これらの有機化合物の構造はどのようにして決定されたのだろう?

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これらの有機化合物の構造はどのようにして決定されたのだろう? 有機化合物の構造決定(問題提起) 有機化学の教科書 多種多様な構造の有機化合物 これらの有機化合物の構造はどのようにして決定されたのだろう?

有機化合物の構造決定 有機化合物の構造決定に必要な情報は? 分子量・分子式(組成式) 質量分析装置、組成分析 構造中に含まれる官能基の同定 化学反応、赤外分光法、(NMR分光法) 炭素(炭化水素)骨格構造の決定 NMR分光法、(質量分析装置) NMR分光法の歴史:たかだか50年程度

有機化合物の構造決定 有機化合物の構造決定に必要な情報は? 分子量・分子式(組成式) 質量分析装置、組成分析 構造中に含まれる官能基の同定 化学反応、赤外分光法、(NMR分光法) 炭素(炭化水素)骨格構造の決定 NMR分光法、(質量分析装置) NMR分光法の歴史:たかだか50年程度

質量分析法 何が解る?: 化合物の を調べる手法 分子量 質量分析 試料の総グラム数 じゃない! モル質量(分子量) 装置構成 試料 導入部 化合物の      を調べる手法 分子量 質量分析 試料の総グラム数 じゃない! モル質量(分子量) 装置構成 試料 導入部 イオン化部 (加速部) 質量 分析部 検出器

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質量分析法 何が解る?: 化合物の を調べる手法 分子量 質量分析 試料の総グラム数 じゃない! モル質量(分子量) 装置構成 試料 導入部 化合物の      を調べる手法 分子量 質量分析 試料の総グラム数 じゃない! モル質量(分子量) 装置構成 試料 導入部 イオン化部 (加速部) 質量 分析部 検出器

イオン化部 & 分子イオン加速原理(1) + − − 分子イオンの 電場-電荷相互作用 加速力の源 電場 で加速 (静電引力的な力) 熱電子トラップ e− 電場 で加速 (静電引力的な力) + − 質量分析部へ M+ e− イオン(荷電粒子) のみ加速 (分析部へ) M サンプル分子 − (注入口) 電気的に中性の 分子種は観測できない 電位差(電圧): V 電子イオン化法

イオン化部 & 分子イオン加速原理(1) + − − 分子イオンの 電場-電荷相互作用 加速力の源 電場 で加速 (静電引力的な力) 熱電子トラップ e− 電場 で加速 (静電引力的な力) + − 質量分析部へ M+ e− イオン(荷電粒子) のみ加速 (分析部へ) M サンプル分子 − (注入口) 電気的に中性の 分子種は観測できない 電位差(電圧): V 電子イオン化法

イオン化部 & 分子イオン加速原理(1) + − − 分子イオンの 電場-電荷相互作用 加速力の源 電場 で加速 (静電引力的な力) 熱電子トラップ e− 電場 で加速 (静電引力的な力) + − 質量分析部へ M+ e− イオン(荷電粒子) のみ加速 (分析部へ) M サンプル分子 − (注入口) 電気的に中性の 分子種は観測できない 電位差(電圧): V 電子イオン化法

イオン化部 & 分子イオン加速原理(1) + − − 分子イオンの 電場-電荷相互作用 加速力の源 電場 で加速 (静電引力的な力) 熱電子トラップ e− 電場 で加速 (静電引力的な力) + − 質量分析部へ M+ e− イオン(荷電粒子) のみ加速 (分析部へ) M サンプル分子 − (注入口) 電気的に中性の 分子種は観測できない 電位差(電圧): V 電子イオン化法

イオン化部 & 分子イオン加速原理(2) + − − 分子イオンの 加速力の源 電場-電荷相互作用 Mの 分子量 M+の 速度 質量分析部へ 電子イオン化法 分子イオンの 加速力の源 電場-電荷相互作用 熱電子トラップ e− Mの 分子量 M+の 速度 + − 質量分析部へ M+ 大 e− 小 (重い) M サンプル分子 − (注入口) 小 大 (軽い) 電位差(電圧): V

イオン化部 & 分子イオン加速原理(2) + − − 分子イオンの 加速力の源 電場-電荷相互作用 Mの 分子量 M+の 速度 質量分析部へ 電子イオン化法 分子イオンの 加速力の源 電場-電荷相互作用 熱電子トラップ e− Mの 分子量 M+の 速度 + − 質量分析部へ M+ 大 e− 小 (重い) M サンプル分子 − (注入口) 小 大 (軽い) 電位差(電圧): V

イオン化部 & 分子イオン加速原理(2) + − − 分子イオンの 加速力の源 電場-電荷相互作用 Mの 分子量 M+の 速度 質量分析部へ 電子イオン化法 分子イオンの 加速力の源 電場-電荷相互作用 熱電子トラップ e− Mの 分子量 M+の 速度 + − 質量分析部へ M+ 大 e− 小 (重い) M サンプル分子 − (注入口) 小 大 (軽い) 電位差(電圧): V

質量分析部(導入) 質量分析部 飛行時間型質量分析計 TOF (time-of-filight) 到達時間 Mの 分子量 M+の 速度 軽い 早い 速い 大 小 (重い) (遅い) 重い 遅い 遅い 小 大 (軽い) (速い) イオン源 検出器 飛行時間型質量分析計 TOF (time-of-filight)

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質量分析部(導入) 質量分析部 飛行時間型質量分析計 TOF (time-of-flight) 到達時間 Mの 分子量 M+の 速度 軽い 早い 速い 大 小 (重い) (遅い) 重い 遅い 遅い 小 大 (軽い) (速い) イオン源 検出器 飛行時間型質量分析計 TOF (time-of-flight)

質量分析部(分類) 種類: ① 日本語: 飛行時間型質量分析計 英語: time-of-filight 英語: TOF ② 日本語: 磁場型質量分析計(セクター型) 単収束扇形磁場型質量分析計 二重収束扇形磁場型質量分析計 これらの細かい分類は気にしなくても良い

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質量分析部(磁場型質量分析計) 磁場型質量分析計 (セクター型) 紙面裏から表向き 磁場 磁場の 向き M+ 電流 力 力 フレミングの左手の法則 軽い 重い イオン イオン 磁場型質量分析計 (セクター型) 曲がりやすい 曲がりにくい 曲がって出てくる位置で分子量選択

質量分析部(磁場型質量分析計) 磁場型質量分析計 (セクター型) 紙面裏から表向き 磁場 磁場の 向き M+ 電流 力 力 フレミングの左手の法則 軽い 重い イオン イオン 磁場型質量分析計 (セクター型) 曲がりやすい 曲がりにくい 曲がって出てくる位置で分子量選択

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質量分析部(磁場型質量分析計) 磁場型質量分析計 (セクター型) 紙面裏から表向き 磁場 磁場の 向き M+ 電流 力 力 フレミングの左手の法則 軽い 重い イオン イオン 磁場型質量分析計 (セクター型) 曲がりやすい 曲がりにくい 曲がって出てくる位置で分子量選択

これらの有機化合物の構造はどのようにして決定されたのだろう? 有機化合物の構造決定(問題提起) 有機化学の教科書 多種多様な構造の有機化合物 これらの有機化合物の構造はどのようにして決定されたのだろう?

有機化合物の構造決定 有機化合物の構造決定に必要な情報は? 分子量・分子式(組成式) 質量分析装置、組成分析 構造中に含まれる官能基の同定 化学反応、赤外分光法、(NMR分光法) 炭素(炭化水素)骨格構造の決定 NMR分光法、(質量分析装置) NMR分光法の歴史:たかだか50年程度

有機化合物の構造決定 有機化合物の構造決定に必要な情報は? 分子量・分子式(組成式) 質量分析装置、組成分析 構造中に含まれる官能基の同定 化学反応、赤外分光法、(NMR分光法) 炭素(炭化水素)骨格構造の決定 NMR分光法、(質量分析装置) NMR分光法の歴史:たかだか50年程度

NMRって何?(その1) 【NMR】: Nuclear Magnetic Resonanceの略語。厳密にはNuclear Magnetic Resonance(NMR)現象(日本語では核磁気共鳴現象)という物理現象の名前。広義にはNMR分光法、NMRスペクトル、NMR分光装置をさす言葉としても使用される。 【NMR分光法】:NMR現象を利用した分光法。紫外吸収スペクトルが紫外光(電磁波)の吸収を取り扱う分光法であるの対して、NMR分光法はラジオ波領域(MHz-GHzオーダー)の電磁波の吸収を扱う分光法である。 【NMRスペクトル】:NMR分光法で得られるスペクトル。 【NMR分光装置】:NMRスペクトルを測定するための装置一式。磁気共鳴を起こすための超伝導マグネットとNMRスペクトルを取り込むための分光計からなる。

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NMRって何?(その1) 【NMR】: Nuclear Magnetic Resonanceの略語。厳密にはNuclear Magnetic Resonance(NMR)現象(日本語では核磁気共鳴現象)という物理現象の名前。広義にはNMR分光法、NMRスペクトル、NMR分光装置をさす言葉としても使用される。 【NMR分光法】:NMR現象を利用した分光法。紫外吸収スペクトルが紫外光(電磁波)の吸収を取り扱う分光法であるの対して、NMR分光法はラジオ波領域(MHz-GHzオーダー)の電磁波の吸収を扱う分光法である。 【NMRスペクトル】:NMR分光法で得られるスペクトル。 【NMR分光装置】:NMRスペクトルを測定するための装置一式。磁気共鳴を起こすための超伝導マグネットとNMRスペクトルを取り込むための分光計からなる。

NMRって何?(その1) 【NMR】: Nuclear Magnetic Resonanceの略語。厳密にはNuclear Magnetic Resonance(NMR)現象(日本語では核磁気共鳴現象)という物理現象の名前。広義にはNMR分光法、NMRスペクトル、NMR分光装置をさす言葉としても使用される。 【NMR分光法】:NMR現象を利用した分光法。紫外吸収スペクトルが紫外光(電磁波)の吸収を取り扱う分光法であるの対して、NMR分光法はラジオ波領域(MHz-GHzオーダー)の電磁波の吸収を扱う分光法である。 【NMRスペクトル】:NMR分光法で得られるスペクトル。 【NMR分光装置】:NMRスペクトルを測定するための装置一式。磁気共鳴を起こすための超伝導マグネットとNMRスペクトルを取り込むための分光計からなる。

NMRって何?(その2) これが【NMR分光装置】だ! 超伝導 マグネット 分光計一式

NMR現象の物理的背景 (Zeeman分裂) は省略 原子核は核スピンを持つ 核スピンは磁石

NMR現象の物理的背景 (Zeeman分裂) は省略 原子核は核スピンを持つ 核スピンは磁石

NMR現象の物理的背景 (Zeeman分裂) は省略 原子核は核スピンを持つ 核スピンは磁石 核スピンの回転による 誘導電流 Z N S N S Y = NMR信号 X

NMR現象の物理的背景 (Zeeman分裂) は省略 (“使うNMR”が目的のため) 原子核は核スピンを持つ 核スピンは磁石 核スピンの回転による 誘導電流 Z N S N S Y = NMR信号 X 次スライド以降 状態解析にNMR分光法を使う上で知っておくべきNMRスペクトルの特徴(癖)

1H NMRスペクトル(出典:産業技術総合研究所SDBS) スペクトル例1 スペクトル例2 a b 1H 種類数=シグナル数=1 1H 種類数=シグナル数=2 原則1: 1H NMRスペクトルではプロトン(1Hの原子核)がシグナルをだす。 原則2: シグナル数は1Hの  種類 の数と一致

1H NMRスペクトル(出典:産業技術総合研究所SDBS) スペクトル例1 スペクトル例2 a b 1H 種類数=シグナル数=1 1H 種類数=シグナル数=2 原則1: 1H NMRスペクトルではプロトン(1Hの原子核)がシグナルをだす。 原則2: シグナル数は1Hの  種類 の数と一致

NMRスペクトルの性質(癖):シグナル数と対称性 六回軸対称 三回軸対称 原則4-2: 分子の対称性により化学的に等価なプロトンは同一シグナルとなる。 対称面 対称面

メチルプロトン (CH3) のシグナルが1本になる理由 NMRスペクトルの性質(癖) メチルプロトン (CH3) のシグナルが1本になる理由 C-C結合間の回転によりHa, Hb, Hcの区別ができない。 原則4-1: 化学構造上対称な位置にあるプロトンは、1本のシグナルとして検出される。 同様な理由でメチレンプロトン (CH2) も1本のシグナルとなる。

1H 種類数(メチル・メチレン・水酸基プロトン)=シグナル数=3 NMRスペクトルの性質(癖) シグナル 面積積分値 スペクトル例3 シグナル面積積分値:2 シグナル面積積分値:1 シグナル面積積分値:3 1H 種類数(メチル・メチレン・水酸基プロトン)=シグナル数=3 (原則2より) 原則3: 各シグナルの積分値 =  シグナルの面積 シグナル面積の比は、シグナルを出す(等価な)プロトン数の整数比に一致

1H 種類数(メチル・メチレン・水酸基プロトン)=シグナル数=3 NMRスペクトルの性質(癖) シグナル 面積積分値 スペクトル例3 シグナル面積積分値:2 シグナル面積積分値:1 a シグナル面積積分値:3 c b 1H 種類数(メチル・メチレン・水酸基プロトン)=シグナル数=3 (原則2より) 原則3: 各シグナルの積分値 =  シグナルの面積 シグナル面積の比は、シグナルを出す(等価な)プロトン数の整数比に一致

メチルプロトン (CH3) のシグナルが1本になる理由 NMRスペクトルの性質(癖) メチルプロトン (CH3) のシグナルが1本になる理由 C-C結合間の回転によりHa, Hb, Hcの区別ができない。 原則4-1: 化学構造上対称な位置にあるプロトンは、1本のシグナルとして検出される。 同様な理由でメチレンプロトン (CH2) も1本のシグナルとなる。

原則5: 同種のプロトン(例えばメチルプロトン同士)であっても化学的環境が異なるものは別々のシグナルをだす。 NMRスペクトルの性質(癖) スペクトル例4 シグナル面積積分値(整数比):1 シグナル面積積分値(整数比):1 b a 註:プロトン数が3:3なので整数比は1:1) 原則5: 同種のプロトン(例えばメチルプロトン同士)であっても化学的環境が異なるものは別々のシグナルをだす。

NMRスペクトルの性質(癖) スペクトル例5

原則6: 化学構造上近傍にプロトンが存在するシグナルは スピン-スピン結合 (J-coupling) で分裂する。 NMRスペクトルの性質(癖) スペクトル例5 スピン-スピン結合 J-coupling スピン-スピン結合 J-coupling 原則6: 化学構造上近傍にプロトンが存在するシグナルは スピン-スピン結合 (J-coupling)              で分裂する。 (一般に共有結合   3〜4 本以内の位置にあるプロトン間に観測される)。

原則6: 化学構造上近傍にプロトンが存在するシグナルは NMRスペクトルの性質(癖) 2-bond J-coupling (2J) 3-bond J-coupling (3J) 4-bond J-coupling (4J) (ジェミナルカップリング) (ビシナルカップリング) C H R1 R2 R3 R4 C H R1 R2 C H R1 R2 R3 R4 原則6: 化学構造上近傍にプロトンが存在するシグナルは J-couplingで分裂する(一般に共有結合3本ないし4本以内の位置にあるプロトン間に観測される)。

原則7: J-couplingする(等価な)プロトン数がn個の時、シグナルはn+1本に分裂する。なお各共鳴線の面積比は上図の通り。 Haのシグナルの分裂パターン C Hb1 Ha R1 R2 R3 R4 C Hb1 Ha R1 R2 Hb2 C Hb1 Ha R1 Hb3 Hb2 面積比 1 : 1 1 : 2 : 1 1 : 3 : 3 : 1 doublet (d) triplet (t) quartet (q) 原則7: J-couplingする(等価な)プロトン数がn個の時、シグナルはn+1本に分裂する。なお各共鳴線の面積比は上図の通り。

J-coupling分裂パターン: n+1ルール適用可能なケース 共鳴線の整数比 1 2 3 4 5 6 1 1 1 1 2 1 カップリングする 等価なプロトン数 1 3 3 1 1 4 6 4 1 1 5 10 10 5 1 1 6 15 20 15 6 1 パスカルの三角形 原則8: n+1ルールが適用できる場合、J-couplingによるシグナルの分裂パターン(共鳴線の整数比)はパスカルの三角形からも見積もることができる。

NMRスペクトルの性質(癖) スペクトル例5 J-coupling J-coupling 1:3:3:1 1:2:1 quartet (q) triplet (t) ビシナル位の1H数 3 2 n+1数 4 3

Haのシグナルの分裂パターン (d)・シミュレーション 3Ja-b1 Hb1の核磁化(磁石)の向き (二種類) C Hb1 Ha R1 R2 R3 R4 Haの全磁化 エネルギー 1 N S N S 1 : 1 3Ja-b1 1/2 Hb1 1 : 1 核磁化の向き(二状態)を反映して Haのシグナルが2本(二種類)に分裂 doublet (d) 原則9: J-couplingによるシグナルの分裂数はカップリング相手の磁化の状態数と同じ。

Haのシグナルの分裂パターン (t)・シミュレーション Hb1 とHb2は化学的に等価なプロトン Haの全磁化 エネルギー 1 3Ja-b1 = 3Ja-b2 3Ja-b1 C Hb1 Ha R1 R2 Hb2 Hb1 N S 3Ja-b2 3Ja-b1 1/2 N S 3Ja-b2 Hb2 1 : 2 : 1 3Ja-b2 1/4 Ha R1 R2 Hb1 Hb2 triplet (t) 1 : 2 : 1

Haのシグナルの分裂パターン (dd)・シミュレーション 化学的に非等価なプロトン2個とJ-couplingした場合 Haの全磁化 エネルギー 1 C R1 Hc Hb Ha R3 R4 3Ja-b Hb N S 3Ja-b 1/2 3Ja-c N S 3Ja-c Hc 3Ja-c 1/4 1 : 1 : 1 : 1 double doublet (dd) 1 : 1 : 1 : 1

Ha, Hb1&2のシグナルの分裂パターン・シミュレーション J1 C Hb1 Ha R1 R2 Hb2 J2 C Hb1 Ha R1 R2 R3 R4 積分値 1 1 1 2 J1 J1 triplet (t) Hb1&2 J2 Ha doublet (d) Ha Hb1 doublet (d) doublet (d) 原則10: J-couplingしているプロトン同士のJ値は等しい。

J-coupling・積分値のみで帰属できない場合:化学シフト値の利用 スペクトル例4 シグナル面積積分値(整数比):1 シグナル面積積分値(整数比):1 b a 註:プロトン数が3:3なので整数比は1:1) 上記のスペクトルではJ-couplingが見られず、 J-coupling・積分値の情報のみでは帰属ができない。 化学シフト値(経験値)を利用して帰属を行う。

化学シフト値(典型的な値) d1H (ppm) J-coupling・積分値のみで帰属できない化合物の構造決定に必要 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 d1H (ppm) 出典:はじめての有機スペクトル解析,宇野英満・築部浩編,丸善,東京 (2004) J-coupling・積分値のみで帰属できない化合物の構造決定に必要 上記化学シフト値は基本的に経験則(例外もある)

化学シフト値範囲 1H: 0 ~ 15 ppm; 13C: 0 ~ 250 ppm 化学シフト値の定義(重要!) 観測可能な核種: 1H, 13C, 15N, 19F, 29Si, 31P, 77Se, etc. 化学シフト値範囲  1H: 0 ~ 15 ppm; 13C: 0 ~ 250 ppm 原則14: 化学シフト値 = 各シグナルの共鳴周波数 - 基準共鳴周波数 基準共鳴周波数 X 106 基準共鳴周波数:参照化合物由来シグナルの共鳴周波数 (Hz) 1H, 13C参照化合物: TMS (Tetramethylsilane)

化学シフト値範囲 1H: -5 ~ 20 ppm; 13C: -20 ~ 300 ppm 化学シフト値の定義(重要!) 観測可能な核種: 1H, 13C, 15N, 19F, 29Si, 31P, 77Se, etc. 化学シフト値範囲  1H: -5 ~ 20 ppm; 13C: -20 ~ 300 ppm 原則14: 化学シフト値 = 各シグナルの共鳴周波数 - 基準共鳴周波数 基準共鳴周波数 X 106 規程長:L0 実際の切り出し長:L1 L1 - L0 金属棒の切り出し誤差 (ppm) = X 106 L0

なぜ1H NMRスペクトル上には13C NMRシグナルは現れないのか? 観測可能な核種: 1H, 13C, 15N, 19F, 29Si, 31P, 77Se, etc. 化学シフト値範囲  1H: -5 ~ 20 ppm; 13C: -20 ~ 300 ppm 原則14: 化学シフト値 = 各シグナルの共鳴周波数 - 基準共鳴周波数 基準共鳴周波数 X 106 基準共鳴周波数:参照化合物由来シグナルの共鳴周波数 (Hz) 1H, 13C参照化合物: TMS (Tetramethylsilane)

なぜ1H NMRスペクトル上には13C NMRシグナルは現れないのか? 2π B0 13C基準共鳴周波数 = γ13C 2π B0 原則15: γは核種固有の定数(比例定数のようなもの) B0:静磁場の磁束密度(超伝導マグネットの磁場強度) γ1H = 4*γ13C 基準周波数 (Hz) が異なる B0 = 9.4 Tのマグネットの場合: 400 1H基準共鳴周波数 100 13C基準共鳴周波数 MHz d1H (ppm) TMS(1H) d13C (ppm) TMS(13C)

1H NMRシグナルと13C NMRシグナルが同じスペクトル上に現れない理由はラジオの放送が互いに混線しないことと似ている。 よもやま話 1H NMRシグナルと13C NMRシグナルが同じスペクトル上に現れない理由はラジオの放送が互いに混線しないことと似ている。 Date-FM; NHK FM; Radio3他は固有の周波数で送信 FM: Frequency Modulation(周波数(波長)変調) AM: Amplitude Modulation(振幅強度変調) @B0 = 9.4 T 60 2H 1H 376 19F 160 31P 13C 40 15N 400 100 MHz TMS(1H) TMS(13C) d1H (ppm) d13C (ppm)

Haのシグナルが分裂する理由(化学的背景) J1 Hb1の核磁化(磁石)の向き (二種類) C Hb1 Ha R1 R2 R3 R4 N S N S 核磁化の向き(二状態)を反映して Haのシグナルが2本(二種類)に分裂 +1/2 -1/2 核磁化伝達の主な担い手: 電子 核磁化伝達の経路: 共有結合 原則16: J-couplingは共有結合を通じて引き起こされる。 骨格構造(化学結合のつながり)を決定できる理由

1H-1H J-couplingパートナーの同定 積分値 2 t, 6.5 Hz (e) 積分値 1 s (a) 積分値 2 d, 8.5 Hz (b) 積分値 2 d, 8.5 Hz (d) 積分値 2 t, 6.5 Hz

Haのシグナルの分裂パターン (dd)・シミュレーション 化学的に非等価なプロトン2個とJ-couplingした場合 Haの全磁化 エネルギー 1 C R1 Hc Hb Ha R3 R4 3Ja-b Hb N S 3Ja-b 1/2 3Ja-c N S 3Ja-c Hc 3Ja-c 1/4 1 : 1 : 1 : 1 double doublet (dd) 1 : 1 : 1 : 1

Ha, Hb1&2のシグナルの分裂パターン・シミュレーション J1 C Hb1 Ha R1 R2 Hb2 J2 C Hb1 Ha R1 R2 R3 R4 積分値 1 1 1 2 J1 J1 triplet (t) Hb1&2 J2 Ha doublet (d) Ha Hb1 doublet (d) doublet (d) 原則10: J-couplingしているプロトン同士のJ値は等しい。

1H-1H J-couplingパートナーの同定 積分値 2 t, 6.5 Hz (e) 積分値 1 s (a) 積分値 2 d, 8.5 Hz (b) 積分値 2 d, 8.5 Hz (d) 積分値 2 t, 6.5 Hz (c)-(d)のJより: -CH2-CH2-単位が1個 (b) H H (a) (a)-(b)のJより: 対称なH-C-C-H単位が2個 X Y (a)-(b)の化学シフト値より: p-置換ベンゼン (b) H H (a)

1H-1H J-couplingパートナーの同定 積分値 2 t, 6.5 Hz (e) 積分値 1 s (a) 積分値 2 d, 8.5 Hz (b) 積分値 2 d, 8.5 Hz (d) 積分値 2 t, 6.5 Hz (a)/(b) H H (d) (c) (e) Br CH2-CH2-OH H H

1H-1H J-couplingパートナーの同定 1H-1H COSYスペクトル J H H J Br CH2-CH2-OH H H diagonal peaks (自分自身とのクロスピーク) coupling相手とのクロスピーク

1H-1H J-couplingパートナーの同定 3 t 2 q 2 t 2 quint 3 t 2 sext (a) (b) (c) (d) (e) (f) 2.0 1.0 ppm 1H-1H COSYスペクトル (a) (b) (c) (d) (e) (f) (a) (b) (c) (d) (e) (f) diagonal peaks(自分自身とのクロスピーク)

NMRスペクトルで観測可能な核種は1Hだけか? 答: No! 1H以外にも観測可能な核種はある. 観測可能な核種: 1H, 13C, 15N, 19F, 29Si, 31P, 77Se, etc. I = 1/2 (NMR観測に適した核種) 逆に,観測不可能な核種は? 12C, 16O, 32S, 112Cd, etc. I = 0 (核磁化が全く生じない核種) 原子番号・質量数ともに偶数の場合,常にI = 0

1Hと13CはJ-couplingしないのか? する! I = 1/2 の核種 (13C) のNMRスペクトル シグナル 2本分 10個の独立な炭素原子 10本の13C NMRシグナル CDCl3 出典:有機化学のための高分解能NMRテクニック a-pinen 1Hと13CはJ-couplingしないのか? する! 1H-decoupled 13C NMRスペクトル(13C{1H} NMRスペクトル)

原則12: スピン量子数 0 以外の核種(NMRシグナルを与える核種)同士は全てカップリングする。 I = 1/2 の核種 (13C) のNMRスペクトル d/j e/i a/g/h a b c f i c j b CDCl3 h d f e g a-pinen 出典:有機化学のための高分解能NMRテクニック 1H-decoupled 13C NMRスペクトル(13C{1H} NMRスペクトル) 原則12: スピン量子数 0 以外の核種(NMRシグナルを与える核種)同士は全てカップリングする。

よもやま話 1H NMRシグナルと13C NMRシグナルが同じスペクトル上に現れない理由はラジオの放送が互いに混線しないことと似ている。 Date-FM; NHK FM; Radio3他は固有の周波数で送信 FM: Frequency Modulation(周波数(波長)変調) AM: Amplitude Modulation(振幅強度変調)

異核相関スペクトル H H C C R1 R4 R3 R2 R1 R4 R3 R2 1H-13C correlation? 3JHH C H R1 R2 R3 R4 1JCH 1H-13C correlation? 1H-13C HETCOR Hetero-COSY 1H-1H COSY spectrum 1H-13C HMQC 1H-13C HSQC

二次元NMRスペクトル 1H-1H COSY spectrum 1H-13C HETCOR (d) (b) (a1)/(a2) (c) (f) (e) 2.0 (d) (c) 3.0  1H (ppm) (b) 4.0 (a1) (a2) 4.0 3.0 2.0 140 100 60 20  1H (ppm)  13C (ppm) (e) (a) (a1)/(a2) (f) (c) (d) (b)

J-coupling: 1H 1個あたり二本に割れる理由(物理的背景) 1Hのスピン量子数 (I) Hb1 J1 I = 1/2 C Hb1 Ha R1 R2 R3 R4 N S N S 1Hのスピン磁気量子数 (mI) -1/2 +1/2 差: 1 -1/2 +1/2 スピン磁気量子数 (mI) の状態数 = 核磁化の状態数 = 共鳴線分列数 共鳴線分列数 = 2*I + 1 原則11: 共鳴線分列数 = 2*I + 1

宿題 1) 酵素と免疫系のどこが嗅覚と関連するか答えなさい。 酵素も免疫系も、嗅覚同様に分子を「識別」するところ。 2) 上述の文章中では、酵素と免疫系では何が異なると言って いるでしょうか。 分子認識(結合)の観点からは、酵素は限られた種類の 分子しか認識できないが、基質分子の範囲内であれば、 瞬時に分子を認識できる。一方、免疫系は認識できる分 子の種類は無限であるが、分子を認識できるようになる まで時間がかかる点。

宿題 3) 犬にチョコレートを与えると病気になるのはなぜか。理由を 答えなさい。 犬は進化の過程で、チョコレートに含まれる分子を 消化するのに必要な酵素を持っていないため。

宿題 4) 「人間は、じつのところ、匂いを嗅げるはずがないのだ。」と 著者がいっている理由を説明しなさい。 分子形状を認識する既知の方法は、酵素による分子 認識と、抗体による分子認識の二種類のみである。 酵素は嗅覚のように瞬時に分子を認識できるが、嗅 覚のように無限の分子を認識できる訳ではない。一 方、抗体は無限の分子を認識できるが、嗅覚のよう に未経験の分子でも瞬時に認識できる訳ではない。 「無限の種類の分子の認識」と「瞬時識別」の両方 が可能な方法は既知の形状認識法には存在しない。 このように形状認識で分子を識別すると仮定すると、 既知の形状認識法では、臭気分子の識別の特性を説 明できない。この矛盾を指して「匂いをかげるはず ない」と言っている。 背理法

演習問題 NMRの四重線(quartet: q)の各共鳴線の積分値比をシミュレーションで求めなさい。 1Hの共鳴周波数が500 MHzのNMR分光器では、3 ppmのシグナルの絶対共鳴周波数は何Hzか。 1Hの共鳴周波数が500 MHzのNMR分光器では、 500002500 Hzのシグナルの化学シフト値は何ppmか。 1Hの共鳴周波数が500 MHzのNMR分光器では、10 ppmのシグナルは0 ppmから何Hz離れているか。

化学シフト値の定義(重要!) 化学シフト値 = 基準共鳴周波数 X 106 L1 - L0 L1 - L0 各シグナルの共鳴周波数 基準共鳴周波数(= 0 ppmの周波数) 各シグナルの共鳴周波数 - 基準共鳴周波数 = 0 ppmからの周波数差 MHz 化学シフト値 = 各シグナルの共鳴周波数 - 基準共鳴周波数 基準共鳴周波数 X 106 規程長:L0 L1 - L0 実際の切り出し長:L1 L1 - L0 金属棒の切り出し誤差 (ppm) = X 106 L0

演習問題 1Hの共鳴周波数が500 MHzのNMR分光器では、3 ppmのシグナルの絶対共鳴周波数は何Hzか。 化学シフト値 = 各シグナルの共鳴周波数 - 基準共鳴周波数 基準共鳴周波数 X 106 = 3ppmシグナルの共鳴周波数 - 基準共鳴周波数 基準共鳴周波数 X 106 題意より、化学シフト値 = 3 ppm 基準共鳴周波数 = 500(MHz) = 500 X 106(Hz) = 500,000,000(Hz) 3ppm = 各シグナルの共鳴周波数 - 500,000,000(Hz) 500,000,000(Hz) X 106

演習問題 1Hの共鳴周波数が500 MHzのNMR分光器では、3 ppmのシグナルの絶対共鳴周波数は何Hzか。 約分 3 ppm = X 106 3 ppm = 3ppmシグナルの共鳴周波数 - 500,000,000(Hz) 500(Hz) 3(ppm) X 500(Hz) = 3 ppmシグナルの共鳴周波数 - 500,000,000(Hz) 1,500(Hz) = 3 ppmシグナルの共鳴周波数 - 500,000,000(Hz) 3 ppmシグナルの共鳴周波数 - 500,000,000(Hz) = 1,500(Hz) 3 ppmシグナルの共鳴周波数 = 500,000,000(Hz) + 1,500(Hz) = 500,001,500(Hz) 解答

演習問題 1Hの共鳴周波数が500 MHzのNMR分光器では、 500002500 Hzのシグナルの化学シフト値は何ppmか。 化学シフト値 = 各シグナルの共鳴周波数 - 基準共鳴周波数 基準共鳴周波数 X 106 題意より、各シグナルの共鳴周波数 = 500002500(Hz) 基準共鳴周波数 = 500(MHz) = 500 X 106(Hz) = 500,000,000(Hz) 化学シフト値 = 500,002,500(Hz) - 500,000,000(Hz) 500,000,000(Hz) X 106 約分 化学シフト値 = 2,500(Hz) 500 (Hz) = 5 ppm 解答

10ppmシグナルの共鳴周波数 - 基準共鳴周波数 演習問題 1Hの共鳴周波数が500 MHzのNMR分光器では、10 ppmのシグナルは0 ppmから何Hz離れているか。 化学シフト値 = 各シグナルの共鳴周波数 - 基準共鳴周波数 基準共鳴周波数 X 106 = 10ppmシグナルの共鳴周波数 - 基準共鳴周波数 基準共鳴周波数 X 106 題意より、化学シフト値 = 10 ppm 基準共鳴周波数 = 500(MHz) = 500 X 106(Hz) = 500,000,000(Hz) 10 ppm = 10ppmシグナルの共鳴周波数 - 500,000,000(Hz) 500,000,000(Hz) X 106

演習問題 1Hの共鳴周波数が500 MHzのNMR分光器では、10 ppmのシグナルは0 ppmから何Hz離れているか。 0 ppmから何Hz離れているか = 0 ppmからの周波数差 0 ppmからの周波数差 = 10 ppmシグナルの共鳴周波数    − 0 ppmシグナルの共鳴周波数(基準共鳴周波数) = 500,005,000(Hz) − 500,000,000(Hz) = 5,000 Hz 解答

演習問題 別解 1Hの共鳴周波数が500 MHzのNMR分光器では、10 ppmのシグナルは0 ppmから何Hz離れているか。 化学シフト値 = 各シグナルの共鳴周波数 - 基準共鳴周波数 基準共鳴周波数 X 106 ここで、各シグナルの共鳴周波数 - 基準共鳴周波数 = 0 ppmからの周波数差 化学シフト値 = 0 ppmからの周波数差 基準共鳴周波数 X 106 各シグナルの共鳴周波数 基準共鳴周波数(= 0 ppmの周波数) 各シグナルの共鳴周波数 - 基準共鳴周波数 = 0 ppmからの周波数差 MHz

演習問題 別解 1Hの共鳴周波数が500 MHzのNMR分光器では、10 ppmのシグナルは0 ppmから何Hz離れているか。 化学シフト値 = 0 ppmからの周波数差 基準共鳴周波数 X 106 10 ppm = 0 ppmからの周波数差 500,000,000(Hz) X 106 約分 10 ppm = 0 ppmからの周波数差 500 (Hz) 0 ppmからの周波数差 = 10(ppm)X500(Hz) = 5000 Hz 解答