 5年以上 1年以上 5年以上 1年以上 6か月~4年以内 PCV13 (任意接種) PCV13 (任意接種) PPSV23* (定期接種) PPSV23 (任意接種) PPSV23 (任意接種) PPSV23 (任意接種) *当該年度の定期接種対象者に限る 6か月~4年以内 PPSV23の接種 間隔は5年以上 6か月~4年以内 PPSV23の接種 間隔は5年以上 PPSV23 (任意接種) PPSV23 (任意接種) PCV13 :13価肺炎球菌結合型ワクチン PPSV23 :23価肺炎球菌多糖体ワクチン ACIP :米国予防接種諮問委員会 【ポイント】 定期接種の対象者を含めて、65歳以上のすべての成人に対する13価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV13)と23価肺炎球菌多糖体ワクチン(PPV23)の連続接種が「考え方」の1つとして明示されました。 【解説】 こちらは、日本呼吸器学会と日本感染症学会の合同委員会が示した、平成27年~30年度に適用される肺炎球菌ワクチン接種の考え方のチャートです。 PPV23の接種歴、年齢によって、それぞれ異なる接種方法が示されておりますが、未接種者、既接種者を含めて65歳以上のすべての成人に対して、PCV13とPPV23の連続接種が考え方の1つとして明示されています。PCV13を接種する事で免疫記憶の確立が期待されることから、PCV13を先に接種し、次いでPPV23を接種する連続接種順がACIPでも推奨されています。 今回の「考え方」では、定期接種の接種スケジュールに支障のない範囲で、PCV13を接種してからPPV23を接種するという連続接種が「考え方」の1つとして明示されています。 【参考文献】 日本呼吸器学会/日本感染症学会 合同委員会:65歳以上の成人に対する肺炎球菌ワクチン接種に関する考え方 http://www.kansensho.or.jp/guidelines/1501_teigen.html 2015/02/12参照 注意 #1. 今回の考え方はPPSV23の定期接種措置とACIPの推奨を参考に作成された。 #2. 定期接種対象者が、定期接種によるPPSV23の接種を受けられるように接種スケジュールを決定することを推奨する。 #3. PPSV23未接種者に対して両ワクチンを接種する場合には、上記#2を勘案しつつ、PCV13→PPSV23の順番で連続接種することが考えられる。 #4. PCV13とPPSV23の連続接種については海外のデータに基づいており、日本人を対象とした有効性、安全性の検討はなされていない。 #5. 定期接種は平成26年10月~平成31年3月までの経過措置に準ずる。 #6. 今回の考え方は3年以内に見直しをする。 現時点では65歳以上の成人におけるPCV13を含む肺炎球菌ワクチンのエビデンスに基づく指針を提示することは困難と判断した。 わが国の肺炎球菌ワクチンに関する考え方に、米国ACIPのPCV13接種を含む推奨内容を全面的には取り入れるべきではないと判断した。 わが国の実地臨床医家に対してPCV13接種の可能な選択肢を示すことが必要であるが、日本独自の臨床的、医療経済的エビデンスは確定していないため、主に安全性の観点から「65歳以上の成人における肺炎球菌ワクチン接種の考え方」として提示することとした。 日本呼吸器学会/日本感染症学会合同委員会:65歳以上の成人に対する肺炎球菌ワクチン接種に関する考え方 http://www.kansensho.or.jp/guidelines/pdf/o65haienV/o65haienV_171023.pdf 2017/12/15参照

USA: 免疫不全者とPCV(1) 米国感染症学会 2013年 -2013 IDSA* Clinical Practice Guideline for Vaccination of the Immunocompromised Host- *米国感染症学会 13価肺炎球菌結合型ワクチン接種に関する推奨 推奨 推奨の強度/ エビデンスの質 HIV感染症患者 免疫抑制なし/または低度の免疫抑制状態 高度の免疫抑制状態 U:5歳未満 強く推奨/中等度の質 R:5歳 R:6~18歳 強く推奨/低度の質 R:19歳以上 強く推奨/極めて低度の質 がん患者 化学療法前/または化学療法中 化学療法後3か月以上経過 R:6歳未満 U R:6歳以上 同種または自家造血幹細胞移植の前もしくは後 造血幹細胞移植前 造血幹細胞移植後 R R:移植から接種までの期間:最短で3か月。接種回数:3回 【ポイント】 米国感染症学会のガイドラインによると、HIV感染症患者やがん患者、造血幹細胞移植前後といった免疫不全宿主に対しては、多くの場合でプレベナー13の接種が推奨されています。 【解説】 こちらは米国感染症学会が2013年に発表した、免疫不全宿主のワクチン接種に関するガイドラインから、プレベナー13の推奨に関する項目をまとめたものです。 このガイドラインでは、各種免疫不全宿主の年齢や重症度などに応じて推奨度を設定しています。 プレベナー13はHIV感染症患者やがん患者、造血幹細胞移植前後といった免疫不全宿主に対して、多くの場合で「推奨」、つまり過去または現時点において未接種の場合は接種すること、と設定されています Rubin, L. G. et al.:Clin Infect Dis 58(3):e44, 2014 ※推奨の定義: R:推奨される-過去または現時点において未接種の場合は接種する。そのような患者はワクチンで予防可能な感染症でリスクが高い状態かもしれない。U:通常-リスク群や年齢区分の観点から免疫適格者とされ、現時点において接種が推奨されていない患者。 対象・方法: 1966年1月1日以降に公表された文献のうち、「vaccination」「vaccine」「immunization」およびワクチン名や疾患名を検索語としてPubmedにて検索して得られた文献およびその参照文献を、12名のエキスパートがレビュー・分析した。 ※このスライドには国内で承認された内容以外の情報を含んでいます。 [用法・用量に関連する接種上の注意](抜粋) 1. 接種対象者・接種時期 (1) 高齢者 本剤の接種は65歳以上の者に行う。(2)小児 本剤の接種は2か月齢以上6歳未満の間にある者に行う。 28

USA: 免疫不全者とPCV(2) 米国感染症学会 2013年 -2013 IDSA* Clinical Practice Guideline for Vaccination of the Immunocompromised Host- *米国感染症学会 13価肺炎球菌結合型ワクチン接種に関する推奨 推奨 推奨の強度/ エビデンスの質 臓器移植前もしくは後 移植前 移植2~6か月後 U:5歳以下 強く推奨/中等度の質 U:2~5歳 R:6歳以上 強く推奨/極めて低度の質 R:6歳以上で移植前に接種していない場合 免疫抑制治療を受けている 慢性炎症性疾患患者 計画的な免疫抑制 低度の免疫抑制 高度の免疫抑制 R U:6歳未満 強く推奨/低度の質 無脾または鎌状赤血球症、人工内耳または髄液漏出 無脾または鎌状赤血球症 人工内耳または髄液漏出 【ポイント】 米国感染症学会のガイドラインによると、臓器移植前後、免疫抑制治療を受けている慢性炎症性疾患患者などといった免疫不全宿主に対しては、多くの場合でプレベナー13の接種が推奨されています。 【解説】 こちらは米国感染症学会が2013年に発表した、免疫不全宿主のワクチン接種に関するガイドラインから、プレベナー13の推奨に関する項目をまとめたものです。 このガイドラインでは、各種免疫不全宿主の年齢や重症度などに応じて推奨度を設定しています。 プレベナー13は臓器移植前後や免疫抑制治療を受けている慢性炎症性疾患患者、無脾または鎌状赤血球症、人工内耳または髄液漏出といった免疫不全宿主に対して、多くの場合で「推奨」、つまり過去または現時点において未接種の場合は接種すること、と設定されています。 Rubin, L. G. et al.:Clin Infect Dis 58(3):e44, 2014 ※推奨の定義: R:推奨される-過去または現時点において未接種の場合は接種する。そのような患者はワクチンで予防可能な感染症でリスクが高い状態かもしれない。U:通常-リスク群や年齢区分の観点から免疫適格者とされ、現時点において接種が推奨されていない患者。 対象・方法: 1966年1月1日以降に公表された文献のうち、「vaccination」「vaccine」「immunization」およびワクチン名や疾患名を検索語としてPubmedにて検索して得られた文献およびその参照文献を、12名のエキスパートがレビュー・分析した。 [用法・用量に関連する接種上の注意](抜粋) 1. 接種対象者・接種時期 (1) 高齢者 本剤の接種は65歳以上の者に行う。(2)小児 本剤の接種は2か月齢以上6歳未満の間にある者に行う。 ※このスライドには国内で承認された内容以外の情報を含んでいます。 29

【海外疫学データ(米国、英国)】 小児へのPCV導入で高齢者のIPD罹患率↓(65歳以上:海外データ) 65歳以上(米国)1) 65歳以上(英国)2) (/10万人) (件) PCV7導入(小児) 200 400 600 800 1,000 100 300 500 700 900 PCV13に追加された6血清型によるIPD PCV13導入:2010年4月(小児) 35 40 25 20 10 15 30 5 PCV7血清型 PCV7非血清型 血清型19A 09~10年 10~11年 11~12年 12~13年 累計報告件数 13~14年 14~15年 罹患率 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 26 28 30 32 34 36 38 40 42 44 46 48 50 52 1 3 5 7 9 11 13 15 17 19 21 23 25 年 週 【ポイント】 米国では、7価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV7)の小児への導入を境に、PCV7血清型による65歳以上の侵襲性肺炎球菌感染症(IPD)の罹患率が低下しました。 英国では、13価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV13)の小児への導入を境に、PCV13に追加された6血清型による65歳以上のIPDの罹患率が低下しました。 【解説】 米国疾病予防管理センター(CDC)のABCサーベイランスおよび英国保健省(HPA)サーベイランスでは、小児へのPCV7およびPCV13導入の高齢者IPDに対する影響についても検討しています。 ABCサーベイランスにおいて、PCV7血清型のIPD罹患率は、2000年に小児に対しPCV7が導入されて以降、65歳以上の成人でも年々低下しました1)。 また、英国保健省(HPA)サーベイランスによると、PCV13に追加された6血清型によるIPDは、2010年4月に小児に対しPCV13が導入されて以降、65歳以上の成人でも年々低下しました2)。 これらのデータより、PCV7およびPCV13の集団免疫効果は、小児だけでなく高齢者IPDにも影響を 及ぼしたことが分かります。しかしながら、高齢者の肺炎に対する集団免疫効果の報告はそれほど 多くありません。 【参考文献】 Pilishvili T, Lexau C, Farley MM, et al. Sustained reductions in invasive pneumococcal disease in the era of conjugate vaccine. J Infect Dis. 2010;201(1):32-41. Public Health England. Pneumococcal disease infections caused by serotypes in Prevenar13 and not in Prevenar 7. https://www.gov.uk/government/publications/pneumococcal-disease-caused-by-strains-in-prevenar-13-and-not-in-prevenar-7-vaccine/pneumococcal-disease-infections-caused-by-serotypes-in-prevenar-13-and-not-in-prevenar-7. Updated January 7, 2015. Accessed December 19, 2014. 方 法:米国疾病予防管理センター(CDC)により1998~2007年に実施されたABCサーベイランスにおいて、年齢別、肺炎球菌血清型別にIPDの罹患率を調査した。 対 象:英国保健省(HPA)によるイングランドおよびウェールズの小児~高齢者を対象とするサーベイランス(週間報告) 方 法:65歳以上のIPD患者において、2006年26週~2015年42週(継続中)における、PCV13に追加された6血清型の経年推移を評価した。 (英国 では、PCV7が2006年9月4日(36週)に、PCV13が2010年4月1日(13週)に小児の予防接種スケジュールに導入された。) J Infect Dis. 201(1):32-41;2010 Pilishvili T et al. Sustained reductions in invasive pneumococcal disease in the era of conjugate vaccine. Copyright©2010 Oxford University Press ©Crown copyright. Reproduced with permission of Public Health England PCV7:7価肺炎球菌結合型ワクチン、PCV13:13価肺炎球菌結合型ワクチン 国内では、PCV7はPCV13に切り替わり、承認整理がされているため現在使用できません。 1)Pilishvili, T. et al.:J Infect Dis 201(1):32, 2010 2)Public Health England. Pneumococcal disease infections caused by serotypes in Prevenar13 and not in Prevenar 7. https://www.gov.uk/government/publications/pneumococcal-disease-caused-by-strains-in-prevenar-13-and-not-in-prevenar-7-vaccine/pneumococcal-disease-infections-caused-by-serotypes-in-prevenar-13-and-not-in-prevenar-7. 2015/12/21参照

関連疾患に関する国内ガイドラインにおける 肺炎球菌ワクチンの位置付け 関連疾患に関する国内の診療ガイドラインと各ガイドラインにおける肺炎球菌ワクチンの位置付け 科学的根拠に基づく 糖尿病診療ガイドライン20131) 【3.糖尿病と市中肺炎】 (前略)肺炎を予防する大きな柱は、病原微生物に対する曝露対策、すなわち感染経路の遮断と、宿 主に対する対策、すなわち宿主の易感染性の除去ならびにワクチン接種である。 肺炎球菌は高齢者の市中肺炎、季節性インフルエンザ感染後の肺炎の主要な起因菌のひとつであ る。(中略)肺炎球菌ワクチンの接種は、肺炎球菌感染症の発症リスクを低下させるが、肺炎全体の 発症リスクを低下させるかどうかは報告により意見が分かれている。糖尿病患者に限定した肺炎球菌 ワクチンの疾病リスクへの影響を検討した報告はないが米国糖尿病学会はレベルCとして肺炎球菌 ワクチンの接種を推奨している。 関節リウマチ治療におけるメトトレキサート(MTX)診療ガイドライン2011年版2) 【メトトレキサート投与時の感染症の予防・対応】 ① 合併感染症の治療を先行させ,治癒を確認する. ② 肺炎球菌ワクチン(65 歳以上),インフルエンザワクチン接種を積極的に実施する. ③ 総合的に結核再燃のリスクが高いと判断される症例には,イソニアジドなどによる潜在性結核の先行治療を考慮する. ④ 総合的にニューモシスチス肺炎の発症リスクが高いと判断される症例には,スルファメトキサゾール・トリメトプリムによる化学予防を考慮する. 高齢者の安全な薬物療法ガイドライン20153) 【スタート:強く推奨される薬物もしくは使用法のリスト】 分類 薬物(クラス または一般名) 代表的な一般名 (商品名)全て該当の場合は無記載 推奨される使用法 (対象となる病態・ 疾患名) 注意事項 エビデンスの質と推奨度 肺炎球菌 ワクチン ニューモバックスNP、 プレベナー13 高齢者での接種が奨められる。特に、呼吸・循環系の基礎疾患を有する者に勧められる 副作用として局所の発赤、腫脹など。 強くでる可能性があり注意する エビデンスの質:高 推奨度:強 1)日本糖尿病学会:科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン2013 第1版 南江堂:279, 2013 2)一般社団法人日本リウマチ学会MTX診療ガイドライン策定小委員会:関節リウマチ治療におけるメトトレキサート(MTX)診療ガイドライン【簡易版】 http://www.ryumachi-jp.com/info/img/MTX2011kanni.pdf 2015/12/21参照 3)日本老年医学会:高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015 2015/11/04 http://www.jpn-geriat-soc.or.jp/info/topics/pdf/20150427_01_02.pdf 2015/12/21参照 31

成人用肺炎球菌ワクチン接種を 取り巻く状況の変化と関連学会による指針 日本呼吸器学会による肺炎診療ガイドライン 成人市中肺炎診療ガイドライン作成(2007) 同ガイドライン改訂(2010)1) 医療・介護関連肺炎診療ガイドライン作成(2010)2) PCV13の65歳以上に対する 適応拡大(2014) PPV23の65歳以上に対する 定期接種開始(2014) 「65歳以上の成人における肺炎球菌ワクチン接種の考え方」発表(2015)3) 日本呼吸器学会と日本感染症学会は合同委員会を組織し、 「65歳以上の成人における肺炎球菌ワクチン接種の考え方」として提示することとした。 MESSAGE】 2014年にPCV13が65歳以上に対して適応拡大したこと、PPV23の65歳以上への定期接種が開始したことを受けて、日本呼吸器学会と日本感染症学会は合同委員会を設定し、成人用肺炎球菌ワクチン接種に関する指針として、「65歳以上の成人における肺炎球菌ワクチン接種の考え方」を発表しました。 【Script】 従来、成人用肺炎球菌ワクチン接種に関するガイドラインは、日本呼吸器学会による成人市中肺炎診療ガイドラインや、医療・介護関連肺炎診療ガイドラインなどしかありませんでした。 これらのガイドラインが発行された当時、成人用肺炎球菌ワクチンはPPV23しか存在しませんでした。しかし2014年には、これまで小児に適応を有していたPCV13が65歳以上の成人へも適応拡大される一方で、PPV23の65歳以上に対する定期接種が開始され、成人用肺炎球菌ワクチンを取り巻く状況に大きな変化が生じました。 こうした流れを受けて、日本呼吸器学会と日本感染症学会は合同委員会を組織し、2015年2月に65歳以上の成人における肺炎球菌ワクチン接種の考え方を提示しました。 PCV13:13価肺炎球菌結合型ワクチン  PPV23:23価肺炎球菌多糖体ワクチン 1) 日本呼吸器学会呼吸器感染症に関するガイドライン作成員会:成人市中肺炎診療ガイドライン 第2版 日本呼吸器学会:69, 2010 2) 日本呼吸器学会医療・介護関連肺炎(NHCAP) 診療ガイドライン作成委員会:医療・介護関連肺炎診療ガイドライン第1版 日本呼吸器学会: 36, 2011 日本呼吸器学会/日本感染症学会 合同委員会:65歳以上の成人に対する肺炎球菌ワクチン接種に関する考え方 http://www.kansensho.or.jp/guidelines/pdf/o65haienV_150905.pdf  2015/12/21参照 日本呼吸器学会/日本感染症学会 合同委員会:65歳以上の成人に対する肺炎球菌ワクチン接種に関する考え方 (第2版 2017-10-23) http://www.kansensho.or.jp/guidelines/pdf/o65haienV/o65haienV_171023.pdf 32

2つの肺炎球菌ワクチンの打ち分け方(菊池) ブルジョア高齢者、呼吸器疾患患者さん: PCV → 6ヶ月以上後に PPV PPVを打ったばかり PPVの1年以上後に PCV → 5年以上後にPPV 70才くらいまでなら、5年後にPCV、10年後にPPVも ちょっと節約高齢者 PCV1回だけ 摘脾後2週間以上 PCV → 1年後にPPV → 5年毎にPPV?PCV? 高齢者施設入所や、全身状態が悪化傾向 PPVをここで打つ PPV定期予防接種スケジュール 移行期間は2018年度まで。65+5n才 2019年度以降は、65才のみ。助成は一生に1回。

まとめ PPVはメモリーB細胞を消耗して抗体価を上げる。 結合型ワクチンはポリサッカライドワクチンの改良型。メモリーB細胞を増やす。 2回目以降の接種で低反応。 結合型ワクチンはポリサッカライドワクチンの改良型。メモリーB細胞を増やす。 2回目以降の接種でブースター効果。 PCV接種後6ヶ月以上後にPPVが推奨。(データなし) どちらか一方ならPCV 摘脾・無脾ならPCV 小児の接種にる集団免疫で高齢者のIPDも減少。 日本ではまだデータがない。 34

国内ガイドラインにおける肺炎球菌ワクチンの位置付け 国内の診療ガイドラインと各ガイドラインにおける肺炎球菌ワクチンの位置付け 成人市中肺炎 診療ガイドライン (第2版)1) 【肺炎球菌ワクチン接種を必要とする対象者】 1)65歳以上の高齢者で:肺炎球菌ワクチン接種を受けたかどうかはっきりしない人 2)2~64歳で下 記の慢性疾患やリスクを有する人:慢性心不全(うっ血性心不全、心筋症など)、慢性呼吸器疾患 (COPDなど)、糖尿病、アルコール中毒、慢性肝疾患(肝硬変)、髄液漏 3)摘脾をうけた人、脾機能 不全の人 4)老人施設や長期療養施設などの入所者 5)易感染症患者:HIV感染者、白血病、ホジ キン病、多発性骨髄腫、全身性の悪性腫瘍、慢性腎不全、ネフローゼ症候群、移植患者のように長期 免疫抑制療法を受けている人、副腎皮質ステロイドの長期全身投与を受けている人 医療・介護関連肺炎 (第1版)2) 【肺炎球菌多糖体ワクチン(PPV23)】 ●ナーシングホーム居住者へのPPV23接種は肺炎球菌性肺炎の発症予防と死亡率減少に有用である(エビデンスレベルⅡ、Minds推奨グレードB) ●高齢者介護施設の入居者に対するインフルエンザワクチンとPPV23の併用接種は肺炎による入院回数を減少させる(エビデンスレベルⅡ、Minds推奨グレードB) ※本ガイドラインのエビデンスレベルはⅠ~Ⅳ、推奨グレードはA~D。ⅠあるいはAの信頼性が高い。 COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン (第4版)3) 【ワクチン】 ●インフルエンザワクチンはCOPDの増悪による死亡率を50%低下させ、すべてのCOPD患者に接種が勧められる(エビデンスA)。肺炎球菌ワクチンは高齢者の肺炎発症を減らし、65歳未満で対標準1秒量(%FEV1)が40%未満のCOPD患者の肺炎を減少させる(エビデンスB)。 ●インフルエンザワクチンと肺炎球菌ワクチンの併用により、インフルエンザワクチン単独に比較してCOPDの感染性増悪の頻度が減少する(エビデンスB)。 ※本ガイドラインのエビデンスレベルはA~D。Aの信頼性が高い。 【ポイント】 市中肺炎やNHCAP、COPDに関する日本の診療ガイドラインにおいて、肺炎球菌ワクチンの接種が勧められています。 【解説】 こちらは肺炎球菌ワクチンの接種に関するコメントが記載されている、日本での各種診療ガイドラインをまとめたものです。 ・ 市中肺炎のガイドラインでは、肺炎球菌ワクチンが必要な対象者として、①65 歳以上の高齢者で肺炎球菌ワクチン接種を受けたかどうかわからない人、②2~64歳で慢性疾患やリスクを有する人、③摘脾をうけた人、脾機能不全の人、などを挙げています。 ・ NHCAPのガイドラインでは、PPV23に関するコメントではありますが、ナーシングホーム入居者に対する接種の有用性あるいは高齢者介護施設でのインフルエンザワクチンとの併用について言及され、推奨グレードはBとされています。 ・ COPDのガイドラインでは、COPD患者では感染症が重症化しやすく、かつCOPDの増悪の原因にもなることから、ワクチンの接種が重要であり、推奨グレードはBとされています。 このように日本の各種ガイドラインでは肺炎球菌ワクチンの接種が重要と位置付けられ、接種が推奨されています。 ※成人院内肺炎診療ガイドライン(第3版)にはワクチンに関する記載がありません。 35 1)日本呼吸器学会呼吸器感染症に関するガイドライン作成委員会:成人市中肺炎診療ガイドライン 第2版 日本呼吸器学会:69, 2010 2)日本呼吸器学会医療・介護関連肺炎(NHCAP)診療ガイドライン作成委員会:医療・介護関連肺炎診療ガイドライン 第1版 日本呼吸器学会:36, 2011 3)日本呼吸器学会COPDガイドライン第4版作成委員会:COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン 第4版 日本呼吸器学会:65, 2013