RHIC-PHENIX実験での 直接光子測定

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RHIC-PHENIX実験での 直接光子測定 東京大学原子核科学研究センター(CNS)   山口頼人 The 17th ICEPP Symposium

クォーク・グルーオン・プラズマ (QGP) Quark Gluon Plasma (QGP) 通常はハドロン内に閉じ込められているクォークが閉じ込めから解放された状態 高温高密度で実現すると予想 Transition temperature: Tc~150-200MeV Transition energy density:ec~1GeV/fm3 実験的手法 高エネルギー重イオン衝突 RHIC (√sNN=200GeV : Au+Au) LHC (√sNN=5.5TeV : Pb+Pb)

系の時空間発展 衝突で生成された系は時空間発展を行う。 各段階を特徴づけるプローブによる様々な測定が必要。 Pre-equilibrium QGP Hadronization Hadron Gas Freeze-out 衝突で生成された系は時空間発展を行う。 当然、Freeze-out後にしか粒子を測定できない。 各段階での粒子生成、粒子への影響を知ることが重要。 各段階を特徴づけるプローブによる様々な測定が必要。

QGPからの熱光子 直接光子 ≡ ハドロン崩壊からの光子ではない光子 温度・QGP到達時間がわかる。 QGP熱光子測定に最適な横運動量領域 1.0<pT<3.0GeV/c g p r q g 初期衝突でのHard photon (80%以上はqg→qg) Hadron decay photons ハドロン崩壊からの光子 (シグナルの10倍以上) S.Turbide et al PRC 69 014903 バックグラウンド光子

Au+Au, d+Au, p+p衝突で系統的測定 熱光子測定のためには系統的測定が不可欠 p+p衝突 Hard photon d+Au衝突 Hard photon + 原子核効果 Au+Au衝突 Hard photon + 原子核効果 + QGP medium effect 主な原子核効果 Cronin効果 原子核内での多重散乱 収量増加 Nuclear shadowing パートン分布関数(特にgluon)が原子核と陽子では異なる 収量減少 or 増加

PHENIX実験での直接光子測定 電磁カロリメータで測定 pT<5GeV/c : 収量につく大きな不定性 Au+Au p+p 電磁カロリメータのエネルギー分解能の劣化によりハドロン崩壊からの光子(総光子収量の70%以上がp0→2g)を正確に取り除けない。

解決策:仮想直接光子g*→e+e-測定 e+e-質量分布の低質量領域において仮想直接光子による増加分が見える。 基本となるアイデア g* q g* g e+ e- 基本となるアイデア 光子生成プロセスには高次にe+e-生成プロセスが存在 仮想直接光子g*→e+e-の同定方法 光子生成率とe+e-生成率の関係性: Process dependent factor Direct g* : pT2»mee2の時、S(mee)~1 Dalitz decay : e+e-質量分布に違いが生まれる。 p0質量以上の領域(mee>135MeV)ではS/Bが大幅に(4~5倍)改善される。 e+e-質量分布の低質量領域において仮想直接光子による増加分が見える。

直接光子率の決定 100<mee<300MeVで上式をfitして直接光子率を決定する。 r : direct g*/inclusive g* Hadron Direct g* 100<mee<300MeVで上式をfitして直接光子率を決定する。 p0の影響を抑えられ、pT2»mee2を満たす。 p+p-→e+e-の寄与がないと考えられる領域。 conversion pair, combinatorialは除去。 mee>300MeVでもFit結果はデータ点に一致。 h→2gで測定されたh収量が2倍にならないといけない。 A. Adare et al., PRL104,132301(2010)

直接光子率 μ = 0.5pT μ = 1.0pT μ = 2.0pT p+p, d+Au衝突 → pQCD計算からの予想とあまり変わらない。 Au+Au衝突 → 明らかにlow pTでの傾向が異なる。 直接光子率に総光子収量を掛けて、実直接光子収量を決定。

p+p, d+Auの比較 実光子測定の結果とスムーズに繋がる。 d+Au: ●(g*) - ○(g) p+p : ■(g*) - ■(g) Ncoll scaled p+p結果とd+Au結果はconsistent d+Au結果はp+p結果の重ね合わせとして理解できる。 直接光子生成における原子核効果は小さい。

d+Au, Au+Auと比較 pT<2GeV/cではd+Auからの予想よりも2倍以上。 Non initial state effect

Inverse slope : T exponential + Ncoll scaled p+p fit をAu+Au結果にFit。 A. Adare et al., PRL104,132301(2010) exp + TAA scaled pp exponential + Ncoll scaled p+p fit をAu+Au結果にFit。 Au+Au fit function Exponential part Binary-scaled p+p result Inverse slope A,T : free parameters Au+Au中心衝突について T = 221±19±19 MeV Transition temperature (~170MeV)より高い状態 Fit to pp NLO pQCD (W. Vogelsang)

まとめ 高エネルギー重イオン衝突を用いてQGPの存在検証とその性質理解を目的とした実験を行っている。 mid-rapidity領域では1.0<pT<3.0GeV/cは熱光子測定に最適。 PHENIX実験ではp+p, d+Au, Au+Au衝突実験での低横運動量直接光子測定に成功。 仮想直接光子g*→e+e-を利用した解析。 p+p衝突とd+Au衝突はconsistentな結果。 原子核効果は小さい。 Au+Au衝突では予想されるHard photon収量に対して超過収量を観測。(pT<3.0GeV/c) Non initial state effect exponential fitのinverse slope T = 221±19±19 MeV transition temperatureを越える高温状態