沖縄偏波降雨レーダー (COBRA)で観測された 晴天境界層エコーと積雲対流

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沖縄偏波降雨レーダー (COBRA)で観測された 晴天境界層エコーと積雲対流 佐藤晋介、中川勝広、出世ゆかり、井口俊夫 (NICT) 古澤文江、中村健治、民田晴也 (名大HyARC) LAPS Internal Workshop, 1 March 2007@名古屋大学

本日の話の内容 1) 2005年沖縄集中観測の結果 2) これまでの研究経緯と問題点 3) 問題点解決に向けて ・ レンジコレクション問題 ・ρHVとSNRの関係 4) 今後の課題と期待される観測

2005沖縄集中観測の概要 Ogimi site WPR&Sonde Video Nago site COBRA (2005/6/30~7/10) 400 MHz Wind Profiler COBRA RHI (AZ=41.2) Ogimi site WPR&Sonde Ogimi site COBRA (Cバンド偏波レーダ) Video Nago site COBRA Nago site

COBRA観測シーケンス 3 PPIs & 14 RHIs per 10 min range reso. = 75 m (0.5 s in pulse width) angle reso. = 0.4 deg (0.9 deg in beam width)

DISTANCE FROM RADAR (km) 晴天大気エコーの抽出 Extracted m/s dBZ (a) (b) (c) (d) DISTANCE FROM RADAR (km) HEIGHT (km) Oogimi Maskout the ground clutter echoes using (-0.5 < VEL < 0.5 m/s) & (NCP < 0.2) * NCP (Normalized Coherent Power) is used to distinguish the valid velocity data from noise-level data

晴天大気エコーの特徴と偏波特性 Small CAEs Middle CAEs Large CAEs - max HT < 2 km 0721Z, 08JUL2005 0441Z, 07JUL2005 0341Z, 08JUL2005 HEIGHT (km) HEIGHT (km) HEIGHT (km) DISTANCE FROM RADAR (km) DISTANCE FROM RADAR (km) DISTANCE FROM RADAR (km) Small CAEs - max HT < 2 km - horiz scale ~1 km Middle CAEs - max HT > 2 km - horiz scale ~1.5 km Large CAEs - max HT > 2.5 km - horiz scale 2~3 km CAE: ZHH: -5 ~ +5 dBZ ZDR: ~ 0 dB, HV(0): 0.5~0.9 *ZDR:H・V偏波間でのZ因子の比 (目標物の扁平度、 ZDR=10log(ZH/ZV)) *HV(0): H・V偏波間の相関係数 (散乱体積内の 目標物の形や方向が揃っているかの指標)

その他のエコーと偏波特性 Organized huge CAEs Birds or Insects? Rainfall (12-14 km) 1528Z, 07JUL2005 0605Z, 07JUL2005 1601Z, 07JUL2005 HEIGHT (km) HEIGHT (km) HEIGHT (km) DISTANCE FROM RADAR (km) DISTANCE FROM RADAR (km) DISTANCE FROM RADAR (km) Organized huge CAEs - high HV at the TOP Birds or Insects? - large ZHH - large ZDR - low HV Rainfall (12-14 km) - large ZHH - high HV ~1.0

400 MHz WPR による水平風速 07JUL 2005 08JUL 2005 Analysis Period HEIGHT(km) 3 2 1 10 m/s HEIGHT(km) Analysis Period JST 09 10 11 12 13 14 15 16 17 08JUL 2005 5 4 3 2 1 HEIGHT(km) JST 09 10 11 12 13 14 15 16 17 m/s

タワーエコーの発達 1 min 14:08:29JST 3 min 14:11:43JST 1.5 min 14:13:16JST HEIGHT (km) 4 3 2 1 14:08:29JST 3 min HEIGHT (km) 4 3 2 1 (w/o RHI data) A plume-like tower echo appears 14:11:43JST dBZ 1.5 min HEIGHT (km) 4 3 2 1 The tower echo develops with a reflectivity core 14:13:16JST 1 min HEIGHT (km) 4 3 2 1 The strong echo core disappears (or moves out) 14:14:18JST 0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20 DISTANCE FROM RADAR (km)

ドーナツ型エコー(水平断面)の 上部から発達したタワーエコー AZ=41.2 EL=8.0 DISTANCE FROM RADAR (km) HEIGHT (km) 14:10:59 JST Ogimi VIDEO Wind direction 14:11:43 JST

ビデオカメラが捉えた発達する積雲

サーマルによる晴天大気エコー から発達する積雲対流 doughnut-shaped echo in a horizontal section cumulus convection C-band radar cannot detect cloud droplets. Large droplets penetrate the ABL? Thermal in the shape of a temple hung-bell inversed-U shaped echo in a vertical section Top of ABL U Thermal ABL

まとめ (2005集中観測結果) 大気境界層内のサーマルによる晴天大気エコー(CAE)を Cバンドの偏波レーダCOBRAで観測した。 - 鉛直断面では逆U字型、水平断面ではドーナツ型エコー として観測されるCAEは釣鐘型をしている. - CAEは ZDR~0dB、ρHV:0.5~0.9の偏波特性を持ち、 鳥(や昆虫?)による生物エコーとは明確に区別される. CAEの存在した場所からタワーエコーの発達が観測され、 ビデオ観測からそれが積雲であることが示唆された. - タワーエコーは レーダで検知できる大きさの水粒子の 可能性がある(ρHV > 0.9). - 発達したサーマルは、対流不安定な自由大気中の 積雲対流の引き金になると考えられる.

これまでの研究経緯と問題点 1) 2004年:COBRAでCAEが観測できることを確認(高橋仁) 2) 2005年:6/30~7/10集中観測(COBRA,Sonde,Video) ・ 偏波データ(ZDR,ρHV)で生物エコー(鳥)は区別できる ⇒ 乱流エコー(Bragg散乱)か小さな虫エコーかは不明 ・ 形状や発達過程よりCAEはサーマルであることが示唆 ⇒ 積雲(雲粒子は観測不可)まで発達した時に、COBRAが 何を見ているかは不明 3) 2006年:COBRAデータ再解析+数値モデル実験(民田春也) ・ COBRA近距離データ(RHI)のRange Correctionが異常? ・ CAEの散乱ターゲットが何であるかが問題 Wilson, et al. 1994, Jtech: 米国 S/C/X-band, 偏波レーダによるCAEの総合的評価 Zrnic and Ryzhkov 1998, IEEE trans: 偏波レーダによる虫・鳥観測 (ρHV=0.3~0.5)

レンジコレクション問題 ・ POWER(dBm)には Range Corr.はかかっていない 距離 6kmを 基準にして Range Corr. をかけた結果 (by 民田) ・ POWER(dBm)には Range Corr.はかかっていない ・ ZHHやZVV等には2重に Range Corr.はかかっていない ・ T/Rリミッタの劣化で、レンジ2 km以下の受信レベル低下したことはあるが、 現在のT/Rリミッタには劣化は見られない(NEC2006/4/10確認) ・ COBRAアンテナ(Φ=4.5 m) のファーフィールド条件は723 m以上であり、 それ以下の距離ではアンテナビーム形成が不十分のため、ゲインが下がる ・ PPI、他方位角のRHIでは同様の現象が見られない! ・ 避雷針がAZ=37°(設計図面より) に設置されており、その影響が心配される → RHI(AZ=42.1)で出るのであれば、PPIでも出るはず(未確認) → HとVでレベル低下が異なるはず (未確認)

ρHVの計算における雑音の影響 (by 井口) サンプル数が無限大の場合  ( <> は平均値を表す) 雑音を考慮した場合の観測値 (Sは信号、nは雑音) 信号と雑音は独立、HとVも独立 と仮定して、式を展開 観測値と新値の関係 (Sは信号、nは雑音) の場合

ρHVとSNRの関係 (降雨エコーの場合 by出世) 補正前 補正後(分散は考慮せず)

今後の課題と期待される観測 COBRAノイズの扱いをきちんと行う - ノイズサンプルモード(RHI)で観測を行い、 信号からノイズを差し引いて計算を行う - ρHVはSNRを用いて補正する 本観測のアドバンテージは、連続RHI観測、フルポラリメトリック - ZDR、ρHV以外に有効な偏波パラメータはないか? サーマルでも積雲対流でも、上昇流を測ることが重要 - 400MHz帯ウィンドプロファイラは、下層(~0.6 km)が見えない - 超音波風速計、ドップラーソーダなども利用すべき - 大宜味を観測域とするdual-Doppler観測が期待される Bragg散乱を確かめるためには、多周波レーダ観測が有効 CAEと積雲対流の関係を調べるためには、 雲レーダ(95GHz)等による同時観測が期待される

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COBRA観測サマリー 赤は欠測 Level-2 data: ZHH, ZVV, ZHV, ZVH, VELa, VELb, NCP, LDR(HV), LDR(VH), RhoHV(0), RhoHV(1), RhoHV(2), PhiDP, ZDR, ZDP, RR, POW データ処理: 75 m x 0.4 deg in Rθ-grid ⇒ 100 m x 100 m in XZ-grid (using nearest neighbor) (using 4/3 equiv earth radius) See animation (every 10 min): anime0630-0702.gif anime0703-0705.gif anime0706-0709.gif

C-Band Okinawa Bistatic polarimetric RAdar (COBRA) < COBRA Specifications > Frequency 5340 MHz Peak power 250 kW×2 (Klystron) Pulse width 0.5 / 1.0 / 2.0 s (Klystron) PRF 250-3000 Hz, PRT 1 s step staggered PRF Antenna 4.5 m  parabola Antenna gain 45 dBi (inc. radome) Beam width 0.91 deg Sidelobe level < -30 dB (AZ dir., one way) < -28 dB (EL dir., one way) Cross pol ratio > 36 dB (integ in a beam) Tx Polarization H / V / +45 / -45 / LC / RC Doppler estimation Pulse-pair / FFT Range bin num > 2000 Antenna scan 0.5-10 rpm (PPI) 0.1-3.6 rpm (RHI) COBRA was installed on a mountain peak (343 m in ASL + 15 m tower) in Nago city, Okinawa Island.

400 MHz-band Windprofiler <400 MHz WPR Specificatons> Radar Type Pulsed Doppler Radar Frequency 443.0 MHz Peak Power 20 kW Average Power 2 kW Pulse Length 1.33 / 2.0 / 4.0 us PRF 6.25 / 20 kHz Antenna Type 24 x 24 element crossed array Antenna Size 10.4 x 10.4 m Beam Width 3.3 deg Beam Steerability AZ 0 - 360 deg EL 0 - 15 deg <Other instruments at Oogimi> 1.3 GHz-band Windprofiler 1357.5MHz, 1 kw (peak), 2.1 x 2.1 m Doppler Sodar GPS sonde Ceilometer Automatic Weather Station Optical Rain Gage Micro Rain Radar 2D Videl Disdrometer Oogimi Windprofilers Facility Doppler Sodar 400 MHz WPR 1.3 GHz WPR

Small CAEs 0721Z, 08July05

Middle CAEs 0441Z, 07July05

Large CAEs 0341Z, 08July05

Birds or Insects? (July 07, 06:05:21Z)

Huge Thermal (July07, 15:28:29Z)

Rainfall at Oogimi (July07, 16:01:43Z)

Strange Echo Layer (July08, 00:53:47Z) Abnormal Propagation ?

境界層エコーの時間変化 See animation (every 30 sec): anime070703-070706.gif <特徴的なエコー> July07, 05:12:44Z -- Jumping Thermal July07, 05:53:16Z ~ 06:42:45Z --- Birds/Insects? (low RhoHV) July07, 14:48:29Z -- Jumping Thermal July07, 15:28:29Z -- Large Thermal (~5 km diameter) July07, 16:01:43Z -- Rainfall at Oogimi July07, 20:30Z ~ July08, 06:00Z --- strange echo appeared in 0.5 ~1 km height

はじめに 晴天大気エコー(CAE: Clear Air Echo)が気象レーダで観測される  ことは1940年代から知られており、COBRAによる観測結果も報告  されている(高橋仁ほか; 2004, 2005). 夏季陸上で日中の大気境界層内に生じるサーマルによるCAEは、  大気乱流による大気屈折率の変化によるブラッグ散乱による. 大気中の対流は、そのスケールの違いによって、プリューム・  サーマル・積雲・積乱雲などと呼ばれるが、大気境界層内の  小さな対流が積雲や積乱雲の発達にどのように関係している  かは、ほとんど知られていない. 本研究では、COBRAによる近距離での高感度・高分解能の連続  観測により、大気境界層内のサーマルが積雲対流に発展する  過程を調べることを目的とする.

まとめ & 今後の課題 1.Vel < -0.5 m/s & Vel > 0.5 m/s & NCP >0.1 の条件で   境界層エコー(サーマル)をほぼ抽出することができた。 2.通常のサーマルの水平スケールは 1~2 km 程度で 到達高度は1~2.5 km程度であった。 3.サーマル上部は高いRhoHVで特徴づけられ、大きな 雲粒子(or Drizzle)があると考えられる 4.2種類の奇妙なエコーが観測された →低いRhoHV(固まって移動)は鳥・昆虫? →高いRhoHV(高度0.5~1kmに層状)は霧・もや? <今後の課題> ・ RhoHV以外の偏波データについても調べる ・ 奇妙なエコーの正体を探るためビデオ映像などを調べる

等価地球半径によるビーム高度