中性原子磁気トラップの製作 担当大学院生 矢萩 智彦 ( 物理工学科 M1) 指導教員 熊倉 光孝 ( 物理工学科 )

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中性原子磁気トラップの製作 担当大学院生 矢萩 智彦 ( 物理工学科 M1) 指導教員 熊倉 光孝 ( 物理工学科 ) 平成19年度 PBL成果発表会 中性原子磁気トラップの製作 担当大学院生 矢萩 智彦 ( 物理工学科 M1) 指導教員   熊倉 光孝  ( 物理工学科 )

背 景 磁気トラップ 長時間、安定に、超高真空中に捕捉 mK以下の極低温原子気体 レーザー冷却法 量子縮退原子気体 背  景 レーザー冷却法 mK以下の極低温原子気体 量子縮退原子気体 ・ 原子光学(波動性、粒子性) ・ 超精密計測(標準技術)、量子情報処理 ・ 量子凝縮相の諸物性(超流動) 基礎物理、先端工学への応用 長時間、安定に、超高真空中に捕捉 磁気トラップ 不均一磁場の磁場極小点にトラップ 磁気双極子モーメント(スピン)を持つmK以下の原子

目 的 磁気トラップの設計・製作 量子力学、原子物理学 ・ 原子構造(磁気双極子モーメント)は? 電磁気学 ・ 必要な磁場の大きさ、形状は? 目 的 磁気トラップの設計・製作 ・ 原子構造(磁気双極子モーメント)は? ・ 必要な磁場の大きさ、形状は? ・ 具体的な電磁石の設計  ・ 機械工作    ・ 性能評価           量子力学、原子物理学 電磁気学 計算機シミュレーション 製図技法、工作技能       計測技術 一貫して行うことで、    原子光学の理解・開発に要する知識    実際的な技法・技術 基礎学問から先端技術にいたる過程を実習

設計・製作 設計条件 計算機シミュレーション ・ 87Rb原子の 5s 2S1/2 ( F = 2, mF = 2 ) ・ 1 mK の原子気体を 5mm 程度の領域に ・ 最大電流 ~ 300 A (水冷式) ・ これまでの磁場配置を論文で調査 ・ 様々なコイル配置を提案 ・ LabView (G言語)による磁場計算 

設計・製作 Ioffe-Pritchard 型 設計条件 計算機シミュレーション ・ 87Rb原子の 5s 2S1/2 ( F = 2, mF = 2 ) ・ 1 mK の原子気体を 5mm 程度の領域に ・ 最大電流 ~ 300 A (水冷式) ・ これまでの磁場配置を論文で調査 ・ 様々なコイル配置を提案 ・ LabView (G言語)による磁場計算  anti-bias coil Ioffe bar curvature coil Ioffe-Pritchard 型 xy面内 : 四重極磁場 ( 177 G/cm )  z方向 : 調和型( 91.7 G/cm2)  原点位置で磁場最小( 0.32 G )

性能評価 ホール素子による磁場測定 xy 面内の動径方向磁場 z軸上の軸方向磁場 mK以下の原子集団を5mm程度の領域にトラップ可能 勾配: 149 G/cm 曲率   : 101 G/cm2 最低磁場: 9.2 G Bx [G] Bz [G] x [mm] z [mm] xy 面内の動径方向磁場 z軸上の軸方向磁場 mK以下の原子集団を5mm程度の領域にトラップ可能

Rb原子の磁気トラップ 既存のレーザー冷却・トラップ装置に設置 磁気光学トラップ 偏向勾配冷却 ~110μK 磁気トラップ  偏向勾配冷却 ~110μK 磁気トラップされた原子集団 の吸収イメージング画像   トラップ時間: 5 ms   トラップ解放後1ms 経過時 磁気トラップ 原子数 ~ 4×108 個

まとめ ハードルが低くなった! 磁気トラップの設計・製作 “物理学に基づいて基礎から先端技術を生み出す過程” ・ 原子物理学、量子力学、電磁気学  ・ 論文調査 ・ 計算機シミュレーション、製図などの設計技法 ・ 試作      ・ 測定技術と評価法 “座学の物理学” から現実の応用へ      ハードルが低くなった!