ナノデザイン特論2 レーザーの基礎 http://ishiken.free.fr/lecture.html.

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ナノデザイン特論2 レーザーの基礎 http://ishiken.free.fr/lecture.html

レーザー:「20世紀最大の発明」 テクノロジー・産業応用 IT・ナノテク 半導体プロセッサー(リソグラフィー) CD, DVD, 複写機 情報・通信の高速・大容量化 → 光通信、光コンピューティング 生体(医療) 腰痛の治療、歯科治療、手術(レーザーメス)、がん治療 視力矯正(LASIK)、あざ・しみ治療、脱毛 子供の生み分け(性別)← アメリカ、ベルギー

レーザー:「20世紀最大の発明」 レーザーの応用は基礎研究から日常生活までのすみずみにまで行き渡っている。 基礎研究 レーザー関連のノーベル賞 タウンズ、バソフ、プロホロフ(1964年物理学賞):レーザーの開発 ガボール(1971年物理学賞) :ホログラフィーの発明と開発 ブルームバーゲン、ショーロー(1981年物理学賞):レーザー分光 クロート、カール、スモーリー(1996年化学賞):フラーレンの合成 チュー、コーエンタノージュ、フィリップス(1997年物理学賞):レーザー光を用いた原子の冷却とトラップ スベイル(1999年化学賞):フェムト秒分光を用いた化学反応の遷移状態の研究 → 「分子内の原子の動きを見る」 ワイマン、ケトレ、コーネル(2001年物理学賞):アルカリ元素のボーズアインシュタイン凝縮 田中耕一(2002年化学賞):生体分子の質量分析のためのイオン化法 グラウバー(2005年物理学賞):量子光学 ホール、ヘンシュ(2005年物理学賞):レーザーによる精密分光学(光周波数コム技術) レーザーの応用は基礎研究から日常生活までのすみずみにまで行き渡っている。

レーザーとは レーザー Laser Light Amplification by Stimulated Emission of Radiation = 誘導放出による光の増幅 光の波長・位相・方向・偏光がそろっている。 他の光源(電球、蛍光灯など) 自然放出を利用 光の波長・位相・方向・偏光はばらばら。

レーザー光の特性

光の吸収と放出 アインシュタイン(1916年) ボーアの条件 原子 振動数 プランク定数 自然放出 誘導放出 吸収 光 アインシュタイン(1916年) 原子 エネルギー準位 ボーアの条件 振動数 プランク定数 上の準位にある原子が下の準位に遷移する時、光を放出する。 自然放出:入射光がなくても起こる。 誘導放出:入射光につられて、光を放出する。

レーザーと他の光源との違い レーザー Laser 他の光源(電球、蛍光灯など) Light Amplification by Stimulated Emission of Radiation = 誘導放出による光の増幅 光の波長・位相・方向・偏光がそろっている。 偏光 方向 位相 振動数(→波長) 他の光源(電球、蛍光灯など) 自然放出を利用 光の波長・位相・方向・偏光はばらばら。

コヒーレンス 指向性・単色性 レーザー の特徴 「レーザー光はコヒーレントである。」 古典的電磁波 レーザーは理想的な古典的電磁波! レーザービームの断面の中で各部分の光の位相がよくそろっている。 時間的にも位相が変化せずそろっている。 「レーザー光はコヒーレントである。」 時間的・空間的な干渉性が高い(干渉実験で干渉縞がよく見える)。 古典的電磁波 偏光 方向 位相 振動数(→波長) レーザーは理想的な古典的電磁波!

指向性と単色性 指向性 レーザー光は、細いビームになっていて、反射や屈折をさせない限り、ほとんど一直線に特定の方向のみへ進む。(平行光線) レンズ等を用いて小さく絞れる。 →高強度 単色性 各種のレーザー光は、それぞれある特定の波長のみを含み、その波長は時間的に一定である。

電磁波は、波長によって次の表のようなスペクトル領域に分類できる。 レーザー光の波長領域 電磁波は、波長によって次の表のようなスペクトル領域に分類できる。 名前 波長(ナノメートル) 硬エックス線 < 1 軟エックス線 1〜30 極紫外(XUV) 30〜100 真空紫外(VUV) 100〜200 紫外(UV) 200〜400 可視光 400〜780 近赤外 780〜3000 中赤外 3000〜6000 遠赤外 6000〜15000 極赤外 15000〜1000000 代表的なレーザーの波長領域

代表的なレーザーシステム 連続波(CW)レーザー パルスレーザー エキシマレーザー 短パルスレーザー 超短パルスレーザー

レーザーの動作原理 参考書:William T. Silfvast, “Laser Fundamentals”

アインシュタインのA,B係数の理論(1916年) 占位数N1, N2の時間変化 熱平衡状態(温度 T ) 入射光 自然放出 吸収 誘導放出 ボルツマン分布 プランクの黒体放射の法則

レーザーが動作するための条件 反転分布 増幅 発振 図:レーザーの構造

反転分布 誘導放出>吸収 一方、熱平衡では 励起エネルギー源が必要 フラッシュランプ 発光ダイオード ガス放電 電流 化学反応 レーザー 自然放出 誘導放出 吸収 入射光

3準位レーザーの反転分布 レート方程式 定常状態 反転分布の条件 2準位原子を励起 → 上の準位増加 → 励起エネルギー源の影響で下の準位に遷移する確率も増加 → 反転分布不可 3準位、4準位系を利用 レート方程式 レーザー遷移 定常状態 反転分布の条件

増幅 :作用断面積 s 光強度 I は活性媒質の長さ L に関して指数関数的に増加 利得(ゲイン): 固体・液体・気体 プラズマ 自由電子 散乱等による減衰を考慮すれば 自然放出 誘導放出 吸収 入射光

拡張されたLambert-Beerの法則 dz 十分薄い厚さdzの活性媒質層による増幅 強度 I(z) に比例 dz に比例 I(z) I(z+dz) G:ゲイン(利得係数) z z+dz

A A 発振 レーザー光を発生するために、一般に活性媒質は一組の向かい合ったミラーからなる共振器の中に置かれる。 フィードバック増幅器

A 発振 フィードバック増幅器 入射光がなくても、黒体放射を種にして大きな出力が得られる(発振)。 定常的なレーザー発振の条件 では増幅率無限大 A 入射光がなくても、黒体放射を種にして大きな出力が得られる(発振)。 定常的なレーザー発振の条件 A この式と から 必要な反転分布は