ソリッドイマージョン蛍光顕微計測法とそのナノ光物性計測への応用 東京大学物性研究所、CREST(JST)

Slides:



Advertisements
Similar presentations
2005/5/25,6/1 メゾスコピック系の物理 (物理総合) 大槻東巳 (協力 : 吉田順司, 2003 年 3 月上智大学理学博士 )  目次 1 )メゾスコピック系とは 2 )舞台となる 2 次元電子系 3 )バリスティック系の物理 コンダクタンスの量子化 クーロン・ブロッケード 4 )拡散系の物理.
Advertisements

顕微発光分光法による n 型ドープ量子細線の研 究 秋山研究室 D3 井原 章之 ’ 07 11/20 物性研究所 1次元電子ガスを内包し、 状態密度の発散や 強いクーロン相互作用の 発現が期待される。 しかし試料成長や測定が難しいた め、 バンド端エネルギー領域の 吸収スペクトルに現れる特徴を.
導波路放出光解析による量子細線の光吸収測定
Isao Matsushima, Toshihisa Tomie
Adaptive Optics(AO) “宇宙をより鮮明にうつし出す” ~補償光学~ 補償光学系:これまでの成果!
内部導体装置Mini-RT 真空容器内に超伝導コイルを有する。 ポロイダル方向の磁場でプラズマ閉じ込め。 ECHでプラズマを加熱。
新しいVPHグリズムおよび 櫛形格子のグリズム
「高強度領域」 100 MW 〜 1 GW 50 Pcr 〜 500 Pcr 高強度レーザーパルスは、媒質中で自己収束 光Kerr効果
次世代超大型望遠鏡の 広視野補償光学系の光学設計
木下基、Manyalibo J. MatthewsA、秋山英文
ファブリ・ペローエタロンを用いた リング型外部共振器付半導体レーザーの 発振周波数制御
CRL 高周波磁界検出用MOインディケーターの合成と評価 1. Introduction 3. Results and Discussion
AOによる 重力レンズクェーサー吸収線系の観測 濱野 哲史(東京大学) 共同研究者 小林尚人(東大)、近藤荘平(京産大)、他
みさと8m電波望遠鏡の性能評価 8m (野辺山太陽電波観測所より) (New Earより) 和歌山大学教育学部 天文ゼミ  宮﨑 恵 1.
前回の内容 結晶工学特論 第4回目 格子欠陥 ミラー指数 3次元成長 積層欠陥 転位(刃状転位、らせん転位、バーガーズベクトル)
分光結晶を用いた蛍光XAFSシステムの開発
基礎ゼミ 光学のすすめ 第15章 光を用いた情報機器
内面形状計測用プローブカメラ 研究背景 特殊形状部品の内面形状
2次元蛍光放射線測定器の開発 宇宙粒子研究室 氏名 美野 翔太.
ランダム不均質媒質中の非等方震源におけるベクトル波エンベロープ合成
前回の内容 結晶工学特論 第5回目 Braggの式とLaue関数 実格子と逆格子 回折(結晶による波の散乱) Ewald球
2m電波望遠鏡の製作と 中性水素21cm線の検出
MBE成長GaAs表面の平坦化とそのAFM観察
Dissociative Recombination of HeH+ at Large Center-of-Mass Energies
東京大学 物性研究所、CREST(JST)
T型量子細線レーザーの利得測定と 多体理論計算との比較 秋山研 助教 吉田正裕 Outline: 1. 背景と目的
核断熱消磁冷凍機 世界有数の最低温度と保持時間をもち、サイズもコンパクト。主に2次元3Heの比熱およびNMR測定に使用中。 核断熱消磁冷凍機
トリガー用プラスチックシンチレータ、観測用シンチレータ、光学系、IITとCCDカメラからなる装置である。(図1) プラスチックシンチレータ
位相カメラの進捗状況 京都大学修士1回 横山 洋海.
発光と発光励起スペクトルから見積もる 低次元電子系のキャリア温度
軽井沢合宿@上智大学セミナーハウス ( ) GaAs T型量子細線における 高密度キャリア効果 秋山研  吉田正裕.
AIRT40+TONIC2 for JARE53/54 Winter-over Observation 新光学系の提案(最終案)
Kennard-Stepanov関係式を用いた ドープ量子井戸中の電子温度の絶対測定
プラズモン共鳴を用いたC-dot-Ag ナノ粒子-シリカコンポジット 薄膜蛍光増強
Arm-Stem電流注入型T型 量子細線レーザーの発振特性
T型量子細線における励起子-プラズマクロスオーバー(現状のまとめ)
高品質T型量子細線レーザーの作製と評価 東大物性研 吉田正裕、秋山英文
高エネルギー陽子ビームのための高時間分解能 チェレンコフビームカウンターの開発
発光絶対光量測定法の開発と 生物発光の量子収率測定
生体親和性発光ナノ粒子の医薬送達担体への応用
光スイッチングデバイス.
宇宙線ミューオンによる チェレンコフ輻射の検出
1.光・音・力.
課題研究Q2            2017年度用 「光物性」の研究紹介  京都大学大学院理学研究科  物理学第一教室 光物性研究室 1.
GW space-timeコードの大規模な有機-金属界面への適用に向けた高効率化
課題演習B2 - 半導体の光応答 - 物一 光物性研究室 中 暢子 准教授 有川 敬 助教 TA 1名(予定)
X線CCD検出器 ーCCD‐CREST(deep2)ー の性能評価と性能向上 (京阪修論発表会)
原子分子の運動制御と レーザー分光 榎本 勝成 (富山大学理学部物理学科)
A4-2 高強度レーザー テーマ:高強度レーザーと物質との相互作用 橋田昌樹 井上峻介 阪部周二 レーザー物質科学分科
A4-2 高強度レーザー テーマ:高強度レーザーと物質との相互作用 井上峻介 橋田昌樹 阪部周二 レーザー物質科学分科
顕微発光分光法によるドープ量子細線中の 1次元電子系の研究
文化財のデジタル保存のための 偏光を用いた透明物体形状計測手法
産総研・計測標準 寺田聡一 東大地震研 新谷昌人、高森昭光
偏光X線の発生過程と その検出法 2004年7月28日 コロキウム 小野健一.
発光励起スペクトル測定法で見る ドープ量子井戸の光放出と光吸収の関係
プラズモニック構造付シリコン光検出器のHPC援用設計に関する研究
はやぶさ試料(RA-QD )の X線CT解析 – X線CT岩石学の適用例 - X線CT解析の結果に基づいて試料を切断し分析
発光と発光励起スペクトルから見積もる 低次元電子系のキャリア温度
それでは,室内向けレーザーレーダ用の「レーザーレーダパネル」について,その動作原理を説明します.
実験結果速報 目的 装置性能の向上 RF入射実験結果 可動リミター挿入 RFパワー依存性 トロイダル磁場依存性 密度依存性
pixel 読み出し型 μ-PIC による X線偏光検出器の開発
10/19 GMCゼミ.
ガスセンサーの製作 [応用物理研究室] [藤井新太郎]
電子ビームラインの構築と APDを用いた電子計測試験
高速点火核融合実験での爆縮プラズマ計測 大阪大学レーザーエネルギー学研究センター LFグループ 多賀 正樹 ・ 服部 祥治
T-型量子細線レーザーにおける発振および発光の温度特性
シンチレーションファイバーを 用いた宇宙線の観測
KOPIO実験のための中性子不感型光子検出器の設計
60Co線源を用いたγ線分光 ―角相関と偏光の測定―
1.MoS2/WS2面内ヘテロ構造の界面電子状態に関する研究 Sci. Rep (2016)
Presentation transcript:

ソリッドイマージョン蛍光顕微計測法とそのナノ光物性計測への応用 東京大学物性研究所、CREST(JST) OJ2004 シンポジウム 「ナノオプティクス:ナノスケール分光学を目指して」 5aBS2 @大阪大学 (2004.11.4,5) ソリッドイマージョン蛍光顕微計測法とそのナノ光物性計測への応用 吉田正裕、秋山英文 東京大学物性研究所、CREST(JST)

ソリッドイマージョン蛍光顕微計測法とそのナノ光物性計測への応用 1.背景 --- ナノ光物性計測 2.ソリッドイマージョンレンズ(SIL)とソリッド   イマージョン顕微計測法 3.SIL顕微計測法の性能検討   a) 空間分解能と許容加工誤差   b) 集光効率 4.SIL顕微計測法のナノ光物性計測への適用 5.まとめと課題

ソリッドイマージョン顕微計測法 (分解能:100nm ~sub. μm) 研究背景 ナノ光物性計測 ● ナノ構造 ---- 半導体量子構造、ナノ微粒子、etc. ・ 空間分布、均一性 ・ 局所電子状態 ・ 単一構造分光 高空間分解能 ● 単一分子、単一ナノ構造 ---- 化学、生体分子、単一ドットetc. 高検出効率 高分解能、高効率計測法として、 顕微計測法(micro-PL、micro-Raman分光、共焦点法etc.) 顕微計測法+試料加工(マスク、エッチングetc.) ソリッドイマージョン顕微計測法 (分解能:100nm ~sub. μm) 走査型近接場顕微鏡(NSOM) (数nm ~ 100nm)

光学顕微鏡の空間分解能 空間分解能 SIL = nSIL = noil solid Immersion Dr ~ l / nSIL oil Immersion Dr ~ l / noil = noil

ソリッドイマージョンレンズ(SIL)の形状と特性 a : SILの半径 n : 屈折率 SILの形状とその特性をここにまとめます。 SILには半球型と超半球型の2種類があり、どちらも試料表面上において、顕微計測と組み合わせて使用します。 対物レンズからの光がSILに入射すると、SIL内部では光の波長が屈折率倍短くなるため、その分分解能が向上します。 超半球の場合には、SIL表面での屈折の効果とあわせて屈折率の2乗倍良くなります。 この高分解能を活かして、 スタンフォード大のMansfieldとKinoにより高密度optical data storageなどへの応用として提案されました。 SILの特性 半球型SIL 超半球型SIL 倍率 n 倍 n2 倍 分解能向上 1/n 1/n2 対物レンズ動作距離 > a > (1+ n) a 色収差 なし あり

ソリッドイマージョンレンズ(SIL)の特徴 (+ ソリッドイマージョンミラー(SIM)) Advantages Application of the SILs ● 高い空間分解能 (光の回折限界を超えた) ソリッドイマージョン顕微鏡の提案 S. M. Mansfield and G. S. Kino APL 57, 2615 (1990). 近接場光記録 (1994~ ) B. D. Terris et al. (IBM) APL 65, 388 (1994). ● 高い集光効率  ● 低温使用可 ● 不純物汚染がない ● 顕微計測法との組合せ容易 ● 2次元画像計測 このSILの特徴をまとめてみると、 高分解能、高検出効率、固体であるので低温でも使用可能である、これまでの顕微計測と容易に組み合わせることができ、また画像計測も可能である。 これらの特徴は、ナノ構造の光物性計測にも適していると考えられる。 そこで、本研究ではSILの物性計測への適用を試みた。 詳細は省きますが、論文中ではSILを用いる上での加工誤差、収差の影響を評価しました。また、高い検出効率についても検証しました。 そして、実際に半導体ナノ構造の低温での顕微計測にはじめて適用しました。 これまではNSOMしかなかったのですが、 確かに分解能ではNSOMには劣りますが、それでも光の回折限界を超える高い分解能を有し、 簡便性の点や、光検出効率の面で非常に有用な新しい計測方法を確立しました。 ここでは、実際に低温でのナノ構造計測に適用した結果部分について発表します。 光物性計測 (1997 ~ ) -- 顕微発光計測 T. Sasaki et al. (U-Tokyo) JJAP 36, L962 (1997).

近接場光記録への適用 (Near-Field Recording) Recording density > 50 Gbits/in2 HDDの制御技術 Mizuno et al. Jpn. J. Appl. Phys. 43, 1403 (2004).

1.背景 --- ナノ光物性計測 2.ソリッドイマージョンレンズ(SIL)とソリッド   イマージョン顕微法 3.SIL顕微計測法の性能検討   a) 空間分解能と許容加工誤差   b) 集光効率 4.SIL顕微計測法のナノ光物性計測への適用 5.まとめと課題

ソリッドイマージョンレンズ(SIL)の形状と特性 Optical data storage Confocal microscopy, proposed by Mansfield and Kino (1990). a : SILの半径 n : 屈折率 SILの形状とその特性をここにまとめます。 SILには半球型と超半球型の2種類があり、どちらも試料表面上において、顕微計測と組み合わせて使用します。 対物レンズからの光がSILに入射すると、SIL内部では光の波長が屈折率倍短くなるため、その分分解能が向上します。 超半球の場合には、SIL表面での屈折の効果とあわせて屈折率の2乗倍良くなります。 この高分解能を活かして、 スタンフォード大のMansfieldとKinoにより高密度optical data storageなどへの応用として提案されました。 SILの特性 半球型SIL 超半球型SIL 倍率 n 倍 n2 倍 分解能向上 1/n 1/n2 対物レンズ動作距離 > a > (1+ n) a 色収差 なし あり

SILの許容加工誤差、有効視野 半球型SIL 超半球型SIL l/ 3 l/4波長評価法(W<l/4 or F<p/2)により許容誤差を評価。 半球型SIL 1/2 超半球型SIL 超半球型SILでの典型値: (l=0.6 mm, a=1 mm, n=1.845) l/ 3 M. Baba et al., JAP 85, 6923 (1999). M. Yoshita et al., JJAP 41 L858 (2002).

SIL-試料間空隙の分解能への影響 M. Baba et al., JAP 85, 6923 (1999).

1.背景 --- ナノ光物性計測 2.ソリッドイマージョンレンズ(SIL)とソリッド   イマージョン顕微法 3.SIL顕微計測法の性能検討   a) 空間分解能と許容加工誤差   b) 集光(検出)効率     i) SIL蛍光顕微鏡     ii) SIL発光顕微鏡 --- 半導体ナノ構造 4.SIL顕微計測法のナノ光物性計測への適用 5.まとめと課題

電気双極子の放射パターン(1) SIL-air界面から距離zに置いた 電気双極子からの放射パターン (双極子の向きはランダムとして平均化) に大きく偏っている。 SIL側への放射を検出 高集光効率!! ref: Hellen and Axelrod, J Opt. Soc. Am. B4, 337 (1987).

蛍光フーリエイメージ 対物レンズの後側焦点面での フーリエ像を観察 色素ドープ微小球( 0.22mm )の蛍光 空気側: ほぼ一様に分布 対物レンズの後焦点面でのフーリエ像を観測した結果 SIL側: リング状の蛍光フーリエ像 臨界角近傍での放射ピークに対応 放射パターン計算結果(a)と良く一致。

SIL蛍光顕微計測における検出効率 対物レンズによる検出 開口数NAの立体角中に = 放射された蛍光量 SIL n=1.845

SIL蛍光顕微計測における検出効率 ー SIL屈折率依存性 ー 100%に近い 高い検出効率 SIL屈折率 (n) 集光角 (NA) z = 0 mm SIL屈折率 (n) 集光角 (NA) 距離 (z) 大 小 100%に近い 高い検出効率

顕微蛍光像の強度相関プロット(実験) 半球型SIL 集光強度比 7.7 倍 Obj. NA=0.8 色素ドープポリスチレン微小球 (球径0.11mm) 蛍光強度:21.9倍 励起強度補正:2.83 集光強度比 7.7 倍

62 % SIL蛍光顕微計測における検出効率 全放射量の8 % SIL顕微計測 通常顕微法での集光 SIL n=1.845 双極子の置かれた位置

顕微蛍光像の強度相関プロット (超半球型SILの場合) 超半球型SIL 集光強度比 21.1 倍 色素ドープポリスチレン微小球 (球径0.11mm) 蛍光強度:203.3倍 励起強度補正:9.63 集光強度比 21.1 倍

SIL蛍光顕微計測における検出効率          (超半球型SILの場合) 検出効率 通常顕微法 全放射量の 3.7 % SIL顕微計測 76 %

1.背景 --- ナノ光物性計測 2.ソリッドイマージョンレンズ(SIL)とソリッド   イマージョン顕微法 3.SIL顕微計測法の性能検討   a) 空間分解能と許容加工誤差   b) 集光(検出)効率     i) SIL蛍光顕微鏡     ii) SIL発光顕微鏡 --- 半導体ナノ構造 4.SIL顕微計測法のナノ光物性計測への適用 5.まとめと課題

半導体ナノ構造からの発光検出 通常の顕微法 SIL顕微法 半導体 高屈折率材料 臨界角が小さい(sinqc = 1/nsemi) Obj. Obj. air n=1.0 SIL n=1.5 ~ 2 Semicond. QW n > 3 半導体     高屈折率材料 臨界角が小さい(sinqc = 1/nsemi) 取り出し可能な発光量が少ない(1%以下)

電気双極子の放射パターン(2) 半導体表面(z=0)に置いた電気双極子からの放射パターン (双極子の向きは界面に平行とし、面内方向で平均化) l = 750 nm SILを用いることで、検出側への放射量が増大

SIL顕微発光計測における検出効率 SIL顕微計測 従来の顕微計測 検出効率の向上 (NA=0.5, nSIL=2.0) 13 % 3.3% 検出効率の向上 (NA=0.5, nSIL=2.0) 半球型SIL 3.3%/0.8% = 4.1 倍 超半球型SIL 13%/0.8% = 16 倍

2.ソリッドイマージョンレンズ(SIL)とソリッド イマージョン顕微法 3.SIL顕微計測法の性能検討 a) 空間分解能と許容加工誤差 1.背景 --- ナノ光物性計測 2.ソリッドイマージョンレンズ(SIL)とソリッド   イマージョン顕微法 3.SIL顕微計測法の性能検討   a) 空間分解能と許容加工誤差   b) 集光効率 4.SIL顕微計測法のナノ光物性計測への適用 5.まとめと課題 a) 発光、蛍光画像、分光測定(4K ~ 室温)、 b) 発光励起スペクトル測定(PLE)、 c) ラマン散乱測定、 d) ポンプ・プローブ時間分解測定(~130fs)、など (Our group)

SIL顕微蛍光(発光)計測系 setup 超半球SIL 半径(a): 375 mm 屈折率(n): 1.8 or Ti:Sa etc. 計測系の模式図と実際の様子です。 計測系は光学系については先ほどお見せした顕微発光計測と同じです。 ただ、試料上の観測したい位置に、SILを置いています。 SILには超半球型SILを使用し、その直径は750ミクロンです。 超半球SIL 半径(a): 375 mm 屈折率(n): 1.8

SIL顕微計測系の分解能評価 (メタルマスクエッジの反射像) SIL有無による分解能比較(室温) SIL顕微系分解能の温度特性 T= 5, 300 K Obj. lens NA=0.5 まず、この測定系の空間分解能をメタルマスクエッジの反射像から評価しました。 左は、室温において、SILを使用した場合と使用しない場合とでの分解能の比較です。 SILを用いることでエッジは急峻になっており、分解能が向上していることがわかります。 計算によりフィッティングを行うと、NA=1.25と光の回折限界を超えた分解能が実現されています。 右はクライオスタット中で低温での分解能を調べた結果です。 5Kと300Kとでほとんど分解能に変化の無いことが確認でき、広い温度範囲範囲で使用であることがわかりました。 次に実際に半導体ナノ構造の発光測定を行ってみました。 1.光の回折限界を超える高分解能の実現   NA ≥ 1.0 2.低温から室温までの広い温度範囲で使用可能 M. Yoshita et al. APL 73, 635 (1998).

半導体ナノ構造の光物性 計測への適用 光励起キャリアの発光空間分布計測 観察試料: MBEファセット成長GaAs量子井戸構造 反射像(top) 光励起キャリアの発光空間分布計測 観察試料: MBEファセット成長GaAs量子井戸構造 発光像 点Aの断面強度分布 倍率は補正済み 3.39倍 理論値3.24倍 ほぼOK SIL有り無しでの集光強度 6倍   佐々木論文では 8 - 12 倍 分解能が高くない理由:空隙の存在 150~200nm 空間分解能 ≤ 0.4 µm (NA ≥ 1.0) M. Yoshita et al. APL 73, 635 (1998).

光励起キャリアのマイグレーション観測 半導体ナノ構造中での 異方的な光キャリアのドリフト・拡散現象 光点励起位置 発光像(点励起) 発光像強度分布の半値全幅 サブµm分解能で計測することに成功 M. Yoshita et al. APL 73, 2965 (1998).

量子井戸中の局在電子状態の発光分光 5 nm (110) GaAs/AlAs SQW grown on a cleaved edge of a GaAs wafer ●○:局在励起子発光 ▼▽:励起子分子発光

1.背景 --- ナノ光物性計測 2.ソリッドイマージョンレンズ(SIL)とソリッド   イマージョン顕微法 3.SIL顕微計測法の性能検討   a) 空間分解能と許容加工誤差   b) 集光(検出)効率 4. SIL顕微計測法のナノ光物性計測への適用 5.まとめと課題

SILの分解能限界と課題 空間分解能 ∝ l/ 2nNA (l/ 2n2NA) ・ ZrO2 (n=2.16) NA=sinq 空間分解能  ∝ l/ 2nNA (l/ 2n2NA) ( ただし、max: l/2n ) ● 高屈折率SILの利用   ・ ZrO2 (n=2.16)   ・ GaP (n=3.1~3.4) ~ l/6 SIL-試料間空隙の制御 ● マッチングオイルの使用(液浸レンズ) ● 空隙制御法の開発 ー ・ 近接場光記録技術の流用 ・ 低温対策   (断熱真空中、冷媒雰囲気中)

SIL-試料空隙の制御方法 flying head 方式 AFMカンチレバー方式 Ghislain et al. Appl. Phys. Lett. 74, 501 (1999). Mizuno et al. Jpn. J. Appl. Phys. 43, 1403 (2004).

Summary 1. SILを用いたソリッドイマージョン蛍光顕微計測法について検討 1) 光の回折限界を超える高い空間分解能の実現 2) 全発光量の62%(76%)の高い集光効率の実現 3) SILの許容誤差、有効視野についての検討 4) 広い温度範囲での適用可能(4K ~ RT) ナノ光物性計測の有力な計測法であることを実証。 2. 半導体ナノ構造の顕微発光計測に適用 1) 励起キャリアの空間分布 2) キャリアのマイグレーション 3)局所電子状態の分光計測 を高い空間分解能で測定 従来の顕微計測法の資産をそのまま利用できる。

共同研究者: ・ SILの収差計算、集光効率計算   馬場基芳 博士(東大物性研)   小山和子 氏(東大物性研) ・ SIL分光実験   佐々木岳昭 氏(東大物性研、現:旭化成) 謝辞: ・ 半導体ナノ試料   榊裕之 教授(東大生産研)

電気双極子の放射パターン 半導体表面からの 距離z依存性 (双極子の向きは界面に平行と 仮定し、面内方向に平均化)