甲南大学『ミクロ経済学』 特殊講義 ネットワーク外部性と標準化 econ. kyoto-u. ac

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甲南大学『ミクロ経済学』 特殊講義 ネットワーク外部性と標準化 http://www. econ. kyoto-u. ac 甲南大学『ミクロ経済学』 特殊講義 ネットワーク外部性と標準化 http://www.econ.kyoto-u.ac.jp/~ida/ 2Kyouikukatudou/3Hijyoukin/2000/Konan2000.html 依田高典

ネット外部性の古典モデル 2つの外部性 Leibenstein(1950) Rohlfs(1974) コール外部性:発信課金 ネット外部性:ネット規模 2つの古典モデル Leibenstein(1950) バンドワゴン効果 Rohlfs(1974) 通信需要の相互依存性

Leibenstein(1950) 需要の非加法性/外部効果 戻る バンドワゴン/スノブ/ヴェブレン効果 バンドワゴン効果:個人の需要関数(di)はある財の価格(p)のみならず市場の需要関数(D=Σdi)にも依存。従って、個人の需要関数はdi(p, D) 。 (∂di/∂D>0) 図2を用いて説明。個人需要d1は小規模の市場需要D1をもとに、個人需要d2は大規模の市場需要D2をもとに引いたもの。バンドワゴン効果により、個人需要d2はd1よりも大。価格がp1からp2に低下した場合、個人需要量はq1(p1, D1)からq2(p2, D2)に増加。個人需要量の増加分のうち、q1からq1’(p2, D1)は価格効果、q1’からq2はバンドワゴン効果によるもの。均衡個人需要曲線は均衡点E1とE2を結んだd12であり、バンドワゴン効果が存在することによって、個人需要曲線はより価格弾力的(水平) 。 戻る

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Rohlfs(1974) ネット加入率をf、ネット加入率の増分効用をw、ネット加入の価格をp。この時、fw≧pならばネットに加入、fw<pならばネットに不加入。最初の加入者ほど高い増分効用を持ち、増分効用は漸次逓減するから、wをfの一次の減少関数w=a(1-f)と仮定。ネット加入・不加入が無差別な限界的加入者では、af(1-f)=p。この式は通信サービスに対する需要関数であり、原点を通る下向き2次関数。図3参照。価格pに対する均衡加入率は0・fS・fLの3点存在し、0とfLは揺らぎに対して安定的な均衡点であるが、fSは不安定な均衡点。 サービスの「生育可能性(Viability)」と「立上がり (Start-up)」が異なる。ネットの普及期において、fS以上の「臨界的加入率(Critical Mass)」を獲得すれば、ネットは自動的に拡大。しかし、このような発展可能性があるにもかかわらず、初期時点でのネット加入率が低いため、ネットが衰退することも。そこで、「低廉な導入価格(Low Introductory Price)」のようなネット育成策が有効性。 戻る

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2つのネット外部性 直接的ネット外部性 間接的ネット外部性 電気通信ネットワーク 社会的互換性の過少誘因 ソフトウェア/ハードウェア・パラダイム ロックインとチッピング 例:QWERTYとDVORAK

ネット外部性と企業戦略 Besen&Farrell(1994) ケース1 (a11>a21, a12>a22, b12>b11, b22>b21) :双方の企業が自社の技術を採用。例:パソコンのOS競争(OS/2、Windows) 。4つの戦略。(1)既得基盤の構築、過剰慣性の利用。(2) 補完財の品揃えと多様性。(3) プレアナウンスメント。(4)長期的な低価格。 ケース2 (a11>a21, a22>a12, b11>b12, b22>b21) :A社の技術が業界標準となるか、B社の技術が業界標準となるか。第一の戦略「コミットメント(Commitment)」。(1)交渉を続ける一方で既得基盤を形成したり、(2)交渉がまとまった時に品質と生産能力で競争できるように投資。第二の戦略「コンセッション(Concession)」。(1)低費用ライセンシング、(2)ハイブリッド標準、(3)将来の共同開発、(4)第三者機関への委託、(5)情報相互提供。 ケース3 (a11>a21, a22>a12, b12>b11, b21>b22) :企業Bが既得基盤を確立した支配的企業で、企業Aがその標準にあやかろうとしている参入企業。均衡は存在しない。企業Bは知的財産権保護を主張、頻繁に技術変更、企業Aの互換性を妨げるような戦略。

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標準化の経済学 産業界の意識の高まり(Mansel1995) 公共財としての標準化(Kindleberger1983) (1)製品設計初期における標準化の役割、(2)プレ標準化段階における技術設計の知的財産権をめぐる軋轢、(3)市場の独占化のための技術設計の戦略的価値。 公共財としての標準化(Kindleberger1983) (1)標準を利用するメンバー間の便益を分割することができず(非分割性)、(2)全てのメンバーが標準を等しく利用することが可能 (排除不能性)。ただ乗り問題のような市場の失敗が発生。 標準化の市場の失敗(Besen1995) (1) 多大な年数を要する。(2) 非標準技術を採用するユーザー群を孤立させる。(3) 社会的に非効率な技術を採用するかもしれない。 標準化の政策(Repussard 1995) (1) 政府の参加、(2) 金融的支援、(3)教育と奨励、(4)技術的標準を促進するための研究開発基金の分配、(5)技術法令における参照制度の創設。

標準の類型化 「標準」:暗黙あるいは公的合意の結果、生産者によって支持される技術仕様の集合。例えば、レファレンス、最低品質、インターフェース、互換性に関する共通仕様のこと 標準の類型化(David1995) (1)「スポンサー無し標準」:特定の創業者あるいはそれに準ずるものが財産権を有するわけではないが、社会的に良く典拠付けられた形式で存在している標準。 (2)「スポンサー付き標準」:単一ないし複数のスポンサーが間接あるいは直接の財産権を有し、他企業に対して採用を推奨する標準。 (3)「合意標準 」:米国国立標準協会(ANSI)に所属する組織のような自主的な標準設定機関によって制定される標準。 (4)「強制的標準」:規制権限を持っている政府機関によって制定される標準。

「デファクト(事実上の)標準」:(1)と(2)のタイプの標準は市場競争を経て形成されるもの。 (1)の例:QWERTY配列、(2)の例:VTRのVHSやパソコンOSのWindows。 「デジュリ(公的)標準」:(3)と(4)のタイプの標準は標準制定委員会の裁量や法令の制定を経て形成されるもの。(3)の例:国際標準化機構(ISO)の定める標準シリーズ、(4)の例:工場設備の一酸化窒素等有害物質の排出制限規制。 「自主的標準」:(1)から(3)までのタイプの標準は産業内の利害関係の調整を促進するための合意。ISOは91ヶ国の国家品質機構から構成され、グローバルな規格を討議・調整するための国際的なフォーラム。例:ANSIはISOの米国調印者、米国における多くの自主的標準の開発の調整。 「技術規制(Technical Regulations)」:(4)のタイプの標準は多くの場合法令化。拘束力の強い条約(Treaty)と拘束力の弱い推奨(Recommendation)の2種類。

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デファクト標準の重要性 デファクト標準の意義: デファクト標準とデジュリ標準の長所・短所(山田(1997) (1)消費者への製品認知度の向上、(2)規模の経済性による費用メリットの享受、(3)周辺装置とソフトウェアのような補完的製品の増加。 デファクト標準とデジュリ標準の長所・短所(山田(1997) VTRvs.Beta(柴田1992) VTR:米国のTV局の業務用ニーズ、1970年のU-matic(テープ幅3/4インチ、記録時間30分)はソニー・松下・日本ビクターの統一規格。やがて、それが家庭用VTRとして発展、普及する鍵は「1/2インチで2時間記録」 1975年他社に先駆けてソニーがBetamax1号機(1/2インチ、1時間記録)を発売。1976年 1年遅れてビクターがVHS1号機(1/2インチ、2時間記録)を発売。ソニー規格は当初2時間録画の条件を満たしていなかったが、1977年 2時間録画のBetamaxを発売。 しかし、既に松下・ビクターはOEMやライセンスの供与で強力なVHS陣営を確立。1978年にVHSがVTRの50%のシェアを獲得すると、一度もシェアの再逆転は起こることなく、1988年ソニーがVHSを発売するに至ってVTR規格競争は終止符。

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新しい標準化の枠組み デファクトとデジュリの境界の曖昧化 デファクト標準の区分(山田1997) (1)いずれの標準にせよ、多数勢力を獲得すべきコンソーシアムの形成が必要。 (2)デジュリ標準の開発段階からの先取り標準化の進展。 (3)いずれの方式とも言えないような標準化方式の増大。 デファクト標準の区分(山田1997) 「結果的デファクト標準」 (VHS・ MS-DOS・PC/AT・TCP/IPのように市場競争において圧倒的なシェアを獲得すること) 「戦略的デファクト標準」(X/OPEN・DVD・DAVICのように仕様設計時において多数派になるためのコンソーシアムを形成すること) 「自発的標準」の提唱(Besen&Saloner1989)

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DVDの事例 DVDの開発には二つの規格が存在 一つはソニー・Philipsが提唱する厚さ1.2mmディスク単盤・片面3.7GBのMMCD(Multi Media CD)規格、 もう一つは東芝が提唱する厚さ0.6mmディスク張合わせ構造・5GBのSD(Super Density)規格。 光ディスクの基本特許を持つソニー・PhilipsはCD資産の継承を強調する戦略。特許料の継続的支払いに不満を持った東芝は独自規格支持のための多数派工作に努力。 劣勢のソニーは苦しい立場。両規格の統一を望むテクニカル・ワーキング・グループ(TWG)の仲裁を受け、東芝とソニーは1995年9月ようやく規格統一の基本合意に到達。 DVD規格統一に合意した10社が規格策定のための作業組織「DVDフォーラム」(1997年4月DVDコンソーシアムから改称)を設定。しかし、その後のDVDの規格統一過程をみると、極めて多難な道のり。 DVDは市場競争の結果というデファクト標準ではなく、日本工業規格(JIS)のような公的標準機関が策定したデジュリ標準でもない。DVDの紛争を教訓に1996年通産省は「標準情報制度」を新設。