北太平洋西部亜寒帯域における大型カイアシ類(Neocalanus Cristatus)のLagrangian Ensemble Model

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北太平洋西部亜寒帯域における大型カイアシ類(Neocalanus Cristatus)のLagrangian Ensemble Model 2009年秋季海洋学会  25th Sep. – 29th Sep., 2009 タイトルは北西太平洋におけるカイアシ類のPopulation dynamics model。発表者は照井健志です。 ○ 照井 健志1.2・岸 道郎1.3.4 1 北大院環境 2 CREST/JST 3 北大院水産 4 JAMSTEC

Introduction, Neocalanus N. cristatusの特徴 生活史は約1年 1000 ~ 2000 m規模の鉛直移動 最も大きいカイアシ類 魚の重要な餌 5 mm Neocalanus plumchrus C5 飼育実験が難しい 船舶観測にも限りがある → カイアシ類を含んだ低次生態系の解明にモデルが必要 Metridia pacifica C6F Eucalanus bungii C6F Neocalanus cristatus C6F Neocalanus flemingeri C6F Surface Deep Neocalanus C1-C5 N1-N6 C5(solid) C6 Egg ♀ ♂ Winter Spring Summer Autumn

Introduction, NEMURO (North Pacific Ecosystem Model Used for Regional Oceanography) PDM ・PICES Model Task Team が開発 (Kishi et al., 2007). ・有光層の低次生態系を生物量で再現したボックスモデル ・ ZLの鉛直移動は決められた日時に行なわれており、成長に伴って行なわれる鉛直移動を再現 できていない。 ・Terui and Kishi (2008)にて、再現を試みる

Introduction, PDM NEMURO NH4 PS ZS ZP PL POM ZL 表層 C1 C2 C3 C4 C5 深層 Boundary conditions Introduction, PDM 表層: C1-C5 表層で摂食を行なう 深層: egg, nauplii, solid, C6. 摂食を行なわない。 深層の水温は2℃ NEMURO NH4 PS ZS ZP 排泄物 PL POM ZL 排出物、 自然死亡 表層 C1 C2 C3 C4 C5 migration migration 深層 Nauplii Egg C6 Solid

Introduction, Terui and Kishi (2008) Solid Adult Eggs Nauplii 個体数(ind/m3) 左軸 = Egg, C1-5, Solid, Adult 右軸 = Nauplii 生物量(mgC/m3) ・ステージと年齢別で群集を再現したモデルで、成長に伴う鉛直移動の表現に成功

OBJECTIVE Terui and Kishi (2008)のモデル 段階的な成長をモデルで再現できた。 春季ブルームがCopepodid期の円滑な成長に重要である。 個体群ごとに成長の履歴を追うことができない。 →コホート毎に成長を再現したモデルを作成し、誕生日が成長に与える影響を調べる

Lagrangian Ensemble Model with NEMURO Egg: 5.7日 Nauplii: 53.2日 Solid: 90日 Adults: 91.1日 1個体あたり76個体のEggを14.7日おきに6回産卵 成長率0.03(/day)を14日間連続で下回った場合、餓死する

Annual cycle of abundance

Annual cycle of biomass

成長の履歴 成長率の推定値 Vidal and Smith (1986) 0.031 – 0.079 (/day) Birthday C1 Solid Copepodite期間 最初の産卵開始日 死亡日 平均成長率(/day) 1/1 2/28 - 14 3/14 0.0137 2/21 4/19 5/3 0.0150 2/22 4/20 9/7 138.8 12/21 翌年 3/7 0.0533 3/3 4/29 9/9 131.75 12/23 翌年 3/9 0.0561 3/17 5/14 9/19 127.3 翌年 1/1 翌年 3/19 0.0575 4/8 6/4 10/12 129.75 翌年 1/26 翌年 4/11 0.0574 成長率の推定値 Vidal and Smith (1986) 0.031 – 0.079 (/day) Copepodite期間について観測から得られた推定 Kobari and Ikeda (1999) 2 – 6 ヶ月 Saito and Tsuda (2000) 44-72 日 (2~6℃) Vidal and Smith (1986) 各ステージの期間は大体20日(0.5~6℃) →100日前後

個体群別のCopepodite期日数 赤:PLの増加とともに、成長期間が短くなっていく。出現が遅れるほど有利

親個体群の集約化プロセス 1月-3月 4月-9月 10月-12月 遅生 早生 ♂ ♀ ♂ ♀ ♂ ♀ C C C ♂ ♀ ♂ ♀

Summary Copepodite期の成長の完了には十分な餌の獲得が必要。 成長に対して呼吸の割合が多く、より多くの摂食が必要 成長に関わるパラメータを分析する必要 成長速度が他の個体群に追いつき、親個体群を形成していた。 次の世代の個体群へ与える影響は表現できない 親の数が次の世代へ与える影響を調べるためには、別な モデルを考える必要がある。

おしまい

期間について Copepodite期について、観測の推定によると、 Kobari and Ikeda (1999) 2 – 6 ヶ月 Saito and Tsuda (2000) 44-72 日 (2~6℃) Vidal and Smith (1986) 各ステージの期間は大体20日(0.5~6℃) →100日前後

個体群の生存率 誕生月 発生個体群(個) 完了個体群(個) 平均完了日数(日) 平均死亡日数(日) 完了個体群/発生個体群 親個体群の誕生日 1月 30 72.8 0% 2/21 - 4/8 2月 28 8 376.8 29% 3月 29 368.7 100% 4月 4 3 369.6 78.8 75% 4/1 - 4/8 12月 10 2/21 - 3/16

個体数の履歴

呼吸のグラフ

f1とf2の計算結果

呼吸量について Ikeda et al., (2001)において、呼吸による窒素の損失を体重と水温の重回帰式で表している。C:Nで換算することで、モデルで用いることが可能である。 、 6.625となっている。(4-10の間まで変化することが記述されている)

成長の履歴 誕生日 C1になった日 Solidになった日 Copepodite期間 最初の産卵開始日 死亡日 平均成長率(/day) 1/1 2/28 - 14 3/14 0.0137 2/21 4/19 5/3 0.0150 2/22 4/20 9/7 138.8 12/21 翌年 3/7 0.0533 3/3 4/29 9/9 131.75 12/23 翌年 3/9 0.0561 3/17 5/14 9/19 127.3 翌年 1/1 翌年 3/19 0.0575 4/8 6/4 10/12 129.75 翌年 1/26 翌年 4/11 0.0574