CALETで用いる電荷弁別型検出器(CHD)のビーム実験による性能評価 渡邊仁規,赤池陽水,伊藤大二郎,植山良貴,小澤俊介,笠原克昌,苅部樹彦, 九反万理恵,近藤慧之輔,鳥居祥二,中村政則,仁井田多絵,二宮翔太,舟橋良輔, 田村忠久A,片寄祐作B,清水雄輝C,内堀幸夫D,北村尚D,P.S.MarrocchesiE,M.G.BagliesiE,G.BigongiariE,S.BonechiE,M.Y.KimE, P.MaestroE 早大理工研,神奈川大工A,横国大工B,JAXAC,放医研D,Univ. of SienaE
CALET実観測における原子核成分測定の基礎データとする 発表の流れ CALET-CHD(CHarge Detector) セグメント化されたプラスチックシンチレータをX-Yに積層 →IMCでの粒子入射位置特定により、後方散乱の影響可能な限り除去 重原子核観測内容 ・一次核 (1≦Z≦26) (~1000 TeV/particle) ・超重核 (26<Z≦40) ・二次核/一次核比(B/C) (~TeV/n) プロトタイプ試験 HIMAC重イオン照射 →重イオンにおけるクエンチング効果を考慮した電荷分解能の算出 CALET実観測における原子核成分測定の基礎データとする
CHD(CHarge Detector):電荷検出器 CALET-CHD概要 上面 450 側面 CHD(CHarge Detector):電荷検出器 プラスチックシンチレータ(EJ-204)とアクリル製ライトガイドで接続 光電子増倍管(R11823)で信号読み出し x軸、y軸にそれぞれ14本積層 32 mm 84 mm 450 mm 450 ELJEN社製プラスチックシンチレータ EJ-204 Size 450×32×10 mm3 Wavelength of Max 408 nm Rise Time 0.7 ns Decay Time 1.8 ns Scintillation Efficiency 10400 photons/MeV Attenuation length 1600 mm Density 1.032 g/cm2 浜松ホトニクス社製光電子増倍管 R11823(R7400ベース) Photo cathode Φ8 mm,Bialkali Peak wavelength 420 nm Rise Time 0.78 ns Gain @ -400 V 5000 Q.E 30% カタログ値(BC404相当)
CALETによる観測(5年間)で期待される原子核成分観測 B/C比:伝播過程 超重核:超新星爆発での元素合成過程 P , He 及び 一次核 (C,O,Ne,Mg,Si,Fe)→伝播機構 O Mg Ne Fe Si C
HIMAC実験概要 放射線医学総合研究所 重イオン加速器 HIMAC 物理汎用(PH2)ビームライン BEAM Trig1,2 Trig1:トリガー用プラスチックシンチレータ(65×65×0.5 mm3) Trig2:トリガー用プラスチックシンチレータ(100×100×0.2 mm3) Target(Acrylic):破砕核を生成するためのアクリル(1cm厚) →核破砕により二次核生成 CHD:プラスチックシンチレータ SIA:ビーム位置特定用シリコンストリップ(0.732 mm間隔) →CHDに入射する粒子の位置特定 Target(Acrylic) CHD SIA Trig サイズ確認 BEAM Trig1 Target(Acrylic) SIA CHD 0 15 30 35 155 (cm) Trig2 実験装置配置図(2011.12)
データ収集系セットアップ ・CHDの信号読み出しはCALET相当のアンプを使用 ・Trig1, 2はCS-ADCにて読み出し fC/ch Ped High Gain 1.14 213.2 Middle Gain 3.64 47.34 Low Gain 7.29 164 ・CHDの信号読み出しはCALET相当のアンプを使用 ダイナミックレンジ確保のため,Shaping Ampのゲインを3系統に ・Trig1, 2はCS-ADCにて読み出し ・SIA(シリコンストリップ+シリコンピクセル)はUSBにて制御・読み出し Middle Gain:CALETのダイナミックレンジ相当 Divider CHD(-420 V) Pre Amp Trig1(-1500 V) Trig2(-1400 V) Discri(-30 mV) Coincidence Gate Generator DC-PW ±12V SIA CPU QDC USB接続 CAMAC Low gain VME PH-ADC 16bit Discri(-50 mV) LAN Shaping Amp. High gain Middle gain Low gain
照射ビーム概要 Si (Z=14, 800MeV/n), Kr (Z=36), Ge (Z=32), Fe (Z=26) (各500MeV/n)を破砕前の1次核として照射 ビーム強度:〜250event/spillに調整(Cycle 3.3s, flat top 0.7s) ビーム広がり:1~2cm 10 mm Si 800 MeV/n 約3.5×105 Events 10 mm Kr 500 MeV/n 約7.0×105 Events Si Kr Ge Fe エネルギー [MeV/n] 800 500 ビーム サイズ ~2cmΦ ビーム強度 ~250counts/spill イベント数 ~3.5×105 ~7.0×105 ~1.0×105 ~4.0×105 照射時期 2011.5 2011.12 10 mm Ge 500 MeV/n 約1.0×105 Events 10 mm Fe 500 MeV/n 約4.0×105 Events SIA内のシリコンストリップ検出器にて測定した各1次核種照射時のビームプロファイル
破砕核によるCHDのADC分布(Raw Data) アクリルターゲットによる破砕核 各核種による出力ピーク→電荷 各ピークの分布の幅→電荷分解能 多重入射イベントを含む Fe(26) Fe 500 MeV/n 4.0×105 Events Si Kr(36) Kr 500 MeV/n 7.0×105 Events Ge Fe ADC counts [ch] Ge(32) Ge 500 MeV/n 1.0×105 Events Counts Si(14) Si 800 MeV/n 3.5×105 Events C N He O
シリコンストリップ検出器を用いてイベント選別 多重入射イベントの選別 電荷分解能向上のため、多重入射したイベントの選別を行う 複数の破砕核がCHDに同時に入射 →入射電荷量が不確定になる シリコンストリップ検出器を用いてイベント選別 複数の破砕核が同時に入射 17ADU 多重入射イベント選別方法 較正用に照射した陽子230 MeVにて電荷入射時の1チャンネルあたりの閾値を決定(→17 ADU) プラスチックシンチレータとシリコンストリップが重なる範囲で2チャンネル以上の出力があった場合、多重入射イベントと判定 →解析イベントから除去 プラスチックシンチレータと シリコンストリップが重なる領域
多重入射イベントの除去により、分解能が改善 多重入射イベント除去後のADC分布 Kr(36) Ge(32) Counts Ge 500 MeV/n 1.0×105 Events Counts Ge Fe Fe Kr 500 MeV/n 7.0×105 Events ADC counts [ch] ADC counts [ch] Fe(26) Counts Si(14) Counts N O Si C Fe 500 MeV/n 4.0×105 Events Si 800 MeV/n 3.5×105 Events ADC counts [ch] ADC counts [ch] 多重入射イベントの除去により、分解能が改善
破砕核の電荷量と電荷分解能 Si(14) Kr 500 MeV/n 約7.0×105 Events Ge 500 MeV/n Counts Counts Kr 500 MeV/n 約7.0×105 Events Ge 500 MeV/n 1.0×105 Events Ge Fe Fe ADC counts [ch] ADC counts [ch] Counts Counts Counts Si(14) Fe 500 MeV/n 約4.0×105 Events Si 800 MeV/n 約3.5×105 Events N O C 13 8700~9800 14 9800~10800 15 10800~12100 N O C Si Si 800 MeV/n 3.5×105 Events ADC counts [ch] ADC counts [ch] 各破砕核のピークを求めるため、とありあうピークを含む3つのガウス関数でフィット
観測に必要なクエンチング効果の検証 クエンチングに関する補正 シミュレーションを用いてADC値と対応する損失エネルギー量を算出 プラスチックシンチレータは、入射粒子のエネルギー損失dE/dxに比例した発光量を示すが、電荷Zの増加に伴い、発光量dL/dxはdE/dxに比例しなくなる →CALETでZ を求める際、クエンチング効果の補正が必要 クエンチングに関する補正 Birksの式* dE/dxに比例せずクエンチングが起こる Tarleの式* dE/dxの一部の割合fhがクエンチングの効果を受けない。 A:シンチレーション効率 Bs:特定のシンチレータに対する実験データに合うように調整するパラメータ 第1項 原子核に近い領域(コア)を通過した重粒子によるクエンチングの効果で減光したシンチレーション光 第2項 粒子入射時、コアの周り(ハロー)に飛散した電子などのシンチレーション光 *Tarle et.al, The Astrophysical Journal 230(1979)pp.607 これまでの実験から得られたクエンチングはTarleの式に従う →重イオン観測時のクエンチングカーブで検証 シミュレーションを用いてADC値と対応する損失エネルギー量を算出
シミュレーションによる損失エネルギー算出 シミュレーションコード PHITSによる計算 横軸ΔE:破砕核がCHDに付与したエネルギー Counts Kr 500 MeV/n 1.2×105 Events Ge 500 MeV/n 5.0×104 Events Kr(36) Counts Ge(32) Ge Fe Fe ΔE [MeV] ΔE [MeV] Fe 500 MeV/n 4.0×105 Events Counts Si 800 MeV/n 4.0×104 Events Counts エネルギー損失算出の手順、GSIの結果とターレ、ビルクスの式の概要、クエンチングカーブ作成手順、エネルギー領域と原子核の種類 Fe(26) Si(14) C O Si ΔE [MeV] ΔE [MeV] 各破砕核のΔEピークを求めるため、実験と同様ガウス関数でフィット
重イオン観測時のクエンチング効果 各ZのADC値と損失エネルギー量を対応させ相関をTarleの式にてFit ADC [ch] 各ZのADC値と損失エネルギー量を対応させ相関をTarleの式にてFit 共同研究者によるGSIでの先行実験と大きく矛盾しない結果 ●:Kr ●:Ge ●:Fe -:GSI イタリアの共同実験グループによるGSIでの CHD性能検証実験 ドイツ・GSIにおいて,Niを一次核として 破砕核を選択的に照射. エネルギーは1.1~1.3GeV dE/dx [MeV・cm2/g] Z≧40も観測可能 A=31.31としたとき、HIMAC実験とGSI実験でのfhとBsの値を比較 HIMAC GSI fh 0.39±0.01 0.36±0.01 Bs [MeV-1・g・cm-2] (8.12±0.4)×10-3 (8.0±0.3)×10-3
電荷分解能 R:電荷分解能 電荷分解能を左式のように定義し,各Zにおける電荷分解能を算出 σZ:分散値 μZ:ピーク値 電荷分解能セレクションとセレクションプラスGSI 空きスペースに分解能の説明 Fe核以上の分解能を算出→超重元素の観測が可能
まとめと今後の課題 CALET-CHDの観測性能検証 HIMACにて重イオン照射試験 Si、Fe、Kr、Geビームをアクリルターゲットにて破砕 電荷分解能 →隣接角からの漏れ出しを考慮し、3つのガウス関数でフィットして算出 Z = 5~20 電荷分解能ΔZ =0.23 Z = 21 ~ 26 ΔZ = 0.25 Z = 28~36 ΔZ = 0.35 クエンチング効果 専攻のGSIにおける実験+シミュレーションと一致し、Tarleの式に従う 今後の課題 照射原子核のCHD入射前のエネルギー損失の不確定性の定量的検討 (照射粒子のβが低いため、エネルギー損失の揺らぎが大きい) マルチヒットの弁別精度向上 (シミュレーションによる検証) CERN-SPSにおける相対論的エネルギーでの重粒子照射(2012)
END
Fe 500MeV/n Fit Fe 500 MeV/n Fe 500 MeV/n 4.0×105 Events
Fe 500MeV/n Fit Fe 500 MeV/n Fe 500 MeV/n 4.0×105 Events
シミュレーションによる 破砕核のエネルギー損失の算出 PHITSを用いたシミュレーションで核破砕によるエネルギー損失を求める Kr Krの二次核分布 Se dE/dx(MeV) Se 電荷Zの2乗とエネルギー損失の関係 同様の手順でFe、Geについても算出 Fe 500MeV/n Kr 500MeV/n Ge 500MeV/n 2.96MeV 3.05MeV 3.02MeV dE/dx(MeV)