非平衡が創り出す時空間パターン 時間軸上の秩序 生物のリズム現象 京大・理 吉川研一 ・卵割(発生) ・日周性(サーカディアン)リズム

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非平衡が創り出す時空間パターン 時間軸上の秩序 生物のリズム現象 京大・理 吉川研一 ・卵割(発生) ・日周性(サーカディアン)リズム 2006. 11. 11 市民講座、 京大 非平衡が創り出す時空間パターン 京大・理 吉川研一 時間軸上の秩序 生物のリズム現象 ・卵割(発生) ・日周性(サーカディアン)リズム ・神経発火・脳波 ・心臓の拍動 ・自発呼吸 ・歩行   etc 心筋細胞

生物のリズム現象 生物リズムの特徴 ・卵割(発生) ・日周性(サーカディアン)リズム ・神経発火・脳波 ・心臓の拍動 ・自発呼吸 ・歩行   etc 1)リズムは“安定” 2)状態が不連続に変化 3) リズムの同期現象 生物リズムの特徴 馬の早足 馬の疾走

化学反応が創り出すリズム ~ Belousov-Zhabotinsky反応 ~ O2 酵 素 以下の物質を混ぜる 臭素酸ナトリウム 硫酸 マロン酸 臭化ナトリウム フェロイン 酸化剤 基質 触媒  O2 糖類、脂肪 タンパク質など 酵 素 心臓の拍動、生物時計 などの自律的現象 (安定なリズム)

ペットボトル振動子 安定なリズム

同期現象 水の入ったU字管 もしくは風船の挿入による チューブ結合による同相同期 逆相同期 容器:2㍑用, 細管:径8mm, 長さ10cm, 結合チューブ:径7mm, 長さ20cm. 容器:2㍑用, 細管:径8mm, 長さ10cm, 結合チューブ:径7mm, 長さ75cm, 風船:コンビニ仕様.

ペットボトル振動子の同期現象 安定なリズム 状態の不連続な変化 同期現象

線形の近似 振り子(学校で習う性質) 生物のリズム 周期は振幅によらず一定 振幅は可変 振動数の異なるリズムはうなりを発生 ● ○ 生物のリズム 心臓拍動、自発呼吸、卵割のリズム、サーカディアンリズム , etc リズムは安定(外乱があっても元に戻る) 状態が不連続に変化する リズムは同調する

非線形:現実の世界

自己同調現象(引き込み同調) “うなり” 同調現象:非線形 2つの振動子の位相差マップ 準周期 同調

生命のリズムは時空間の秩序を創り出す O2 金属触媒 酵 素 Belousov-Zhabotinsky 反応 COOH CH2 KBrO3 | CH2 酵 素 糖類、脂肪 タンパク質など O2 形態形成、成長 (空間的秩序) 心臓の拍動、生物時計 などの自律的現象 (時間的秩序) KBrO3 酸化剤 基 質 金属触媒 時間的振動反応 空間的振動反応 Belousov-Zhabotinsky 反応

シミュレーション 進行波 大域振動 相原ら

iii) ビーズの反応では i) 攪拌すると ii) 静置すると a) 同心円(ペースメーカー有) b) らせん(ペースメーカー無) 0.5mm ii) 静置すると a) 同心円(ペースメーカー有) b) らせん(ペースメーカー無) (4倍速) 3 mm (4倍速) 3 mm

心臓細胞の培養シート Rat neonatal ventricular cardiomyocytes were obtained using a standard trypsin-collagenase digestion protocol myocytes were plated on 25 mm glass coverslips and used within 3-5 days after plating cells were loaded with the calcium-sensitive indicator Fluo-4 (Kd=345 nM) and wave propagation was visualized by following calcium transients the events were monitored at room temperature using ether a Zeiss LSM 510 confocal imaging system or CCD camera

シミュレーション 興奮波の特性 らせん波 Vulnerable Window Refractoriness Spiral wave tip Core Excitable gap Excitable gap Vulnerable Window Excitation 興奮波の特性 らせん波

化学反応による時空間の自己組織化 反応拡散系 i) 同心円・パターン らせん・パターン ii) チューリングパターン

体節形成 体節とは、背骨や肋骨のもとになる節的構造のこと。 発生の段階で遺伝子発現の波が次々伝って、形成される。 尾部 頭部 尾部    頭部 体節形成と遺伝子発現の波。波は、尾部から頭部にかけて進行し、最終的に、波は停止してその位置にくびれができ、次々と体節が生じる。 Mouse の胚(左)とzebrafishの胚(右)。図中矢印が体節の位置を表す。 Mouseでは90~120分, zebrafishでは30分でひとつの体節が形成される。 。個々の細胞は移動しないが、異なった位相で遺伝子発現が起こる Y. Bessho, R. Kageyama Current Opinion in Genetics and development, 13, 379, (2003).

体節形成 反応拡散方程式による数理モデル 反応拡散方程式を使ったコンピューターシミュレーション。周期的なパターンが形成される過程を再現できる。 京大ウイルス研究所影山教授のグループとの共同研究

油滴の“ランダムウオーク” 分子機械の動作原理を“おもちゃで”探る

往復運動をする油滴 ⇒ 化学エネルギーによる自律的な運動 Octadecyl trimethyl ammonium chloride Nitrobenzene (KI & I2) 5 mm 水相 油滴 ガラス板

段差を這い上がる液滴 Real time 30 ml 1/6 sec between pictures

坂道を上る油滴 q = 25° 5 mm

宙返りする油滴 境界条件が運動のモードを決定する 25 mm

生命をどのようにして理解するか? 現実空間上のモデルの重要性

生命の不思議 物理学に課せられた役割 生物、無生物の枠を乗り越えて普遍的な自然観の確立をめざす What is Life? 初版 1944