2007/5/27-28 実験結果報告 2007/9/19 京都大学 服部香里
検出器開発 今回の実験で挙がった問題点 ノイズ 検出効率の非一様性 efficiency 大強度ビームを当てたときの焼きつき (検出器のgain変化) GEMのInduction fieldが弱い
ノイズ 特定のstripのcount rateが高い anode, cathodeともに 35, 99, 163, 227チャンネル(64chおき) count rateがノイズのrateに比べて十分高いので、 問題にならない 電気的ノイズかposition encoderのプログラムのバグか? アモルファスカーボン 4×106 event ノイズでイメージが 格子状になっている 電極の放電により Stripをカット
検出効率の非一様性 μ-PICのgainに非一様性がある gainが低いとthresholdにかからず、検出効率が落ちる 左上の検出効率 が低い <改善方法> ノイズレベルを下げて、 thresholdを下げる Gainの向上 μ –PICのさらなる改良
efficiency 13.8 keV で Al 0.5 mm 透過率 25.2 % Xe 4mm 吸収率 16.4 % 検出効率 最大 4.13 % 検出効率向上のために 入射窓の素材を変える グラッシーカーボン、Be 東海カーボンにてグラッシーカーボン窓厚み1, 2, 3 mmを製作 業者の話では2,3 mmあれば真空に耐えられるらしいが、 きちんと試験していないので、こちらで真空試験 納期は9月半ば頃 C 透過率 1mm 86.2 % 2mm 74.3 % 3mm 64.1 % ガス層を厚くする 今の真空槽では、ガス層は最大6 mm程度までしかとれない 6 mm厚のdrift cageは設計、発注済み(ついでに8 mmも) 厚い真空槽を作る
焼きつき 大強度ビームを照射すること により、gainが上がったり 下がったりして起こる 今回はgainの向上が見られた grid maskで局所的に ビーム照射後、 PSLatexのイメージを とると、grid maskの イメージが薄く残っている ビーム照射部分だけ gainが上がって検出効率が 上がったため μ-PIC, GEMのHVを一旦 OFFしたが、改善されず Thresholdを10 mV下げたら 見えなくなったので、今回の 実験には影響はなかった 今後 ビーム照射時のgainの変動をFlash ADCで測定したい
5月の実験では GEMのIndution fieldが弱かった →焼きつきの原因?
5月の実験セットアップ -HV Cu drift plane (5μm) -HV 4mm electron cloud GEM 5mm drift電場 0.5kV/cm electron cloud polyimide (50μm) GEM -HV 5mm Induction field 0.6kV/cm(通常2kV/cm程度) μ-PIC 通常Induction fieldは2 kV/cm程度でGEMを動かすが、 結晶構造解析用セットアップはなぜか今まで 0.6 kV/cmで使っていた Induction fieldを上げるとイメージの焼きつきが 改善されることが期待される(次頁以降で説明) 不当に低いInduction fieldによって、検出効率が落ちて いたことを6月のPF実験で確認→改善した
Dependence of total gain on induction field 以前、μ-PIC + GEMシステムで、 μ-PIC 、GEMの電圧一定のまま Induction fieldを変えて、total gainが変わるかを試験した結果 5.9 keV (55Fe)照射 ΔVGEM = 250V EI=2kV/cmでgain10 Induction Field[kV/cm] Effective gas gain drift電場0.6kV/cm μ-PIC gain 3×103 通常の使用範囲 ガスAr 90 % C2H6 10% Xeではないが、傾向は同じ X線結晶構造解析 the system unstable @ gas gain of ~ 105 これ以上は測定できず 今までgainを損していた!
電子のGEM透過率 Induction fieldを強くすると、何故gainが上がるか? 電子のGEM透過率が上がるためだと考えられる Drift region Induction region GEM Induction fieldが弱いと、 電気力線はGEMの穴を通り抜けず、 GEM上部の銅電極に終端してしまう →gainの低下 チャージアップ? Induction fieldを強くすると、チャージアップが 改善され、イメージの焼きつきも緩和すると 考えられる
6月のKEK-PF実験結果 PFは強度が弱いので、イメージの焼きつきは試験できなかったが、 Induction fieldとgain, count rateの相関を測定をした Induction field以外はSpring-8と同じ Xe 70% C2H6 30% μ-PIC 460 V VGEM 400 V drift電場 0.5 kV/cm X線 17.5 keV Threshold ±45 mV Induction field [kV/cm] pulse height [mV] count rate [kHz] anode current [nA] 0.63 10 96 47 1.25 25 160 87 1.50 30 171 102 1.75 35 178 117 今まで Gain, count rateの向上がみられた Induction fieldをこれ以上あげると、drift planeと真空槽の間で放電が起きる可能性が あるので、これ以上は測定しなかった 次回、Spring-8実験においてもこのような測定をし、gain, count rateが向上するかを 確認し、イメージの焼きつきが改善するかを確かめたい
今後の検出器開発計画 μ-PICのgain変化を測定するために、Flash ADCを立ち上げる 既存のFADCを使うので、すぐできる 10cm μ-PIC 9月末~ グラッシーカーボン窓を取り付けての真空耐久試験 drift planeのアルミマイラーが一部破れていたので修理 30cm μ-PIC 10月初め GEMを入れられる真空容器が完成 真空試験 GEMを取り付けてHV試験 次の実験までに システム構築(ASDの取り付け、ノイズ落とし、検出器の安定動作)
データ解析現状報告 コラーゲン qの導出(ベヘン酸銀) PSLatex grid mask フェリチン イメージ見えず(検出効率が低いことにより、長時間照射して試料が壊れたからか?) 楕円フィット
コラーゲン stripとの角度依存性 45度 Stripとなす角20度 高次のピークまで Stripと平行 pitch 400μm クリアに見える 45度はpitchが細かくなることにより、 よりクリアに見えている Stripと平行 pitch 400μm 45度 μm 解析手法は同じ (幅1.6 cmの帯状に積分) 以後コラーゲンは 45度のデータを解析 q
コラーゲン 何イベントでどれだけのピークが見えるか? 高速データ取得の可能性を検証 5×104 event 105 107 106
カメラ長の導出 ベヘン酸銀のデータを用いてカメラ長を導出 扇形に積分(12度) stripとなす角が45度 付近のデータを使用 ビーム中心付近のstripとのaccidental event が帯状に見える 1次のピークより、カメラ長220.04 cm σ5.56 cm(2.14 strip相当) 楕円補正により、より正確な値を求められることが期待される(現在解析中) 2, 3次のピークの結果も同様
qの導出、CCDのデータとの比較 黒:μ-PIC 青:CCD CCDは感度補正を していないので、 広角側で減衰の 仕方にずれがある これはカメラ長によるものと考えられる r:検出器面上でのビーム中心からの距離 l:カメラ長 上式からもわかるように、広角にいくにつれて、ずれが大きくなっている μ –PICの解析で、l=218 cm とすると、CCDとピークの位置が一致した →カメラ長の問題、楕円補正
PSLatex 構造が見えない (データ取り始めだけ見ても×) 黒:PSLatex+buffer 同じ解析手法で年末の 青:buffer 105 黒:PSLatex+buffer 青:buffer 赤:PSLatex 構造が見えない (データ取り始めだけ見ても×) 同じ解析手法で年末の データも解析したら 伊藤さんの結果と一致したので、 解析手法はOKなはず q-4で落ちるはず fitの結果は-3.93 dynamic rangeが105 とれたのは前回と同じ q[Å-1]
Grid mask イメージに歪みがあるか? 顕著な歪みはなし ビーム強度を変えても 穴位置は変わらず ビーム強度を変えたとき、 プロファイルの変化を 調べた 二通りの方法で強度を変化 1.上流に置くAl板の厚さの 変化 2.ビームサイズを変化 ←Al板を透過してくる高調波の 影響を調べるため ビーム強度が強いほど 穴の広がりが抑えられているようだ 現在解析中 ノイズとのaccidental coincidence
楕円フィット 試料 ビーム軸 理想的には検出器はビーム軸に垂直に置かれる 実際は垂直ではないため、粉末結晶の回折像は楕円になるため、 円を仮定して解析すると正しい2θが求められない、ピークが広がる 検出器の傾きを求めて、正しい2θを得る 検出器の傾きをEuler角(θ0, φ, ψ)で表すと、 θ0 :検出器に垂直な軸のビーム軸からの傾き φ :検出器に垂直な軸の回転角、回転軸はビーム軸 (回折像はビーム軸回転に対して不変なので、φは楕円フィットに使わない) ψ :検出器の座標(X, Y)の回転角、回転軸は検出器に垂直な軸 粉末結晶の場合、2θのイメージは、 をさらにψ回転したものになる
フィット結果(1) 完全に楕円上に並んだ点に対するフィットでは、 パラメータがまるめこみ誤差程度の範囲で一致することを確認 楕円の周囲にガウス分布(σ=0.08、ベヘン酸銀のピークと同程度の値)するデータを作って、 フィットがほぼうまくいっていることを確認 リアルデータのフィットはこれから フィット前 フィット後 ベヘン酸銀の値を再現 Ψはフィットで正しく求められない 円に近い楕円の場合、ψの影響は 小さく、ガウス分布に吸収されてしまう (円から大幅にずれた楕円の場合も 正しく求まる) 検出器はほぼ水平なのでΨ~0 Ψ=0と仮定してフィット 二つの楕円を同時にフィット L=220にある、ビーム軸に垂直な 検出器で得られるイメージに 焼きなおした 楕円フィットで得られた値
楕円フィット(2) 5月の実験で得られたイメージのように、1/4円の場合、さらに悪くなる 前ページとパラメータは同じ フィットで得られた値 二つの1/4円を同時にフィット ほぼ円に近い楕円の場合、楕円フィットは有効な方法であるか要検討 実際のデータを楕円補正して、良くなるかどうかで補正の有効性をテスト
楕円フィット(参考) 歪んだ楕円の場合 PF実験のCeO2の測定と似た状態で シミュレーション フィットで得られた値 イメージのボケを防ぐために、μ-PICを45度程度に傾けておくが、 そのような測定に楕円補正は有効であり、妥当なフィット結果を 得られると期待される
まとめ 格子状のパターン・・・原因の見極めが必要 検出効率の非一様性・・・gainの向上が手っ取り早い efficiency・・・グラッシーカーボン入射窓 大強度ビームを当てたときの焼きつき (検出器のgain変化)・・・ GEMのInduction fieldを強くする GEMのInduction fieldが弱い・・・次回実験で改善 コラーゲン・・・前回より高次までピーク分離に成功 qの導出(ベヘン酸銀)・・・カメラ長に1%程度の誤差有 PSLatex・・・今回の実験は失敗(試料) grid mask・・・ビーム強度が強いほど広がり小 フェリチン イメージ見えず 楕円フィット・・・解析方法はほぼ確立、実験データの解析へ