核磁気共鳴法とその固体物理学への応用 東大物性研: 瀧川 仁 [Ⅰ] 核磁気共鳴の基礎と超微細相互作用

Slides:



Advertisements
Similar presentations
無機化学 I 後期 木曜日 2 限目 10 時半〜 12 時 化学専攻 固体物性化学分科 北川 宏 301 号室.
Advertisements

超伝導磁束量子ビットにおける エンタングルメント 栗原研究室 修士 2 年 齋藤 有平. 超伝導磁束量子ビット(3接合超伝導リング) 実験 結果 ラビ振動を確認 Casper H.van der Wal et al, Science 290,773 (2000) マクロ変数 → 電流の向き、 貫く磁束.
2005/5/25,6/1 メゾスコピック系の物理 (物理総合) 大槻東巳 (協力 : 吉田順司, 2003 年 3 月上智大学理学博士 )  目次 1 )メゾスコピック系とは 2 )舞台となる 2 次元電子系 3 )バリスティック系の物理 コンダクタンスの量子化 クーロン・ブロッケード 4 )拡散系の物理.
相対論的場の理論における 散逸モードの微視的同定 斎藤陽平( KEK ) 共同研究者:藤井宏次、板倉数記、森松治.
顕微発光分光法による n 型ドープ量子細線の研 究 秋山研究室 D3 井原 章之 ’ 07 11/20 物性研究所 1次元電子ガスを内包し、 状態密度の発散や 強いクーロン相互作用の 発現が期待される。 しかし試料成長や測定が難しいた め、 バンド端エネルギー領域の 吸収スペクトルに現れる特徴を.
Localized hole on Carbon acceptors in an n-type doped quantum wire. Toshiyuki Ihara ’05 11/29 For Akiyama Group members 11/29 this second version (latest)
m=0 状態の原子干渉計による パリティ依存位相の測定 p or 0 ? 東理大理工 盛永篤郎、高橋篤史、今井弘光
HBT干渉法における 平均場の効果の準古典理論
第2回応用物理学科セミナー 日時: 6月 2日(月) 16:00 – 17:00 場所:葛飾キャンパス研究棟8F第2セミナー室
単一分子接合の電子輸送特性の実験的検証 東京工業大学 理工学研究科  化学専攻 木口学.
核磁気共鳴法とその固体物理学への応用 東大物性研: 瀧川 仁 [Ⅰ] 核磁気共鳴の基礎と超微細相互作用
小笠原智博A*、宮永崇史A、岡崎禎子A、 匂坂康男A、永松伸一B、藤川高志B 弘前大学理工学部A 千葉大大学院自然B
クラスター変分法による 超新星爆発用 核物質状態方程式の作成
後藤研究室(低温物性) NMR 物質を冷すと何が起こるか? 相転移 (磁気転移、超伝導、etc.) 電子状態(スピン・軌道)の劇的な変化
はじめに m 長さスケール 固体、液体、気体 マクロスコピックな 金属、絶縁体、超伝導体 世界
TTF骨格を配位子に用いた 分子性磁性体の開発 分子科学研究所 西條 純一.
中性子過剰核での N = 8 魔法数の破れと一粒子描像
Ⅰ 孤立イオンの磁気的性質 1.電子の磁気モーメント 2.イオン(原子)の磁気モーメント 反磁性磁化率、Hund結合、スピン・軌道相互作用
Ⅲ 結晶中の磁性イオン 1.結晶場によるエネルギー準位の分裂 2.スピン・ハミルトニアン
核磁気共鳴法とその固体物理学への応用 東大物性研: 瀧川 仁 [Ⅰ] 磁気共鳴の原理と超微細相互作用、緩和現象
Ⅳ 交換相互作用 1.モット絶縁体、ハバード・モデル 2.交換相互作用 3.共有結合性(covalency)
質量数130領域の原子核のシッフモーメントおよびEDM
担当: 松田 祐司 教授, 寺嶋 孝仁 教授, 笠原 裕一 准教授, 笠原 成 助教
課題研究 Q11 凝縮系の理論  教授  川上則雄 講師 R. Peters 准教授 池田隆介  助教 手塚真樹  准教授 柳瀬陽一.
出張の日程 M2S-HTSC (7/9~7/14) Workshop (7/16~7/20) 7/9 7/9 7/15 7/16 7/21
1次元電子系の有効フェルミオン模型と GWG法の発展
β型パイロクロア酸化物超伝導体              KOs2O6 の熱伝導率測定
非エルミート 量子力学と局在現象 羽田野 直道 D.R. Nelson (Harvard)
有機化合物に対する第一原理GW計算 arXiv: 東京大学
原子核物理学 第8講 核力.
平成22年6月6日 修士課程入試ガイダンス 大きなゆらぎと相転移現象 宮下精二.
HERMES実験における偏極水素気体標的の制御
β型パイロクロア酸化物超伝導体              KOs2O6 の熱伝導率測定
g-2 実験 量子電磁力学の精密テスト と 標準理論のかなた
Ⅱ 磁気共鳴の基礎 1.磁場中での磁気モーメントの運動 2.磁気共鳴、スピンエコー 3.超微細相互作用、内部磁場 references:
Ⅴ 古典スピン系の秩序状態と分子場理論 1.古典スピン系の秩序状態 2.ハイゼンベルグ・モデルの分子場理論 3.異方的交換相互作用.
量子凝縮物性 課題研究 Q3 量子力学的多体効果により実現される新しい凝縮状態 非従来型超伝導、量子スピン液体、etc.
冷却原子スピン系における 量子雑音の動的制御
1次元量子系の超伝導・ 絶縁転移 栗原研究室 G99M0483 B4 山口正人 1.1次元量子系のSI転移 2.目標とする系
担当: 松田祐司 教授, 笠原裕一 准教授, 笠原成 助教
研究課題名 研究背景・目的 有機エレクトロニクス材料物質の基礎電子物性の理解 2. 理論 3. 計算方法、プログラムの現状
課題演習A5 自然における対称性 理論: 菅沼 秀夫 (内3830)
Cr-アセチリド-テトラチアフルバレン型錯体による
日本物理学会 2014年秋季大会   中部大学 2014年9月9日 9aAS-1 10 min
2次元系における超伝導と電荷密度波の共存 Ⅰ.Introduction Ⅱ.モデルと計算方法 Ⅲ.結果 Ⅳ.まとめと今後の課題 栗原研究室
References and Discussion
星間物理学 講義2: 星間空間の物理状態 星間空間のガスの典型的パラメータ どうしてそうなっているのか
課題演習B1 「相転移」 相転移とは? 相転移の例 担当 不規則系物理学研究室 松田和博 (准教授) 永谷清信 (助教)
アセチリド錯体を構成要素とする 分子性磁性体の構築と その構造及び磁気特性の評価
Why Rotation ? Why 3He ? l ^ d Half-Quantum Vortex ( Alice vortex ) n
担当: 松田 祐司 教授, 寺嶋 孝仁 教授, 笠原 裕一 准教授, 笠原 成 助教
原子分子の運動制御と レーザー分光 榎本 勝成 (富山大学理学部物理学科)
目次 1. 原子における弱い相互作用 2. 原子核のアナポールモーメント 3. アナポールモーメントから何がわかるか?
Numerical solution of the time-dependent Schrödinger equation (TDSE)
課題演習A5 「自然における対称性」 担当教官 理論: 菅沼 秀夫 実験: 村上 哲也.
課題演習B1 「相転移」 相転移とは? 相転移の例 担当 不規則系物理学研究室 八尾 誠 (教授) 松田和博 (准教授) 永谷清信 (助教)
一連のドープ細線における バンド端とフェルミ端の構造
楕円型量子ドットの電子・フォノン散乱 1.Introduction 2.楕円型調和振動子モデル 3. Electron-Phonon散乱
ホール素子を用いた 重い電子系超伝導体CeCoIn₅の 局所磁化測定 高温超伝導体Tl₂Ba₂CuO6+δの 擬ギャップ状態について
メスバウアー効果で探る鉄水酸化物の結晶粒の大きさ
課題演習B1 「相転移」 相転移とは? 相転移の例 担当 不規則系物理学研究室 松田和博 (准教授) 永谷清信 (助教)
固体中の多体電子系に現れる量子凝縮現象と対称性 「複数の対称性の破れを伴う超伝導」
第3回応用物理学科セミナー 日時: 7月10日(木) 16:10 – 17:40 場所:葛飾キャンパス研究棟8F第2セミナー室
電子物性第1 第10回 ー格子振動と熱ー 電子物性第1スライド10-1 目次 2 はじめに 3 格子の変位 4 原子間の復元力 5 振動の波
現実的核力を用いた4Heの励起と電弱遷移強度分布の解析
物性 ~ 電子の集団が描く多彩な風景 物性研究所 瀧川 仁 物性物理(Condensed Matter Physics)とは
第39回応用物理学科セミナー 日時: 12月22日(金) 14:30 – 16:00 場所:葛飾キャンパス研究棟8F第2セミナー室
? リー・ヤンの零点 これまでの格子QCD計算の結果 今年度の計画 リー・ヤンの零点分布から探る有限密度QCDにおける相構造の研究
複合アニオンに起因した多軌道性と低次元性からうまれる 強相関電子物性の研究
軽い原子核の3粒子状態 N = 11 核 一粒子エネルギー と モノポール a大阪電気通信大学 b東京工業大学
Presentation transcript:

核磁気共鳴法とその固体物理学への応用 東大物性研: 瀧川 仁 [Ⅰ] 核磁気共鳴の基礎と超微細相互作用 東大物性研: 瀧川 仁 [Ⅰ] 核磁気共鳴の基礎と超微細相互作用 [Ⅱ] NMRスペクトルを通してスピン・軌道・電荷・格子の局所構造を探る (静的性質) [Ⅲ] 核磁気緩和現象を通して電子(格子)のダイナミクスを見る (動的性質)

[Ⅲ] 核磁気緩和現象を通して電子(格子)のダイナミクスを見る (動的性質) [Ⅲ] 核磁気緩和現象を通して電子(格子)のダイナミクスを見る (動的性質) 1.スピンの揺らぎと核スピン・格子緩和率     一般論、素励起の散乱による緩和、スケーリング則の応用 2.スピン・エコー減衰率     現象論、スピン系の遅い揺らぎ、スピン空間相関と間接相互作用 3.フォノンによる緩和 パイロクロアOs酸化物におけるラットリングと超伝導

スピンの揺らぎと核スピン-格子緩和時間 動的スピン相関関数 動的磁化率 低エネルギー状態密度のエネルギー依存性(超伝導体のギャップ構造)。 臨界現象におけるスケーリング則の検証。 空間相関の弱いが遅い揺らぎ、(フラストレート磁性)。

素励起による散乱(低温の極限) r(w) w wN 素励起:電子(超伝導準粒子)、スピン波(マグノン)、フォノンとの相互作用。 核スピンの反転をともなうプロセス。 直接過程(ボゾンの場合) ラマン過程 状態密度 r(w) w wN 無視できる ラマン過程の遷移確率 散乱の行列要素 ボゾン フェルミオン

低温での緩和率の温度依存性 励起ギャップがある場合: 励起ギャップがない場合: フェルミオンでも同じ。 ボゾン フェルミオン ただし2n+a ≤0 のときは適用不可。(例:2次元反強磁性スピン波)

臨界現象とスケーリングの考え方:遍歴電子磁性体 臨界点近傍では、特定の波数Qの回りで低エネルギーの揺らぎの振幅が成長する。 温度 常磁性 T=0でc(Q)が発散する。 反強磁性 スピン相関距離の発散、 揺らぎのエネルギー・スケールの減少。 Critical slowing down 圧力 or 磁場 量子臨界点 臨界領域のスピンの揺らぎ スケーリング: D:次元 x:相関距離 ダイナミック・スケーリング: z:動的臨界指数

スケーリング則の例 Sr2CuO3におけるCu-MMR SCR理論 遍歴電子反強磁性体 2次元: 3次元: 守谷、「磁性物理学」朝倉 遍歴電子反強磁性体 2次元: 3次元: S=1/2 1次元ハイゼンベルグ系 Takigawa et al., Phys. Rev. Lett. 76 (1996) 4612. Sachdev, Phys. Rev. B 50 (1994) 13006.

スピン・エコー減衰率 局所磁場のxy成分:スピン格子緩和プロセス スピンエコー減衰率 同種核スピン 局所磁場のz成分 それ以外

もし、f(2t)の分布がガウシアンであれば、 局所磁場の相関関数 Recchia et al., Phys. Rev. B 54 (1996) 4207. を仮定すると解析的な表式が得られる。 FID,同種スピンの場合は

歪んだカゴメ格子スピン系における遅い揺らぎ Cu3V2O7(OH)2.2H2O (volborthite) Yoshida et al., Phys. Rev. Lett. Aug. 2009

電子系を介した同種核スピン間の間接結合 c(q) A A Aの異方性が強いことが必要。 Takigawa Phys. Rev. B 49, 4158 (1994). c(q) A A Aの異方性が強いことが必要。

スピン・エコー減衰とスケーリング則 Sr2CuO3におけるCu-MMR スケーリング S=1/2 1次元ハイゼンベルグ系の場合

パイロクロア・Os酸化物におけるラットリング・核磁気緩和・超伝導 Os5.5+ (3d)2.5 A+ Yamaura et al., J. Solid State Chem. 179 (2006) 336.

Trends in the superconducting transition Strong coupling AOs2O6 K K 9.6 K Rb Cs Rb 6.3 K Cs 3.3 K Cd2Re2O7 1 K Y. Nagao, Z, Hiroi (2007)

Trends in the rattling phonon Y. Nagao, Z, Hiroi (2007) Phonon contribution to the specific heat C = CE1 + yCD1 + (6-y)CD2 QE = 75 K Cs 66 K Rb QE1 = 22 K K QE2 = 61 K K Softer rattling and larger atomic displacement for higher Tc.

Electron and phonon contributions to 1/T1 Hyperfine interaction KOs2O6 magnetic dipolar electric quadrupolar Isotopic ratio of 1/T1 can be used to separate the two contributions. g (MHz/T) Q (barn) 39K 1.99 0.059 41K 1.09 0.071 Nuclear relaxation at the K sites is entirely dominated by phonons !

Qualitative features of 1/(T1T)phonon Tc 39K in KOs2O6 Large enhancement at low-T. Peak in 1/(T1T ) near T =13~15 K. (slightly sample dependent.) 1/(T1T ) ~ const. at high-T. Rapid reduction of below Tc. (clear kink at Tc). Sudden change of phonon dynamics at Tc. Evidence for strong el-ph coupling. Reduced phonon damping below Tc

Effects of anharmonicity and electron-phonon coupling Theory by T. Dahm and K. Ueda: arXiv:0706.4345v2 Anharmonic phonon Self-consistent harmonic approximation High T: El-ph coupling: renormalization and damping Damped harmonic oscillator with a T-dependent renormalized frequency.

Nuclear relaxation by two-phonon Raman process Dahm and Ueda: arXiv:0706.4345v2 (to appear in PRL) low T: high T: Alternative model: 1D square well potantial