シリカガラスブロックの熱処理による構造変化

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シリカガラスブロックの熱処理による構造変化 シリカガラスブロックの熱処理による構造変化について、分子科学講座の藤井が報告致します。 分子科学講座  藤井謙次

シリカガラスとは ほぼ100% SiO2からなる非晶質材料 特性 (1) 金属不純物量の違い(0.1 ppm以下~数十 ppm程度)  (2)         水(OH基)の有無  (3)         光学的均一性の違い  (4)         光吸収帯の原因となる欠陥構造の有無   シリカガラスとは、ほぼ100パーセントSiO2からなる非晶質材料を指します。 特性として (1)         金属不純物量の違い(0.1 ppm以下~数十 ppm程度)  (2)         水(OH基)の有無  (3)         光学的均一性の違い  (4)         光吸収帯の原因となる欠陥構造の有無 があります。  

シリカガラスの種類 ・溶融石英ガラス 製法 ・合成シリカガラス 製法 ・金属不純物の有無 ・OH基の有無 ・電気溶融法 ・プラズマ溶融法 ・光学的均質性 製法 ・電気溶融法 ・プラズマ溶融法 ・酸水素火炎溶融法 ・合成シリカガラス 製法 ・直接法 ・スート法 ・プラズマ法 ・ゾル-ゲル法 シリカガラスは、天然の石英粉を溶かすことによって作った溶融石英ガラスと 液体原料から作った合成シリカガラスの2種類に大別されます。 これらはさらに製造方法によってわけられます。 それぞれ金属不純物の多い・少ない、OH基の有無、光学的均質性の違いがあり,性質の違いに応じて、用途によって使い分けられています。 用途により使い分け

これまでの経緯 シリカガラスブロック及びシリカガラス管を熱処理 表面付近から構造変化 熱処理条件/シリカガラスの種類 シリカガラスは,その製造工程および使用時に高温にさらされることが多い材料です。 シリカガラスブロックやシリカガラス管を熱処理すると,表面付近から構造が変化します。 その変化の様子は,熱処理条件およびシリカガラスの種類によってことなります。 熱処理条件/シリカガラスの種類

熱処理に伴うOH分布の変化 z r 動径方向 r 軸方向z 1160 ゚C, 150 h 7 cm 15 cm この図は、以前葛生らが熱処理に伴うシリカガラス表面付近の構造変化について報告したものです。 OHを1500ppm程度含む直径15cm幅7cmのシリカガラスブロックを1160度で150h熱処理を行った結果これらの図に示すように動径方向,軸方向ともに表面付近でOH基濃度が低下しました。 軸方向z N. Kuzuu, J. W. Foley, and N. Kamisugi, J. Ceram. Soc. Jpn. 106, 525 (1998)

酸水素火炎による球状成型に伴う構造変化 Hydrogen-Oxygen Flame f27 mm f34 mm Measured Area OH含有量の変化はシリカガラス管を酸水素火炎によって球状に成型したときにもみられます。 このような,リソグラフィー光源として使われるショートアーク水銀ランプの管球の成型時にも,シリカガラス管の内部で構造が変化します。

ガス加工によるOH濃度及び仮想温度の変化 この図は、OH含有量の異なるシリカガラスを球状に成型したときの管断面のOH含有量分布の変化を示したものです。 黒三角が熱処理前を、赤丸が熱処理後を示します。 この図からOH量の違いによって表面付近でOH量が増大する場合と減少する場合があることがわかります。 この図は各サンプルの仮想温度変化を示します。三角で示す無水の溶融石英ガラス管(1)のみ熱処理前後で大きな変化が認められます。

本研究の目的 目的: 熱処理及び成型に伴う屈折率分布のメカニズムの解析 熱処理時間・熱処理温度・シリカガラスの種類 etc. ・熱処理試験 シリカガラスブロックを熱処理及び成型処理 屈折率分布・歪量の変化 変化の要因の解明  熱処理時間・熱処理温度・シリカガラスの種類 etc. 目的: 熱処理及び成型に伴う屈折率分布のメカニズムの解析 ・熱処理試験 ・成型試験 シリカガラスブロックを熱処理及び成型すると,屈折率分布・歪量が変化します。これらの変化は,熱処理時間,熱処理温度,シリカガラスの種類によって異なります。熱処理及び成型に伴う屈折率分布変化のメカニズムを解析するために,OH含有量の異なる、2種類の合成シリカガラスブロックの熱処理試験並びに、成型試験を行いました

使用サンプル及び処理条件 熱処理条件 : 1423K ( 1150℃ ), 100 h マッフル炉で炉冷 サンプル  COH (ppm) 製造方法 商品名 使用目的 S1200 1200 直接法 ES 熱処理試験 S50 50 スート法 ED-H 成型試験 熱処理条件 : 1423K ( 1150℃ ), 100 h            マッフル炉で炉冷 成型条件:N2中, 130 kPa, 2073 K (1800℃), 3 h (成型後、大気中1200℃で24時間除歪のためにアニール ) 使用サンプルおよび条件について述べます。 サンプルとしてOH量の異なる合成シリカガラスを用いました。 それぞれ,ppm単位で表したOH量を添え字につけてS1200、S50と表すことにします。 因みに,これらは東ソークォーツ製の合成シリカガラスで,S1200はES,S50はED-Hと呼ばれるグレードのものでそれぞれ,直接法およびスート法で合成したものです。 熱処理はマッフル炉を用いて、1423Kで100時間行いました。 成型は、窒素中で130キロパスカル、2073Kで3時間熱処理を行い成型後、大気中1200度で歪除去のために24時間アニールを行いました。

熱処理試験サンプル形状 1150℃ 100h 20 上下ロータリー 厚さ10 100 30 10 30x10x0.7t 13枚 外周残す   厚さ10 30x20x10t 30x10x0.7t 13枚 UV測定用 1150℃ 100h 上下ロータリー 10 100 30 熱処理には直径10cm厚さ3cmのブロック体を使用し、1150度で100時間熱処理を行った後、 中心部分を切り出します。 その切り出したサンプルの中心部分から厚さ1ミリ程度の薄いサンプルと厚さ3センチの厚いサンプルの2種類を切り分けたものを使用しました。

未成型サンプル形状 種棒側 頭部側 ・種棒側板材:Sample A ・中間部板材:Sample B ・頭部側板材:Sample C  に切り出し それぞれを30×30×6(mm)に切断 未成型試験用サンプルは、上下・中心の3箇所から切り出し、それぞれ、中心付近から 厚さ6ミリ程度で切り出したものを使用しました。 頭部側

成型サンプル形状 中心付近から厚さ1mm, 4.5mm、幅30mm程度で切り出し 上部5mmを切り捨て、次の15mmを上下に2枚切り出し

成型過程 炉に成型前インゴットを入れる 上部から重石を置き成型 N2中、130kPa, 1800℃ 3h熱処理 & 大気中24h 1200℃ 全体的に動径方向へ広がる 上部から重石を置き成型 N2中、130kPa, 1800℃ 3h熱処理 & 大気中24h 1200℃ アニール 成型サンプルは、炉に成型前のインゴットをいれ、窒素中で130kPA、1800度で3時間熱処理 を行います。 その後、大気中で24時間1200℃でアニールし成型しています。 この成型の過程で、中心部付近から全体的に動径方向へ広がります。

OH濃度の測定方法 ・OH量の定量 t : サンプルの厚み apeak: 右図ピーク位置 測定機種:UV3001PC紫外可視近赤外分光光度計 OH濃度は、島津UV3001PC紫外可視近赤外分光光度計及び顕微FT-IR分光光度計を用いて,この図に示すような3660cm-1付近の吸光度の大きさからこの式により求めました。 Tはサンプル厚み、Apeakは右図ピーク位置を表しています。 また、一般にFT-IRでの吸収帯強度の絶対値は、あまり信頼性が無いと言われているので、島津UV3001PC紫外可視近赤外分光光度計を使用して、両者が一致することを確認しました。 それぞれ青丸がFT-IR、赤三角が赤外分光の結果です。 測定機種:UV3001PC紫外可視近赤外分光光度計        顕微FT-IR分光光度計 吸収帯強度の絶対値の信頼性

仮想温度の測定方法 ・2260 cm-1付近の赤外吸収ピーク位置が仮想温度と相関 ・1122 cm-1付近のIR反射ピーク位置が仮想温度と相関 仮想温度は,2260カイザー付近の赤外吸収ピークの位置からこの式に従って計算しました。 この2260カイザーの吸収はSi-O伸縮振動の倍音によるものです。 仮想温度はピーク位置に対して大きく変わるので、2240~2280カイザー付近のピークを中心として、30~50カイザー程度の幅の範囲を2次曲線でフィッティングし、ピーク位置を求めました。 (A. Agarwal, K. M. Davis, M. Tomozawa, J. Non-Crystal. Solids 185, 191(1995))

熱処理に伴うOH含有量変化 結果を示します。 図は熱処理に伴うOH含有量変化を示しています。 先に述べたように、OH基を多く含む直接法合成シリカガラスでは、ブロック、ガラス管ともに熱処理により表面付近でOH基が減少する傾向がみられましたが、本研究ではS1200,S50ともに熱処理前後で変化はみられませんでした。

熱処理に伴う仮想温度変化 熱処理に伴う仮想温度変化を示します。 熱処理温度は黒の点線で示す1423Kです。 S1200では、熱処理後に全体的に熱処理温度に近づいていますが,熱処理後では表面付近で仮想温度が若干低くなりました。これは、マッフル炉で100時間熱処理後温度コントロールしなかったことと,OH含有量を1200ppm含むために緩和時間が長く,冷却過程で緩和されたこと、冷却時に外周部の温度が中心部より低くなるように分布したことによる可能性が考えられます。 S50では、S1200の場合と逆に全体的に仮想温度が下がりました。これは,もともとOH濃度の低い材質ほど仮想温度が高いことによります。なぜならば,OH濃度が低いほど緩和時間が短くなるため,より高い温度で構造が固定されるからです。これを熱処理すると仮想温度は熱処理温度よりも低下しました。これは,冷却過程での緩和がS1200と同様考えられるからです。 但し,S1200よりも熱処理後の仮想温度は高くなっています。これは,S50はOH量が少ないために構造の緩和時間がS1200よりも短くなるためです。

熱処理に伴う屈折率分布変化 熱処理にともなう屈折率分布変化について示します。 S1200の場合熱処理後で表面付近で屈折率が増加し、S50の場合熱処理後に中心部から外周にかけて屈折率が減少しました。 ともに熱処理前後で屈折率が変化していることが確認出来ます。

熱処理に伴う仮想温度変化と屈折率分布の相互関係 仮想温度に伴う屈折率分布変化について示します。 熱処理前を赤丸で示します。 OH含有量の違いにより、熱処理前後で仮想温度が増加する場合と減少する場合がありますが、 仮想温度は、Si-Oの伸縮運動と相互関係があることが、表面付近で特に屈折率に影響を及ぼすものと考えられます。 S1200では熱処理後で傾きがあることから、屈折率と仮想温度には、ある程度の相関関係が存在することを示しているとも考えられます。今回、異なるOH含有量を含むシリカガラスの仮想温度変化に対する屈折率分布変化のデータを得られたことから、他の製造方法で作られたシリカガラスの測定を行うことで仮想温度と屈折率分布との相互関係の式が得られるのではないかと考えます。

成型後仮想温度変化 成型後サンプルの仮想温度変化について示します。 図は透過スペクトルから求めた成型後のサンプル外側・内側それぞれの、中心付近からの仮想温度変化について示しています。 赤丸がサンプル内側を、白抜きの三角がサンプル外側を示しています。 成型後ではサンプルの位置に関わらず仮想温度に変化はみられませんでした。

成型に伴うOH含有量変化 成型前後で素材の性質を反映 50 100 150 10 20 30 40 60 50 100 150 10 20 30 40 60 Distance From Center (mm) OH Contents (ppm) After Inner Part After Outer Part Before SampleA Before SampleB Before SampleC S 成型に伴うOH含有量変化について示します。 黒塗りが成型後を示しています。 成型後で黒塗りの四角で示す外側のサンプルのほうが、黒塗り三角で示す内側のサンプルよりも低い値が出ており、また、成型後では中心から120mm~150mmの範囲でOHの減少が平坦になる傾向が見られます。これは、成型時には上下端が固定され、提灯のように膨らんでいくことで、中心部の直径が最も広がるためです。 成型前後で、それぞれ中心付近から外周にかけて減少し、サンプル外周付近で特に急なOHの減少が確認出来ます。 これは、成型前の素材の性質を成型後も反映していることを示しています。 OHの少ないシリカガラスの場合、表面付近から中心部までの間で歪量、屈折率分布が変化していたことから、顕微FT-IRで表面付近から数ミクロン単位で測定を行うことが重要であるとわかります。 成型前後で素材の性質を反映

熱処理試験結果 S1200 (OH 1200 ppm) S50 (OH 50 ppm) ・OH含有量 もともとのOH含有量に関わらず変化なし 熱処理温度 : 1423K ・仮想温度 ・歪量 OH含有量に関わらず表面付近で増加 ・屈折率分布 S50 S1200 表面付近から増大 表面付近から減少 以上まとめとして OHの異なるサンプルについて1423Kで100時間熱処理をおこなったところ OH含有量には変化はみられませんでした。 仮想温度はOHが少ない場合は低下しOHが多い場合には増加しました。 歪量はOH含有量の変化に関わらず増加しました。 屈折率分布はOHの違いにより増加・減少が確認できました。 熱処理試験のまとめとして、仮想温度変化に対しての屈折率分布との相関関係の可能性がみえました。 今後の課題として、熱処理前後での特に表面付近での各種測定があげられます。 ・まとめ:仮想温度変化に対して屈折率分布との相関関係 ・今後の課題:熱処理前後で表面付近での各種測定

成型試験結果 S50 (OH 50 ppm) N2中, 1800℃で3時間で成型 大気中1200℃で24時間アニール 成型前 → 外周付近までほぼ直線状に減少 成型後 → 中心部で一旦平坦 ・OH含有量 ・仮想温度 透過スペクトルによる精度のよさ OHを50ppm程度含むシリカガラスに対して成型試験を行ったところ、 OHは、成型前後で減少の傾向が異なることが確認できました。 仮想温度から、透過スペクトルによる精度のよさを確認しました。 まとめとして、屈折率分布や歪量は特に表面付近から変化していくことから、顕微FT-IRを用いての数ミクロン単位での測定の必要性が明らかになりました。 今後の課題として、成型前後の歪量および屈折率分布との相関関係の把握があげられます。 以上です。 ・まとめ:表面付近での数μm単位での各種測定の必要性が明らかになった ・今後の課題:成型前後の歪量及び屈折率分布との相関関係の把握

酸水素火炎溶融・加水分解による直接堆積ガラス化 分類 溶融 合成 種類 電気溶融 火炎溶融 直接法 プラズマ法 スート法 ゾルゲル法 原料 水晶 四塩化ケイ素 アルキシルケート 製造法 アークプラズマ電気炉 酸水素火炎溶融 酸水素火炎溶融・加水分解による直接堆積ガラス化 高周波プラズマ スート合成(電気炉) ゾルーゲル化→乾燥(電気炉) 不純物 OH[ppm] ~10 100~300 500~1500 <5 <1~200 <2 金属[ppm] 10~100 <100 <1 <0.1 光学的性質 紫外線吸収帯 あり なし 低OHでのみあり 赤外線吸収帯 小 やや大 大 なし~やや大 用途 半導体製造用(炉芯管、治具) ランプ材 半導体製造用(炉芯管、治具、洗浄槽) シリカガラス繊維 フォトマスク 光学材料 光ファイバー 光学材料(真空紫外~近赤外) TFT基盤

⊿n=PV×λ/t PV:干渉縞の曲がりから得られるは面の曲がりの最大値(波長単位) ES ED-H 未熱処理サンプル 熱処理サンプル ↓未熱処理↓ Size φ100*30.5t ↓熱処理後↓ φ100*29.8t φ100.1*29.7t φ100*10.5t φ100.0*10.35t φ100*10.4t φ100.1*10.35t ⊿n=PV×λ/t PV:干渉縞の曲がりから得られるは面の曲がりの最大値(波長単位)

熱処理に伴うOH含有量変化と歪量の相互関係 熱処理前後での

仮想温度の測定方法(反射) ・1122 cm-1付近のIR反射ピーク位置が仮想温度と相関 (A. Agarwal, K. M. Davis, Si-Oの伸縮振動による反射 仮想温度は,1122カイザー付近のIR反射ピークの位置から求めることも出来る。 この1122カイザーの反射はSi-Oの伸縮振動によるものです。 吸収スペクトルからの場合と同様に、1110~1140カイザー付近のピークを中心として、30~50カイザー程度の幅の範囲を2次曲線でフィッティングし、ピーク位置を求め、こちらの式に従って求めました。 (A. Agarwal, K. M. Davis, M. Tomozawa, J. Non-Crystal. Solids 185, 191(1995))

熱処理に伴うOH含有量変化と屈折率分布の相互関係 それぞれ、赤丸が熱処理前を示します。 熱処理後でS1200では屈折率が増大し、S50では屈折率が減少しました。 今までの研究では、OH含有量は熱処理の前後で変化していたが、本研究では熱処理前後でのOH含有量の変化は得られていない ため、これらの変化の様子は仮想温度によるものであると考えられます。

熱処理に伴う仮想温度変化と歪量の相互関係

成型に伴う仮想温度変化 最後に、反射・透過スペクトルから求めた成型後サンプル外側・内側それぞれの中心付近からの仮想温度変化について示します。 塗りつぶしの三角と丸がそれぞれ反射スペクトルから求めた仮想温度を示しています。 一般に反射スペクトルから求めた仮想温度は誤差が大きいため、サンプルを0.5mmの厚さに研磨しなおして透過スペクトルにより仮想温度を求めたものを白抜きで示しています。両スペクトルから求めた仮想温度を比較すると、透過スペクトルから求めた仮想温度領域が、反射スペクトルから求めた仮想温度領域内に収まっており、透過スペクトルから求めた仮想温度の精度を示しています。

熱処理に伴う歪量変化 次に、熱処理に伴う歪量変化について示します。測定は、東ソーSGM株式会社に依頼しました。 S1200の方でのみ熱処理前後での歪量の変化が確認できます。このことからOH含有量の違いにより歪量が変化するといえ、 また、屈折率と同様、仮想温度が変化する事が歪量の変化に影響を与えるのではないかといえます。