6. ポリシー Policies.

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6. ポリシー Policies

6.1 ポリシーとは  本章では、研究データに係るポリシーについて解説します。

6.1.1 ポリシーとは? ポリシーとは、政策、方針、規定、などの意味を持 つ英単語。 「セキュリティポリシー」「プライバシーポリ シー」のように、何らかの物事について組織として の方針を文書にまとめて公開したものをポリシーと いう。 ネットワーク管理の分野では、管理者が運用方針に 基づいて記述した設定ファイルや運用ルールなどの ことをポリシーということがある。  ポリシーとは、政策、方針、規定、などの意味を持つ英単語ですが、「セキュリティポリシー」「プライバシーポリシー」のように、何らかの物事について組織としての方針を文書にまとめて公開したものを言います。ネットワーク管理の分野では、管理者が運用方針に基づいて記述した設定ファイルや運用ルールなどのことをポリシーということもあります。 IT用語辞典 http://e-words.jp/w/ポリシー.html より

6.1.2 研究者が遵守を求められる三つのポリシー 1.研究機関のポリシー 2.配分機関のポリシー 3.学会・出版社のポリシー 大学、研究所等 2.配分機関のポリシー 研究機関に対して競争的資金を配分。政府、助成団体等 3.学会・出版社のポリシー  研究者が研究を進めるにあたって遵守を求められるポリシーには三つあります。  1つめが、所属している研究機関のポリシーです。大学、研究所等が定めているポリシーを守らなければなりません。  2つめが、資金配分機関のポリシーです。多くの研究は、政府や助成団体等から研究助成金を配分されて進められますが、その際には資金の配分機関が定めるポリシーに従わなければなりません。  3つめが、学会・出版社のポリシーです。研究成果は、学会や出版社の発行する学術雑誌に論文という形で投稿されますが、その際には学会や出版社の定めるポリシーに従わなければなりません。

6.1.3 研究機関における研究データ管理の二つの流れ 1.オープンサイエンスの流れ 「我が国におけるオープンサイエンス推進のあり方について」内閣府 2015.3 「オープンイノベーションに資するオープンサイエンスのあり方に関する提言」日本学術会議 2016.7 研究データの利活用のために積極的にオープン化 2.研究公正の流れ 「研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン」文部科学省 2014.8   研究データは検証が目的、利活用を想定していない  →研究データをオープンにして、多数に検証してもらうというやり方も      あるであろうが、多くの場合は、ポリシーの作り方はそうはなっていない 1と2では、オープン化に対してのスタンスが異なるが、日本国内では2 の研究公正の流れのポリシー策定が先行。オープンサイエンスにむけたポ リシーを策定するのであれば、2との整合性をはかる必要あり。  現在、研究機関における研究データ管理には大きく二つの流れがあります。  1つめがオープンサイエンスの流れです。  2015年3月に、報告書「我が国におけるオープンサイエンス推進のあり方について」が内閣府から出されました。  2016年7月には日本学術会議からも提言が出されており、異分野での利活用を促進するため、積極的に研究データをオープン化することが求められています。  もう一つの流れとして、研究公正の流れがあります。2014年8月に文部科学省から出されたガイドラインでは、研究活動における不正行為が疑われた際に検証できるようにするため、研究データを原則として10年間保存・管理することが求められています。ここでは利活用は想定されていません。1と2では、オープン化に対してのスタンスが異なりますが、日本国内では2の研究公正の流れのポリシー策定が先行しています。オープンサイエンスにむけたポリシーを策定するのであれば、2との整合性をはかる必要があります。

6.1.4 研究公正の流れのポリシーの例 京都大学における公正な研究活動の推進等に関する規程第7 条第2項の研究データの保存、 開示等について定める件 2.教職員等は、当該論文等に疑義が呈された場合その他必要に応じて 保存する研究データを開示しなければならない http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research/ethic/research_guide/documents/research_data150730.pdf 大阪大学における研究データ保存等に関するガイドライン 第4(1)「原則として、当該論文等の成果発表後、10年間とす る。」 第7 開示 1.研究者等は、調査委員会から研究データの開示を求められた場合は、 原則として開示に応じなければならない http://www.osaka-u.ac.jp/ja/research/iinkai/integrity/files/data_guideline (九州大学) 研究データの保存等に関するガイドライン 5.開示等 研究者及び研究責任者は、論文等の形で発表した研究成果について、求め に叔父、研究活動の適正性について科学的根拠をもって説明するとともに、 必要に応じ、研究データ等を開示しなければならない https://www.kyushu-u.ac.jp/f/1461/guideline.pdf  研究公正の流れのポリシーの例を見てみましょう。  京都大学では、「京都大学における公正な研究活動の推進等に関する規程」として、第7条第2項で研究データの保存、 開示等について定めています。  また、大阪大学や九州大学では「研究データの保存等に関するガイドライン」を定め、研究データの保存期間や開示の要件について定めています。

6.1.5 研究公正の流れのポリシーのポイント 対象としている研究データは、基本的に論文の根拠 資料(実験ノート、数値データ、画像)。 論文発表から少なくとも10年間の保存(非改変)、 および必要に応じての開示。 データの利活用については定めていない。   → ポリシー中では、利活用を想定していない 例として挙げた三大学では、具体的な取扱いは部 局。 京都大学は、監督者が保存計画を作成。 教職員の異動・退職後も、研究データを機関として 保存もしくはアクセス情報を保管  研究公正の流れのポリシーのポイントですが、対象としている研究データは、基本的に論文の根拠資料で、実験ノート、数値データ、画像等です。論文発表から少なくとも10年間データを改変せずに保存することとなっており、必要に応じての開示が求められています。一方で、データの利活用については定めていません。  また、例として挙げた三大学では、研究データを実際に保存・開示するのは部局が行うことになっています。京都大学では、監督者が保存計画を作成し、教職員の異動・退職後も、研究データを機関として保存もしくはアクセス情報を保管することとなっています。

6.1.6 想定される課題 各機関・各部局で論文公表の実態のモニタリングは できているのか? 研究データの管理はシステム化されているのか データの検索は?(大規模大学では数千本の論文が公表 されるが、その根拠データをどのように管理?) 公表論文とデータの紐づけは?   【研究支援担当者側で検討できそうなこと】 ○研究データ管理ポリシーの具体化をはかるためには、研究成果のモニタリングおよびデータベース化が必要になってくるであろうし、そこでオープンサイエンスとの課題の共有ができるのでは? ○研究データは分野により性質があまりに異なるため、部局レベルの運用ガイドラインで、論文および根拠データ(実験ノートまで含めるのであれば根拠資料)は、機関リポジトリで管理、とすることは可能か?  ← 現在の機関リポジトリシステムでは、データ保全機能    (凍結・非改変・データのバージョン管理・タイムスタンプ等)が不十分か?  研究データ管理ポリシーを策定するに当たり、想定すべき課題は2つあります。  1つ目は、各機関・各部局における論文公表の実態のモニタリングについてです。どれぐらいの量の研究データが管理対象なのかを把握するためには、論文の公表状況を把握し、論文の根拠となる研究データがどれだけあるかを確認する必要があります。しかし、論文公表の実態のモニタリングは、実際にやってみると、相当な作業量になります。  2つ目は、研究データの管理システムの問題です。いざという時に開示するためには、該当する研究データを検索できる必要があります。また、公表された論文と保存された研究データを紐付けておく必要もあります。  研究支援担当者が検討できそうな課題を例示していますので、参考にしてください。

6.1.7 論文根拠資料以外の研究データの取り扱い 保存すべき研究データをどのように選定するか? 1.すでに保存の方針が確立されているもの    継続的観測データ、標本データ、歴史的資料等    ←取扱いの実際にあわせて、ポリシー作成 2.保存の方針が確立されていないもの    研究の現場で日々生み出されるカレントデータ等    ←保存するかどうかを選定する前に     研究データを「寝かせる」期間を設けるか     例) パデュー大学 https://purr.purdue.edu/legal/digitalpreservation  研究データには、論文の根拠資料以外にも多くのものがあります。保存すべき研究データをどのように選定するかを検討する際には保存の方針が確立されているものとそうでないものを分ける視点が有益です。  すでに保存の方針が確立されているデータは、取扱いの実際にあわせてポリシーを作成するのが簡便です。具体例としては、継続的観測データ、標本データ、歴史的資料等が挙げられます。  取扱いの方針が確立されていないデータは、保存するかどうかを選定する前に、研究データを「寝かせる」期間を設ける場合もあるようです。パデュー大学のポリシーでは、十年間の一時保存後に、永年保存に切り替えるかどうかの選定をすることが定められています。  研究支援担当者は、それぞれの機関の研究データ管理ポリシーの実質化にむけた、研究データ管理サービスを設計しなければなりません。