細胞周期とその調節.

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Department of Neurogenomics
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学習目標 1.細胞の構造と機能の理解 2.核,細胞膜,細胞内小器官の構造と機能の理解 3.細胞の機能,物質輸送の理解 4.細胞分裂過程の理解
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好気呼吸 解糖系 クエン酸回路 電子伝達系.
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⑥ ⑤ ① ③ ② ④ 小胞の出芽と融合 11/20 ATPの使い途2 出芽 核 細胞質 供与膜 融合 標的膜 リソソーム
好気呼吸 解糖系 クエン酸回路 電子伝達系.
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細胞周期とその調節

M期の細胞と間期の細胞の融合実験(ほ乳類)               Johnson and Rao, 1970 M G1 M S M G2 染色体の凝縮=有糸分裂期 結論:M期を誘起する因子が細胞内に存在する

卵成熟促進因子(MPF: maturation promoting factor)の発見 Masui & Market, 1971

分裂酵母(Schizosaccharomyces)における実験 細胞分裂周期関連遺伝子の同定 分裂酵母(Schizosaccharomyces)における実験 CDC2 CDC2 細胞分裂の進行に必要な遺伝子:S期の開始 cdc2 M期の開始 cdc2 それ以外に数十の遺伝子が同定された    Pringle ら, Hartwellら1974 -1991

サイクリンの発見 ウニ・ホッキ貝の実験 Huntら1992 サイクリンの発見 ウニ・ホッキ貝の実験 卵 受 精 S 期 M t Huntら1992 細胞周期に従って増減をくり返すタンパク質 (MW 50kd)=サイクリンA, Bと命名

4つの独立した研究の統合 ホ乳類における細胞融合実験 細胞内のM期誘起因子の発見 ・カエル・ヒトデにおける卵成熟実験 細胞内の卵成熟促進因子が細胞外からの成熟刺激 因子によって誘導される 分裂酵母の分裂に伴う遺伝子発現の研究 S期やM期の進行に必要なCDC遺伝子の同定 ウニ・ホッキ貝の発生過程におけるタンパク合成の研究 S期M期の進行につれて増減をくり返すタンパク質の発見

統合できた背景 MPFは、ほ乳類の卵だけでなく体細胞にも作用した。 MPFは動物間で互換性があった。 CDC遺伝子に相同な遺伝子がヒトにも存在した。 サイクリンをカエル卵に注射するとMPFの作用が得られた。

カエルMPFタンパクの同定( Lohkaら 1988) CDC2とサイクリンBからなる 2量体タンパク 分子量80 kd(CDC 34kd Cyclin 46 kd) 機能:タンパク質リン酸化酵素 CDC2が触媒ドメイン サイクリンが調節ドメイン サイクリンが結合することで作用するので サイクリン依存性キナーゼ Cyclin dependent kinase (CDK)という

分裂酵母の実験で謎だったこと 同じ分子CDC2がS期M期の双方を進行させるメカニズム MPFの同定結果からの推論 CDC2にくっつく調節ドメインが変わるのではないか? G1サイクリンとMサイクリンの発見

G1サイクリンとMサイクリンの発見 Murrayら1991

周期進行阻害因子の発見 CDK阻害因子 CDK Inhibitor, CKI CKI: p15, p16, p21, p27が同定された

周期のチェックポイント 染色体は 赤道面に並んでいるか DNA複製が 完了しているか 増殖条件が整っているか

細胞周期制御システム 1.進行を遂行する分子CDC, Cyclin, CKI 2.正確さをチェックするチェックポイントコントロール

G1 G2 M DNA損傷 DNA複製異常 紡錘体形成異常 Rad 9発現 p53発現 Mad 2発現 Chk 1,2発現 CKI (p21) 発現 APC発現 cd 25 発現 アポトーシスの誘導

システムの異常 異常な増殖    無制限の増殖    染色体に異常のある細胞の増殖 最終的には癌化の昂進