RT-Linuxを用いた 多入力パルス波高分析システムの開発

Slides:



Advertisements
Similar presentations
Linuxを組み込んだマイコンによる 遠隔監視システムの開発
Advertisements

多入力パルス波高分析システムの開発 環境計測 小栗 康平  京都府立大学 環境情報学科 環境計測 卒論発表会.
コンピュータプラクティス I 再現性 水野嘉明
Chapter11-4(前半) 加藤健.
セキュリティ機構のオフロードを考慮した仮想マシンへの動的メモリ割当
榮樂 英樹 LilyVM と仮想化技術 榮樂 英樹
物理実験 I 情報実験第9回 Modified 2005/12/2 徳永 義哉Original 2003/12/12 中神 雄一
RTLinuxを用いた磁気浮上システムの制御に関する研究
1.コンピュータと情報処理 p.20 第1章第1節 3.ソフトウェア ソフトウェア 基本ソフトウェア
オペレーティングシステムⅡ 第11回 講師 松本 章代 VirtuaWin・・・仮想デスクトップソフト.
ブロック線図に基づく システム制御学習環境における リアルタイム制御実験
USB2.0対応PICマイコンによる データ取得システムの開発
JavaによるCAI学習ソフトウェアの開発
オペレーティングシステム (OSの機能と構造)
組込みシステムとは コンピュータ制御システム?
Debian GNU/Linux ー Linuxインストールに必要な基礎知識 ー 三上 彩 鈴木 倫太郎
(original Takagi & Saito, 2007)
FPGAを用いたMG3用 インターフェース回路の解説
第5回 CPUの役割と仕組み3 割り込み、パイプライン、並列処理
環境計測に用いられるOSの リアルタイム性の比較
CSP記述によるモデル設計と ツールによる検証
画像処理ボード上での 高速テンプレートマッチングの 実装と検証
オープンソフトウェア利用促進事業 第3回OSSモデルカリキュラム導入実証
CsIシンチレータとMAPMT ヘッドアンプユニットを用いた 動作実験
Ibaraki Univ. Dept of Electrical & Electronic Eng.
人間とコンピュータの違い コンピュータ 人間
ー 第1日目 ー 確率過程について 抵抗の熱雑音の測定実験
アスペクト指向プログラミングを用いたIDSオフロード
タイムスタンプ付ストリームI/Oによる音の実時間処理
MPIによる行列積計算 情報論理工学研究室 渡邉伊織 情報論理工学研究室 渡邉伊織です。
Occam言語による マルチプリエンプティブシステムの 実装と検証
SVGを用いた地震データ検索・3D表示アプリケーションの開発
ステッピングモータを用いた 移動ロボットの制御
型付きアセンブリ言語を用いた安全なカーネル拡張
SpectreとMeltdown ITソリューション塾・第28期 2018年5月30日 株式会社アプライド・マーケティング 大越 章司
パワーラボの使い方.
序章 第2節 教育機器とコンピュータ 1 パーソナルコンピュータ
2014年4月4日 電子制御設計製図Ⅰ 第一回 担当教員: 北川輝彦.
OSの仕組みとその機能 1E16M001-1 秋田 梨紗 1E16M010-2 梅山 桃香 1E16M013-3 大津 智紗子
VM専用仮想メモリとの連携による VMマイグレーションの高速化
リモートホストの異常を検知するための GPUとの直接通信機構
実行時情報に基づく OSカーネルのコンフィグ最小化
Ibaraki Univ. Dept of Electrical & Electronic Eng.
東京工業大学 情報理工学研究科 数理・計算科学専攻 千葉研究室 栗田 亮
ディジタル回路の設計と CADによるシステム設計
Ibaraki Univ. Dept of Electrical & Electronic Eng.
VMMのソフトウェア若化を考慮した クラスタ性能の比較
オペレーティングシステムJ/K 2004年11月15日2時限目
コンピュータの仕組み 〜ハードウェア〜 1E15M009-3 伊藤佳樹 1E15M035-2 柴田将馬 1E15M061-1 花岡沙紀
ウェブアプリケーションサーバの Degradation Schemeの 制御に向けて
組込みシステムとは コンピュータ制御システム?
Cell/B.E.のSPE Isolationモードを用いた監視システム
第5回 メモリ管理(2) オーバレイ方式 論理アドレスとプログラムの再配置 静的再配置と動的再配置 仮想記憶とメモリ階層 セグメンテーション
明星大学 情報学科 2012年度前期     情報技術Ⅰ   第1回
オペレーティングシステム (OSの機能と構造)
Handel-Cを用いた パックマンの設計
仮想マシンと物理マシンを一元管理するための仮想AMT
実装について 前田俊行.
オペレーティングシステムJ/K 2004年10月4日
Cell/B.E. のSPE上で動作する 安全なOS監視システム
SpectreとMeltdown ITソリューション塾・第27期 2018年3月20日 株式会社アプライド・マーケティング 大越 章司
第4回 CPUの役割と仕組み2 命令の解析と実行、クロック、レジスタ
MPIを用いた並列処理計算 情報論理工学研究室 金久 英之
ILC衝突点ビームモニターのための 読み出し回路の開発
IPmigrate:複数ホストに分割されたVMの マイグレーション手法
オペレーティングシステム (OSの機能と構造)
低速小型多価イオンビーム装置の開発 ~イオンビーム偏向器、及びビームプロファイルモニター~
MPIを用いた 並列処理 情報論理工学研究室 06‐1‐037‐0246 杉所 拓也.
明星大学 情報学科 2014年度前期     情報技術Ⅰ   第1回
ネットワークを介した 計測制御システムの開発
Presentation transcript:

RT-Linuxを用いた 多入力パルス波高分析システムの開発 環境計測学研究室 小松 望

多入力パルス波高分析システムとは、複 数の検出器より出力されるアナログパル スの波高値を記録、表示、分析する装置   多入力パルス波高分析システム アナログ信号 割り込み信号 デジタル信号 コンピュータ 検出器 ADC ADC ADC A B A B I/Oボード メモリ 終了信号 検出器 複数の検出器から出力されるアナログ信号の波高値はADCでデジタル値に変換される。変換終了時にADCから出力される割込み信号により、デジタル値はコンピュータに読み込まれ、メモリに書き込まれる。デジタル値の読み込みが完了するとコンピュータから終了信号が全てのADCに出力され、これによってそれぞれのADCは次のアナログ信号を受け付ける状態になる。メモリに書き込まれたデータを元にコンピュータは、データをリアルタイムでディスプレイに表示する。 ADC 多入力パルス波高分析システムとは、複 数の検出器より出力されるアナログパル スの波高値を記録、表示、分析する装置 2004/2/13 卒論発表

RT-Linux(8.22 msec) 2001年度 2002年度 RT-Linux 2003年度 RT-Linuxを用いた 割り込み反応速度  速                                    遅 標準偏差 小                                   大   MS-DOS Win-DOS Linux RT-Linux(8.22 msec) RT-Linux   研究背景  マルチタスクOSの利用 2001年度  Windowsを用いた多入力パルス波高分析システムの開発   装置が複雑、割り込み処理やI/O処理が遅い 2002年度  OSのリアルタイム比較    RT-Linuxが最も適当である!!   現在、放射線計測における計測装置といえば、高価な専用のハードウェアや表示機能の乏しいMS-DOS系が主流である。しかし、それらの汎用性は低く、研究者達の多様な変更、要望を満たしてくれない。 そこで一昨年、計測装置のOSとしてWindowsを用いた多入力パルス波高分析システムの開発を行った。パルス波高分析システムとは、検出器より出力されるアナログパルスの波高値を分析、記録、表示する装置である。結果、OSにWindowsを用いたこのシステムでは2台のコンピュータが必要であることや、メモリンクという特殊な装置が必要であるなど、どうしても装置が複雑になってしまう。また割り込み処理、及びI/O処理が遅いだろうという結論に至った。そして昨年、リアルタイムなI/O処理が可能となるOSとして、RT-Linuxが放射線計測システムに利用可能であるかを検証した。結果、RT-Linuxの割り込み処理、I/O処理はLinux やMS-DOS系に比べて安定していることがわかった。このことから、放射線計測システムにRT-Linuxを利用すると1台のコンピュータで最小限のハードウェアを用いた放射線計測システムが作製可能になることを確認できた。 2003年度 RT-Linuxを用いた  多入力パルス波高分析システムの開発 2004/2/13 卒論発表

RT-Linuxとは マルチタスクOSであるLinuxを元に リアルタイムI/O処理をもたせたOS →割り込みを最優先で行いながら、 利点  ・Web SiteからFreeで入手可能  ・オープンソースなので、自由に参照(改造)可能  ・Linuxの機能、アプリケーションをそのまま利用可能 →割り込みを最優先で行いながら、 データ解析や転送などの処理の同時実行が可能 2004/2/13 卒論発表

ADC システム コンピュータ パルサー ハードウェアスペック CPU celeron 466 MHz メモリ 256 MB   システム ADC コンピュータ パルサー ハードウェアスペック CPU celeron 466 MHz メモリ  256 MB I/Oボード PCI2702C 開発に使用したソフトウェア ・ OS RT-Linux ver 3.1 (kernel 2.4.4) ・ gcc version 2.96 (開発言語 C) ・ gnuplot ver3.8j (取得データの描画に使用) ・ GTK(the GIMP Toolkit)v1.2 (GUIで使用) 2004/2/13 卒論発表

実装させた機能 GUIによる操作性能向上 計測の開始、停止、終了、データの保存、クリア、各軸の拡大・縮小   実装させた機能 GUIによる操作性能向上   計測の開始、停止、終了、データの保存、クリア、各軸の拡大・縮小 二次元表示だけでなく三次元表示も可能に   データをより視覚的に分かりやすく見ることができる リストモードによるデータ保存   計測終了後も計測中と同様のパルス波高値を時系列に再現することが   できる データ解析及び結果のオンライン表示 2004/2/13 卒論発表

実装させた機能 GUIによる操作性能向上 計測の開始、停止、終了、データの保存、クリア、各軸の拡大・縮小   実装させた機能 GUIによる操作性能向上   計測の開始、停止、終了、データの保存、クリア、各軸の拡大・縮小 二次元表示だけでなく三次元表示も可能に   データをより視覚的に分かりやすく見ることができる リストモードによるデータ保存   計測終了後も計測中と同様のパルス波高値を時系列に再現することが   できる データ解析及び結果のオンライン表示 2004/2/13 卒論発表

実装させた機能 リストモードとは 割り込みごとに読み込まれるパルス波高値の 全データを時系列に記録する形式である   割り込みごとに読み込まれるパルス波高値の          全データを時系列に記録する形式である  06 00 0F 00 B7 04 59 04 87 04 07 06  06 00 0F 00 B6 04 59 04 86  04 06 06  06 00 0F 00 B7 04 59 04 86 04 06 06  06 00 0F 00 B7 04  59 04 86 04 07 06  ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・   実装させた機能 GUIによる操作性能向上   計測の開始、停止、終了、データの保存、クリア、各軸の拡大・縮小 二次元表示だけでなく三次元表示も可能に   データをより視覚的に分かりやすく見ることができる リストモードによるデータ保存   計測終了後も計測中と同様のパルス波高値を時系列に再現することが   できる データ解析及び結果のオンライン表示 2004/2/13 卒論発表

実装させた機能 data3=data1+data2; memo3[data3]++; GUIによる操作性能向上   実装させた機能 ShowData.c case 3: /*ADC1&2*/ data1=indata[m+2]; /*ADC1データ取得*/ data2=indata[m+3]; /*ADC2データ取得*/ memo1[data1]++; /*ADC1データ番目の配列要素をカウントアップ*/ memo2[data2]++; /*ADC2データ番目の配列要素をカウントアップ*/  break; ShowData.c case 3: /*ADC1&2*/ data1=indata[m+2]; /*ADC1データ取得*/ data2=indata[m+3]; /*ADC2データ取得*/ memo1[data1]++; /*ADC1データ番目の配列要素をカウントアップ*/ memo2[data2]++; /*ADC2データ番目の配列要素をカウントアップ*/ break; data3=data1+data2; memo3[data3]++; GUIによる操作性能向上   計測の開始、停止、終了、データの保存、クリア、各軸の拡大・縮小 二次元表示だけでなく三次元表示も可能に   データをより視覚的に分かりやすく見ることができる リストモードによるデータ保存   計測終了後も計測中と同様のパルス波高値を時系列に再現することが   できる データ解析及び結果のオンライン表示 data1=indata[m+2]; /*ADC1データ取得*/ data2=indata[m+3]; /*ADC2データ取得*/ memo1[data1]++; /*ADC1データ番目の配列要素をカウントアップ*/ memo2[data2]++; /*ADC2データ番目の配列要素をカウントアップ*/ 2004/2/13 卒論発表

模擬信号による性能評価 デッドタイムとは 時間的なランダムパルスを ADCに入れたときにその信号が測定されない割合   模擬信号による性能評価 周波数を変えた模擬信号を1台のADCに送り、デッドタイムを計測した 理論値は   ADCの変換時間から計算された値  コンピュータが限りなく高速になる   ⇒計測値は限りなく理論値に近づく 放射線計測システムに求めらる性能   周波数    1000 Hz デッドタイム 10 %以下 今回開発したシステムの性能   デッドタイム  5 %前後 デッドタイムとは 時間的なランダムパルスを ADCに入れたときにその信号が測定されない割合 2004/2/13 卒論発表 2004/2/13 卒論発表

おしまい 多入力パルス波高分析システム 研究背景 RT-Linuxとは システム 実装機能説明 性能テスト GUI デッドタイム 三次元表示 性能評価 リストモード オンライン解析

RT-Linuxの処理の流れ Linux プロセス RT-FIFO スケジューラ Linuxカーネル RTLinuxモジュール リアルタイムカーネル ハードウェア割り込み 次にRTLinuxの仕組みについて簡単に説明します。 RTLinuxは厳密には単体で機能するOSそのものではなく、Linuxカーネルに適用するパッチとして提供されています。 RTLinuxを適用したカーネルを実行すると、図のようにリアルタイムカーネルが最下層で動作します。このリアルタイムカーネルがLinuxカーネルやRTLinuxモジュールと内部で動作するRTLinuxスレッドをスケジューリングすることで、任意の処理をリアルタイム制御することが可能となります。リアルタイムカーネルから見ると、Linuxカーネル本体はRTLinuxモジュールおよびRTLinuxスレッドより優先度の低いプロセスとして動作するため、リアルタイムで処理を行いたい仕事をRTLinuxスレッドに記述することで通常のLinuxとリアルタイム処理を共存させる事を可能にしています。通常のLinuxで使用可能な機能やアプリケーションは、RTLinux上でも同様に動作するため、Linuxの豊富な機能を生かしつつリアルタイム処理を行える点が特長です。 また、 RTLinuxのもう一つの機能として割り込みのディスパッチがあります。 RTLinuxでは、ハードウェアからの割り込みを受けたとき、そのままLinuxカーネルに伝えず、リアルタイムカーネルが一度割り込みを受けてからLinuxカーネル本体に伝えます。 2004/2/13 卒論発表

割り込み応答速度測定結果 3.74 msec MS-DOS 0.104 msec RT-Linux 8.22 msec 0.15 msec Win-DOS Linux RT-Linux 平均応答速度 標準偏差 平均応答速度 標準偏差 3.74 msec MS-DOS 0.104 msec RT-Linux 8.22 msec 0.15 msec Linux 8.26 msec 0.31 msec Win-DOS 7.66 msec 0.30 msec 2004/2/13 卒論発表