第32回MR基礎講座 (関西) 2010.7.31 京都国際会館 画像法の原理(6) 拡散画像3 荏原病院放射線科 井田正博.

Slides:



Advertisements
Similar presentations
2008 年医師国家試験解説 ー画像診断のポイントー 放射線科 石口恒男 2008 年 7 月 1 日 (1) 頭部.
Advertisements

模型を用いたジェットコターの 力学的原理の検討 06522 住友美香 06534 秦野夏希. 平成22年度 卒業研究発表 山田研究室 研究目的 ジェットコースターのコースは、どのような計算に 基づいて作られているのか、研究を通じて理解し、 計算を用いた模型製作を行う。
Building text features for object image classification
MR based CFD による脳動脈瘤WSS分布推定における血管形状抽出法および 血液の非ニュートン性の影響
較正用軟X線発生装置のX線強度変化とスペクトル変化
荏原病院放射線科・総合脳卒中センター 井田正博
内部導体装置Mini-RT 真空容器内に超伝導コイルを有する。 ポロイダル方向の磁場でプラズマ閉じ込め。 ECHでプラズマを加熱。
第32回MR基礎講座 (関西) 京都国際会館 画像法の原理(6) 拡散画像1 荏原病院放射線科 井田正博.
超磁歪アクチュエータを用いた キャビテーション発生機構における 機械的特性の解析
「データ学習アルゴリズム」 第3章 複雑な学習モデル 3.1 関数近似モデル ….. … 3層パーセプトロン
1次陽子ビームのエネルギーが ニュートリノ・フラックスおよび機器に 与える影響について
画像特徴(点、直線、領域)の検出と識別-2 呉海元@和歌山大学 2007年5月14日
5.アンテナの基礎 線状アンテナからの電波の放射 アンテナの諸定数
荏原病院放射線科 総合脳卒中センター 井田正博
Irradiated Polarized Target
ワイヤレス通信におけるMIMO伝送技術.
臨床診断総論 画像診断(3) 磁気共鳴画像 Magnetic Resonance Imaging: MRI その1
MPGD GEM特性 測定結果 2005年10月 4日 内田 智久.
無線LANにおけるスループット低下の要因の分析
脳血管 MR診断に必要な脳動脈の解剖 荏原病院放射線科 井田正博
みかけの拡散係数 Apparent Diffusion Coefficient:ADC
ー 第3日目 ー ねじれ型振動子のブラウン運動の測定
SI = N(H) ・ (1 - e -TR/T1) ・ e -TE/T2 ・ e -bD 双極傾斜磁場 bipolar gradient
MRI検査スピード化 (疎明に映すことと併用されれば、多数の救命に)
MRI(Magnetic Resonance Imaging)の高速化
低周波重力波探査のための ねじれ振り子型重力波検出器
臨床診断総論 画像診断(3) 磁気共鳴画像 Magnetic Resonance Imaging: MRI その2
最近の国試問題における 画像診断のポイント
原子核物理学 第8講 核力.
HERMES実験における偏極水素気体標的の制御
et1 et1 et2 et2 信号 T2減衰曲線 Mxy(t) = M0 e-t/T2 T2*減衰曲線
横磁化成分と歳差運動 M0 横磁化Mxy 回転座標系 90°RFパルスにより、縦磁化成分Moはxy平面に倒れる(横磁化生成)
臨床診断総論 画像診断(3) 磁気共鳴画像 Magnetic Resonance Imaging: MRI その7
臨床診断総論 画像診断(3) 磁気共鳴画像 Magnetic Resonance Imaging: MRI その5
測定結果(9月) 2005年10月7日.
Fig. Crystal structure of Nd2Fe14B
Ⅱ 磁気共鳴の基礎 1.磁場中での磁気モーメントの運動 2.磁気共鳴、スピンエコー 3.超微細相互作用、内部磁場 references:
2013/02/09 望遠鏡技術検討会 3.8m望遠鏡の主鏡制御 京都大学 木野 勝.
位相カメラの進捗状況 京都大学修士1回 横山 洋海.
荏原病院放射線科・総合脳卒中センター 井田正博
Susceptibility-Weighted Imaging:SWI
かなた望遠鏡を用いたブレーザーの 可視偏光変動の研究
Ⅴ 古典スピン系の秩序状態と分子場理論 1.古典スピン系の秩序状態 2.ハイゼンベルグ・モデルの分子場理論 3.異方的交換相互作用.
第32回MR基礎講座 (関西) 京都国際会館 画像法の原理(6) 拡散画像2 荏原病院放射線科 井田正博.
臨床診断総論 画像診断(3) 磁気共鳴画像 Magnetic Resonance Imaging: MRI その4
八角シンチレータ偏光計の性能 性能実験 ~八角シンチレータとは~ 結果 第3回宇宙科学シンポ
光子モンテカルロシミュレーション 光子の基礎的な相互作用 対生成 コンプトン散乱 光電効果 レイリー散乱 相対的重要性
量子力学の復習(水素原子の波動関数) 光の吸収と放出(ラビ振動)
Appendix. 【磁性の基礎】 (1)磁性の分類[:表3参照]
ー 第3日目 ー ねじれ型振動子のブラウン運動の測定
臨床診断総論 画像診断(3) 磁気共鳴画像 Magnetic Resonance Imaging: MRI その3
Charmonium Production in Pb-Pb Interactions at 158 GeV/c per Nucleon
SWI 強度画像、位相画像、SWI 強度画像 位相画像 S WI.
2013/02/09 主鏡制御の進捗状況 京都大学 木野 勝.
偏光X線の発生過程と その検出法 2004年7月28日 コロキウム 小野健一.
どのような特徴を見ているのか ― 計算の目的
インフレーション宇宙における 大域的磁場の生成
13族-遷移金属間化合物の熱電材料としての応用
・神経とは ・神経細胞の発生 ・神経細胞の構造 ・膜電位生成 ・伝導のしくみ
ビームラインイオン光学 Yoshiko Sasamoto Goal : 最高分解能を実現 そのためには、現状の認識.
α decay of nucleus and Gamow penetration factor ~原子核のα崩壊とGamowの透過因子~
実験結果速報 目的 装置性能の向上 RF入射実験結果 可動リミター挿入 RFパワー依存性 トロイダル磁場依存性 密度依存性
pixel 読み出し型 μ-PIC による X線偏光検出器の開発
間欠型一酸化炭素中毒に対する高気圧酸素治療の限界
TOBAの現状と今後の計画 坪野研輪講 2012年2月22日 岡田健志.
化学1 第11回講義 ・吸光度、ランベルト-ベールの法則 ・振動スペクトル ・核磁気共鳴スペクトル.
CSP係数の識別に基づく話者の 頭部方向の推定
PRISM-FFAG電磁石の開発 大阪大学 久野研究室 中丘末広.
第39回応用物理学科セミナー 日時: 12月22日(金) 14:30 – 16:00 場所:葛飾キャンパス研究棟8F第2セミナー室
磁場マップstudy 1.
Presentation transcript:

第32回MR基礎講座 (関西) 2010.7.31 京都国際会館 画像法の原理(6) 拡散画像3 荏原病院放射線科 井田正博

SI = N(H) ・ (1 - e -TR/T1) ・ e -TE/T2 ・ e -bD 拡散画像のMR信号 拡散係数を求める MR 信号 SI = N(H) ・ (1 - e -TR/T1) ・ e -TE/T2 ・ e -bD プロトン密度 T1緩和 縦緩和 縦磁化の回復 T2緩和 横緩和 拡散  S(h) = S (0) ・ e –bD log S (h) = log S (0) + (-bD) log [ S (h) / S (0) ] = - bD  D ≒ ADC = log [S (h) / S (0) ] / -b

ln S(h) = -bD + lnS(0) 拡散係数Dは傾き ln SI D = - ln [ S(h) / S(0) ] / b bD = - ln [ S(h) / S(0) ] bD = - ln S(h) + ln S(0) ln S(h) = -bD + ln S(0) Dは傾き D= - [ ln S(h) - S(0) ] / b b=0のときはT2WIの信号強度  ln S(h) = ln S(0) bが増大すると信号強度は低下する. T2WI ln S(h) = -bD + lnS(0) 1000 b-value

ADC:2点の信号から計算 ln SI = -bD + lnS0 D = - ln [ S(h) / S(0) ] / b bD = - ln [ S(h) / S(0) ] bD = - ln S(h) + ln S(0) ln S(h) = -bD + ln S(0) Dは傾き D= - [ ln S(h) - S(0) ] / b b=0のときはT2WIの信号強度 bが増大すると信号強度は低下する. Sh = S0 e -bD 1000 b-value 異なるbの2点の信号強度はがわかれば,Dが計算できる.

みかけの拡散係数 Apparent Diffusion Coefficient:ADC 異なるMPGを印加した画像の信号比から D = - ln [ S(h) / S (l) ] / bh-bl S(h): 高いb値のMPG印加.S(l): 低いb値 b = 1000,0 を測定する. D = - ln [ S(1000) / S (0) ] / 1000

ADC:2点の信号から計算 異なる2点の信号強度はがわかれば,Dが計算できる. 正確に測定するなら,3点以上計測し,回帰直線を求める. ln SI = -bD + lnS0 ln SI = -bD + lnS0 b-value b=0-50 b=1000-1200 異なる2点の信号強度はがわかれば,Dが計算できる. 正確に測定するなら,3点以上計測し,回帰直線を求める. D = - ln [ S(h) / S(0) ] / b

拡散にもさまざまな成分がある Bi-exponential diffusion ln Sh = -bD + lnS0 実測すると直線関係にならない 拡散にもさまざまな成分がある. first components (Df) slow components (Ds) S = K1 exp (-bDs) + K2 exp (Df) Bi-exponential diffusion Multi-exponential diffusion Signal intensity

拡散にもさまざまな成分がある Bi-exponential diffusion ln Sh = -bD + lnS0 実測すると直線関係にならない 拡散にもさまざまな成分がある. first components (Df) slow components (Ds) S = K1 exp (-bDs) + K2 exp (Df) Bi-exponential diffusion Multi-exponential diffusion Signal intensity b値

拡散にもさまざまな成分がある Bi-exponential diffusion ln Sh = -bD + lnS0 実測すると直線関係にならない 拡散にもさまざまな成分がある. first components (Df) slow components (Ds) S = K1 exp (-bDs) + K2 exp (Df) Bi-exponential diffusion Multi-exponential diffusion Signal intensity D1 D2

拡散にもさまざまな成分がある Bi-exponential diffusion ln Sh = -bD + lnS0 実測すると直線関係にならない 拡散にもさまざまな成分がある. first components (Df) slow components (Ds) S = K1 exp (-bDs) + K2 exp (Df) Bi-exponential diffusion Multi-exponential diffusion Signal intensity

1000 1000 1000 1000 ln Sh = -bD + lnS0 T2WI等信号 T2WI信号 T2WI高信号 b-value 脳梗塞超急性期 T2WI : 等信号 DWI : 高信号 ADC : 低下 T2WI等信号 T2WI信号 1000 1000 T2WI高信号 脳梗塞亜急性期 T2WI : 高信号 DWI : 高信号 ADC : 上昇 b-value 1000 脳梗塞慢性期 T2WI : 高信号 DWI : 低信号 ADC : 上昇

T2 Shine through 1000 拡散低下ではなく、T2延長が原因で、DWI高信号になる状態 T2WI高信号 脳梗塞亜急性期 T2WI : 高信号 DWI : 高信号 ADC : Pseudonormalization~上昇 T2 Shine through 拡散低下ではなく、T2延長が原因で、DWI高信号になる状態 脳梗塞発症後2-3日まはADC低下を反映する。T2の影響は少ない。 発症6日以降はT2延長(T2WI高信号)が反映される (T2 Shine through) DWIで高信号でも、T2WIで高信号ならば必ずADCを評価する。 Burdette JB, AJR 171:791-795 1998

Posterior Reversible Encephalopathy Sx T2WI高信号 血管性浮腫 細胞外液増量 拡散上昇 T2延長 Posterior Reversible Encephalopathy Sx 超急性期梗塞 1000 血管性浮腫 T2WI : 高信号 DWI : 高信号 ADC : 上昇 細胞性浮腫 細胞外液腔狭小化 拡散低下 T2変化なし 13

自由拡散と制限拡散 自由拡散 細胞外 脳脊髄液腔、膀胱、嚢胞性腫瘤 拡散を制限する構造がない 粘稠度に比例 制限拡散 細胞内(小器官) 拡散を制限する隔壁

拡散異方性 Diffusion anisotrophy 中枢神経では方向の揃った有髄神経線維軸索により,拡散方向に制限がある. 有髄神経に平行方向の拡散が大きい

MPGを印加した軸上の拡散が測定される 90deg 180deg Echo RF pulse z : slice y p : phase z x p : phase MPG r : read y x z 静磁場方向 z MPGを印加した方向の拡散現象のみ測定される

拡散異方性 神経線維(軸策)と髄鞘に平行な方向に大きな拡散 直交方向にMPGを印加 直交方向 小さな拡散が測定される 神経線維が高信号 平1.0行方向 大きな拡散成分が測定される。 神経線維が低信号 軸策と髄鞘

拡散異方性 神経線維(軸策)と髄鞘に平行な方向に大きな拡散 直交方向にMPGを印加 直交方向 小さな拡散が測定される 神経線維が高信号 平行方向 大きな拡散成分が測定される。 神経線維が低信号 軸策と髄鞘 平行方向にMPGを印加

拡散異方性: 神経線維(軸策)と髄鞘に平行に大きな拡散 軸策と髄鞘 軸策と髄鞘 Dg2 Dg1 脳梁膨大部 平行方向に印加 移動量 Dg1は大きく,MPGによる信号低下は大きい. 相対的に周囲脳実質よりも低信号 直交方向に印加 移動量 Dg2は小さく,MPGによる信号低下は小さい. 相対的に高信号

z xz yz x y xy 拡散異方性と拡散テンソル l1 l2 = (Dxx+Dyy+Dzz) / 3 l3 拡散テンソルDの固有値 eigenvector l1 > l2 > l3 ADC = ( l1+ l2 + l3 ) / 3 = (Dxx+Dyy+Dzz) / 3 xy 軸策と髄鞘

拡散テンソル画像 Fiber tracking x y z l1 l2 l3

髄鞘崩壊、軸策壊死→拡散異方性の低下 正常な軸策と髄鞘 脱髄、軸策壊死 神経線維に沿った 拡散異方性 拡散異方性の消失

今日から拡散画像を勉強する方へ 拡散とは 拡散を測定する 自由拡散と制限拡散 ADCを求める 拡散テンソル 拡散画像の画質改善 結語 位相、勾配磁場 b値 自由拡散と制限拡散 ADCを求める Multi-exponential 拡散テンソル 拡散画像の画質改善 結語 画像法の原理(6) 拡散画像

iPAT and 3-T; 磁化率変化の影響を最小限に Optic nerve Trio 3-T Vision 1.5-T Avanto 1.5-T Single-shot EPI always suffers from image distortion due to the long ETL and susceptibility artifact. Those disadvantages can be overcome by applying higher gradient and iPAT technologies There is little susceptibility even in the cranial base at 3T, in spite of choosing basiparallel plane. TE/ b = 83/ 1000 Matrix head coil iPAT 2 / Ave. 3 TE/ b = 54/ 1000 w/o iPAT TE/ b = 76/ 1000 32-matrix head coil iPAT 4 / Ave. 5 Single-shot EPI によるDWIでは磁化率変化による頭蓋底への画像のゆがみが常に問題となる 強い傾斜磁場.3Tesla におけるSNRの向上、高空間分解能化、parallel imaging技術により これらの問題は改善される 24

拡散画像とParallel imaging 磁化率susceptibilityの影響の低減 Single-shot EPI k空間のsampling数の低下→sampling時間の短縮 位相エンコード方向の位相シフトの集積が低減する. sampling 時間 磁化率による位相シフト f1> f2 f2 f1

高磁場装置とコイルエレメント数の増加 Parallel imaging 3T装置と32チャネルコイル 信号雑音比の向上 展開精度 高分解能化 撮像時間の短縮 Parallel imaging 展開精度 Reduction factorの増加 SARの低減 撮像時間短縮

拡散はプロトン密度 T1緩和 T2緩和とは独立したparameter 荒木力著 拡散MRI 秀潤社 SI = N(H) ・ (1 - e -TR/T1) ・ e -TE/T2 ・ e -bD プロトン密度 T1緩和 縦緩和 縦磁化の回復スピン‐格子 緩和 T2緩和 横緩和 横磁化減衰 スピン‐スピン相互作用 拡散 mm単位 水素原子核間距離 → nm単位 拡散はプロトン密度 T1緩和 T2緩和とは独立したparameter 組織成分や組織構築といった微細な物理環境を反映する.

SI = N(H) ・ ・ e -TE/T2 ・ e -bD 結語 : 拡散画像 b: b値 D: 拡散係数 MR 信号 SI = N(H) ・ ・ e -TE/T2 ・ e -bD プロトン密度 T2緩和 拡散 T2強調画像(b=0) 拡散強調画像DWI ADC画像 拡散はプロトン密度 T1緩和 T2緩和とは独立したparameter 組織成分や組織構築といった微細な物理環境を反映 全例(脳、躯幹、腫瘤性病変)に拡散画像を施行する意義あり