カンデル 13章 Principles of Neural Science 4th-edition Chapter 13 セカンドメッセンジャー達の働き Modulation of Synaptic Transmission: Second Messengers 澤 繁実 sshi@brn.dis.titech.ac.jp
Figure 13-1 全てのニューロトランスミッターreceptorはreceptorとeffectorがくっついているかどうかにより分けることが出来る。 A. Direct gating(Ionotropic receptor) 一つの分子の中にreceptorとeffectorを持ち、receptorは直接イオンチャネルに働きかける。receptorは細胞外側に位置している。 B. Receprots that indirectly gate ion channes fall int tyow families. Metabotropic G protein-coupled receptors second-messenger cascadeを起こさせるGTP結合調節タンパク質によって、イオンチャネルと他の基質を間接的に活性化させる。 2. Receptor tyrosine kinases チロシン残基にキナーゼ自信がリン酸化することにより、タンパクのリン酸化反応を通じてイオンチャネルeffectorを調整する。
Figure 13-2 Adenylyl cyclase Gs Gq
Figure 13-3 全てのG-proteinレセプター(GTP結合タンパク質レセプター)は7つの部位で構成されている。(Figure 13-3参照) β2-アドレナリン作動性レセプターは他のG-protein結合調節レセプターと構造が似ている。(β1-アドレナリン作動性、ムスカリン様ACh、ロドプシンレセプターを含む。) 最も機能的なことはニューロトランスミッターの結合部位が脂質2重層内の細胞外側にあることである。(Asp113) セリン残基(Ser:Serine reside)はリン酸化のための部位で不活性化に関係する。
Figure 13-4 上から順に解説 1.トランスミッターが結合しようとしている。 2.トランスミッターの結合によりレセプターの構造が変化Gsタンパクの結合部位ができる。 3.脂質2重層内の拡散がGsタンパクをレセプターに導き、GDPをGTPに置換して活性化する。 4.GDPのGTPへの置換が、α-subunitをGsタンパクから分離し、α-subunitのアデニルシクラーゼ用結合部位ができる。 5. α-subunitは結合し、アデニルシクラーゼを活性し、多くのcAMPを作る(エネルギーを消費) 6. α-subunitがシクラーゼから分離し、GTPが加水分解される。そして、βγ化合物が再結合し元のG-proteinとなる。 7.トランスミッターがレセプターあを離れるまで、このシクラーゼの活性は繰り返される。 αs アデニルシクラーゼ Βγsubunit α-subunit to Figure 13-12
Figure 13-5 アデニルシクラーゼ(adenylyl cyclase)はATPをcAMPに変換する。酵素ホスホジエステラーゼ(phosphodiesterase)はcAMPをAMPとする。 cAMP-dependent protein kinaseは 触媒部位(catalytic subunit)と 制御部位(regulatory subunit)を持ち、 cAMPが制御部位に作用することにより、触媒部位が切り離され、様々なタンパク質をATPを用いてリン酸化する。 リン酸化されたタンパク質はホスファターゼ(phospatase:脱リン酸酵素)により脱リン酸かされ、また、タンパク質に戻る。このようなサイクルとなっている。 Pi
Figure 13-6 R:Regulatory subunit C:Catalytic subunit 全てのprotein kinaseは同じような方法で制御されている。 Aについて、RとCが結合していると、触媒作用は阻害される。 B-Dについては、同一のポリペプチドの一部にRとCが存在し、これらは分子をほどくことにより、セカンドメッセンジャーと結合する。これらのアミノ酸塩基配列はほとんど似ている。 Eについては少し違う。細胞外にRを細胞内にCを持ち、トランスミッターやホルモン、成長因子などが2つの単量体レセプター(R表示部位)に結合すると、細胞内のレセプターをリン酸化し、それが、次の他ゲットをリン酸化したり活性化させる。
Figure 13-7 GTP:Guanosine Tri Phosphate グアノシン3リン酸 PL:Phospholipase フォスフォリパーゼ PLA2: フォスフォリパーゼA2 PLC: フォスフォリパーゼC DAG:Diacyl glycerol ジアシルグリセロール IP3:Inositol trisphosphate イノシトール3リン酸 Endoplasmic reticulum:小包体 細胞膜内の林脂質加水分解が3つの主要セカンドメッセンジャーカスケードを引き起こす。 細胞膜内のリン脂質の加水分解により、多くの重要なセカンドメッセンジャーが作り出される。細胞膜内にはPIP2がある。ReseptorはTransmitterを受け取り、G-Proteinを活性化させ、PKCを活性化させる。 すると、その酵素は、PIP2をIP3とDAGとに分解する。 IP3は細胞内の小包体にあるIP3レセプターと結合し、小包体内からCa2+を放出させる。 Protein Kinase CやCa2+/calmodulin(カルモジュリン)依存Protein KinaseはこれらのCa2+を利用して、Substrate protein(基質タンパク)とATPからリンタンパクを合成する。
Figure 13-8 4-Bromophenacyl bromide: 臭化物ブロミド NDGA:Nordihydroguaiaretic acid オピオイドκ受容体拮抗薬 Arachidonic acid: アラギドン酸 Lipoxygenase: 不飽和脂肪酸酸化酵素 Cycloosygenase: 酸素添加酵素 Indomethacin:インドメタシン 非ステロイド性抗炎症薬 lipase:脂肪分解酵素 ヒスタミンレセプターより活性化されたリン脂質分解酵素PLA2により、アラギンドン酸が放たれる。それは酵素の助けにより、様々な化学物質を精製する。
PIP2 この部分が IP3となる はここを切る はここを切る この部分が アラギンドン酸 この部分が DAGとなる。
Figure13-9 最近まで、シナプス間の伝達はプレからポストへの一方向であると考えられていたが、そうでもない。 最近まで、シナプス間の伝達はプレからポストへの一方向であると考えられていたが、そうでもない。 デンドリックスパイン側にはG-protein型のレセプターが存在し、それは膜透過性のモジュレーター(membrane-permeable modulator)(例えばNOなど)を作る酵素を活性化する。 membrane-permeable modulatorは隣のデンドリックスパインなどに細胞膜を経て、細胞外から浸透し、セカンドメッセンジャーのような働きをする。 海馬の長期増強(long-term potentiation)において細胞間情報伝達が起こるということが知られている。(この細胞間のセカンドメッセンジャー浸透が何か関係あるのであろうか・・(私見))
Figure13-10 A.前シナプス終末では、K+やCa2+といチャネルを制御するセカンドメッセンジャーがあり、後細胞の発火に関係する。 B.後細胞膜でのシナプスではイオン調節レセプターによって電位を変化させるセカンドメッセンジャーが活性化される。 C.セカンドメッセンジャーはrestingやvoltage-gatedチャネルの機能に影響を与え、閾値、時定数、発火間隔などの電気的特性を変化させる。
Figure 13-11 同一自律神経ガングリオン(ganglion)細胞内で速いシナプス伝達と遅いシナプス伝達が起こる。 A. postシナプスへのAchの放出によりニコチン様Achレセプターが活性し、速いEPSPが発生する。また、ムスカリン様AchレセプターへのG protein結合のため、遅いEPSPが発生する。 M-typeレセプターが作用し、M-type K+チャネルが閉じる。すると、K+が細胞外に出られる量が減少し、細胞内の正味の電化は増加するこれはセカンドメッセンジャー等がM-type K+チャネルに影響を及ぼしている間続く。
Figure 13-11 B.電圧固定(voltage clamp)測定は、 voltage clampによる脱分極により記録された電流Ikで見ることが出来る。 固定電圧をVr、テスト電圧をVtとし、1秒間テスト電圧を掛ける。左がControl条件下であり、右がムスカリン適応後である。ムスカリンは、休止時は開いているM-type K+ channelを閉じることにより外向きのK+の流れを減少させる。M-type K+ channelの閉鎖により、脱分極を止めるための細胞外へのK+の流れは減少する。 C.遅い電圧依存性M-typeチャネルの活性は通常、細胞膜周辺の電位差を休止電位近づけようとする働きがある。 遅いEPSPの間は、M-typeチャネルが閉じていので、細胞は発火し活動電位を生ずる。slowEPSP前には少々の電荷流入ならば、M-type K+チャネルの作用で発火が起きないが(これをaccommodationという)、slowEPSPのある最中は同量の電荷流入でもK+が細胞外に排出されにくいために発火が起こる(これをanti-accommodationという)ことがグラフよりわかる。
Figure 13-12 アメフラシの感覚ニューロンにおいてセロトニンによって引き起こされたslow synaptic actionでS-type K+チャネルが閉鎖される。 A.セロトニン作動性介在ニューロンは軸策終末と機械受容器感覚ニューロンの間にシナプス結合を作る。その感覚ニューロンは、伝達速度が速く興奮性のグルタミン作動シナプス結合を運動ニューロンに作る。 C.セロトニンのの結合により、S-typeK+チャネルが閉鎖し、感覚ニューロンの遅い脱分極と膜コンダクタンスの低下(膜抵抗の上昇)する。 上の線はVmを下の線はImを表し、感覚ニューロンに微小電極を差し込んで計測した。短時間の過分極電流パルスは短時間の過分極電圧を導く。電圧応答の大きさはOhmの法則によって膜コンダクタンスに従う。(⊿V=⊿Im/gi)膜コンダクタンスの減少は電圧パルスの大きさを上昇させる。
Figure 13-12 5-HT:セロトニン (5-hidroxytryptamine) S-type receptor: 代謝調節型 セロトニンレセプター 5-HT:セロトニン (5-hidroxytryptamine) S-type receptor: Resting K+ serotonin- sensitive channel B.感覚ニューロンにおいて、代謝調節型のレセプター(5-HT-R)にセロトニンが結合し、Figure13-4の要領でcAMPが発生し、PKAを通してcAMPがATPとなり、S-typeチャネルを閉鎖する。 休止時 アクティブ時
Figure 13-13 Patch-clamp計測によるS-type K+チャネルの活動 A.セロトニン(5-HT)の結合により5つのうち3つのチャネルが閉ざされた。この実験では、細胞外からセロトニンを与えており、細胞内からは、なにもS-type K+チャネルに直接作用させていない。A2のグラフの縦軸は開いているSチャネルの個数を表している。
Figure 13-13 B.感覚ニューロン内へのcAMPの直接抽入によりパッチ内の3つのSチャネルのうち3つとも閉鎖された。 C.cAMPをATPにする触媒作用のあるPKA(cAMP依存性protein kinase)を細胞から切り離された(cell-free)S-typeチャネルの原形質側に投与した結果、4つのうち2つのチャネルが閉鎖された。高エネルギーであるATPをチャネルに供給するためPKAを投与した。
Figure13-14 Vm=Im/gi セロトニンによっていったん閉じられたS-type K+チャネルはFMRFamideによって開く A.アメフラシの感覚ニューロンにおいて、ニューロペプチドのFMRFamideはアラギドン酸カスケードを通してS-type K+チャネルを開放させる。12-HPETEやアラギドン酸カスケードについてはFigure13-8参照 B.FMRFamideは、感覚ニューロンはゆっくりと過分極させ、膜コンダクタンスを上昇させる。すると、電圧は上昇し、一連の過分極電流パルスが計測された。 C. S-type K+チャネルとFMRFamideによる変化のPatch-clampによる測定。 1.FMRFamideの作用がS-typeチャネルの開放を増加させている。 2.12-HPETEの作用も細胞から切り離された(cell-free)閉じているS-typeチャネルを開放させた。(外側か?内側か?) FMRFamideと12-HPETEのどちらとも個々のチャネルが開いている時間を増加させた。 FMRFamide: Phe-Met-Arg-Phe-amide Vm=Im/gi
Figure13-15 G proteinはセカンドメッセンジャーによらず直接イオンチャネルを開閉させることができる。 GIRK:G protein-regulated Inward-rectifying K+ channel Vagal nerve stimulation:迷走神経刺激 A. GIRKはムスカリン様AChレセプターによって活性化される。Gi proteinはセカンドメッセンジャーを生成するエフェクター(Adenylyl cyclaseなど)には結合せず、イオンチャネルに直接結合する。Βγsubunitはイオンチャネルの原形質側に結合する。 B.アセチルコリンは代謝調節型ムスカリン様レセプターに作用し、GIRKチャネルの活性によって心筋細胞を過分極する。これは心拍数を下げる効果がある。 C. セカンドメッセンジャーによらない3つのGIRKチャネルの活動記録をみよう。 真ん中のグラフについて、ピペットの外側からのAChの投与ではチャネルは活性しない。 下のグラフについて、ピペット内にAChと高濃度K+を入れた。よってGIRKが開くとK+が細胞内に流れ込み、グラフが下に大きく突き出している。 原形質側の方がK+が高濃度なので外に向かって流れる K+も高濃度で入れる
Figure13-16 様々な代謝レセプターを通じるcAMPの活性化は他のAchレセプターをリン酸化する AChレセプターのためのリン酸化を脱感作(desensitization)と呼びます。(脱感作とは、アレルギーの原因となる物質を体内に大量に入れて、過敏性を除去する療法など。つまり、徐々に何かをして抵抗力を付けようということ)AChレセプターのリン酸化はPKCやチロシンキナーゼの作用でも導かれる。
Figure13-16 リンタンパク脱リン酸酵素はprotein kinaseの活動を停止させる 順方向と逆方向のリン酸化はprotein kinaseとリンタンパク脱リン酸酵素によって制御される。リン酸化の範囲や期間は脱リン酸化酵素の抑制によりコントロールされる。cAMP依存protein kinase(PKA)によるinhibitor-1のリン酸化はリン酸タンパクphosphatase-1の活動を減少させる。 inhibitor-1のリン酸化の範囲はカルシニュリン(calcineurin),Ca2+,カルモジュリン(calmodulin) 作動性脱リン酸酵素によって制御される。カルシウムはNMDA-typeグルタミンレセプターの活動を通じて細胞内に取り込まれる。
Figure13-18 Enhancer:転写促進因子 Promoter::(DNA配列)プロモーター ひとつのトランスミッターは短期間も長期間でも効果を持つことができる この例はたった一つのトランスミッターとの接触でcAMPセカンドメッセンジャーシステム(PKAを活性化させる)を活性化させる例です。このkinaseはK+チャネルをリン酸化する。(数分間の活動電位を派生させるK+チャネル) 活性化の繰り返しを経て、トランスミッターはPKAを介して、一つかそれ以上の遺伝子発現を引き起こす転写製制御タンパクを活性させる。 遺伝子活性の結果、より永続的な数日から数週間に及ぶチャネルの閉鎖を行うタンパク質を作り出す。
Overall View ニューロン間の情報伝達はニューロトランスミッターの相互作用により3つのタイプの反応がレセプターで起こる。これらのレセプターは生物化学的なメカニズム、活動時間、生理学的機能といったものが異なるシナプス後細胞に影響を与える。イオン作動性のレセプターは活性化するとイオンチャネルを開く。これらのトランスミッター作動性のチャネルはもっとも即時性があり、シナプスの活動に深い影響を与えるが、平均で数ミリ秒の影響である。これらの即時性のある伝達は多くの運動ニューロン感覚ニューロンに用いられている。 G protein結合レセプターやチロシンキナーゼによるより長い時間影響を与える伝達は、セカンドメッセンジャーを用い、cAMP、リン資質水酸化物、IP3、DAG、アラギドン酸などを介していた。 セカンドメッセンジャーを用いた活性は数秒から数分継続する。これらに即時性は無いが、トランスミッター作動性の速い活性と組み合わさることにより、それを調整するという作用もある。 これらの活動はムード、覚醒、単純な学習、記憶といった感情等と結びつけることができる。 最も長期間影響する活性は遺伝子転写によって数日から数週間行われる。これらの活性は多くの同タイプのレセプターに影響を与え、また、通常の活性やセカンドメッセンジャーカスケードなどにも影響を与えるのだ。
Chapter 13 By Shigemi Sawa sshi@brn.dis.titech.ac.jp Fin Chapter 13 By Shigemi Sawa sshi@brn.dis.titech.ac.jp