物理システム工学科3年次 「物性工学概論」 第11回光エレクトロニクス(4) 半導体レーザと光ストレージ

Slides:



Advertisements
Similar presentations
レーザーとは 応用プロジェクト I レーザ誘起化学反応の直接追跡 (担当:勝村庸介、工藤久明、石川顕一) 石川顕一.
Advertisements

無機化学 I 後期 木曜日 2 限目 10 時半〜 12 時 化学専攻 固体物性化学分科 北川 宏 301 号室.
光メモリー・磁気メモリーはどこまで高密度・大容量化できるか
物理システム工学科3年次 「物性工学概論」 第14回 スピンエレクトロニクス(2) 磁気記録
佐藤 勝昭 東京農工大学大学院工学研究科 電子情報工学専攻
物理システム工学科3年次 「物性工学概論」 第12回光エレクトロニクス(5) さまざまなディスプレイ
情報検索概説II 第8回 パソコン組み立てと記憶装置 1999/11/25.
大学院物理システム工学専攻2004年度 固体材料物性第10回 -磁気光学効果の応用(1)-
基礎ゼミ資料 波としての光 H23年 5/16, 5/23, 5/30, 6/6 山田 博仁.
~補助記憶装置~  主記憶装置に記憶されるデータは,パソコンの電源を切ると記憶内容が消えてしまう。また,容量にも限界があるので,補助記憶装置にデータを記憶させる。補助記憶装置はパソコンの電源を切っても記憶内容は消えない。補助記憶装置の内容は主記憶装置上で利用することができる。 電源OFF 電源OFF.
情 報 技 術 基 礎 周 辺 装 置 D17kog706pr102 始.
学年 名列 名前 福井工業大学 工学部 環境生命化学科 原 道寛 名列____ 氏名________
基礎ゼミ資料 波としての光 H22年 4月19日 山田 博仁.
ファブリ・ペローエタロンを用いた リング型外部共振器付半導体レーザーの 発振周波数制御
ストレージ・メモリ分野の技術マップ ストレージ・メモリデバイス 新規デバイス ● ● ● ● ● ● ● ● ● 凡例 項目 開発技術 分類
小笠原智博A*、宮永崇史A、岡崎禎子A、 匂坂康男A、永松伸一B、藤川高志B 弘前大学理工学部A 千葉大大学院自然B
関西学院大学 セミナー 光と磁気から光とスピンへ 佐藤勝昭.
物性物理学特論 第9回講義 磁気光学効果の応用 佐藤勝昭.
物理システム工学科3年次 「物性工学概論」 第5回半導体の色(2) ー半導体の電気的性質ー
CRL 高周波磁界検出用MOインディケーターの合成と評価 1. Introduction 3. Results and Discussion
AOによる 重力レンズクェーサー吸収線系の観測 濱野 哲史(東京大学) 共同研究者 小林尚人(東大)、近藤荘平(京産大)、他
物理システム工学科3年次 物性工学概論 第火曜1限0031教室 第9回: 光エレクトロニクスと材料[2] 光通信と材料
量子ビーム基礎 石川顕一 6月 7日 レーザーとは・レーザーの原理 6月21日 レーザー光と物質の相互作用
基礎ゼミ 光学のすすめ 第15章 光を用いた情報機器
ディジタル回路 1. アナログ と ディジタル 五島 正裕.
Development of High-power fiber amplifier
前回の内容 結晶工学特論 第5回目 Braggの式とLaue関数 実格子と逆格子 回折(結晶による波の散乱) Ewald球
大学院工学研究科 磁性工学特論第11回 -磁気光学効果の応用-
菊地夏紀 荒木幸治、江野高広、桑本剛、平野琢也
物理システム工学科3年次 物性工学概論 第火曜1限0035教室 第10回 光エレクトロニクスと材料[2] 光ディスク
明星大学 情報学科 2010年度後期     コンピュータ設計論  
物理システム工学科3年次 物性工学概論 第1回講義 火曜1限0035教室
メモリとHDD.
金色の石に魅せられて -光で探る新しい 機能性材料- Part2
エレクトロニクスII 第15回差働増幅器 佐藤勝昭.
大学院物理システム工学専攻2004年度 固体材料物性第11回 -磁気光学効果の応用(2)-
物理システム工学科3年次 物性工学概論 第火曜1限0035教室 補講: 光通信と材料
物理システム工学科3年次 物性工学概論 第火曜1限0023教室 第8回 光エレクトロニクスと材料[1] レーザー
ナノデザイン特論2 レーザーの基礎
コンピュータを知る 1E16M009-1 梅津たくみ 1E16M017-8 小沢あきら 1E16M035-0 柴田かいと
量子ビーム基礎 石川顕一 6月 7日 レーザーとは・レーザーの原理 6月21日 レーザー光と物質の相互作用
物理システム工学科3年次 「物性工学概論」 第10回光エレクトロニクス(3) 半導体レーザと光通信
佐藤勝昭研究室 OB会2003年11月22日  磁性MOD班.
「プラズマエッチングによるレジストパターン転写実習」
電磁気学C Electromagnetics C 6/12講義分 光導波路と光共振器 山田 博仁.
Fig. Crystal structure of Nd2Fe14B
大学院物理システム工学専攻2004年度 固体材料物性第7回 -光と磁気の現象論(2)-
位相カメラの進捗状況 京都大学修士1回 横山 洋海.
黒体輻射 1. 黒体輻射 2. StefanのT4法則、 Wienの変位測 3. Rayleigh-Jeansの式
量子力学の復習(水素原子の波動関数) 光の吸収と放出(ラビ振動)
物理システム工学科3年次 「物性工学概論」 第1回講義 火曜1限67番教室
Appendix. 【磁性の基礎】 (1)磁性の分類[:表3参照]
光スイッチングデバイス.
課題演習B1 「相転移」 相転移とは? 相転移の例 担当 不規則系物理学研究室 松田和博 (准教授) 永谷清信 (助教)
課題研究Q2            2017年度用 「光物性」の研究紹介  京都大学大学院理学研究科  物理学第一教室 光物性研究室 1.
課題演習B2 - 半導体の光応答 - 物一 光物性研究室 中 暢子 准教授 有川 敬 助教 TA 1名(予定)
アナログ と ディジタル アナログ,ディジタル: 情報処理の過程: 記録/伝送 と 処理 において, 媒体(メディア)の持つ物理量 と
物理システム工学科3年次 「物性工学概論」 第9回光エレクトロニクス(2) 光通信:光ファイバーとレーザー
レーザについて レーザについて チョット 学習しましょう!.
偏光X線の発生過程と その検出法 2004年7月28日 コロキウム 小野健一.
課題演習B1 「相転移」 相転移とは? 相転移の例 担当 不規則系物理学研究室 八尾 誠 (教授) 松田和博 (准教授) 永谷清信 (助教)
京大岡山3.8m望遠鏡用高分散分光器 京大宇物 岩室史英 サイエンス 太陽型星のスーパーフレア現象の解明
今後の予定 7日目 11月12日 レポート押印 1回目口頭報告についての説明 講義(4章~5章),班で討論
外部共振器型半導体レーザー装置の製作 物理工学専攻 小菅 洋介 (M1) 〔指導教員: 熊倉 光孝〕
課題演習B1 「相転移」 相転移とは? 相転移の例 担当 不規則系物理学研究室 松田和博 (准教授) 永谷清信 (助教)
アナログ と ディジタル アナログ,ディジタル: 情報処理の過程: 記録/伝送 と 処理 において, 媒体(メディア)の持つ物理量 と
第39回応用物理学科セミナー 日時: 12月22日(金) 14:30 – 16:00 場所:葛飾キャンパス研究棟8F第2セミナー室
情報機器と情報社会のしくみ Web素材利用
60Co線源を用いたγ線分光 ―角相関と偏光の測定―
Presentation transcript:

物理システム工学科3年次 「物性工学概論」 第11回光エレクトロニクス(4) 半導体レーザと光ストレージ 物理システム工学科量子機能工学分野 佐藤勝昭

第10回の復習 光通信に使われる波長が1.53-1.56μmであること、使われている材料は石英(SiO2)であること、短波長側の伝送損失はレイリー散乱が、長波長側の伝送損失は分子振動が原因であることを再確認した。低損失のフッ化物ファイバーに触れた。 半導体レーザの構造と動作原理を学んだ。特に、バンドギャップの大きな材料でバンドギャップの小さな活性層を挟んだDH構造のメリットを学んだ。 光通信の最近の急速な発展が波長多重に支えられており、アイソレータ、EDFAの重要性を学んだ。

第10回のQUIZ 「光ファイバー通信において利用されている物理現象の中で印象に残ったモノをつ挙げよ。」 ----------------------------------------------- という質問を出しましたところ、みなさん、大変よい答えを書いてくれました。

QUIZの回答の一部紹介(1) 反転分布で正味の誘導放出が起き、ねずみ算的に増幅しコヒーレントな光が放出される(安藤) レーザーに量子力学が応用されていること(中島、村野) 光の電界を受けて励起状態から基底状態に遷移すると誘導放出で、逆だと光吸収であること(松下、今井) レーザーにボース凝縮が関係していること(市村、平田) 半導体レーザーで屈折率の差を利用して光を活性層に閉じ込めるDH構造により効率を上げていること(有働、村上、真下、遠藤、西浦)、 DHレーザーを日本人が発明したと言うこと(伊藤) DFBレーザーの波長の単色性がよいこと(平木) いろいろの種類のレーザーがあること(窪田) 光ファイバーがコアとクラッドの屈折率の違いによる全反射を利用して長距離伝送していること(川端、民部、前田、石黒、黒田、山口、庄子、金田)

QUIZの回答の一部紹介(2) 光ファイバーに石英ガラスが使われていること(山中) 光通信の波長がレイリー散乱と分子振動で決まる狭い波長範囲であること(川田、今野、円子、松本、佐藤(豊)、光通信ではレーザーの単色性を利用して、波長多重して伝送していること(原田、小尻、小林) 光ファイバー通信で、戻り光によるレーザーノイズをカットするためにアイソレーターというものを使い、それが偏光を利用していること(有働) 光ファイバー増幅器(EDFA)において、光を光のまま増幅できること(宮本、山本、伏木) 途中で光を増幅しなければならないこと(村松) CD-Rの記録がレーザーの高エネルギー密度を利用して加熱していること(長井)

第11回で学ぶこと -光ストレージについて 読み出しは、レーザー光を絞ったときに回折限界で決まるスポットサイズで制限されるため、波長が短いほど高密度に記録される。 光ストレージには、読み出し(再生)専用のもの、1度だけ書き込み(記録)できるもの、繰り返し記録・再生できるものの3種類がある。 記録には、さまざまな物理現象が使われている。

スポットサイズ レンズの開口数 NA=nsinα d=0.6λ/NA 現行CD-ROM: NA=0.6 CD-ROM: λ=780nm→d=780nm DVD: λ=650nm→d=650nm BluRay: NA=0.85     λ=405nm→d=285nm AOD: NA=0.6     λ=405nm→d=405nm α スポット径 d

光ストレージの分類 光ディスク ホログラフィックメモリ、ホールバーニングメモリ 再生(読み出し)専用のもの 記録(書き込み)可能なもの CD, CD-ROM, DVD-ROM 記録(書き込み)可能なもの 追記型(1回だけ記録できるもの) CD-R, DVD-R 書換型(繰り返し消去・記録できるもの) 光相変化 CD-RW, DVD-RAM, DVD-RW, DVD+RW, DVD-R, DVD+R, Bluray, AOD 光磁気: MO, GIGAMO, MD, AS-MO, iD-Photo ホログラフィックメモリ、ホールバーニングメモリ

光記録に利用する物理現象 CD-ROM, DVD-ROM: ピット形成 CD-R, DVD-R: 有機色素の化学変化と基板の熱変形 CD-RW, DVD-RAM, DVD-RW, DVD+RW, DVD-R: アモルファスと結晶の相変化 MO, MD, GIGAMO, AS-MO, iD-Photo: 強磁性・常磁性相転移 ホログラフィックメモリ:フォトリフラクティブ効果 ホールバーニングメモリ:不均一吸収帯

光ディスクの特徴 リムーバブル 大容量・高密度 ランダムアクセス 高信頼性 現行10Gb/in2:ハードディスク(70Gbit/in2)に及ばない 超解像、短波長、近接場を利用して100Gbit/in2をめざす ランダムアクセス 磁気テープに比し圧倒的に有利; カセットテープ→MD, VTR→DVD ハードディスクに比べるとシーク時間が長い 高信頼性 ハードディスクに比し、ヘッドの浮上量が大きい

いろいろな光ディスク

CD-ROM ポリカーボネート基板:n=1.55 λ=780nm → 基板中の波長λ’=503nm ピットの深さ:110nm ~ ¼波長 反射光の位相差π:打ち消し http://www.infonet.co.jp/ueyama/ip/multimedia/cd.html

CD-ROMドライブ フォーカスサーボ トラッキングサーボ 光ピックアップ http://www.infonet.co.jp/ueyama/ip/multimedia/cd.html

CD-RW 光相変化ディスク 結晶とアモルファスの 間の相変化を利用 http://www.cds21solutions.org/main/osj/j/cdrw/rw_phase.html

光相変化記録 アモルファス/結晶の相変化を利用 書換可能型 成膜初期状態のアモルファスを熱処理により結晶状態に初期化しておきレーザ光照射により融点Tm (600℃)以上に加熱後急冷させアモルファスとして記録。消去は結晶化温度Tcr(400℃)以下の加熱緩冷して結晶化。 Highレベル:Tm以上に加熱→急冷→アモルファス Lowレベル:Tcr以上に加熱→緩冷→結晶化 DVD-RAM: GeSbTe系 DVD±RW: Ag-InSbTe系

相変化ディスクの記録と消去 融点以上から急冷: アモルファス →低反射率 融点以下、結晶化 温度以上で徐冷: 結晶化 →高反射率 http://www.cds21solutions.org/main/osj/j/cdrw/rw_phase.html

相変化と反射率 初期状態:結晶状態 記録状態:アモルファス状態 R:大 R:小 記録 消去 レーザスポット 記録マーク

CD-R 有機色素を用いた光記録 光による熱で色素が分解 気体の圧力により加熱された基板が変形 ピットとして働く

DVDファミリー 105 103-104 0.6 0.65 DVD-ROM DVD-R DVD-RAM DVD-RW DVD+RW   DVD-ROM DVD-R DVD-RAM DVD-RW DVD+RW 容量(GB) 4.7 / 9.4 2層8.54 3.95 / 7.9 4.7/9.4 形状 disk cartridge マーク形成 材 料 ピット形成 1層 R=45-85 2層 R=18-30 熱変形型 有機色素 R=45-85% 相変化型 GeSbTe系 R=18-30% AgInSbTe系 レーザ波長 レンズNA 650/635 0.6 650 638/650 0.65 最短マーク長 1層:0.4 2層:0.44 0.4 0.41-0.43  0.4 トラック幅 0.74 0.8 Wobbled Land pre-bit 0.74 Wobbled L/G 0.74 HF Wobbled groove 書き換え可能回数 - 105 103-104

光磁気記録 記録: 熱磁気(キュリー温度)記録 再生: 磁気光学効果 MO, MDに利用 互換性が高い 書き替え耐性高い:1000万回以上 記録: 熱磁気(キュリー温度)記録 光を用いてアクセスする磁気記録 再生: 磁気光学効果 磁化に応じた偏光の回転を電気信号に変換 MO, MDに利用 互換性が高い 書き替え耐性高い:1000万回以上 ドライブが複雑(偏光光学系と磁気系が必要) MSR, MAMMOSなど新現象の有効利用可能

光磁気媒体の構造 MOディスクの構造 ポリカーボネート基板 窒化珪素保護膜・ (MOエンハンス メント膜を兼ねる) Al反射層 MO記録膜 (アモルファスTbFeCo) groove land 樹脂

光磁気記録 情報の記録(1) レーザ光をレンズで集め磁性体を加熱 キュリー温度以上になると磁化を消失 冷却時にコイルからの磁界を受けて記録 M Tc 温度 Tc 光スポット 光磁気記録媒体 外部磁界 コイル

光磁気記録 情報の記録(2) TcompでHc最大: 補償温度(Tcomp)の利用 アモルファスTbFeCoは 一種のフェリ磁性体なので  一種のフェリ磁性体なので  補償温度Tcompが存在 TcompでHc最大: 記録磁区安定 Hc M Tb FeCo Mtotal 室温 Fe,Co Tb Tcomp Tc T

2種類の記録方式 光強度変調(LIM):現行MO 磁界変調(MFM):MD, ASMO 電気信号で光を変調 磁界は一定 ビット形状は長円形 電気信号で磁界を変調 光強度は一定 ビット形状は矢羽形 Modulated laser beam Constant Constant field Modulated field Magnetic head (a) LIM (b) MFM

光磁気記録 情報の読み出し 磁化に応じた偏光の回転を検出し電気に変換 D1 LD - D2 偏光ビーム スプリッタ + N S N S N

光磁気ディスク 記録: 熱磁気(キュリー温度)記録 再生: 磁気光学効果 (詳細は、磁性の講義で) 記録: 熱磁気(キュリー温度)記録 再生: 磁気光学効果 (詳細は、磁性の講義で) MO: 3.5” 128→230→650→1.3G→2.3G MD(6cm) iD-Photo, Canon-Panasonic(5cm)