ハドロン物理における 最近の発展 (摂動的アプローチからみた)

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ハドロン物理における 最近の発展 (摂動的アプローチからみた) 高エネルギー加速器研究機構(KEK) 素粒子原子核研究所 板倉 数記 kazunori.itakura@kek.jp http://research.kek.jp/people/itakura/  に今日のスライドを掲載します 2006年 6月14日 夏期実習

予定 1時限目 ハドロンとは?ハドロン物理とは? 量子色力学(QCD)と「漸近的自由性」 概観:QCD相図、核子の内部構造についての素朴な描像 2時限目 極限状態におけるハドロン物理 「弱結合多体系」としての極限状態 「弱結合多体系」における非自明な現象・物理     クォーク・グルーオン・プラズマ、カラー超伝導、カラーグラス凝縮 ハドロン相(ハドロン的記述)へ外から接近     「強結合」QGP、BCS-BECクロスオーバー、 クォーク・ハドロン双対性(深非弾性散乱における陽子と光子)

ハドロンとは? 自然の階層構造のなかでの位置付け 電磁気力: ハドロン(hadron) 強い力:核子(陽子と中性子)間に働く(核力) 分子間、陽子と電子間に働く ハドロン(hadron)   強い相互作用をする粒子の総称   メソン(中間子)とバリオン(重粒子)   質量: 数百MeV(106eV)~数GeV(=109eV) mp=137MeV, mp=940MeV   クォークとグルーオンの束縛状態 強い力:核子(陽子と中性子)間に働く(核力)          (陽子間の電磁気力に打ち勝つ)      クォーク間に働く 弱い力:原子核の崩壊などで働く (重力は地球以上の大規模な構造や 非常に大きなエネルギースケールで重要)

Review of Particle Physics (2004) http://ccwww.kek.jp/pdg/ Review of Particle Physics (2004) Baryons (proton, neutron, …)   3つのクォーク (qqq) Mesons (,…):   クォークと反クォーク(q qbar) およそ300種類の粒子 現在も新粒子が発見され続けている! 新しいタイプ( 4q + 1qbar )も?

ハドロン物理とは? 1.ハドロン階層の中で、有効理論を用いて *ハドロンは標準理論を構成する「素粒子」ではない *ハドロンは標準理論を構成する「素粒子」ではない                        → クォークとグルーオンの「相対論的」束縛状態 *ハドロンの構成要素の力学に対する基礎理論は確立している                       → 量子色力学 (Quantum ChromoDynamics, QCD) ハドロン物理: ハドロンの性質やハドロンの関与する現象を理解する 1.ハドロン階層の中で、有効理論を用いて      → 比較的低エネルギーでの、ハドロンとしてのアイデンティティーを保った現象へ適用。 有効理論の系統的構成法。 2.クォーク・グルーオン階層の基礎理論である量子色力学を用いて    → ハドロンそのものの性質(質量、半径、構造関数など)やハドロン的自由度では 記述できない高エネルギーの現象など *Lagrangianを決定する物理ではなく、単純で美しいLagrangianが記述する多様な現象、つまり、   ダイナミクスを紐解く事こそがハドロン物理 *ハドロンは、自然界における最もミクロなスケールでの「秩序形成」。   「還元主義」とは一線を画する立場、興味を持って自然に対峙する。 *驚くほど多彩な現象が現れるため、関係する分野、物理も多岐にわたる。    物性、宇宙、素粒子、少数多体系、非線形物理、非平衡統計力学、などなど。

量子色力学(QCD) 非可換ゲージ場の量子論 y : クォーク フェルミ粒子 スピン1/2 SU(3)基本表現 Aam : グルーオン ボーズ粒子  スピン1         随伴表現 g : 結合定数 SU(3) カラー対称性     クォークは3つの「色」を持ち、3色(赤、緑、青)が集まることで無色化する  グルーオンはクォーク間の相互作用を担う。3×3-1=8種類              cf) QED:  U(1)対称性                  電子:フェルミオン、U(1)電荷を持つ                  光子:電子間の相互作用を担うゲージ粒子   Fmnの最後の項  グルーオン間の(3点、4点)相互作用 フレーバー対称性   クォークはさらに、「フレーバー」の自由度を持つ。u, d, s, c, b, t   異なる質量のクォークを区別する。u,dの質量を近似的にゼロと見なすと   「カイラル変換」というフレーバーを混ぜる変換のもとで不変。  

量子色力学(QCD) ファインマン・ルール 相互作用項(グルーオンとクォークの 相互作用、グルーオン自己相互作用) を摂動として系統的に扱うための計算手段  (摂動論の基礎) * ゲージ固定    (ゲージ変換の自由度を殺す必要がある)  → ゴースト場の導入(Faddeev-Popov) (QEDでは不要だった)

漸近的自由性 QCDにおける最も重要な性質  2 loops, Caswell, Jones, 1974 繰り込まれた結合定数の繰り込み点(スケール)依存性 (2004)  1 loop, Gross, Wilczek, Politzer, 1973    2 loops, Caswell, Jones, 1974  3 loops, Tarasov, Vladimirov, Zharkov, 1980 (4 loops, Ritbergen, Vermaseren, Larin, 1997) Z3 Z1 更にクォークの寄与を 加える(QED的寄与)

漸近的自由性 強結合 弱結合 as4までの μ→ ∞ で as→ 0 「漸近的自由性 (Asymptotic Freedom)」 強結合 微分方程式の解 μ→ ∞ で as→ 0 「漸近的自由性 (Asymptotic Freedom)」  「両義性」 高運動量スケール → 弱結合 → クォーク・グルーオン相など        低運動量スケール → 強結合 → ハドロン相 弱結合  摂動論的手法が使える  → いつどこで弱結合が実現するか? 強結合  閉じ込め、 カイラル対称性の破れなどの  非摂動的現象に基づく相対論的束縛状態    メソン   ・・・ q q    バリオン  ・・・ q q q  QCDに基づく解析的理解は非常に困難で  いまだに完全に解けていない問題!   → しかし格子計算を用いて大いに発展        (詳しくは山田氏の講義を参照) _ 弱結合 強結合

弱結合領域の実現 解析的理解の成功 → 弱結合領域を如何にして見出すか 外部からコントロールできる条件 → 温度、密度、散乱エネルギーなど 外部からコントロールできる条件 → 温度、密度、散乱エネルギーなど 大きなスケールにより特徴づけられる「極限状態」 → 有効的に結合定数が小さくなる! 温度 GeV 密度(クォーク化学ポテンシャル、GeV) → 高温、高密度では束縛が解ける。 高エネルギー散乱ではハドロン内の クォークやグルーオンのダイナミクス が弱結合で記述できる。 強結合 a=0.4 弱結合

弱結合領域:「素朴」な描像 (1)理想気体としてのクォーク・グルーオン・プラズマ (2)自由な点状パートンの集まりとしての陽子

弱結合領域:「素朴」な描像(1) _ Neff= Nboson+(7/8) Nfermion 有効自由度 高温、高密度では、相互作用が有効的に弱くなり、束縛が解ける                   (閉じ込め・非閉じ込め相転移、カイラル対称性の回復)  → クォーク・グルーオン・プラズマ状態が生じ、     そこでは、クォークやグルーオンが自由に動き回ることができる     相転移温度 Tc は、各相での自由ガス(クォーク・グルーオンvsパイ中間子)の     「状態方程式」を比較して決まる 相対論的自由ガスの状態方程式 (m=0) p = aNeff T4   a = p2kB4/90( h c )3 Neff= Nboson+(7/8) Nfermion 有効自由度 QGP: Neff = 2*8 + (7/8)*2*3*(nf=2)*2= 37 さらに、bag pressure –B を加える!  QGPを作るために必要なエネルギー密度 Hadron: Neff = 3 (p+, p-, p0) T >Tc では、p(QGP) > p(hadron)、QGPが安定 Tc ~ 100 MeV  ( B=(150MeV)4 は                  ハドロンの質量を再現) _ ハドロン相 Hadron phase クォーク・グルーオン・プラズマ相 Quark-Gluon Plasma phase 温 度 密度

弱結合領域:「素朴」な描像(2) 陽子の内部構造 深非弾性散乱 Deep Inelastic Scattering (DIS) 陽子をそれよりも十分小さなスケールを持つ『硬いプローブ』 (仮想光子)で叩くことで、 陽子の内部構造を知る  electron(k) + proton(p)  electron(k’) + X 2つのLorentz不変な独立変数 Q2 = –q 2 > 0 : 光子の仮想度 x = Q2/2p・q : Bjorken 変数 = Q2/(Q2 +W2 – M2) W2 =(p+q)2 > M2  0 < x < 1 qm pm – – –

2つの変数の意味 g* 陽子のInfinite momentum frame (陽子が非常に大きな運動量で走っているローレンツ系) Q2 = qT2 : transverse resolution x =p+/P+ : longitudinal mom. fraction where P+ = (P0 + P3)/21/2 g* 1/Q transverse longitudinal 1/xP+

弱結合領域:「素朴」な描像(2) y=q・p/k・p Bjorken極限: Q2, n =p・q  ∞ ( xは固定 x=Q2/2n ) 非常に「細かい」解像度をもつ(仮想)光子で核子を叩くと(深非弾性散乱)、 ほとんど自由に動き回る構成粒子(パートン)を見ることができる。  パートン模型 パートンは点状粒子であるので、散乱断面積は解像度に拠らない  「スケール則」 核子の構造関数  y=q・p/k・p Bjorken極限: Q2, n =p・q  ∞ ( xは固定 x=Q2/2n ) 実験事実 Fi (x,Q2)  Fi (x) Bjorken スケーリング -- 核子は「点状粒子」からなる!(そうでなければ、 Q2 に依存する) -- 素朴なパートン模型: 陽子は独立に運動するパートンの集合体であり、その分布は確率  q(x)dx であたえられる( x はパートンの運動量比)    F2(x)= 2 x F1(x)= S q eq2 x q(x) q(x) クォーク分布関数 -- Bjorkenスケーリングの 弱い破れ  log Q2 dependence (QCD effect!)

陽子の構造関数 xが大きくない時には、 スケーリングの「破れ」が見える  QCDの効果 「DGLAP発展方程式」 により、概ね理解される   により、概ね理解される Bjorken スケーリングはxが比較的 大きなところ(x~0.1)で成り立つ xの大小で何が違う?

核子中のパートン分布 x x gluon 運動量 分布 1 1/3 運動量分布が広がる 比較的大きなxのパートンはヴァレンス的描像を表現し、  運動量   分布 陽子が3つのヴァレンスクォークからなり、全運動量が3つに等しく分配されているなら gluon x 1 1/3 運動量分布が広がる しかし、核子中ではクォークはグルーオンを放出して 運動量を互いに交換し得る(QCDの効果、発展方程式) 比較的大きなxのパートンはヴァレンス的描像を表現し、 QCDの効果はあまりない。一方、小さなxは影響を受け易い

核子中のヴァレンスクォーク分布 HERA実験(DESY研究所) ZEUSグループの実験結果からフィット してえられたu, d-quark distribution (Q2=10GeV2 ) x=1/3 の周りにピークを持つ ↓  ヴァレンス粒子に関しては、核子が弱く 相互作用する点状の粒子(パートン)の 集合だという描像は、確かに正しい。

今までのまとめ ハドロンとは、強い相互作用をする粒子の総称で、下部構造としてクォークやグルーオンを持つ。そのダイナミクスはSU(3)ゲージ理論である量子色力学(QCD)によって記述される。 QCDにおける結合定数は「漸近的自由性」という性質を持ち、取り扱う対象のスケールによって、結合の強さが変わる。それに起因して多彩な現象が生ずる。 特に高温、高密度、高分解能などを考えると、弱結合が議論できて、クォーク・グルーオン・プラズマ状態や、弱く相互作用するパートンの集まりとしての核子などの描像が得られる。

第2時限 摂動で事が済むのなら、単なる計算に終始する だけであり、最低次で「本質」さえ捉えれば、 その物理系は理解したと言える。高次項の計算 なんて、最低次の「補正」だろうが。そんなことは やる価値ない。計算が得意で好きな人に任せて おけばいい。 と思ったら、相当ソンをしてます。

極限状態でのハドロン物理 高エネルギー散乱 高温 高密度 単純な弱結合系ではなく、「弱結合多体系」特有の面白さがある 自然は今まで述べたような素朴な描像で理解できるほど単純ではない。現実はもっと奥が深く、興味深い! 高温 M1-67星雲(Hubble space telescope) 高密度 海底探査船しんかい6500 高エネルギー散乱 どこかの教会のステンドグラス 単純な弱結合系ではなく、「弱結合多体系」特有の面白さがある

1.高温 第0次(自由ガス状態)に対する摂動補正は正しいか? 例) g2f4模型 O(T) : hard O(gT) : soft O(g2T) : super-soft scale     D –1 = P2 – P(g,T)   自己エネルギー P に対する1ループの温度依存寄与 n(k): Bose-Einstein分布 n(k) T ループ積分:運動量がハードなオーダー k ~ T までが効く         → 硬熱ループ(Hard Thermal Loop) 外線がhard以上のときは摂動展開が良いが、ソフト p ~ gT の時、 摂動展開が破綻してしまう!←「熱浴」の存在、「多体効果」  再足し上げの必要性: Hard Thermal Loop Resummation

高温QCD摂動論 QCD: gluonのself energy → Debye遮蔽質量 mD ~ gT                QGP内でのカラー電場の到達距離~1/mD Hard Thermal Loop Resummation Braaten & Pisarski, 1989       あらかじめHTLの部分を足し上げた上で摂動展開を行う Ex)   L = L0 + Lint  (L0 + ½ mj2 ) + (Lint – ½ mj2 )      摂動として扱える      → どうやってこのような「良い摂動論」を見つけるかが問題。         様々なアイディアがある。         特にゲージ理論の場合、ゲージ不変に行う必要があり、難しい。 ←格子計算 ↑HTL 成功例) エントロピー Blaizot, Iancu, Rebhan, 1999

2.高密度 第0次(クォークの巨大Fermi球)に対する摂動補正は正しいか? クォーク同士の相互作用にはいつも引力のチャネルがあり(反対称3 )、どんなに弱くとも Cooper不安定性が生ずる。  →  クォークのCooper対の形成: カラー超伝導 _ 弱結合でも、非摂動的現象 → Fermi球を大きく変化させる ギャップの正確な評価  (1グルーオン交換) QCDに特徴的なこと     1.長距離のカラー磁気的相互作用がギャップの主要な寄与     2.カラーとフレーバーの結合(Color Flavor Locking, CFL)   3.引力はFermi面付近に限られず、原理的に全てのクォークに効く     4.密度が小さくなると、引力も強くなる → 強結合への変化

1. & 2.高温、高密度 M. Alford 結合定数の等高線図に定性的に一致

3.高エネルギー散乱 陽子は「3つのクォークからなる」という素朴な描像は正しいか? 電子陽子深非弾性散乱 qm pm 横方向 縦方向 電子陽子深非弾性散乱 qm pm 陽子の内部構造を記述する2つの変数      Q2 = - q2 = qT2 : 光子(プローブ)の仮想度、横方向の解像度      x = Q2/2pq =p+/P+ : Bjorken変数、縦方向の構成子の運動量比 内部構造は見る変数の領域によって変化 ← 発展方程式(DGLAP,BFKL方程式)      十分大きいQ2  as(Q) << 1 より 「弱結合的手法」が使える 高散乱エネルギーの極限 (W2 >> Q2)   x = Q2/(Q2+W2)  0 small-x の物理

小さいx(高エネルギー)ではグルーオンだらけ! 陽子の内部構造 (再び) 陽子が単純に3つのvalence quarkからなれば、全運動量はその3つに分配されるだろう 1/3 1 P x Distr. しかし、実際には 高エネルギー x ~ Q2/(Q2+W2) 図は本来の20分の1 小さいx(高エネルギー)ではグルーオンだらけ! 素朴なヴァレンス描像は、実際の散乱では(見る場所によっては)役立たない。 高エネルギーでは、陽子は高密度グルーオン状態じゃないか!

多重グルーオン放出 A0 ~ aS ln 1/x ~ (aS ln 1/x)n n 実際、x が十分小さい時、「ラピディティー」 y = ln 1/x に対する「発展」では 単純な摂動展開は破綻 ← (aS ln 1/x)n (n>0) についての再足し上げが必要                                       BFKL方程式 A0       ~ aS ln 1/x ~ (aS ln 1/x)n 散乱エネルギーの増加  グルーオン数 ~ S Cn (1/n!) (aS ln 1/x)n ~ exp{ w aS ln 1/x } n 深刻な問題:グルーオン数の急激な増大 → ユニタリ性の破れ

「カラーグラス凝縮」の出現 希薄 稠密 高エネルギー散乱 → 単純な摂動的(valence的)描像とは程遠い! グルーオン増加  グルーオン同士が相互作用 g  gg グルオン生成 vs gg  g 再結合 → Balitsky-Kovchegov方程式 希薄 低エネルギー 稠密 高エネルギー Balitsky ‘96, Kovchegov ’99 グルオンの強い場についての再足し上げをさらに行う 増加と減少がつりあった飽和状態 (unitary) [Logistic方程式(人口問題)、FKPP方程式(拡散反応系)との類推可能] カラーグラス凝縮 カラー: グルーオンからなる グラス: 価パートンなどは2次元面にランダムな       配位で張り付いて運動が凍結している。      まるでスピングラス。 凝縮 : グルオン数が非常に高い 高エネルギー散乱 → 単純な摂動的(valence的)描像とは程遠い!  飽和した高密度グルーオン状態     板倉、物理学会誌2004年3月, hep-ph/0511031

幾何的スケーリング カラーグラス凝縮の強力な証拠 光子・陽子全散乱断面積 (HERA)の Bjorken変数xの小さいデータに発見 Stasto,Kwiecinski,Golec-Biernat, 2001 g*p total cross section カラーグラス凝縮の強力な証拠 1.飽和運動量Qs(x)とスケーリングの 自然な解釈を与える 2.理論で得られたx依存性が実験と同じ                                Triantafyllopoulos 2003 3.幾何的スケーリングがカラーグラス凝縮の領域外でも存在できる限界を評価                          Iancu,Itakura,McLerran 2003

陽子の「相図」 QS2(x) ~ 1/xl: x  0 につれて増大 1/x Q2 in log scale カラーグラス 凝縮      as(QS2) << 1 弱結合 カラーグラス 凝縮 幾何的スケーリング領域 散乱エネルギー大  QS4(x)/LQCD2 BFKL, BK 非摂動的 (Regge理論) 1/x in log scale パートンガス領域 DGLAP  摂動的 LQCD2 Q2 in log scale   横分解能大 

強結合領域へ外から接近する ハドロン相、強結合相への接近 ←→ 結合定数の増大 ハドロン相、強結合相への接近 ←→ 結合定数の増大    摂動的記述は難しくなるが、同時に多様な興味深い現象が期待される 温度 エネルギー 1.高温側から低温へ 3.Q2を小さくしていく 非摂動 2.高密度から低密度へ 非摂動 密度 横分解能 Q2

1.高温から低温へ as それほど小さくない → 強く相互作用をするQGP 粘性が小さい(完全流体?) RHICでの流体模型の成功 温度 密度 1.高温側から低温へ 非摂動 Spectral function ρ(ω) J/ψ(3.1GeV) as それほど小さくない   → 強く相互作用をするQGP   粘性が小さい(完全流体?)   RHICでの流体模型の成功 カイラル対称性は回復していても 束縛状態が残っている   例) J/ψ は1.6 TCまで生き残る Asakawa & Hatsuda 2004

2.高密度から低密度へ 1. ストレンジネスの質量が無視できなくなる 温度 密度 2.高密度から低密度へ 非摂動 1. ストレンジネスの質量が無視できなくなる  → Fermi面が up (down), strangeに対して     同じ大きさでなくなる ペアを作りにくい  → Fermi面をずらして重なりを作り、運動量     を持つCooper対を作る可能性 (LOFF:Larkin, Ovchinnikov, Fulde, Ferrell)            Alford, Bowers, Rajagopal, 2000 2. 引力が強くなる → 弱結合BCSから「強結合BCS」あるいは「BEC」へ Matsuzaki,Abuki-Itakura-Hatsuda, 2002 BEC BCS pF(MeV) ξc/dq Cooper pairの大きさ  ≫ 平均quark間距離 BECがあるなら、qqの束縛状態が 凝縮していない状態もその外側に あるはず Abuki, Nishida, 2005 Cooper pairの大きさ  ~ 平均quark間距離

3.Q2を小さくする Quark-Hadron Duality F2 構造関数がクォーク自由度でもハドロン自由度でも 非摂動 横分解能 Q2 エネルギー 3.Q2を小さくする Quark-Hadron Duality 構造関数がクォーク自由度でもハドロン自由度でも   記述できる(resonance peak除く) 低エネルギー (J-Lab、左)・・・ 陽子に対するDuality 高エネルギー (HERA、右)・・・ 光子に対するDuality (Vector meson dominance) F2 from CGC↑ F2 from VMD → ← Iancu, Itakura, Munier 2004 ↓Alwall, Ingelman F2

相対論的重イオン衝突実験 RHIC:クォーク・グルーオン・プラズマを実験で作ることを目的とされたプロジェクト 幾つもの興味深い現象が発見された 高密度エネルギーの状態が生成したことによる「ジェット抑制」が観測 QGPの生成? カラーグラス凝縮の存在も示唆 今まで述べてきたような、様々な物理現象を含む過程であり、総合的な理解が必要

RHIC RHIC Basics: RHIC = Relativistic Heavy Ion Collider 2 counter-circulating rings 3.8 km circumference 1740 super conducting magnets Collides any nucleus on any other Top energies: 200 GeV Au-Au 500 GeV polarized p-p Flexible machine: Species (p+p, d+Au, Cu+Cu, Au+Au) Energies (19, 22.5, 62.4, 130, 200 GeV) 4 Experiments

相対論的重イオン衝突 階層間を往来する典型的事象 (原子核 → QGP → ハドロン) RHICにおける金と金の核子あたり200GeVの正面衝突  閉じ込めのために、終状態として測定できるのはハドロンのみ。 途中で生成したQGPの情報が如何にして最終的な粒子に伝わるのか。 → QGPシグナルの問題    J/psi suppression, jet quenching, etc

Relativistic Heavy Ion Collision 5 0. Gluon dominant nuclei described as Color Glass Condensates 3. Hadronization Fragmentation vs recombination 4. Particle abundances fixed 5. Particle “freeze out” free streaming 1. Collision!! Hard scatterings  Thermalization  QGP Plasma instabilities?? 2. QGP expands and cools down Perfect fluid?? 4 3 2 1 Original figure by T. Chujo’s, modified by KI

まとめ *QCDの漸近的自由性 → 弱結合が極限状態で実現 「弱結合多体系」 *「多体効果」により、素朴な摂動展開が破綻 → 新しい物理の存在を意味する  Quark Gluon Plasma - HTL resummation - Magnetic screening カラーグラス凝縮 温度 密度(化学ポテンシャル) 強 結 合 強結合 ハドロン相 横分解能 Q2 エネルギー 弱結合 幾何的スケー リング領域 Strong QGP? パートンガス Quark-hadron duality? LOFF or BEC? カラー超伝導 触れられなかったトピック 相転移の次数、非平衡過程(プラズマ不安定性など)、ハドロン生成過程(破砕過程か再結合か)、 中間密度における他の可能性(カラー強磁性、揺らぎの効果等)、QGPやCGCにおけるスケールの 分離と繰り込み群的考え方

最後に:ハドロン・原子核理論研究 @ KEK 主な目的:強い相互作用の支配する多様な現象を量子色力学(QCD)や      有効模型に基づいて研究 スタッフ:熊野 核子の偏極パートン分布関数、         原子核のパートン分布関数 など      森松 有限温度のQCD,エキゾチックなハドロン、など      板倉 高エネルギーや高密度などの極限状態のハドロン      土手 K中間子を含んだ原子核、高密度原子核 その他: ポスドク(2名)、博士課程(1名)、修士課程(2名) 活動:週1度のセミナー(外部から講演者を呼ぶ)主に金曜    自主的なゼミ(輪講)、総研大学生のための授業 総研大の院生として、積極的で研究意欲が旺盛な学生が望まれます。   具体的な問い合わせは、熊野( shunzo.kumano@kek.jp )へ KEKは、実験で検証しながら理論研究を進めていく研究者 を目指すうえで最適な環境。J-PARCが東海に建設中。 ハドロン物理は、その主軸の一つ。

Extra slides

Important Experimental Results Deep inelastic scattering (DIS) at HERA  Steep rise of F2 (and gluon density) at small x g* 1/Q 1/xP+ Q2 = qT2 : transverse resolution x =p+/P+ : longitudinal mom. fraction High density gluons appear at small x =“high energy scatt.”

Important Experimental Results Hadronic cross section at high energy (total cross sec. for pp) S1/2 10 102 103 104GeV cross section (mb) Including cosmic ray data of AKENO and Fly’s eye -- [COMPETE Collab.] The coefficient B is universal (B=0.308mb) for pp, p p, p p, etc….. Most recent PDG  consistent with ln2 s. -- saturating unitarity (Froissart) bound

Reaction-diffusion dynamics Munier & Peschanski (2003~) With a reasonable approximation*, the BK equation in momentum space is rewritten as the FKPP equation (Fisher, Kolmogorov, Petrovsky, Piscounov) where t ~ Y, x ~ ln k2 and u(t, x) ~ NY(k). Well-understood in non-equilibrium statistical physics including directed percolation, pattern formation, spreading of epidemics… FKPP = “logistic” + “diffusion” u=1: stable Logistic : “reaction” part, transition from unstable to stable states Diffusion : expansion of stable region  Traveling wave solution t t’ > t u=0:unstable *take the 2nd order expansion of the BFKL kernel around its saddle point

Saturation scale & Geometric scaling Fact 1: For a “traveling wave” solution, one can define the position of a “wave front” x(t) = v(t)t .  x(t) ~ ln Qs2(Y) Saturation scale ! NLO BFKL : 1/QS(Y) : transverse size of gluons when the transverse plane of a target is filled by gluons. “Boundary” btw dilute and saturated regimes Precise form of QS(Y) determined R dilute saturated Fact 2: At late time, the shape of a traveling wave is preserved, and the solution is only a function of x – vt.  x - v(t)t ~ ln k2/Qs2(Y) Geometric scaling !! Observed in HERA DIS at small x QS(Y) from the data consistent with theoretical results. Geometric scaling approximately holds even outside of CGC!!  “Scaling window” [Iancu,KI,McLerran] [Stasto,Golec-Biernat,Kwiecinski]